灰の教団?―ユダの目覚めβ『追求』―
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■ショートシナリオ
担当:やよい雛徒
対応レベル:2〜6lv
難易度:難しい
成功報酬:5
参加人数:6人
サポート参加人数:1人
冒険期間:11月16日〜11月26日
リプレイ公開日:2004年11月24日
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●オープニング
「歯車と言うのはね。少しずつ廻りだすものなのよ」
其れは一通の手紙が届いた日。
かつて描いた八枚の天使画を庭のテラスが見える廊下に飾った時のことだった。
紅茶を手に時折知らない顔を見せる絵師は語る。
「そう。例えば山々の清水という清水、湧き水と言う湧き水が大地に染み込んで地下に流れ、あるいは小さな川から大河に流れ着くように物事には手順があると言うもの」
話を聞いている二人はじっと耳を傾ける。
一方は絵師の幼馴染、もう一方は絵師の執事を自称する者。
「やがて奔流となった水は大海に向けて流れ出す。それがいつかは誰にも分からない。水が固体として数えられぬように、日々の時間も身勝手に流れ、最後には一点に収束するでしょう。私はそう信じている、これは予感、恋にも似たものかもね」
「お言葉ですがミスマレア」
「お前の言葉は聞かないわ」
ぴしゃりと冷たく言い放つ。
「知らないフリをしていなさい。それが利口よ。やがて散った星は一つに戻る。絵が私の元にある限り、私の川は大河に向けて走り出すことは無い。其々の星が語る川の流れは今はまだ小川を構成するに過ぎない」
絵師の幼馴染は皮肉気に語る。
「今は嵐の前の静けさを楽しむ、そういうことか」
それこそ穏やかな表情で絵師は笑った。
「昔の言葉を繰り返すわ『これは私の汚点』だとね」
――――あるティータイムの会話より
† † †
『ジーザス教の白も黒もまやかしに過ぎぬ』
『ならば我等で真のジーザス教を追求しようではないか』
破門された白と黒。殉教者を示す薔薇を黒く塗り、灰の色を掲げて歩みだし。
繰り返されたささやかな日々。
持ち込まれた血色の宝石。真の悪魔は囁き掛ける。
『いずれ、どんな願いも叶いましょう』
それが全ての不幸の始まり。
† † †
●現在(PC情報)
バルデロの砦を制圧して数日後。冒険者達はギルドの一室に呼び出された。
色々と訪ねたいこともあったろうが、何故か部屋にいたのはキュラス一人であった。窓の外を眺めてぼんやりとしている。その手に握られた二枚の羊皮紙。
声をかけられずに立ちつくしている冒険者達に気がついたキュラスは何処か皮肉めいた悲しそうな笑みを浮かべた。
「よい知らせとよくない知らせがあります」
「でしょうね」
冒険者達も何処か悟ったような節がみられた。救えなかった命。まさかの裏切り。心的な疲労もあるのかもしれない。キュラスは一枚の羊皮紙を広げながら話し始めた。
「よい知らせはバルデロを拷問にかけた所、ミケラの勢力と居場所が判明したことでしょうかね。悪い知らせですが、二つあります。一つ目がこれです」
キュラスは冒険者達に羊皮紙を見せた。羊皮紙はエレネシア家現当主のヴァルナルド・エレネシア直筆の依頼書。書かれた文字を目で追ったものは顔をこわばらせたに違いない。当主を知る人間からすれば、想像もつかない痛烈な文が記されていた。
「本気なんですか」
「書いてある通りです。長女プシュケ・エレネシアを『殺害の上、当家に引き渡す事』をヴァルナルド氏は要求してきました。エレネシア家の恥さらしを許すわけにはいかないとのことです。教団の指導者として知れ渡れば家名に傷が付くことは明白。そこで皆さんに教団を潰す際、別の人間を指導者に仕立て上げ、無傷の遺体を持ち帰る事で報酬の4Gを支払うと言っています」
「遺体をどうするつもりですか?」
「病死に仕立て上げるそうですよ。本人の遺体さえあればどうにでもなるそうです」
貴族としては当然の処置なのかもしれない。まだ娘を遺体でも受け入れると言っているのだから、寛大な処置かもしれなかった。それでも教団潰しの過程において、たとえ生存していても殺して連れ帰れというのだから、非難の声が挙がっても無理はないかもしれない。冒険者達は貴族が関わっている事態を嫌でも思い知るしかなかった。
「二つ目は何です?」
「依頼書を受け取った翌日、レモンド・センブルグが行方不明になりました。色々調べていた所、本人の意思で姿を消した可能性が高いです。と、ここで皆さんに確認しておきたいことがあります。プシュケに対して許せないと意志が明確になっている方はいますか?」
そこで何人かが手をあげる。
「では決別の意志が明確になっていない方に言います。今回の戦いにおいて、貴方達は足手まといにしかならない事が予想できます。我々は教団の破壊に加え、彼女を殺して連れ帰らねばなりません。レモンドさんの事もありますから、別の事をお願いしたい」
教団の本拠地制圧ではなく、別の事を頼みたいとキュラスは言った。決別しきれない、人によっては甘いという判断かもしれないが、教団破壊だけでなくプシュケを殺す心の準備ができていない者達だけ廊下に呼び出される。皆、表情は重い。
「レモンド氏についての捜索をお願いします。加勢するようなら防がねばなりませんが‥‥本当に引き受けてほしいのは、こちらの依頼書です」
それは、制圧班には見せなかった依頼書だった。
差出人は弟のデルタ・エレネシア。
「これは」
「見ての通りです。弟君は姉の死を望んでいない。祖父のやり方を許せないと密かに依頼してきました。たとえ家の名を傷つけてもね。あなた方の役目はレモンド氏の捜索と『プシュケだけを守り、逃がす事』です。報酬は同額。私は納得できませんから同行しません。あなた方だけの重荷です。どうしますか」
しばしの沈黙が下りる。だが、冒険者達の目は決意に満ちた。たとえ裏切られても信じようとする者達だった。愚か者といわれてもかまわないと。
「いい目です。亀裂の恐れがありますから制圧班には知らせません。レモンド氏はプシュケに横恋慕していたらしいと弟君から情報を得ました。おそらく救い出すつもりです」
「では、今から追います」
「ご武運を。皮肉ではありませんが‥‥成功を祈ります」
キュラスから渡された教団の詳細が載った地図を手に。彼らは走る。
二つに分かれた意志。今度こそ道を違わないために。
●リプレイ本文
「近い将来、彼らと対峙する時がくるのかしら」
走りゆく冒険者達を物陰から眺める女の姿がある。街角で見かけるようなジプシー姿だ。白磁の肌は眩しい。女の表情は憂鬱で、何処か哀れそうな気配を秘めていた。
「遠い未来の為、一介の支配者の為に、幾百幾千の血が流れる‥‥基本は基本だけど」
皮肉めいた自嘲。女の背後に控える男は気遣わしげな顔をしていた。
「ネイ様」
「二つの家と教団の後始末はキュラス達が仕切っている。不本意だけどこちらも動かなきゃ。いいこと、お前。私は主君よりマレア様を選ぶ、覚えておきな」
「‥‥御意」
「生き残れば利用され、死ねば喜ばれる。哀れな運命の子に救いあれ」
冒険者達を眺め、遠き場所にいる見も知らぬ娘を思い、ネイと呼ばれた女は祈った。
† † †
レモンドの追跡とプシュケの救出をまかされた冒険者達は予定通り到着した。そびえ立つ古城と広がる湖。辺りは一面森に覆われている。そこで正面口の裏手、本来ならば裏口に続く船があるはずの場所に、彷徨いているレモンドを発見した。シアン・アズベルト(ea3438)が声をかけようとしたが、レモンドは彼らに気づくなり逃げ出した。
「待って、待ってください。違います! レモンドさん、私達は協力しに来たんです」
ぴたりと相手の足が止まる。オイル・ツァーン(ea0018)が依頼書を投げて渡した。
「それを見ろ。デルタからの追加依頼だ。警戒を解け、時間がない」
オイルの淡々とした言葉と依頼書が安定剤となったか、レモンドは緊張の糸が切れたようにその場に崩れた。ジョーイ・ジョルディーノ(ea2856)が肩を揺する。
「このフザけた運命をブチ壊すために、俺達は協力出来るはずだ。あきらめるな」
シーン・オーサカ(ea3777)レモンドの肩を叩いて注意と苦笑一つ。
しばらくして何故彷徨いていたのか明らかになった。シュナイアス・ハーミル(ea1131)とジャドウ・ロスト(ea2030)が周囲を探せど船がない。すでに対岸にあり、何者かが渡った後なのだ。ふと、ジョーイが名案を思いつく。シーンから借りていたフライングブルームに飛び乗り、繋いであった船を牽引して持ってきた。五人がぎりぎり乗れる程度だ。フローラ・エリクセンに関しては船にロープで自分をくくりつけ、リトルフライで浮き上がる。船に乗り込みながらジャドウが森をぐるりと見回す。シュナイアスが首を傾げた。
「討伐班が来る気配がない‥‥何故だ?」
「さぁ? 俺達が早く着きすぎたのかは知らないが、俺達にとってありがたいことだ」
「討伐班が遅ければ遅いほど、時間が出来る。依頼書はシアンに預けておく。私は囮班としてジャドウと共に行動しよう、シュナイアスは討伐班の後に侵入だったか」
オイルの問いに「おぅ」と短く唱える。だが彼の判断は間違っていた。単独で討伐班の後で行くというのだが、シュナイアスは騒ぎに巻き込まれることになるが、今は知る由もない。オイルの目は剣呑だった。ミスは出来ない。時間が勝負だ。前回のけじめと考えてか、過去にないほどの使命感が彼の背を押しているのかもしれない。寡黙な男は眈々と語り、最後の確認をはかる。皆、船に動くに邪魔なバックパックを置いた。
「では、後は成功を祈ろう。救うと決めた以上、必ず救い出すぞ」
城の中は静寂に満ちていた。地方の領主が所有していたという城は、無人の空気を漂わせていた。壁や床は荒れている。シュナイアスはオーラエリベイションだけをかけて討伐班の到着を外で隠れて待つという。ジャドウとオイルが裏口の一つに、もう一つにジョーイとシアン、シーンとフローラ、レモンドの五人が進むことになった。そして。
「必ずしも敵を倒す必要はない」
「同感だ」
物音一つしない。破壊班が到着していない今、下手に騒ぐのはよろしくない。ジャドウとオイルは的確に作戦をこなす。敵に遭遇しない内に、ジャドウはクリエイトウォーターで水を出現させて、クーリングで障害となりうる壁やドアを封鎖する。何故か一向に討伐班が到着する気配がない。彼らは首をひねりながら広い城の中で走り続けた。忍び歩きの心得はあったようで、途中何度か人影に遭遇するも、気を配っていたからか戦闘になるような事はなかった。奇妙である。やがて彼らは深部、それも地下の側についていた。
「この先は通さんぞ!」
鍵のかけられた個室の前に炎のウィザードが居た。だが二対一、能力的に見ても戦力は圧倒的だった。しばらくもみ合った末、虫の息の男を縛り、オイルが鍵開けの技術を駆使して戸を開け放つ。そこにいたのは。
「ひ! こないで、入らないで、殺さないで、ユダ様がおっしゃった人殺しでしょう!? どうして、なんで異教だからって殺されなきゃいけないの!?」
「‥‥お前達は?」
部屋には白のクレリックらしき女達がホーリーフィールドを張っていた。戦意の欠片もない怯えた目。彼女達に守られるようにレモンドに似た娘が氷漬けの赤子の屍を抱えて意味もなくあやしていた。その匿われるが如き光景の意味を、彼らは後で知ることになる。
一方その頃、ジョーイが開けた扉から侵入したシアン達は敵と遭遇した際、襲い来るウィザードをなぎ倒し、プシュケの待つ部屋にたどり着いていた。スピードを重視したのが成功を結んだらしい。そこは部屋と言うより中庭だった。吹き抜けの天井の空に星が輝いている。虚ろなまなざしの‥‥女。
「来たわね」
以前発言したとおり、プシュケは全力で攻撃をくり出してきた。物音を聞いた配下達が駆けつけてくる。だが、配下はシーンのウォーターボムとフローラのライトニングトラップに阻まれる。その隙にシアンがプシュケの攻撃を引きつけ、ジョーイが地を駆けた。
「話を聞いてくれ! ケリを付けたかったなら悪いが、それを望まない奴が少なからずいる。俺達は仲間だ、これを見ろ!」
投げられた依頼書。プシュケに目を通す時間を与える。やがて、彼女は配下に攻撃を控えるように命じた。
「独断? 弟の依頼を受けたというの? 討伐者はいないの? 本当に?」
「そうです。今から脱出しましょう。まだ間に合います、討伐班が来る前に!」
「――だめよ」
シアンの訴えにプシュケが首を振った。シーンが叫ぶ。
「なんでや、このままだと本当に殺されてしまうで!?」
「お爺様の判断は考慮の上よ。私の死で家の名が守れるなら、それでかまわない。それに今全てを話した上で此処を出たら、今度は私の次に貴方達が口封じに殺されてしまうわ」
ぴたりと冒険者達の動きが止まる。何を言われたのか理解するのに時間を要した。
全て考慮の上。そして此処から逃げたら、冒険者達が殺されるという。
シアンが眉をひそめた。
「一体誰に?」
「キュラス。正確に言えば、初代BlackRozen末席『第十三の薔薇』。と言ってもこの事はバルデロの時に知ったんだけど‥‥ね。あいつが初代の仲間とは思わなかった、私が知っていたのはブラッディローズを持ち込んだアディナとマリスの二人だけだったから」
キュラスは仇討ちの青年ではなかったのか、貴方の昔の仲間ではなかったのか、教団を憎んでいたのではなかったのかと声が飛んだ。奇妙な答えが返される。
「報告書の欠点は、当事者以外は調べなければ対象の顔が分からない事なのよ」
プシュケが困ったように笑う。まんまとはめられたと言わんばかりだ。
「あいつが居ない今。知っている事、確実な範囲で話すわ。お願い、此処で奴らを待って。到着すれば仲間が知らせてくれるから‥‥今まさに鉢合わせした風を装って。此処に逃れた無実の信者達を守って。私は貴方達まで――死なせたくない」
守りたいのはエゴや家名だけではない。罪なき命と、冒険者達の命も含まれるのだと。
「‥‥何があったんですか」
些細なミスから討伐班が遅れている間に、言葉が紡いだ光無き闇。
彼らは悪魔が織りなす複雑に絡み合った策略の断片を知る事になる。
破壊班が城に到着したのはそれから数時間しての事だった。一旦別廊下に出て今まさに鉢合わせした風を装う。討伐班は救出班を見定めるやいなや、邪魔者は排除すると宣言した。だがしかし、そこで討伐班のウィザードが話を聞いて欲しいと進み出た。しばらく推論らしき話が辺りに響く。最後にウィザードは味方の、キュラスに疑問を投げた。
女ウィザードの言葉の後、キュラスは口元をつり上げ不敵に笑う。
「‥‥賢い方を相手に私はみくびり過ぎたかな? ならお遊戯はやめましょうか」
声は途切れ、目の前を何かが通り過ぎた。
プシュケの首筋から間欠泉の如く吹き上げる血潮。近くにいた者を含めて衝撃波が彼らを巻き添えにした。狙いはプシュケの首。もう少しずれていたら完全に首と胴を切り離していただろう。しかし危険な状態にかわりない。
絹を引き裂く悲鳴が上がる。
討伐班とキュラスが何やら話しているが、そんなことは耳に入っていなかった。
「何故、かし、ら私、わ――かはっ」
「しゃべったらあかんっ! どうしよう、どうしよう、血が、血がとまらへん」
ヒーリングポーションを飲ませようとしても無駄だった。食道や気道を犯した血が咳と共にあふれ出す。飲む事などできはしない。血はおかまいなしに地面を流れ濡らしてゆく。
「か、れ‥‥が、しあわ、‥‥れで、よ‥‥かっ」
「駄目です! あなたがいなくなれば悲しむ人がいます! 死んだら、本当に」
それで終わりになってしまう。
死んだらもう、相手は二度と答えてくれることはない。それが、死ぬと言うこと。
冒険者達は焦った。薬は効かない。傷を癒す魔法が使える者は居ない。必死に傷口を押さえるが無意味な事と分かっている。せめて意識だけでもと、シアンは声を張り上げた。
「安心してください。貴方は帰れる、私達が帰します、絶対です、信じて!」
一瞬驚いたような目をしたものの、プシュケは、軽く微笑んだ。唇が‥‥動く。だが、そこで動きは止まった。弱まる鼓動。蒼白の肌。指先から体温を失っていく体。やがて二度と言葉を語らぬ肉の塊になる前兆を見せた。
『ありがとう』
死神が近い事実に、救いに来た者達の目が恐怖に怯えた。シーンは呆然と呟く。
「嘘やろ? 嫌や、そんなの、そんなの嫌やぁ――――!」
『ごめんね』
「まだだ」
絶望に満ちた空気を吹き飛ばしたのはジョーイだった。
「ここで終わる運命だっていうなら、運命ごと盗み出してやる! あんたアイスコフィンで凍らせろ。もう俺達の手におえない。死期を遅らせて白のクレリックを呼んでくるんだ」
この城には、白のクレリックが何処かにいるはずなのだ。それも、並の冒険者よりも強力な。瀕死の者すら救える手があることを思い出す。一分一秒を争う。冷静さを取り戻したシーンがアイスコフィンを唱え出す。確実にするため精神を集中した。氷の棺に閉じこめれば時は止まり、強固さ故に手出しは出来ない。シアンが見張っていると言った。
他がクレリックを探しに散った時、キュラスは逃亡した所だった。一部の仲間がキュラスの後を追いかける。静かになった部屋の中で残った討伐班がくるりと振り向いた。
「彼女の殺害で本当にこの事件の決着を付けれるのでしょうか。お願いします。時間をいただけないでしょうか」
例えキュラスが何であろうと彼らの目的はプシュケの殺害。シアンがシルバーナイフを構えて無駄と思いつつ言い放った。すると、和服を纏った黒髪の娘が進み出る。
「聞けましたか」
「どういう意味です」
「十分時間はあったのでは? 真実を‥‥彼女が何を守りたかったか、聞けましたか」
シアンは頷いた。聞いたのは事実だ。相手方は「貴方まさかわざと」と声があったが「さぁ」と短い返答だけを黒髪の娘は返す。相手方が出遅れた結果は大きな意味を持った。ただし、それを狙ったのかどうかは知らない。しばらく話した後に皆、武器を納めた。
「では後々聞かせていただきましょう。裁定はそれからでも遅くない」
それから数時間して。
オイルとジャドウが白のクレリックを発見していたことから早々に連れてきた。
プシュケが一命を取り留めたのが不幸中の幸い。悲劇の連鎖は免れた。冒険者達がいなければ彼女は死に、事実は知らされなかった。ただし、蘇生させるには時間が経ちすぎていたのだろう。生命の鼓動を取り戻した後、彼女の意識が回復する事はなかった。
事実上は灰の教団は崩壊。破壊班はキュラスを取り逃がし、踊らされていた事実と現状の把握の為も含め両班は休戦。ギルドを経由し長引いているという偽りの届けを出す事で両依頼主への報告を延長。不気味なほど静かな沈黙の日々が続く。
数日後、数名がギルドを通じ匿名で呼び出されることになる―‥