集え! チャームな亡者ども!

■ショートシナリオ


担当:やよい雛徒

対応レベル:3〜7lv

難易度:やや難

成功報酬:2 G 46 C

参加人数:6人

サポート参加人数:3人

冒険期間:12月26日〜01月02日

リプレイ公開日:2005年01月05日

●オープニング

「いい男大会をやる!? この寒い季節に!? 正気ですかお父様」
「ノンノンノン。娘よ、女性も参加できるぞ」
「そう言う問題じゃありません」
 此処は皆様ご存じ山間にある『その道のプロ』の村。現在は観光地であるが、季節が季節なので銀世界まっただ中だ。人もまばらできやしない。ひっそりと暮らしていたというのに、ある日唐突に村長はチャーミングな人の決定戦をやると言い出した。なんというか、季節はずれも良いところだ。今、外の川で溺れたりしたら瀕死確実。あまり派手なことは出来ない。
「というより、ちょっと支援の奥様からのご要望でな。まあつきあえ、娘よ」
 ぴらっと見せたシフール便の羊皮紙一枚。娘さんは一度羊皮紙に目を通すと、しぶしぶだか了解を出した。
「で、どうなさるおつもりですか?」
「まずは舞台で自由にチャームをアピールしてもらう。その後、裏山へ走り、今まさに崖から谷底の川へ落ちんとしている吊されたピンチの姫君役を救い出す時の英雄っぽさを個別で点数化する! 総合得点で優勝者をきめるんだ! 英雄と言えば魅力的、魅力的な者は輝いてこそ英雄! 数多の苦難を乗り越えて王座を勝ち取るバトルロワイヤル! 救出対象は現在人気急上昇の『美少年を囲む会』の皆さんに協力してもらったぞ! どうだ娘よ!」
 とんでもない競技である。
 普段のフリー種目チャーミングアピールに加え、囚われの姫君演じる『美少年を囲む会』の美少年達を英雄っぽく救い出すのが今回の点数となるらしい。チャーミングアピールは勿論採点されるが、今回点数がでかいのは後者だ。
 前者競技は室内会場で行い、後者競技は審査員と観客を舞台の崖に先に移動させ、追って選手を走らせる。美少年は裏山入り口から約二キロ先の谷で、せり出た樹の太い枝に吊す予定であるという。三十メートル下は緩やかだが冷たい川。念のため『その道のプロ』の皆さんと救護班が周囲と谷下の洞窟で待機するらしい。万が一落ちてもすぐ其処へ流れ着くのだ。溺れても救出に向かえるというわけ。
 どっちみち冒険者の勇気と知恵が試されるステージらしい。
 今回特別に『妨害役』なる者もギルドで雇うという。苦難を乗り越えてたどり着く冒険者達。枝に吊す美少年は平均30kgクラスで体重の関係で安全を考慮し三人だけ。という事は救出対象は一人が一人ではなく選手よりも数が少ない。同士討ちオッケーという中でどれだけ先にたどり着き、救い出すより何より、誰よりもチャーミングな英雄を振る舞えるかが勝敗の鍵を握る。
 娘さんはあきれ果てた。
「なんで救出するのが女性じゃなくて『美少年を囲む会』の皆様なんですか」
「そりゃ創造豊かな奥様達とゲストが喜びそうだからに決まってるだろう」
 チャームを競う大会は、どこまでも常識と離れていた。

 † † †

 時は少々遡る。
「ついにのまれた、な」
 深いため息が聞こえる。キャメロット在住の自称恋する乙女、巷では『ヴァーナさん』という愛称で親しまれるカマ疑惑を持つ愉快犯爺こと現エレネシア家当主のヴァルナルド・エレネシアは、妻のセイラ夫人と共にティータイムを楽しんでいる、かのようにみえた。表情が重い。実はこの家、最近孫達が面倒な事件に巻き込まれ、色々散々な目にあったばかりであった。
「仕方がありませんでしょう。彼処は、必ず『自分達が助けの手を差し伸べる』という状態に持ち込んでくるのですもの。あちらの差し金でしょうが、証拠も何もありません。孫達には、特にプシュケには可哀想な事になってしまった」
「‥‥うむぅ」
 セイラ夫人の抑揚の無い言葉に、ヴァルナルドは小さく唸ってティーカップを覗き込む。彼には社会から、周囲から、家を守る義務があった。おいそれと捨てられるような物ではない。それが貴族として生まれた者の性である。私情は切り離さねばならぬもの。
 夫人は渋面を作る夫の肩を軽く揺する。
「思いつめないでくださいな。貴方は力を尽くした。結果は良いとは言えませんが、孫を手にかけずとも済んだのですよ。此も全て、冒険者達と貴方のおかげ。もう充分です」
「儂は結局‥‥家族一人守ってやれん」
 とある事件に巻き込まれて以来奔走し続けた老夫婦。プライベートな時間でふと見せる素顔。落ち込んでしまい一向に回復の兆しを見せない夫を思い、夫人は知り合いに手紙を出した。夫の好むような気晴らしになるような事をしてほしい。それを受け取ったのが『その道のプロ』の村に住んでいる村長だった。


 というわけで、結局コンテスト開幕。やっぱり奇特なファンは見に来るもんである。
 厳しい悪条件の中で勝ち抜くのは果たして誰か!?
 チャームに魅入られし亡者達よ、好敵手を突き落として勝利を掴むのだ!

●今回の参加者

 ea0286 ヒースクリフ・ムーア(35歳・♂・パラディン・ジャイアント・イギリス王国)
 ea0850 双海 涼(28歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea2856 ジョーイ・ジョルディーノ(34歳・♂・レンジャー・人間・神聖ローマ帝国)
 ea3519 レーヴェ・フェァリーレン(30歳・♂・ナイト・人間・フランク王国)
 ea5430 ヒックス・シアラー(31歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea5898 アルテス・リアレイ(17歳・♂・神聖騎士・エルフ・イギリス王国)

●サポート参加者

リッカ・セントラルドール(ea0136)/ レイヴァント・シロウ(ea2207)/ アンドリュー・カールセン(ea5936

●リプレイ本文

 とあるジャパン人がこう詠んだ。
『ああチャーム、冬すら酔わす、コンテスト』

「やって参りましたチャーム大会! 皆さん準備はおっけーかー!?」
 司会が声を張り上げる。寒いなか皆さんはスタートラインに立って闘志を燃やしていた。尚、色々衝撃的展開が予想されるため十二歳以下の良い子の皆さんはご覧にならないことをおすすめする。さて。
 今回のチャーム大会第一部の光景を簡単に記しておこう。
 第一番手ヒースクリフ・ムーア(ea0286)は妖しげ且つ美しい(?)微笑で騎士らしく魅せるとコメント。自由競技で礼服を纏い騎士らしく剣を佩いてマントを羽織り、舞台で優雅に恭しく一礼。「キャメロットの騎士、ヒースクリフと申します」と挨拶し、スマッシュを含めた剣技披露。風になびく自慢の白髪、振り返る様に若い娘さん達ノックアウト。
 二番手は紅一点、歴代チャーム大会で驚異の評価と記録を叩き出す『狂気的な夢見る乙女』こと双海涼(ea0850)だ。今回、あの容赦ない娘がこんなに淑やかに!(酷)という評価を狙い、白地に桜の振袖を来て甲斐甲斐しく怪我人の手当について披露。乙女の胸の内を知らない男達の一部は、ああ、これが本来の彼女なのかと求婚を迫った。‥‥合掌。
 三番手はチャーム大会で女性をさらったりしていた泥棒ジョーイ・ジョルディーノ(ea2856)。突如舞台放棄して会場席に乱入し「よう爺さん。元気か?」とヴァーナさん(仮名)に声をかけ、夫人に出れない知人からと花籠を手渡す。観客にはよくわからんアピールだが、去り際に一枚の予告状らしきものを置いた。
『お望みならいつでも、頂きにあがります。あなた達の、その運命ごと J.J.』
 ‥‥‥‥。曲解なのかもしれないが、カマ疑惑爺を攫うのもどーかと思う人、多数。
 四番手は妹の策略によって出場と相成ったレーヴェ・フェァリーレン(ea3519)は『ジェントル仮面』と名乗った。礼服の上にマントを羽織り、素顔は仮面で隠すという『私100%妖しいです』っぷりを魅せつける。「英雄に必要なものは功績と後世に伝えられるミステリアス」というのが持論らしい。ガディスシールドを構え、右手を頭上に掲げて、彼は『何のためらいもなく』叫んだ。
「光よ!」
 物語の英雄に酔った若者を思い浮かべて欲しい。オーラソードによる剣舞を披露し、ラストにオーラショットを頭上に放って剣を空に返したように魅せる。‥‥が、室内会場であるため天井に穴が空く。彼は『天井を貫く男』と囁かれた。
 五番手は歴代王者ヒックス・シアラー(ea5430)である。彼は何故か「ちょっとだけよ」と声音を変えて言い放つと、リズムを取りながらストリップを始めた! 思わずお子さまの目を押さえるご婦人と、婦人の目を押さえる若者とが急増。裸になるかと思いきや、以前のようにボディペイントマンとなって剣舞を披露した! 終わって投げキスを飛ばす。
「娘さん! 確かにあなたの願い叶えました」
「何故じゃー!」
 爽やかに笑うヒックスに鍋の蓋が飛んできた。
 五番手は女装が癖になりつつあるアルテス・リアレイ(ea5898)登場。女装で現れたかと思うと、ヒックス同様脱ぎだした! 露わになる白磁の肌に男達の目は釘・付・け。とか言ってる場合じゃない、慌てて体を張った娘さんを止めようとした男達に。
「ぼ、僕‥‥男なんです」
 顔を羞恥に染め、消え入りそうな声で呟く。初々しい様子に何故か止めに来た皆さんがもらい照れ。剣舞が多いのはともかく、脱ぎワザに出た人間が何故多いのかはさておいて。
 各点数は判定が出たが字数が足りないので割愛。以上第一部回想終了。
「れでぃ、ごーっ!」
 壮絶なバトルロワイヤルの第二部が始まった。ゴールには『美少年を囲む会』代表姫役と観客、二丁目出張ママの皆さんが待っている!
 振り袖脱ぎ捨てた涼が「あぁ!」と貧血の振りをして足を引っかけようとするも、男性の皆さん関心ゼロ! 互いに獣の目で崖を目指す!
 レーヴェは馬でかっ飛ばす予定だったが数多の仕掛けが施された山道。攻撃に驚いたレーヴェの馬はあっけなく逆走を開始、最下位に落ちた。が、オーラショットを放つ準備をしている。たちが悪い。
 第二部では早さと身軽さと適切さが求められる!
 つーかみんな荷物持ちすぎだ! しかも手加減してない!
「絶対に助けてやる! 誰も見捨てない! それが俺の答えだ! あばよ! とっつぁ〜ん!」
 素晴らしき回避力で落とし穴と罠を回避するジョーイ。続いたヒースクリフが穴に落ちる。
「ぐがっ! この寒空の下、吊るされている姫君達‥‥さぞや心細い事だろう。一刻も早く助け出してあげないと! なんのこれしき、むぅん!」
 はまった穴から『ずぼっ』と這い上がる。ジャイアントに人並みの穴は無意味だ。
「そんなこと言ってられるのも今のうち! リッカちゃん! やっちゃってください! ‥‥殺さない程度に」
 涼の不穏な言葉にハーイと娘が現れ、ファイヤーボムで『妨害者』を攻撃する。せっせと無差別妨害に勤しんでいたアンドリューと、ヒックスを援護していたレイヴァントが丸焦げになった。ハハハ出番はどうした、とかいう声が聞こえたが気にしてられない。
「うわぁぁ、大丈夫ですか皆さん!? 後で、後で迎えに来ますから!」
 唯一、普通にやってきたアルテスだけ心配そうに声を上げた。どうやらチャーム大会出場者に珍しく良心を残したお人好し系の人がいたらしい。なんていい人なんだろう。ここでレーヴェがアルテスを追い抜く。一方。
「あぁ僕の刺客が! くっ、美少年は俺のものだ。誰にも渡さん!」
 それは悪役の台詞です、ヒックス君。というか誤解を受ける発言を(涙ほろり)。
「そ、そこの殿方、助けてください、胸が苦しいのです」
「罠如きに遅れを取るとは不覚! どけ、私が先だ!」
 自称『ジェントル仮面』ことレーヴェは、突如現れたうさんくさい病の女性を無視して突っ走る。が、「何苦しそうに倒れてる美少女無視すんねん!」と雪玉を去りゆく男にぶつけた。酒場『二丁目』の刺客だった。レーヴェがヒックスにオーラショットをぶちあて(酷)て順位を繰り上げ、さらに前方を走る涼とヒースクリフを狙う。ジョーイは格好いい台詞で決めながら救い出している真っ最中だ。ところが後15mという時ヒックスが。
「く、他人に渡すくらいなら僕の手で!」
 遠慮なくソニックブームを放った。
 王者ヒックス、その名も『結果を選ばぬ男』、とか言ってる場合ではない。過去にない事態に驚愕の声が挙がる。此処でヒックスは体力が尽きて倒れた。一人の縄が切れ、幹に傷がつく。レーヴェが飛びかかって落下する美少年を抱き留め、ナイフを崖に突き刺して速度を落とした。
「大丈夫ですよ! もう少しで助かりますからね!」
 木に繋ぐのは危険と判断した涼がヒースクリフと自分をロープで繋ぎ、クライミングで崖を降りる。涼が美少年を抱きとめると、レーヴェは「さらば」と不敵に微笑む。
 刹那、ナイフが折れて川に落下。‥‥タイミングが良すぎる。レーヴェはこのまま会場から脱走を計った。
 一方地上では涼と共に巨木までヒースクリフが支えており「私が支えている内に、早く!」と、ジョーイとアルテスに残り二人の救出を促した。這い上がった涼が綱を切る。
「ジョーイさん、僕の方へ姫役を!」
「おうアルテス、って、おい! ヒースクリィィフ!」
 そしてやっぱりというか一番の見せ場をかっさらったのはレーヴェだけでなく。巨木と涼を支えた彼も同じ。姫役美少年を優しげな眼差しで見つめ、ふらりと巨体が宙に舞う。
「forget me not」
「騎士様ぁーっっ!」
 一番、ヒースクリフ。銀盤を駆け抜け巨木を支え力つき美しく散る(解説:川に転落)。

 そうして救出劇は終わりを告げた。長い道を走り抜け罠にかかり、皆さんかなり酷い怪我を負っていたので手当が必要だった。三位は涼とジョーイで接戦だったが、ジョーイに軍配が上がる。一位のレーヴェが消えた(逃げた)ことにより二位のヒースクリフは賞金5Gと『銀盤に散った騎士』の名を冠し、幸運の女神役として招かれた皆さんに。
「ちょ、ま、まってくれ。そんな話は聞いてないぞ。私にそんな気は」
 そう、傷は治したものの風邪の手当てでベットに縛り付けられたヒースクリフに『二丁目』のママ(男)の皆さんは。
「‥‥まぁ‥‥内々で決まった‥‥からな」
「顔は他に担当が居るから、俺は手の甲にしてやろう、くっくっく」
「俺の濃厚なキッスをプレゼンツ」
「わしらも覚悟を決めたんじゃ‥‥逃がさぬよ?」
 女神の微笑いこーる悪魔の邪笑。無数の蛇に睨まれたでっかい負傷した蛙は。
「いっ、う゛ぁ――――――――――――っっ!!!!」
 響く野太い絶叫。本来の優勝者への恨み声もむなしく。『祝・福・の・キ・ス』の洗礼を受けたのだった。
「連続王者になれなかったのは悔しいが、うぅ複雑」
「‥‥いいなぁ。侍らして」
「俺は前に爺の洗礼をうけたからなぁ。まだましだろ、‥‥多分」
「あのー、妨害役の皆さん忘れてませんか」
 忘れられた妨害役を救出していたアルテスが帰ってきた。その後選手達は二丁目で打ち上げをしたらしい。誕生日が近い者もいたというから盛大に騒いだのだろう。川に落ちたまま逃走したレーヴェはその道のプロの皆さんからも逃げ、薬も持たなかった為、かなり体はやばかったらしい。まぁ、冬の大自然は素晴らしいって事で。
 んーと、とりあえずお疲れさま?