王座奪還!?集え!チャームな男女諸君γ!

■ショートシナリオ


担当:やよい雛徒

対応レベル:1〜5lv

難易度:やや難

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:6人

サポート参加人数:1人

冒険期間:10月22日〜10月27日

リプレイ公開日:2004年10月29日

●オープニング

「絶対負けない!」
 寂れた村にすむ村長の娘さんは、メラメラと闘志を燃やしていた。村でいい男のコンテストを開くことになったのだが、これがまたとんでもない事態になっている。噂に聞いた某いい男コンテストでは、いろんな被害者が出たという。
 村の存亡を懸けたコンテストだ。失敗するわけにはいかない。
 支援者と父親があてに出来ない今、頼れるのは自分だけ。
「そうよ、何も男だけじゃないのよ。女性だって男装したら男以上に凛々しかったりするんだから!」
 どうやら村長の娘さんは『いい男』より『いい男に見える人』を探すつもりでいるようだ。まぁ人様の熱意はよくわからない。
「絶対優勝してやるわ!」
 いや、娘さんは出場しないし。
 事の起こりは昨日に遡る。

 † † †

「コンテストは儲かるのだ、娘よ」
 ダーツが雨のように降り注ぐ。
「えぇ、そりゃあそうでしょうよ。人に隠れてトトカルチョなさってたんですから」
 ナイフが疾風の如く宙を舞う。
「というわけでゲストを呼んだのに、何故怒るのだ娘よ」
 ここは元暗殺者の小さな村。
 彼らは俗に言う暗殺者、つまり『その道のプロ』だというのは言うまでもない。
 日々常人離れした芸当が繰り広げられるこの村は、つい最近まで寂れに寂れた村であぅた。表向き『暗く陰湿で静かな村』。しかし問題はその村の住人、全員『その道のプロ』だという事にある。
 闇の依頼を受け闇に生きる者達、というとカッコイイ。が、その実、そんなに暗殺依頼は入ってこない。仕方がないので出稼ぎに行ってアルバイトしたり、どっか事務やったりという生活を送っていた。暗殺者としての腕前はあっても暗殺の仕事に赴いた経験者指折り数えるほどしかない。足洗ってるのと一緒だ。村人皆、本業が『その道のプロ』である所為か、村を構築して閉鎖された空間であるからか、日常面でもかなりの弊害が出ていた。
 訪れる旅人に無愛想・無口のオンパレード。しかも折角だから鍛えてあげようという有難迷惑な行動の結果、素人の食事に麻痺毒を盛る、夜に奇襲をかける、トラップに落とす。
 つまり村人全体が一般常識に欠けていた。
 よって外国に留学していた娘さんは、苦肉の策として祭りとコンテストなるものを強引に押し進めて村の活性化を図った。アーサー王が平穏を目指して統治するキャメロット。暗殺なんかしなくても、ようは食って生ければ其れで良し。
 以前開いたコンテストはいろんな意味で成功した。 冒険者の提案で『不幸饅頭』や『薄幸煎餅』なんて物も売り出されて副収入となり、彼女の父親は隠れてトトカルチョを行い、祭りはそこそこ好評。
 そこで味を占めた村長のおっさんは再びコンテストを開くと言い出した。
「だからって、どーして貴族様の変態爺なんかつれてくるんですかぁぁぁ!」
 貴族様の変態爺、イコール、自称乙女のヴァーナさん(ヴァルナルド氏)。
「はっはっは。賞金は今回豪華だぞー? ヴァルナルド氏の支援があるからな、優勝したチームには一人につき3Gが払えるし、個人賞も用意している。いい男を競うのだから人が集まること間違いなしだ!」
 首をきゅうきゅうと絞められながら村長のおっさんは笑う。
 確かにいい男が集まるのなら女性も沢山来るかも知れない。
 しかし娘さんの心配は金じゃなかった。
「お父様のお莫迦! 知らないんですか!? あの爺が開いたコンテストは数知れず、中でもいい男を集めたコンテストの類は絶対無事に済んだ試しがありませんのよぉぉ!? 葉っぱの男が現れたとか、美形の男が丸坊主になったとか、薔薇にまみれた薔薇の人とか、全身ペイントした男とか!」
「はっはっは、娘よ。男なんてそんなもの。はじける筋肉は素敵じゃないか。安心しなさい、コンテスト会場は前回と同じく周囲を鰐と蛇で取り囲み、その上に十字型の足場を組んだぞ! 十字の足場は幅三十センチで地上から約十メートル! ロープ無ければ真っ逆様! 真の度胸が試される究極のステージだ!」
 とんでもないステージをつくったもんだ。
「私は厭ですぅぅ!」
 響き渡る絶叫。空は本日も晴れ渡る。
 さてチャームな人々よ、キミの存在を知らしめてみないかい?

●今回の参加者

 ea0369 クレアス・ブラフォード(36歳・♀・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea0760 ケンイチ・ヤマモト(36歳・♂・バード・人間・イギリス王国)
 ea0850 双海 涼(28歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea2745 エスト・ドラグゥーン(30歳・♀・クレリック・人間・ビザンチン帝国)
 ea4484 オルトルード・ルンメニゲ(31歳・♀・神聖騎士・人間・フランク王国)
 ea5430 ヒックス・シアラー(31歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)

●サポート参加者

不破 真人(ea2023

●リプレイ本文

 さて、ヴァーナ名物『いい男コンテスト』における楽しみ方は数多くあるのだが、代表的な楽しみ方は二つある。
 その一、本気で勝ちを狙う。
 その二、勝ちを捨てネタに走り、人として何かを犠牲に歴史(?)に名を残す。
 後者の出現率が圧倒的に多いのはこの際見なかったことにして(マテおぃ)。
 以下は各チームの汗と涙と友情と、ちょっぴり負の感情テイストな戦慄極まる日々を書き記したユカイな仲間達の愛と成長の実録である‥‥

 審査員席はなぜか空席が四つあった。紳士達はいるが、村の審査員がいない。とりあえず時間が来たのでそのまま進行されることになった。
『それでは第一回戦! ガンマチーム、ダンディ部門代表者はある日ある時あの場所で! 知る人ぞ知る(イロモノ)ナイスガイ王者、ヒックス・シアラー(ea5430)!』
 噂によればイイ男コンテストは別の場所でもあったらしい。支援はもちろんヴァーナさん(ヴァルナルド・エレネシア)。だが蓋を開けたら『奇人変人ショー』だった事実は、かのコンテスト参加者と観客との間に結ばれた暗黙の了解により秘密だそうだ。
 地顔が童顔とは本人談。大人っぽく見せるためオルトルード・ルンメニゲ(ea4484)に化粧を施してもらったヒックスは礼服を着込み、審査員席に向かって一礼。
「私は戦場に生き、常に戦闘に身を置いていた者。そこでの礼儀以外を知りません。そこで戦場の礼儀で皆様に挨拶いたしましょう」
 水のように静かで流麗かつ烈火の如き剣技を披露しはじめた! 何しろ足場が危ないこの舞台! 危険と紙一重のダンディだ!
「ヒックスさま〜素敵ぃ、ヒックスさま〜素晴しいですわ!」
 華国風の衣装を纏い、女装という姿で応援に駆けつけた不破の黄色い声が響く。呼応するように娘達も「ヒックス様」コールなるものを開始した。凛々しい男は人気が高い。
 そんな声すら聞こえぬように、ヒックスは一心不乱に足場の細い舞台の上、可能な限り大きく動く。やがて剣技を披露し終えると、ヒックスは審査員に向かって一礼をした。
「どうもありがとうございました。失礼します」
『王者ヒックス! 今回はいたって真面目との情報が! 点数がはじき出されました! 四点、五点、二点、二点! 真面目な紳士の方々の点数は高得点だ! 続くはクール部門! ガンマチームのクール部門代表は、クレアス・ブラフォード(ea0369)!』
 サラシで胸を締め付けたクレアスはさながら美形騎士! クルスソードをその腰に携え、ゆっくりとした動作で優雅に登場した。漂う気品は磨かれたものに違いない!
「さて、何かやらなければいけないのだろうが」
 不思議なことにクレアスは何もしなかった。ゆっくりとあくまで優雅に危険な舞台の上を歩き回る。審査員も、司会も首をかしげた。誰かが何か言葉を投げたが‥‥
「すまないな、私は戦い以外で剣は振らん」
 きっぱりと断った。しぃんと静まる会場。クレアスは苦笑しながら審査員を振り向く。
「すまないな審査員、私はこれで終わりだ。あとは好きなように審査してやってくれ。いい審査を期待している」
 優雅かつクールな足取り。観客に流し目を送るクレアスに、娘っ子達も若者もほうっと見入った。退場することしばし‥‥
『騎士、これぞ騎士だぁぁぁ! いざ審査員達の票を見てみよう! 五点、五点、三点、三点! 合計十六点! 現在における最高点です! 審査員が泣いております! それでは感動のまま第三回戦! 出場者は‥‥、な、なーんと、双海涼(ea0850)!』
 会場がどよめいた。それはもうどよめいた。涼はこの村で一種の伝説と化していた。しかし全員、涼が女の子と知りつつ指摘しなかった。何故ならば‥‥おっかないからである。
「ワイルドは肉体美だけではない、ということを思い知らせてさしあげます。あ、お兄様もいますね。ちょうどいいから後で抉りましょうか」
『おおっと、狙われた! 狙われたぞお兄ちゃん! 夢にまで見た兄弟対決だ!』
 腰に命綱をした涼は一応男装していた。暗殺本番用衣装+オルト嬢による迷彩メイク!
 全身から湧き上がる闘気ならぬ禍禍しいオーラが何かを語る! 試合開始と共に暴走を開始した夢見る乙女(狂)は、その狂気ぶりを益々増加させているのは幻ではあるまい。
 涼は走った。ベータチームの男も同じ事を考えたらしいが、そんなことは関係ない。
 対戦者をとっつかまえてバンジーを目指す!
 落とせ鰐の池! 絡みつかれろ蛇! 思いきりのよさこそワイルド!
 そんな意味合いがオーラから読み取れた。
 涼はお兄ちゃんの用意した物体および、もう一人の対戦相手と落下。自分は命綱をたどって舞台復帰する。
「知ってます? 乙女の敵って、滅殺しても許されるんですよ。うふふ、さて。お兄様、覚悟!」
『おおっと、なにやらデスマッチ! 会場置いてけぼりの暴走中だが点数は四点、四点、三点、三点の計十四点! いろんな意味で高得点だーっっ!』
 
 こうして初日は幕を下ろした。夜間は何者かの奇襲をうけるも、それなりに対処したもよう。涼は『チャームまんじゅー』なるものを村長と娘の所に売り込みに行った。いっそ商売人でも始めたら儲かりそうである。クレアスは男装の具合を、村の娘さん達にナンパしながら確かめた。否、確かめるのはいいのだが旦那はどうした既婚者クレアス。ヒックスは闇鍋を用意し、他の者たちも人を襲いに行ったり、平凡にすごしたりとまあ賑やかな夜を過ごした模様だ。

 さて二日目。なんとヒックスは司会席の一席にいた。
『どうも、前回王者のヒックスです。急病で倒れた司会の一人に代わり、ガンマーチームの情報をお届けします。四回戦ビューティ、ケンイチ・ヤマモト(ea0760)さん』
 どうやら司会をのっとったらしい。本来の司会がどうなったのかは、知る由も無い。
 ヒックスはともかくケンイチはメンバーを見回し「面白くなってきましたね」とつぶやきながら、派手にマントを取り払った。彼がアピールするのは楽器演奏である。
「どうぞ心行くまでご堪能ください」
 ケンイチの指が奏でる神秘の音色! 竪琴から流れる音色にうっとり聞き入る者がなんと多いことか。何しろ腕は達人級! その磨かれた腕にかなうものは滅多にいない!
『ケンイチさんの点数が出ましたね。五点、四点、二点、二点。十三点です。いやぁ審査員はわかっていらっしゃる。ケンイチさんお疲れ様です、続く第五回戦の我がチームフェミニン出場者はオルトルード・ルンメニゲ(ea4484)さんです。よろしくお願いしますね』
「もちろんだ。ごきげんよう、皆の者」
 相変わらず司会はヒックスだ。オルトルードは男性の礼服に身を包んで現れた。きちんと命綱をしているのは的確な判断だ。小道具に薔薇を用意し、華麗なる立ち振る舞いをする。もともと女性なのだから、隠し切れない色気があるというもの。
 何故か途中で対戦相手のソニックブームの被害にあいかけたが、それほど被害は出なかった。見目麗しい(?)出場者達にモーションをかけていく! さすがナンパのプロだ。
『点数が出ましたね。三点、四点、三点、三点。オルトさん、いい感じです! それでは最後の演目となりましたふり‥‥うわ、いきなりなにす、こ』
 妙な声に導かれて司会席を眺めた。するとそこにはヒックスではなく司会の姿が!
『みなさーん、お待たせしました! 私が復帰したからには愉快な実況を提供いたします! ついに迫った最終戦! フリー部門ガンマチーム出場者はエスト・ドラグゥーン(ea2745)!』
 司会さん、あんた急病は? ヒックスの姿はいずこ?
 さて謎多き過激な司会席はさておいて、エストが現れた。パラの男性騎士をイメージしているが、衣装は借り物。舞台に立つや否やエストは口上をあげはじめた!
「幼い頃から騎士に向かない、背が低い等言われ続け(中略)だが思いが高じてパラディン部をケンブリッジに創り(後略)」
 非常に長いので一部抜粋。しかし。どうやら初々しい青年を演じている様子だ。涙もろいおばちゃんとか、年老いたおじーちゃんが、孫を見つめる目で眺めている!
「残念ながら自分はまだ全然実力が伴わないが、必ず2〜3年の内にはパラディンになって此処イギリスそして我が故郷のビザンツに戻ってパラディンを広めて見せる」
『お年よりの皆さんの涙腺はマックス・ゲェェーッジ! 涙腺刺激された皆様からあつい声援が! 審査員の点数は三点、三点、二点、二点! 以上γチーム合計点は七十九点』
 その後、裏審査員による裏票なるものが発表された。各戦順に三点、一点、二点、一点、一点、一点の計九点。裏票は最下位だが、表票は高い! 合計八十八点となり、αとβに比べて二点の差をつけてギリギリ優勝を勝ち取った! 尚クレアスは個人賞第一位に輝き『静寂の騎士』という名を冠した。涼が個人賞第三位に輝いたが、一種畏怖の視線でみられたとかなんとか。
「ヒックスさんがいませんね。爺見物して、あぶなかったら盾にしようと思ったのに」
「うむ。審査員席で姿を消したが、まあそのうち戻ってくるだろう」
「いやはや女装がばれるかとひやひやしたが、なかなか上手くいくものだな」
「むー、いい武器を手に入れようと思ったら在庫が無いといわれた」
「まぁそう気を落とさずに」
 ポロロン、と竪琴の音が響く。ヒックスは後日見つかった模様だ。散々何者かと走り回っていた模様である。
 こうして『その道のプロ』が密集する村でのいい男コンテストは閉幕した。各チームの詳細を知りたい方は、それぞれの報告書を眺めるといいだろう。何か知ってしまっても、そう、知らないフリをするのが人情かもしれないが。
 冒険者達はこうして再び、(普通の)危険に満ちた毎日へ戻っていくだろう。
 ――たぶん。