集え!チャームな彼氏彼女!―狂気的女神―

■ショートシナリオ


担当:やよい雛徒

対応レベル:フリーlv

難易度:やや難

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:7人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月09日〜07月14日

リプレイ公開日:2005年07月14日

●オープニング

 さて此処はキャメロットから離れたご存じ『その道のプロ』の村。
 現在観光施設と化している村では、年がら年中、染みついたイギリスの魅惑人達のイメージにより途絶えることなく観光客がやってくる。良いのか悪いのかなんとも素敵且つ微妙なところだ。
「時は来た。待ちに待った、この時が」
 季節は夏。霧の都と呼ばれる国でも温かくなるものだ。そうなるとこの村は常識から外れた過激さを増して活性化する。無駄と言わしめる、その為だけに作られる舞台達。それは使用後モニュメントとして飾られ、人々に悲喜こもごもの感情と伝説と感動をあたえていくというが、事実かどうか定かではない。
「お父様、これはいったいなんですの?」
「ふふふ、まず男を一列に並べる台があるだろう? 此処は普段と同じでパフォーマンスだが、次は違うぞ! 次に続くのが砂の地獄だ。一歩進む事にずぶずぶ埋まる底なしの砂沼! というのは危険なので、大体深さ1メートル。一度はまるとなかなか抜けだせんぞ。むっふっふ。さらに森林がある。トラップ仕掛け放題だ。さらに巨大な池があり、泳ごうが飛ぼうがかまわんが、渡りきって再び台がある。そこで女性に捧げる愛の言葉を語るか叫ぶ。百メートル先には後ろ向きの仮面を付け思い思いに着飾った美女達! 男達は競って誰かを姫抱きにゴールへ駆け抜けるのだ! ゴールの末に美女達からキスが送られたら男の夢だと思わないか?」
 ‥‥娘さんは書類を眺めはたりと我に返った。

「ねぇお父様。この、『トラップ考案者=出場女性』って何?」

「みたまんまだ。中にはカップルで参加する者もいるかもしれんからな、待つだけではつまらんだろう? 男の愛を試すのだ。勿論男達は襲い来る罠が女性達考案だとは知らない」
 ‥‥娘さんは書類を片手に父を見やる。

「ねぇお父様。それ『きちんと女性をゴールにつれてった』場合に限られるんじゃないの?」

「無論だ。尚、立っているときは女装が原則、なだけで男性禁止になんぞしとらんからな。色々楽しめそうだろう?」
 愛の言葉を叫んで別人だったら修羅場だ。
 愛の言葉を叫んで男だったら風化するに違いない。
 しかしこの村長、全くそれらを男性には伝えないつもりだ。しかも女性達は普通に『素敵な男性に攫われたい方募集』とか、これみよがしに張り付けたあげく、裏ではとんでも無い張り紙も密かに流出していた。しかも男性参加者の目には絶対触れないようにと細心の注意が払われる。
 そして‥‥女性専用の張り紙には次のような売り文句が見られた。


 女達よ! 美男にかっさわれたくはないか!?
 女達よ! 彼氏に誰よりも美しく飾った自分を披露したくないか!?
 女達よ! 苦悩の先から現れる男達に感動とトキメキをもらいたくはないか!?
 男達よ! 意気込む敵に復讐をしてみないか!

 いざ集え女達よ! 男達の愛を試すときだ!

●今回の参加者

 ea0448 レイジュ・カザミ(29歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea0734 狂闇 沙耶(28歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea3747 リスフィア・マーセナル(31歳・♀・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea7511 マルト・ミシェ(62歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 eb2200 トリスティア・リム・ライオネス(23歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 eb2638 シャー・クレー(40歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 eb2681 ロドニー・ロードレック(34歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)

●リプレイ本文

 こちら仕掛け人の女性達(と女装達)であるが、皆思い思いの衣装を手に騒いでいた。そうこう賑やかにしている内に、男性達への試練たる罠の設置した者達が戻ってきた。
「おお、お疲れさまじゃのう。それはいいとして皆さん何を仕掛けたんじゃ」
 マルト・ミシェ(ea7511)が非常にボロボロになっているスタッフの皆さんを眺め、嫌な予感に冷や汗一つ。自分は参加者が近づいてきたらスタッフとともに石で攻撃する身なので特に準備はしていない。スタッフと一緒に森へ罠を仕掛けに逝っていたレイジュ・カザミ(ea0448)も戻ってきており、にぃーという笑顔が怖い。
「ふっふっふ、森には青虫詰めの落とし穴つくってきたんだ。幸福な男達へのささやかないやがらせ、僕って優しいんだ」
 何がどう優しいのか知らないが、カップル撲滅に熱意を燃やすレイジュ、嫌がらせのためなら‥‥否、男達に与える試練の為なら例え嫌いな虫でも触ってみせる!
「わしは森に網を仕掛けるよう頼んでおいたんじゃ。誰がつかまるのか見物じゃのう」
 現場で見れないのが口惜しいな、と着物を手にした狂闇沙耶(ea0734)が会場方向を眺めた。数々の罠が張り巡らされた会場をくぐり抜け最後に笑うのは誰なのか。そして彼女らの中で一番に攫い出されるのは誰か、一応ちょっとした競争となっている。
「ふふん、詰めが甘いわね! 私はファイヤートラップを仕掛けるよう命令してきたわ! 砂地は一歩踏み出せば燃え上がる。ナイスアイディアよね!?」
 非情な麗人トリスティア・リム・ライオネス(eb2200)。今回の攫われる女性で当たり組に属する彼女だが、実際提案したトラップと言い、非常に容赦がない。
「ふふふ、面白そうじゃない! あ、あんた気持ち悪いからこっち来ないでね」
「お、お嬢ひどいじゃん! お嬢、恨むじゃん‥‥もう、俺大切なもの失った気分だぜ」
 トリスティアがしっしっと手を払ったのは、彼女に強制的に引っ張ってこられたシャー・クレー(eb2638)である。190cmの巨体とがっちりした筋肉質の四肢は、彼を引いた者を奈落の底まで突き落とす衝撃であろう。ちなみに彼はフリフリの桃色ドレスを手にしている、着る気だろうか。トリスティアとシャーの漫才を遠目から眺めるロドニー・ロードレック(eb2681)は、トリス様は今日も美しい、といわゆるトリスティア親衛隊であった。
「うーん、参加者のボロボロになった姿が目に浮かぶのう。みんな非情じゃな」
「わ、私は試練なんか設置してませんよ? 可哀想なので台の所に衣装を置いて貰ったんです。着替えるも良し、ってことで」
 リスフィア・マーセナル(ea3747)、女性陣唯一の良心。彼女こそ栄光の女神か!?
 と此処で女性陣の衣装チェーック。
 レイジュは気合いが入っていた。かつて最強プリンセスを争ったときのようにむだ毛をしっかり剃り上げ、玉のような肌を演出! 純白のドレスを身に纏い、プラチナブロンドのロングヘアー付け毛で大変身。ピアスを羽根、マスカレードで優雅な淑女を演出! しかし周囲は唖然と彼を見る。
「レイジュさん」
「なにー? 僕完璧だよね?」
「いや、何故スカート前半分ないの? むしろ股間の葉っぱは一体?」
 レイジュの奇抜なドレスの下に隠された股間に葉っぱ! キャメロット名物葉っぱ男の神髄である。本人曰くやはり楽しんだ者勝ちという。きゃーと目を覆ううら若き乙女。
「あはははは、まだはじまらぬかのぅ」
 沙耶は真紅の彼岸が書かれた京染めの黒振袖を纏い、市女笠を被っていた。楚々とした佇まいは和の心を持ち合わせ、淑やかな美女を演出する! しかし手にした日本酒・どぶろくで、すでにできあがっていた。
 リスフィアは踊り子衣装の上から白いドレスを纏っている。あっという間に脱げる仕組みを施したドレスで何をする気かというと、自分を攫った相手と部屋に篭もってお楽しみ会という。男性ならばもやもやと何かを想像せずにはいられない。
 自分はハズレのつもりで参加したというマルトは、どちらかというと当たりに入っていることに気づいていない。いやぁ、男性が多い。それはさておき年齢を隠すための白いロングドレスで首筋と手をカバー! 纏めている髪を下ろすと素敵な貴婦人を彷彿とさせた。後ろ姿では既に誰か分からない。素敵なおばあちゃま、といったところか。
「ふふふ、一番に攫われるのはこの私よ!」
 自らの美貌に自信を持つトリスティアは、胸元に薔薇のコサージュをあしらった黒を基調としたミディアムドレスで参戦。他の装飾品はまるでつけない。
「お嬢きれいじゃん」
「トリス様、美しいです」
 トリスティアに付き合わされている男二人。
 シャーはど派手な桃色フリフリドレスにティアラという衝撃的な格好をしている。対してロドニーはとんがり帽子と魔法使いの格好だ。
 かくして着替えを終えた者達は会場に引っ張り出される。じーと待つこと数時間、待ってる間、お菓子や飲み物が配られている女性達は実に平和だ。そこへざばーんという何者かが池に飛び込む音が聞こえる。男達が続々と辿り着いたのだ!
『其れでは女性役の皆さんご準備はよろしいでしょうか。男性が参ります』
 攫われる者達の一部に、私が先よとばかりに火花が散る。そして後方から愛の言葉が!
「美しき御仁よ、貴方に私は不釣合い‥故に普通の手段では、私は貴方を手に入れる事は出来ないだろう。だから、今から貴方を攫おうと思う」
 一番抜けはトリスティア! 相手はツウィクセルだ! ロドニーの歯ぎしりを尻目に、トリスティアがツウィクセルの胸に抱かれゴールイン! しかしっ!
「ほんとに不釣り合いね! びしょぬれだし、なんなのその女装!? 失礼ね!」
 ツウィクセル、トリスティアになじり倒される。
「運命の導きにより、今ここで縁がありで会えた事に感謝しよう。ありきたりの言葉は聞き飽きているだろうから、美しき女神達!? 我等に救いの手を‥‥」
 二番抜けはなんとレイジュ! 拾ったのはシスイだ!
「いやーん、男の人にだっこされたぁ〜! って、あれ? シスイさんか、意外〜」
「やっぱりレイジュさん。いや‥‥もう一人背が高いのはいたんだが、もてないから」
「ふうーん、後ろから女の人たちのブーイングが聞こえるのは僕の気のせいかな」
「自分より背の高い人間を‥‥選んだから‥‥女性が外れたな‥‥レイジュさん、女装がまだまだだ」
「これはウケを狙ったんだからいいの! 楽しむときは楽しまないとね!」
 最強プリンセスを争った経験のあるこの二人。外れに関わらず和やかにゴールイン。
「一目会った時からあなたにときめきました、あなたが愛しい、あなたを他の男に渡したくないっ! 俺はあなたを奪うっ」
 三番抜けはリスフィア! 攫ったのは和正だ! 
「私独り身なのでお仕置きはありません。ゴールしたら一緒に宿に行きましょう、下に舞い衣装着てるんです。二人だけの部屋で私の舞、たっぷり鑑賞してってくださいね」
 和正の耳元に囁くリスフィア。和正の顔が真っ赤である。
「君の全てを俺にくれ。二人で、生きよう‥‥これからも、ずっと」
 四番抜けは葉隠にかっさわれた沙耶だ! しかし酔っぱらった沙耶は。
「ひっく‥‥なんじゃ、御主〜‥‥? 蒼司様ではないのぅ」
 ゴールするなり沙耶は準備していたハリセンで葉隠を追い回す! 哀れ葉隠!
 四番抜けはヴァインに攫われたマルトと、エリックに攫われたロドニーだ!
「お前に決めた! 暫くの間になるが付き合ってくれ!」
「ばぁ、っとおどろかんのか。ちと残念じゃのう」
「おばーちゃんでも女性ですから。このままゴールへ連れてくぜ」
「ババにひかずにつれてってくれるか、何かご褒美せないかんのう。ゴールしたらエールでもどうかの?」
 一方。
「あんたを迎えに来た。さぁ行くぞ何も言わずについて来い!」
 おやそうですか、と仮面の下から顔を出すロドニー。エリックの心の咆吼が聞こえる。残る三人からまともな体格を選んだのが運の尽き。老女と筋肉がはずれ、ロドニーが。ゴールへたどり着いた直後、ロドニーはご褒美と称しオーラホールドで締め上げる!
「そのまま寝ていてください。おや、意識がありますね。で、どうします? 私と食事にでもいきますか? それともその怪我で私と決闘しますか?」
 しかしエリックはまだいい方で、残っていたのはシャーである。そして彼女への愛の賛歌に悦が入るあまり出遅れたアランはシャーを姫抱きにしてゴールへ向かわなければならなかった。涙のアランを見つめたフリフリドレスのシャーは熱い馬力の抱擁を。
「恥ずかしいじゃん、叩いたりしそうじゃん、感動しすぎちゃうじゃん」
 しかも暴走したシャーはアランを宙に放り投げる! 恥じらいとともにグーパンチを繰り出したが、正気に戻ったアランがブツブツ呟きながら斬りかかったのでシャーとアランによる浜辺の追いかけっこならぬ逃走劇が繰り広げられたとか。

 激しい祭もこうして終わりを告げた。幸福そうな者あり、奈落に叩き落とされる者あり。
 男達の命のサバイバルに関しては、別紙にてご覧あれ。
 今回はこれにてめでたし、めでたし。