●リプレイ本文
男達は前を見る。広がる砂の沼は静まりかえっていた。此処は聖なる戦場。
『レディスあんどジェーントルメン! 男達の血と汗と涙の聖戦、今此処に開催いたします! 司会が急病の為、代理として私、二丁目のヒナト・モアイが司会いたしまーすっ!』
フラングブルームに跨った黒衣黒髪黒目の司会から離れた場所に、司会服の簀巻き男がいるが見てはいけない。まず種目に入る前に恒例のチャームアピールが。
『黒きGよ! 俺は永遠にお前を追う男! ツウィクセル・ランドクリフ(ea0412)!』
わざわざ馬に跨ったツウィクセルは止めた馬上で射手をアピールした。辛き戦いから磨き抜かれた弓の腕、鋭い矢が狙うその先に! なんとスタッフの黒い人が放ったBIG『G』の華麗な姿が!
「俺は、お前の事を忘れたことは一度もない。俺の美顔に迫った恨みを今此処でっ!」
くわっ、と見開かれた双眸。雄叫びとともに矢がGを狙う! しかしGはあざ笑うように飛び去り、矢は砂沼の上で――燃えた。燃え上がった。早くも壮絶なトラップ発覚!
『続きまして華麗なるかな女装王にして我が二丁目正真正銘のママを冠する、シスイ・レイヤード(ea1314)!』
ローブ姿のシスイは動かない。演目無しで行くようだ。
『好きな人はいるけれど、背中で語れ武士魂! ジャパン出身の伊達和正(ea2388)!』
自分の家の紋章入りの裃つきの着物に袴、腰には日本刀を差した侍の正装で仁王立ちの和正は華麗に鷹を肩に乗せ、ぎっと目の前を睨む。
「伊達家家訓、愛こそすべて、惚れた女に命をかけろ、愛する女の正義が我が正義ィィ!」
『おぉっと武士和正! 他参加者の紹介待たずして走り出したぁ! 反則! 反則だぁ! しかもトラップに引っかかって盛大に燃えてるぞぉぉぉ!』
ツウィクセルと同じ罠が和正の前にもあったらしい。潜んでいた黒い人が和正を回収する。
『義妹はこの村の伝説の脅威! 二丁目のゆかりママこと葉隠紫辰(ea2438)!』
「どんな紹介してるんだ似非司会! 気を取り直して葉隠、古の剣舞を披露する」
ほーほほほ、という高笑いとともにブーイング発生。渋く決めるはずが出だしでこけるも、投げた林檎を適度な大きさに切り裂く。おぉっと湧く観客席。
『続いて女性達の(妄想の)憧れ三十路間近のアラン・ハリファックス(ea4295)! 薔薇の君との関係疑惑他、なんと結婚している情報が。実は両方いけるのか!?』
アランの眉間に青筋が一瞬浮上。しかしすぐに演目のため表情を入れ替える。
「Sweet、baby!」
といきなり鞘から抜剣。逆手持ち2刀流で剣舞を披露する! 連斬を強調したその動き、肉体も魅せるアランは最後に頭上高く剣を投げ、考査させた両腕で見事キャッチ!
「‥‥チャーム専門剣舞士とでも名乗ってみるか?」
『続きましてフェザー・フォーリング(ea6900)とレイニー・フォーリング(ea6902)兄弟! 女装しての登場だ、んん?』
女装したフェザーとレイニーは明るい笑顔で挨拶したかと思いきや、なんとブレスセンサーで砂地に隠れている仕掛け人を察知! 攻撃しながらさらにライトニングトラップを張りまくった! ‥‥案は良いのだが、これは同時に仲間への牽制。酷い。
『我が二丁目で悟りを開いた男、ヴァイン・ケイオード(ea7804)ォォォォげふぁ!』
黒衣の司会ヒナト・モアイ、スリングにて撃ち落とされる。‥‥そのまま炎上。
「悪い、今のはわざとだ、気をつけろ」
ものっ凄い爽やかな笑顔のヴァイン。本来は横っ面掠める程度に素早く射撃したのだが、当たり所が悪かった。黒き司会、まる焦げになりつつ放り出された箒に跨って医務室へ。
「おぃ! 俺の紹介まだだろう! たくエリック・シアラー(eb1715)、狙いは外さない」
ハプニング発生により司会に忘れ去られたエリックは、自ら名乗りを上げるとシスイの協力の下、頭上に置いた林檎を射抜いた。以上にてチャームアピール終了。
『復活しました、私村の司会! 皆さんお荷物の準備は宜しいでしょうか? ではGO!』
荷物を持つ者、持たぬ者。様々だが、思い思いの格好で身を固めた者達は砂地へ挑む!
フェザーもレイニーもシフールなのであっさり森の試練へ。
シフールに続き一番早い人、手当から戻った和正。その熱き執念、否オーラパワーを全身に発動させつつ、根性の限りに突っ走る。勿論罠に引っかかって一発で中傷に陥るがお構いなしだ。しかもその後ろをエリックが走る! 利用されてるぞ和正!
ずぶずぶとゆっくり沈む砂の沼!
シスイは板に乗ってこぎ、葉隠は自前のかんじきを装備して対策! チャームを知る者チャームを制す! それはさておきツウィクセルは自前の矢を倒しながら進んでいるので安全だが非常に地味だ! ヴァインは同じ方法でヒナトを撃ち落とした石を使う。
唯一体力の限界に挑戦する和正とアラン! 明日はどっちだ!? と、そこへ。
「「ぎゃぁぁぁああああああぁぁぁぁ!」」
尾を引く波のある叫び声とともに先に向かったはずのフェザーとレイニーが飛ばされてきた。二人はそのまま砂沼に突入。二人仲良くライトニングトラップの洗礼を浴びる。
『おぉっと何故か戻ってきたフォーリング兄弟、自らが張った罠に自滅したぁ!』
たった二十メートルの砂沼だが、侮れない。どうやら罠に押し戻された模様。
「あー‥‥、森は‥‥危険そうだな。スクロール‥‥使うか」
シスイの暢気な発言。無事渡りきった和正とアランだが、共に重傷一歩手前。誰だ、こんな罠を仕掛けた奴は。そんな剣呑な眼差しでリカバーポーションを飲み干し、森へ突入。エリックだけ非常に元気だ。のんびり砂地を渡っていた者達も次々森へ入って行く。
レッツゴー、第二ラウンド。
その時、現地の状態は。
「なんだこの網の多さはーっ!」
うっかり罠に引っかかっては切り裂いて戻るアラン。物凄い地道な作業だ。和正はエリックに報復とばかりに鷹をけしかけたりしていたが休憩所らしき場所の『お飲物をご自由にどうぞ』にて痺れ薬を引く。しびれて動けない。
「森は忍者の領域だ、俺は先に失礼するぞ」
忍者に相応しく木々の上を突き進む葉隠。そうすると時折発見する『その道のプロ』の皆さんがいたりする。忍者の心得、やられる前にやれ。かどうかは知らないが、襲い来るナイフをたたき落としながら進むので地面の人間は心臓が止まる!
「さて、俺は此処にロープを持っている。どのように使うかというと、こうだ!」
地道に進んでいたエリックの足に、地面から伸びたロープがからみつく。何とそのままエリックは誰かが落ちた穴に引きずり下ろされた! 待っていたのはヴァイン!
「キミは何をやってるんだぁぁー!」
「しなばもろともだアアァァァァァ!」
うねうねうねうね。
そこは『青虫』が隙間無く敷き詰められた落とし穴。この『世にも気色悪い』光景に耐えられなかったヴァインは近くにいた者を道連れに。男達の悲鳴が聞こえる。
「ふ、ふはははは、お望み通り攫ってくれるわーっ!」
奇声を上げたツウィクセルは、その華麗なる回避技術によって降り注ぐ槍と襲い来る仕掛け人を返り討ちにしながら突き進む。ツウィクセルは一気にトップへ躍り出た。しかし!
「木はいいとして。トラップ、邪魔だな」
最下位にいたシスイがプラントコントロールで道を造っていた。しかし、面倒になった彼は突如ストームで罠を薙ぎ払う! 穴にいた者は無事だったが、樹の上にいた者含め多くの者が樹木へしがみつく。出口付近にいた者は強制的に森の外へ追い出されたのでラッキーだが、シスイは続いて竜巻を巻き起こした。ピンポイントで命中するヴァイン達の落とし穴。さらに空を飛ぶことで風から一時的に逃れたシフール兄弟も巻き込まれる!
青虫が華麗に乱舞する、見るからに青い竜巻に巻き込まれた四人の皆様は。
「「「「ギヤアアァァァァァっっっ!」」」」
響く絶叫。それは森林破壊だシスイ・レイヤード!
『続報です! えー? どうやら今年は森での昆虫採集他、蝶の観察は出来なくなった模様です。詳しくはご婦人の皆様が気絶する恐れがありますので割愛させていただきまして、現在順位は‥‥おぉっとGを追う男ツウィクセル! トップです! 続くは葉隠! アラン! シスイ! 伊達! 順位が一気に変化しました! ヴァイン、エリックの順です。最下位のフォーリング兄弟、飛んでいるのが仇となったか、二次災害か!?』
そして池の戦いは。
「うわーい、生臭いぞこの池! これならG相手に戦う方が‥‥うぅ」
まず池の石に飛び乗ったツウィクセルだったが、浮き石は真っ赤な偽物。そのままどぶんと池に落下。借り物の冒険者学校女子制服一式は水浸しだ! どことなーく色香を感じるのはさておいて。嘆きのツウィクセルを尻目に、衣服を濡らすまいと黒羽織に袴の一張羅を折り畳んで日本刀とともに頭に括りつけた葉隠は、すっぽんぽんで泳ぎ出す!
「服は水を吸うからな、こういう場所はさっさと泳いだ方がいい、うん」
特殊な筋の奥様が喜びそうな光景だが、頭が重くないのだろうか? 同じようにアランと和正も川を渡り始める。そこへ現れたシスイは、なんと荷物の中からフライングブルームをとりだした!
「あれ?」
中央にさしかかったツウィクセルと箒に乗ったシスイだが、何と本物の石が空に浮かびだした。背筋に冷たいものが流れるアラン達。その嫌な予想に違うことなく巨石は池に降り注ぐ! 遅れて現れたエリックとヴァイン、フォーリング兄弟は驚愕の池を見つめた。
「どうなっているんだこの池。池に浮いてる軽い石みたいだが」
「それにつきましては」
エリックの前に、ずぼっと池の仕掛け人が現れた!
「我々が保証致します優秀なクレリックをお招きしております。以前ワニに噛まれた男の股間を治し、濁流に流された騎士すら救った腕前は皆様の生命を保証いたします。腕がちぎれても元通り。さ、安心して突き進んでください」
「そんな嫌な説明はいらーんっ! これも年貢の納め時、俺は逝く!」
覚悟を決めたヴァインは飛び込んだ。エリックも飛び込んだ。フォーリング兄弟も水面すれすれを飛ぶことを決意した。上に上がれば上がるほど、池は危険だ。
此処からは壮絶故に個別に報告する。台にはとあるお嬢さんの温情により真新しい衣服がセットされているため、着替えることも可能! シスイが岩に翻弄された為、なんとか一位に上がったツウィクセル! 愛の言葉はこうだ!
「美しき御仁よ、貴方に私は不釣合い‥故に普通の手段では、私は貴方を手に入れる事は出来ないだろう。だから、今から貴方を攫おうと思う」
ツウィクセルは走った! そして美少女とともに栄光の第壱位!
「運命の導きにより、今ここで縁がありで会えた事に感謝しよう。ありきたりの言葉は聞き飽きているだろうから、美しき女神達!? 我等に救いの手を‥‥」
二番手シスイ。ローブを脱ぎ捨て走る! 目指すは自分よりも背が高い者! 手に入れた‥‥白ドレスに美しき装飾品、プラチナブロンドの付け毛を付けたキャメロット名物葉っぱ男! なんとドレススカート前半分が無く、股間にハズレと書いてある。
「いやーん、男の人にだっこされたぁ〜! って、あれ? シスイさんか、意外〜」
「やっぱりレイジュさん。いや‥‥もう一人背が高いのはいたんだが、もてないから」
最強プリンセスを争った経験のあるこの二人。外れに関わらず和やかにゴールイン。
続いて岸に上がった葉隠だが、着替えを必要としたため時間ロス! この隙にと岸へ上がろうとしたアランに、魂熱き和正がオーラショットをぶちあてる! アランを昏倒!
和正よ! 武士道は何処へ消えた!? 葉隠の着替えはまだ終わらない。
「一目会った時からあなたにときめきました、あなたが愛しい、あなたを他の男に渡したくないっ! 俺はあなたを奪うっ」
和正が走った。そこへシフールのフェザーとレイニー到着! しかし二人とも何故か愛の言葉を囁く事無く飛ぶ。観察員がルール違反として戻って愛の言葉を囁くよう注意をしようとしたが、執念の男伊達和正の手により、オーラショットで撃墜。和正はその執念を発揮し、白ドレスを着た金髪で胸の大きい、自分よりちょっと背の高い美女を手に入れた。
略奪愛万歳。
度重なる罠で重傷を負ったフォーリング兄弟は救出された。彼らのために用意されたシフールの女性と女装が撤退。残るは四人! ようやく着替えを終えた葉隠が囁く!
「君の全てを俺にくれ。二人で、生きよう‥‥これからも、ずっと」
葉隠が目指すは、ぬばたまの艶やかな黒髪、初雪の穢れない白の肌に、なよやかなプロポーション! 和心溢れる真紅の彼岸が描かれた京染めの黒振袖の彼女をかっさらう!
ここへ出遅れたヴァインとエリック到着、アランも目覚める! 三つどもえの戦いだ!
「ユキナ、俺はお前を愛している。お前がいなければ俺はきっと」
と遠い彼女へ思いをはせてるアラン。悦に入ったあたりに幸せがあるが『今』は危険だ。
「あんたを迎えに来た。さぁ行くぞ何も言わずについて来い」とエリック。
「お前に決めた! 暫くの間になるが付き合ってくれ!」とヴァイン。
二人は走る。強烈な存在感を示す桃色ドレスを引かぬ為、理想の女性を引くために!
アラン・ハリファックス、幸せ中毒で出遅れ、足の速さで二人に劣る。結果。
「「いアァァァアァァァァ!」」
ヴァインを除く二名の悲しい叫び声が聞こえた。
大まかに最終結果発表をしておこう。
ツウィクセルは見事美少女を引き当てたが、女装の男に当たると思っていたのだろうか。濡れ鼠の女装で相手をかっさらったため、相手の女性になじられる。
シスイは知り合いを引いたため、二人で女装を磨きに向かった。
和正はなにやら相手の女性といい雰囲気で宿の一室に消えている。
葉隠は相手の女性共々相手がいたため、追いかけ回されつつ互いに相談所になったやら。
フェザーとレイニーは手当班に回収された。競技の条件の一つである愛の言葉は忘れていたようでオーラショットを受けなかったとしても退場となっていただろう。
エリックは残る女性から己の感で引き当てた相手が男性であった。抱きしめ締め上げられたという話だ。
ヴァインは相手の女性と二丁目話で盛り上がり、仲よさげに酒を飲んでいたらしい。
アランは‥‥なんというかもう言葉もない。一層深まった男色疑惑が今後どうなるのか楽しみと言えば楽しみだ。野次馬根性で。
激しい祭もこうして終わりを告げた。美味しい思いをする者あり、廃人と化す者あり。
攫った相手の正体とゴール直前に何が起こったか、またその後は、別紙にてご覧あれ。
今回はこれにてめでたし、めでたし。