【冒険者の少年】疑われた一本の矢
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■ショートシナリオ
担当:夢村円
対応レベル:12〜18lv
難易度:やや難
成功報酬:5
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:09月19日〜09月24日
リプレイ公開日:2006年09月26日
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●オープニング
冒険者がやってきた。
小さな村の子供達は、彼を取り囲み村人達も笑顔で見つめている。
見たことの無い武器に目を丸くし、旅の持ち物に目を輝かせる。
冒険の話をせがみ、一緒に遊んでと請い願う。
それは、かつて彼にも覚えのある姿。冒険者に憧れた旅立つほんの少し前の姿。
だから、冒険者の少年は彼らの行動を笑顔で受け入れ、仕事の後、ほんの少し遊んでやった。
それが、事の発端。
彼を見つめる一つの眼差しが、黒く染まる少し前。
「僕は、やっていません!」
少年の必死の言葉に、村人達は顔を背けた。
「僕は旅の冒険者なんです。この村には預かりものを届けに来ただけ。信じて下さい」
村長に殴られ、地面に転がされた少年を直視できない。
無実を訴える少年を蹴り飛ばし、男は鼻を鳴らす。
「お前のような子供が冒険者などと信じられるか。第一、この村には弓矢なんぞ無いのに、矢で羊が殺されたのだぞ。武器を持ってやってきたよそ者。お前以外の誰がそんな事をする!」
少年は差し出された矢を見て、首を振る。
「その矢は僕じゃありません。弓は子供達に頼まれたから少しだけ貸したけど、矢筒はちゃんと持っています。矢だってほら、一本も無くなっていないし‥‥」
ボカッ。鈍い音がして顔を上げた少年は、また地面に沈む。
「そんなことは、どうでもいいことだ。お前以外犯人は考えられない。だから、お前が犯人だ」
「お父さん、僕‥‥」
「黙っていろ!」
足元の息子の言葉を、一刀両断し少年の首元を乱暴に持ち上げて村長は、
「そうだな‥‥。お前が本当に冒険者だと言うのなら、最近北のほうから流れてきたオーガが数匹、村の側にいる。それを退治するんだ。それができたら、羊の事は見逃してやってもいい」
と言った。どこか、頬に笑みさえ浮かべている。少年は荒い息を吐き出しながら‥‥言う。
「オーガ? 僕一人じゃ‥‥。ギルドに依頼すれば‥‥」
バシン!
彼の言葉に平手が答える。
「ギルドに依頼をしたら金がかかるだろう。ただでさえオーガのせいで畑仕事や、家畜の世話に支障が出ているのにそんな余分な金など出せるものか! それとも何か? お前が羊の賠償に依頼料を出すと言うのか? ならギルドに依頼してもかまわん。だが、わしは1シルバーだって出さんぞ」
「‥‥解りました。僕が‥‥冒険者を、仲間を頼んで来ます。そしてオーガ退治ができたら‥‥、僕が冒険者だと信じて疑うのを止めて下さいますか?」
「いいだろう。但し、お前が戻ってくるまで、お前の食べ物以外の荷物はワシが預かる。逃げたら困るからな」
せめて弓矢だけでも、と言う願いは聞き入れられなかった。
大事な人から貰ったお守りも、母が用意してくれたカバンも、ナイフの一本すら許されずに、少年は一人村を後にしたのだった。
数日後、ボロボロになった少年がギルドに辿り着く。
「お前、フリード? どうしたんだ?」
係員は驚いて介抱した。
彼も一応冒険者の一人。まだ駆け出しのレンジャーだが誠実に仕事をこなす信頼できる若者なのに‥‥。
「確か、荷物を届けに行く仕事で出かけたはずだよな。何があったんだ?」
問われて彼は、村に荷物を配達した後、村の羊を殺したと疑われたこと、お前が本当に冒険者ならオーガを退治しに来てみろと言われたことを話した。
荷物の全てを取り上げられた事も。
「ムシのいい話だと解っています。皆さんにはご迷惑だとも‥‥。でも、このままだと冒険者の名前を汚してしまうし、命と同じくらい大事にしてきたものも‥‥返してもらえず売られてしまうかもしれません。荷物を取り返したら、報酬は僕が、必ず、ちゃんと払います。だから‥‥オーガ退治を手伝って下さい。お願いします」
少年は涙で頬を濡らしながらギルドを出た。
暫くは教会か、それとも村外れの知人の家を頼るのかもしれない。
あの涙はきっと、悲しみの涙ではない。
自らの無力と、弱さに泣く堪えきれない悔し涙。
村の近辺に住みついたオーガの駆除依頼。
それを貼り出した後、係員は言う。
「‥‥ギルドの冒険者も舐められたもんだ。あんたらなら、オーガの数匹くらいは普通に倒せるだろう? ついでに、真相を調べてフリードの無実を証明してやらないか?」
そう言う口の中は苦い思いを噛み締めていたに違いない。
「我ながら、いい事を思いついたものだ」
村長は笑う。不恰好な矢をポン! とゴミ捨て場に投げ捨てて。
ケチだ、悪人だと村人からも言われている事は知っているが、気になどしない。
これでタダでオーガ退治がされれば御の字だし、もしそうでなくてもこの装備を売れば、少しは金になりそうだ。珍しい品も入っている。
「まあ、タダで働くものなどそうそういるはずが無いがな。世の中、金。そして世の中、自分がよければそれでいいんだ!」
笑いながら去っていく。
ゴミ捨て場からそれを拾い上げた人物がいることも知らず
「ゴメンなさい‥‥お兄ちゃん」
そう呟いた声も知ることなく。
●リプレイ本文
○本当の仲間
居並ぶ冒険者にフリードは言った。
「皆さん、ご迷惑をおかけして申し訳ありません‥‥」
一見、立ち直った顔に見える。だが、冒険者にはそれが明らかに無理をしていると解る。
彼に演技の才能はあまり無い。少年のわずかなプライド。
だから‥‥
「何言ってんだい! フリード! 遠慮なんか必要ないんだよ。ほら、この薬飲んでさっさと傷を治す。しっかり働いてもらうからね!」
そのプライドを守るためにフレイア・ヴォルフ(ea6557)は遠慮を笑い飛ばし、薬を投げる。
「そういうことだ。可愛い弟分の為だ。一肌脱がせてもらうぞ。嫌だと言ってもな」
「フレイアさん、ギリアムさん‥‥」
見知った顔、心から敬愛する人達の優しい思いにほんの少し、目じりが緩む。
「それに、まあひどい話だしな。多分、解っててやってんだろうよ」
「ええ、冒険者を舐めておられるのでしょう。オーガ退治、引き受けましょう。もちろん報酬は頂きません。同じ冒険者として見過ごせない事態ですから」
見知った顔だけでは、無論無い。閃我絶狼(ea3991)やリアナ・レジーネス(eb1421)。
まったく顔も名前も知らなかった者たちもまた、名乗りを上げてくれた。報酬は殆ど出ないと解っていて。だ。
「どの国にも悪代官みなたいな人はいるものですね‥‥」
「確かにな。だが、それを阻む真なる心も存在するのである! どこの国であろうともな」
そうですね。と大宗院透(ea0050)は呟いた。黒畑緑朗(ea6426)の足元で同意するようにワン! と犬も吼える。
「では、行きましょうかぁ〜。オーガを退治してフリード君の無実を証明して冒険者の力を見せ付けるですぅ〜」
エリンティア・フューゲル(ea3868)の言葉に冒険者達は頷き歩き始める‥‥。
「ああ、そうだ。ほら、今度は無くすなよ」
ふと、思い出したように立ち止まると小さな荷物をフリードに向けて絶狼は放った。
「これは?」
食料、寝袋。旅の装備一式。弓矢に旅装束まで入っている。
「貸すだけだ。後で返してもらうからな」
「しっかり働いてもらうとフレイア殿もおっしゃっていたであろう。その為に必要なもの。遠慮はいらぬでござる」
包み込む笑顔。言葉少ないテスタメント・ヘイリグケイト(eb1935)でさえ、その眼差しは優しい。
荷物を抱きしめ、フリードは顔を上げる。
「はい! ありがとうございます」
「よし、行くよ!」
ポンと軽く触れたフレイアの手に背中と、心を押され歩き出す少年と冒険者は肩と歩幅、心を合わせ歩き出した。
○冒険者の証明
「冒険者さんたちが来たよ!」
「フリード兄ちゃんが冒険者を連れてきた!」
冒険者の来訪に最初に気づいたのは子供達。やがて大人達もその声に気づいて集まってくる。
(「見る限りフリードを蔑む視線は無いようだな」)
ギリアムは集まった人々を見て、そう感じた。彼らがフリードや冒険者に向けるまなざしは心からの歓待。そして、言葉にならない罪悪感‥‥。
「ほお! 逃げ出さずに戻ってきたか!」
鷹揚に響く声に、村人達は知らず後退し、冒険者達は身構える。
「‥‥約束どおり、戻ってきました。冒険者を連れて!」
一歩前に出るフリード。そのまっすぐな視線から逃げるように視線を向けられた村長は、顔を背け、鼻を鳴らした。
「ふん! ‥‥だが、オーガ退治が終わるまではまだ約束を果たしたとは言えんぞ。途中で逃げ出すかもしれんしな!」
「このっ‥‥くそじじい!」
フレイアは、握り締めた指を手の内に立てた。その痛みで思いを必死で押さえつける。
フリードには表向きなるべく見せないようにしていたが、冒険者達は今回の事件にとてつもなく腹を立てていたのだ。
話を聞いたとき
「難癖つけて犯罪者に仕立て上げた上に、依頼を強要されただと?!」
とギリアムは声を荒げフレイアは
「舐めた真似しやがる‥‥」
と唇を噛み締めて言った。テスタメントでさえもう少しで怒りを顕にするところだったのだ。
村長はそこまで知ってはいないだろうが、フリードの前、横、後ろから刺さる視線にじりと、数歩後退し
「と・とにかく、話はオーガ退治が終わってからだ。さっさとオーガを退治‥‥」
「その前に! フリードの荷物を返してもらうか!」
ギリアムは唸るように声を荒げる。後方に下がりながらも村長は言葉を返す。
「オーガ退治の後だ、と言ったろう。終われば、ちゃんと返してやる」
「冒険者と信じないから、と荷物を預かったんだろう? 俺達もこいつが冒険者であることは証明するし、ここにギルドの証明もある」
羊皮紙を前にはためかせ、ギリアムは村長をさらに睨んだ。
「身分証明は、これで十分の筈だ。さあ、さっさと全部返してもらおうか!」
「俺達の報酬はフリードの荷物から出る。確認は当然の権利だぜ」
顔には嫌だと書いてあるが、これ以上食い下がる手段は村長には無さそうだった。
「‥‥解った、付いてくるがいい‥‥。だが、依頼解決までいくつかは荷物を預かるぞ」
パッと笑顔を咲かせるフリードの背中を軽くたたいてギリアムが付き添う。
「あっとオーガの情報! 話してくれないのなら村人にオーガの情報とか聞かせてもらうからね!」
フレイアの呼びかけに勝手にしろ、と村長は背中で手を振る。
村長の姿が消えたのを確認してエリンティアは笑う。
「では、勝手にさせて頂きますねぇ〜。皆さんにもちょっと、聞きたいことがありますぅ〜」
何を? と積極的な態度を見せる村人達に、冒険者達は頷き、話しかけた。
○冒険者の責任。人の責任
森の中を歩く冒険者達。その最後方を歩いていたリネアは自分の少し前を行く少年に
「本当に、大丈夫ですか? フリードさん」
気遣うように声をかけた。
「山道を歩くのなら全然平気です。僕はもともと狩人でもありますから」
「いえ、そうではなく‥‥お怪我のこともありますが、オーガ退治に加わるのはやはり危険が‥‥」
「できるなら、村に戻り証拠探しをして欲しいのだが‥‥」
冒険者とはいえまだまだ駆け出しの少年を思っての言葉であることを承知の上で、フリードはきっぱりと否と答え、オーガ退治へ同行させて欲しいと願ったのだ。
「正直、無罪証明はもうどうでもいいんです。僕はオーガ退治の依頼を受けた。一人では無理だと皆さんに頼ってしまいましたけど、それでも‥‥仲間だけを危険な目に合わせることは絶対にしたくはない。そして、困っている人達を助けたい。だから‥‥」
お守りを握りしめて言う冒険者達は小さく息をついたけれども、それ以上は誰も、何も言わなかった。
ギリアムが、彼の髪をくしゃくしゃと撫でただけ。
そして、今、彼は冒険者と共に気配を消し、目的地の様子を伺っていた。
今朝、フレイアが村人から買い取った羊が一匹、心細げに鳴いている。
この周辺に現れると言うオーガはまだ積極的に村を襲ってはこない。ウサギや獣など、空腹を満たす獣がいるから、だろう。
だが人も、鬼も易きに流れるもの。目の前に獲物がいればそれをまず狙うはず。
フレイアは買い取った羊を放すときそう言っていた。そして
「来た!」
誰とも無く、声にならない声を上げた。草を踏む足音が聞こえてくる。
呪文を詠唱したリアナが目を閉じて、感知した感覚を仲間に伝える。
「北の方角にオーガと思われる大型呼吸を感知。こちらに向かってきます」
数は、十匹弱と言うところ。
これくらいならば、なんとかなるだろう。
羊を襲わせ、やつらが食べている隙に、と考えたフレイアだったが横を見て少年の表情に気づき小さく笑う。
そして、‥‥弓を握ると矢を番えずに風を放つ。
ピィーーン!
高く涼やかな音に冒険者は奮い立ち、前のオーガ達は唸り声を上げる。
その瞬間を狙い、羊の首を今、正に折らんとしていた手に矢が突き刺さり、その心臓に雷の矢が突き刺さる。
「ぐっ‥‥があ‥‥っ」
地面に倒れ付すオーガ。仲間の様子を見て、他のオーガ達も状況を完全に把握する。
だが、もう遅かった。
ワンワン!
駆け出す犬がオーガの足を噛む。蹴り飛ばされる前に回転して離れた柴犬は
「究めれば、この世に切れぬ物無し!」
二刀で敵を袈裟懸けにする姿を尻尾を振りながら見ていた。
「丁度、イライラしていたんでな! 行くぞ」
「うごおっ!」
木の影に隠れていた絶狼のスマッシュが決まる。向こうではギリアムの盾受けからのカウンターアタックを受けたオークが地面に倒れていた。
「フリード、無理せずに援護するんだ。レンジャーや魔法使いは前線に立つものではないんだから、自分のすべきことをするんだよ!」
「はい!」
二人のレンジャーと魔法使いが前線の戦士達の援護の矢を放つ。その背後。隙間をかいくぐるようにオーガの一匹が近づいてきた。
「‥‥えっ? キャアア!」
回りこまれたバックアタック。だが、それを見逃さないテスタメントの刀が閃いた。
「フォン‥‥ヴァイス!」
デビルの足が崩れ倒れる。
「ありがとうございます」
「あと少しだ。油断するな!」
はい、という返事を聞かずテスタメントは前に踏み込んでいく。その言葉通りやがてオーガ達は冒険者の前に見事に敗北したのであった。
○優しきお人よし
並べられた首は見ようによってはグロテスクに見える。だが、それを見る村人達の表情には恐怖よりも安堵が強く現れていた。
「さて、これでもうフリードに文句はあるまい?」
腕組みしながら言う絶狼の目には反論を許さない強さがある。彼だけではない。冒険者全て、そして村人達さえも厳しい目で村長を見つめる。
「‥‥解った。確かにもう何も文句は無い。どこへ行くのも自由だ。荷物も金も全て返す」
数日前チェックリストで確認し中身を確認された荷物は、全てフリードの手に戻った。
囮用に羊も返り、オーガは倒れた文句のつけようは無い。
「ふん、無償だと言うのに良くやる。まあ、いい。後はとっとと‥‥」
帰れと言いかけた言葉をエリンティアはニッコリと遮る。その笑顔に有無を言わせぬ言葉を込めて、
「ではぁ〜今度は僕達がぁ〜、文句を言わせてもらいますぅ〜。フリードさんに冤罪を被せた事を謝罪してください〜」
「冤罪? なにを‥‥!」
過ちなどない、と自信ありげだった顔は突然狼狽を浮かべる。エリンティアの背後、透に促されやってきた一人の少年に。
「「‥‥リバー!」」
フリードと村長は同時にひとつの名を口にする。村長の息子。この少年は透に促され、前に進み出た。
「お父さん。フリードお兄ちゃんに謝って‥‥ううん。先に僕が謝らなきゃ。ごめんなさい。お兄ちゃんの弓を持ち出して、羊を殺したのは僕なんだ‥‥」
「なんだと!」
オーガ退治に参加しなかった透とエリンティアは村で、聞き込みを続けた。フリードの無実を証明するための手立てを得るために。
そして耳にする。村長の息子が冒険者に憧れていて、フリードに一番懐いて弓を習っていたこと。
事件のあった日子供たちと一緒に遊んでいなかったこと。あの事件の後、一歩も家を出ようとしないこと‥‥。
「自分の部屋でずっと泣いていたのですよ。あの子は。自分の過ちを言えず苦しんで‥‥」
村長の家に忍び込んだ透の話を聞いて、冒険者達はフリードに内緒で彼を説得したのだ。
(「僕が‥‥勇気を出さなくっちゃ」)
『多分フリードを救えるのは彼だけだ』
『困っている人を助けるのが冒険者ですぅ、助けたいと思い行動するその心が冒険者の証ですぅ。君はそれを持っていますかぁ〜』
冒険者からもらった言葉を胸に、少年はフリードに頭を下げた。
「お兄ちゃん、本当にごめんなさい。僕‥‥怖くて言えなかったんだ。ごめんなさい」
頬を涙で濡らす少年を、フリードはそっと抱きしめる。
「いいんだよ。言ってくれて、謝ってくれて‥‥ありがとう」
二人の様子を斜め上から笑顔で見た後、ギリアムは向かい合う。
「リバー‥‥が? わしは‥‥間違っていたのか‥‥」
「当たり前だろ?」
村長に。
「なあ。あんた。金に執着するのは勝手だがあんた、金で買えない大事な物って奴を無くしてる事に気付いてるか? あんたに無くてフリードにある大事なものだ」
「大事な‥‥もの?」
「僕達冒険者はぁ〜仲間の為なら命も賭けるしぃ、無報酬で働く事もあるんですよぉ。それは、何よりも大事なものを知っているからですぅ〜」
「それが、解らないようなら今後、気をつけることだね。今度この村からの依頼が来ても冒険者としては手助けすらままならない。自分の命に危険があると解っていて仕事を受ける人は余程のお人好ししかいないからね」
「‥‥そんな‥‥」
(「まあ、よほどのお人よしは、きっといますけどね」)
リアナの眼差しの先には少年達。そして仲間達。
困っている人がいれば、無償で駆けつける優しきお人よし。
尊い何かを見つめ、リアナは優しく微笑んだ。
○本当に大切なもの
「報酬、本当にいいんですか?」
「ああ、いらないよ」
フレイアだけでなく、仲間たちも頷く。
あの後、村長から差し出された報酬も、冒険者達はきっぱりと断った。
「私達冒険者は、報酬の額で動くわけではありません。お金が全ての村長様には、わからないでしょうけど」
最後まで謝らなかった村長にさりげに残した嫌味が少しでも効いたらと、リアナは思うが今は、きっと望み薄だと思う。
でも、横目で少年を見る。
「人を疑いすぎるのも問題ですが、特に冒険中は疑うことは大切です‥‥。結局、世の中は悪人が徳をする様にできていますので‥‥」
「はい」
言いながらも少年の瞳はまっすぐの人を疑わぬ眼差し。少し気恥ずかしくなって透は顔を赤らめた。
「まあ、お前がした事は間違いじゃない。少なくとも俺はそう思う」
ぽんと叩かれた肩。その手のぬくもりに少年ははいと頷く。
「僕は冒険者の人達から、色んなものをもらった。だから、今度は返す立場になりたいんです。まだまだ未熟ですけど‥‥」
「冒険者に年とか全然関係ないんですよぉ〜人は誰でも自分の人生を探す冒険者ですからねぇ」
「おいおい、随分気障なことを言うな〜」
エリンティアは苦笑し、仲間たちもまた笑う。寡黙なテスタメントでさえ、微笑を浮かべていた。
‥‥信じあう笑顔、思い合う心を知った冒険者の心。あの子はそれを知ってくれたはず。
そして、村長も今回の件で、少しは考えを改めてくれただろう。
あの子が側にいる。
彼がいつか村長をも変えてくれたら、とそんな少し希望が持てるような気がした。
そして、いつかあの村長にも冒険者達とフリードの気持ちが彼にも通じると‥‥そんな夢が信じられるような気がした。
明るい日差しの輪の中、笑いあう冒険者達。
彼らが『本当に大切な事』を見失う心配は決して無さそうだった。