【こどもたちの領域】冒険者サンタクロース

■ショートシナリオ


担当:夢村円

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 39 C

参加人数:8人

サポート参加人数:3人

冒険期間:12月18日〜12月21日

リプレイ公開日:2006年12月25日

●オープニング

 質問
「聖夜祭を知っていますか?」
 子供達の答え
「ご馳走が沢山捨ててある日!」

 質問その2
「サンタクロースを知っていますか?」
 子供達の答え
「サンタクロース? なにそれ?」
「食べられるの?」

「聖夜祭を楽しめると言うのは、恵まれているということなのですね」
 肩を落とした商人はギルドの係員にそう愚痴ると、はあ、深く息を吐き出した。
 この商人、最近街の浮浪児たちに仕事を与えて面倒を見ている。
 きっかけは養女が彼らに助けられたから、その恩返しのつもりのだったが少年達の仕事内容が真面目なので最近はけっこう収支の元が取れるかも、と商人らしい計算も働いている。
 まあ、とにかく今年一年頑張って働いた子供達に何かねぎらいを、と聖夜祭のパーティを企画したのだがどうも子供達の反応が悪い。
 そこで聞いてみたら、そんな返事が返ってきたのだ。
 祝ってくれる人がいない家にはサンタクロースも聖夜祭も無い。
 そんな当たり前で、残酷な事を今更やっと気付いたのだ。
「でもですね! そんなことじゃいけないと思うんですよ。ホントに!」
 だが、落ち込んでばかりもいられない。失敗したからと落ち込んで遠慮していては商売などできないのだ。
「ただ、私は聖夜祭は稼ぎ時だったりしますし、子供相手も得意ではありません。それに冒険者に憧れている子も多いようですしね。だから、皆さんにお願いしたいんですよ」
「つまり、子供達のサンタクロースになれと?」
 はい。と商人は頷く。
 場所は町外れの古い洋館。そこに今、男女含めて十人ほどの子供が暮らしている。
 下は三歳から上は十二歳くらいまでだろうか。
 彼らは商人が生活を助けているものの、基本的には自分達の力で生活している。
 その子供達にクリスマスを楽しませてやって欲しい。という依頼だった。
 聖夜祭当日は、子供達も仕事に出てしまい忙しいので、少し早めの今、だ。
「内容はお任せします。驚かせるもよし、一緒に楽しむもよし。過分ではない必要経費は私が出しましょうあ、その代わりうちの娘も一緒に参加します。ハーフエルフですけど、嫌う方なんかいませんよね?」
 ポン、と胸を叩く商人。胸を張った笑顔が、ふと真顔になる。
「子供達がね、聖夜祭も楽しめない時代なんて良くないと思うんですよ。せめて聖なる夜くらい楽しませてやってあげたいじゃないですか?」
 その思いは、商売気無しの、彼の本心だった。

●今回の参加者

 ea0050 大宗院 透(24歳・♂・神聖騎士・人間・ジャパン)
 ea5683 葉霧 幻蔵(40歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea9957 ワケギ・ハルハラ(24歳・♂・ウィザード・人間・イギリス王国)
 eb0752 エスナ・ウォルター(19歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb3671 シルヴィア・クロスロード(32歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 eb5463 朱 鈴麗(19歳・♀・僧侶・エルフ・華仙教大国)
 eb7109 李 黎鳳(25歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 eb7700 シャノン・カスール(31歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)

●サポート参加者

大宗院 亞莉子(ea8484)/ タケシ・ダイワ(eb0607)/ サスケ・ヒノモリ(eb8646

●リプレイ本文

○サンタクロースはいるのかな?
 誰もが知っている聖夜祭。
 だが、以外に知らないのがその由来である。
「聖夜祭、クリスマスとは聖人ジーザス様の誕生日でございます。この祭りは12月24日の降誕祭、誕生日の前夜祭から1月6日の主顕節、十二夜、公現祭と呼ばれる日までの約2週間、旧年を振り返り新年の到来を祝う祭りとなっているのですよ。我々を救うためにジーザス様が降誕なされた奇跡に感謝し‥‥」
 思わず口元を押さえた大宗院透(ea0050)は慌てて頭を左右に振った。
 聖夜祭に子供達を楽しませて欲しいという依頼を受けたのだが、透はジャパン出身。
 聖夜祭という行事に明るいとは言えない。
「サンタクロース、天使に変装ですか‥‥。中々難易度が高い依頼です‥‥」
 知らない、またはよく解らない固有名詞などもあるので、一度復習を、と思って教会に勉強に来たのだ。
 だが司祭の気合の入った説明は、興味深いとはいえ意味不明な言葉も多く、イギリス語が得意とは言い切れない彼には読経に聞こえるものも少なからずあった。
「‥‥せて、聖夜祭で、今はよく聞かれるサンタクロースという名前は、聖典に出ているわけでは在りません。かつて貧しいものに富を分け与えた子供の守護聖人ニクラウス様の伝承と、ジーザス様を祝福した三博士の故事が組み合わさり聖夜祭前日の夜に、よき子供たちにプレゼントを贈る、サンタクロースという存在が生まれたと言われています」
「では、サンタクロースというのは実在していないのですか?」
 透の目が少し、真顔になる。司祭は優しく微笑み、頷いた。
「北方にはひげをもつ力ある神が、冬至の祭りの時、魔法の馬やトナカイの引くソリに乗って人々の家に贈り物をするという伝承が伝えられていたそうですが、実際には御伽噺の類でしょう。‥‥サンタクロースとは子供達に祝福をと願い信じる、人の心が生み出した存在だと私は‥‥!」
 ドガン!
 半ば蹴られたように開いた扉から‥‥
「サンタは、どこでござる?」
「「はあ?」」
 突然乱入してきた巨大うさぎ。司祭は勿論、透でさえ意味が解らず目を瞬かせる。
「サンタを知らない良い子達がいるでござる。今こそサンタの出番でござる!」
 手作りか、どこから拾ってきたのか大きな袋を肩に背負っている葉霧幻蔵(ea5683)。ひょっとしてサンタクロースを拉致る気なのか?
「ですから北方の‥‥伝説が‥‥」
 困惑顔の司祭が、それでも説明を続けるが‥‥
「北か? 北でござるな! サンタクロースがいるという国は?」
 聞いているような、聞いていないような、やっぱり聞いていない様子で彼は外に向かって全力ダッシュをかける。
 ‥‥‥‥パーティまでに彼は戻ってくるだろうか? 
 揺れる扉を見つめながら透は少し心配になったのでありました。

○天使(?)達の誘い

 天使が歌を歌っている‥‥。
 純白のキレイな天使様。教会の絵やステンドグラスから抜け出たような。
 そんな夢を見た。

 リンリンリン、シャンシャンシャン。
 〜〜♪ 〜〜〜♪ 〜〜♪
 今まで聴いたことの無いようなキレイな音に、ある朝、子供達は目を覚ました。
 眠い目を擦りながらベッドから起き上がると、周囲には誰もいない。ただ
「レンにいちゃん! これなあに?」
 目ざとい少年が何かを見つけ、飛び跳ねる。
 ‥‥枕元に何かが置いてあったようだ。
 羊皮紙に書かれた飾り文字の文章。
「こいつは‥‥手紙?」
 殆どの子は文字が読めないが、最近レンと呼ばれたこの少年だけは仕事先の夫人から字を習い始めていた。
「‥‥えっと、『クリスマス‥‥おめでとう。今日は皆さんのお仕事はお休みです。頑張った皆さんへの聖夜祭のプレゼント。夜に‥‥パーティを行います。ぜひご参加ください?』」
「しごと休み?」「パーティ! パーティだって! すげえ!」「ホント? ホント? レン兄ちゃん?」
 驚く子供達。手紙を見つめはしゃぐ彼らは‥‥やがて、呆然と立ち尽くす。
「天使‥‥様?」
「ホントですよ。さあさあ、起きて下さい」
 別に、今はまだ特別な服装をしていた訳ではない。だがカーテンを開き微笑むシルヴィア・クロスロード(eb3671)の銀の髪。 
「さあ、朝ご飯を食べたらすぐに聖夜祭の準備じゃ! 掃除に飾りつけ、料理のしたく、やることは山ほどあるぞ!!」
 パパンと手を叩き、全快の笑顔で笑いかける朱鈴麗(eb5463)。
「パーティの準備、みんなでやりましょう? ね?」
 膝を付き、瞳を合わせ優しく告げるエスナ・ウォルター(eb0752)。
 彼女らの美しさがまるで、天使のように見えたのかもしれない。
 子供達は、目を擦り、目を‥‥瞬かせる。そして問う。
「パーティ?」
「ええ。いつも頑張っている皆さんへのご褒美ですよ。でも、準備は手伝って下さいね。皆さんのパーティですから!」
 答える天使の微笑みに
「うん!」「解った!」「もちろん!」
 飛び跳ねるような笑顔を子供達は向けていた。

「へえ、君達だったんだ。女の子を助けてお化け屋敷に入った子って」
 屋敷の台所でトトンとナイフが軽い音を立てている。
「どうして知ってるんだ?」
 つけあわせ用の野菜を洗いながらレンは横でナイフを操る李黎鳳(eb7109)を見上げた。
 この少年、酒場の裏仕事などを手伝っているらしい。料理に興味があるらしく自分から手伝いを申し出ていた。
 首を捻る少年に軽くウインクをしながら黎鳳は笑いかける。
「ちょっと知り合いから聞いたの。でも人助けの為に勇気を出せるなんて、もしかしたら‥‥ってどうしたの?」
 少年の顔が真顔になっているのを見て、黎鳳はナイフを止めた。真剣な顔で黎鳳を見ている。
「‥‥あのさ、姉ちゃん。ちょこっと聞いてくれるかな?」
 頭が縦に動いたのを確認し少年は口を開く。
「俺さ、大きくなったら、冒険者になりたいと思うんだ」
 それは、真剣な願いだった。
「金もないし、魔法も使えないし、腕が立つわけでも無い。酒場のおじさんは仕込んでやるから料理人になれっていう。料理も好きだけど、それでも‥‥。ねえ、俺、冒険者になれるかな?」
 ふわり、柔らかい手がレンの頭に触れた。
「えっ?」
「大丈夫。冒険者になるのに資格なんて無いんだよ。大事なことはたった一つだけ」
「大事な事って‥‥なに?」
「‥‥自分でない誰かの為に勇気を出せる事‥‥それが、冒険者に一番大事な素質なんだ。君には、ちゃんとそれが備わっているからね」
 レンは頬を赤らめ頷いた。無垢な少年の無垢な心。黎鳳はそれを眩しそうに見つめると、頭を撫でていた手をポンと弾ませた。
「‥‥さ! 早く料理作っちゃお。クリスマスディナーは大ごちそうなんだからね」
「うん!」
 また楽しげなリズムが台所に響き始めた。

 綺麗に掃除されたホールの中央に
「もう少し右‥‥、そう。そこでいいです。はい降ろしますよ」
 微かな音と共に緑が揺れた。
「皆さん、お疲れ様です。オーナメント類もここに沢山ありますから使って下さいね」
 汗ばんだ額を手で拭いてワケギ・ハルハラ(ea9957)は子供達にタケシ・ダイワが持ってきた箱を指し示した。
 わあ、という歓声と共に子供達が箱に群がる。
 星にリースに、飾り物。今までめったに見ない美しい飾りに子供達はまた声を上げる。
「すごいなあ。こんなにキレイなの初めてだあ〜」
「まだまだ、これはツリーに飾るともっとキレイですよ。さあ、手伝って下さい」
 飾りを手に持って動かない子供達にパパンと手を叩きシルヴィアは動かす。まるで教師のような趣もある彼女の言葉に、子供達は素直に頷いた。
「ツリーにはオーナメントを飾り、白い綿で雪を表す。最後に天辺にこの星をだな‥‥」
 手を伸ばしたまま凍りついた鈴麗に
「どうしたの?」
 と下にいた子供が顔を見上げた。眉を上げて顰め面をし‥‥涙目で鈴麗は振り返る。
「あー。誰か手伝っておくれ‥‥届かぬ」
 くつじょく。そんな顔で差し出した星を、ひょいと白いふわふわの手が受け取って若木の天辺に結ぶ。
 いつの間に帰ってきたのだろうとサスケ・ヒノモリは首を傾げる。買出しに出て行った時に彷徨うように街中をうろつく幻蔵をシャノン・カスール(eb7700)と見かけたのに。
「あ〜! ウサギさんだ〜!」
 白い着ぐるみウサギの登場に子供達はまた大喜びだ。中の人が誰であろうと気にする様子は全く無い。
「あ、あの‥‥準備、あと少しですから‥‥頑張りましょう!」
 勇気を出したエスナの誘い声に、子供達は遊びたい気持ちを少し我慢して仕事に向かう。
 掃除、片付け、料理の運搬、飾りつけ。 
 賑やかに準備は進む。楽しい時間が進むのはあっという間だ。
 気短な太陽は、もう地面に着こうとしていた。
 
○天使とサンタクロース
 夜、キャンドルに灯りが灯される。
 子供達は真新しい洋服に身を包み、冒険者達は全員、ブルーのスカーフを身につけた。
「俺達の仲間の印だよ!」
 と子供達がくれた品である。
「では、よいかの? こうしてカップを合わせるのだ。そしてこう言う。‥‥メリークリスマス!」
「メリークリスマス!!」
 コン! 軽い音と共に明るい声が響いた。
「うわあ! すげえ。こんなに沢山の料理、見たの生まれて初めてだ」
 舌なめずりする子供達。
「どうぞ召し上がれ」
 の言葉を聞くや否や早速、料理に飛びつき、目いっぱい頬張る。
 料理を平らげていく子供達に料理の作者たる黎鳳も満足げであり、嬉しそうでもある。
「これは、クリスマスプティングじゃな。うまく中に入った金貨に当たれば、今年一年良い事があるぞ」
「ホント? 」
「よ〜し、当てるぞ〜」
 そんな様子をリンゴジュースのカップを手に持って嬉しそうにリンは見つめていた。
「貴女がリンさんですね。はじめまして」
 ふんわりと笑いかけたエスナにリンと呼ばれた少女の笑顔が咲く。
「貴女は‥‥」
 耳で彼女が同じハーフエルフと気づいたリンは警戒を解く。と、言ってもここには偏見などないから警戒というほどの事もないのだが。
「ねえ、お姉ちゃんって、てんしさま?」
 そうですよ、とも違います、とも言わずには微笑みながら透は翼と服の裾を引いた女の子を抱き上げ、教会の司祭から聞いたクリスマスの話を解りやすく語っている。
 大宗院亞莉子に手伝ってもらって作った手作りのドレスが油や粉で汚れても、気にする様子話もない。
 向こうには着ぐるみウサギ。あちらにはまるごとトナカイ。
 そして中央には登場に喝采を浴びた赤い服のサンタクロース。
 落ちかけた夕日をバックに天使と共に現れた魔法のような姿は、子供達に奇跡を信じさせるに相応しい存在だった。
 彼らが並ぶここでなら、ハーフエルフも当たり前の一人になれる。
「僕とおそろいだよ」
 サンタクロースから赤い帽子を貰った一番小さな子は得意そうに帽子を被って見せびらかす。
「あ!」
 ふと、冒険者達の耳元に柔らかい歌声が響いた。

 頑張った方に幸せを贈る〜♪
 嬉しい予感が満ちてくる
 空では雪達がダンスを踊るけど
 暖かい心凍らない

 歌おうよ 歌おうよ みんなで声を合わせ
 唄おうよ 唄おうよ 明日を呼ぶ唄

 夢見る力を皆は持っている
 輝く明日を信じてね〜♪
 
 楽しげな歌を送ったワケギが優雅に一礼する。
 拍手が広がった。
 なんだか、胸の中にホッと灯りが灯るような優しい歌である。
「ステキな歌ですね。私も、なんだか歌いたくなってしまいました。一緒に歌いませんか? リンさん? 大丈夫ですよ。教えて差し上げますから」
 ね? 隣に立つ少女の手を握り、エスナは微笑む。
 リンは、贈り物の聖書、大事な大事な家族の形見を胸に抱きしめ
「はい!」
 と頷いた。
「リトルレディ! 頑張って」「リン!」
 励ましの言葉と一緒に思いを、楽しい心を歌に乗せる。

 赤い服着たサンタのおじさん トナカイと一緒にソリに乗って飛び回るの
 一年に一度 誰も彼もが幸せになれる夜 
 人も 動物も 種族なんて関係ないの
 天使様もそう 一緒になってはしゃいでいるから 

 A Merry Merry Xmas
 涙も白い雪に変わり 優しく全てを包んでくれる 
 A Merry Merry Xmas
 喜びがこぼれ 世界中に笑顔があふれてる夜
 A Merry Merry Xmas
 さあお祝いしよう あなた達と出会えた奇跡に
 聖なる夜を祝福しよう‥‥♪

 二人から始まった歌はやがて、家中に広がり、いつまでも、いつまでの古い館に高く、楽しげに響いていた。

○サンタクロースへの贈り物
 そして、夜。
 はしゃぎ疲れ、遊び疲れた子供達はもう寝入っているようだ。
 足音に目を覚ます様子も全く無い。
 枕元には鈴麗の言う事を聞いて大きな靴下が下げられている。
「ふむ、良い子達じゃな‥‥」
「ポリシーを曲げるのは、今回だけでござる!」
「シーッ! 大きな声を出すと皆さん起きてしまいますよ」
 同じ術を使って同じ人物に化けたサンタクロースに、サンタクロースは指を立てて目配せした。
 足音を忍ばせて入ってきた八人のサンタクロースはベッドサイドに近づくとプレゼントを靴下の中にそっと入れた。
 入りきれない分は枕元に。プレゼントの山が出来た。
「皆さん、いい子達ですね。商人さんも‥‥とってもステキな方。大切な人を思い出してしまいました。どうか、皆さん、幸せになって下さいね」
 眠る子供の髪をそっとエスナは掻きあげた。
 頷く冒険者達。目を閉じればパーティでの子供達の輝く笑顔が見える。
「あの笑顔こそが私達への幸福な贈り物。この幸福が続くように聖なる夜に祈りと願いを‥‥」
 開かれた窓。
 サンタクロースが入ってこれるように大きく開いた窓の外にシルヴィアは祈りを捧げる。
 子供達が風邪をひかないように戸を閉めなおそうとして
「! あれは?」
 ワケギは手を止め、目を瞬かせた。
 さっき降らせた雪が本降りになってきた空。そこに何か過ぎったような気がしたのだ。
 気のせいかもしれない。
 だが、もしかしたら。
 そう思うと空がもっと美しく感じるのは聖夜祭の魔法だろうか。
 透は思い出した。司祭の言ったあの言葉。
『サンタクロースとは子供達に祝福をと願い信じる、人の心が生み出した存在』
 ならば、サンタクロースは間違いなく存在する。
 子供達の心にも生まれたはずだ。
 そして、辛い時きっと心を支えてくれる。
 プレゼントよりも、ツリーの天辺の星よりも輝いた思い出となって。

 翌朝、屋敷に泊まった目覚めた冒険者達を起こした目覚まし。
「皆! 起きて! サンタだ、サンタクロースが来たよ!」
 それは子供達の歓声だった。
 弾ける様な明るい声と、廊下を走る足音。
 皆、プレゼントを胸に抱いて幸せそうに笑う。
 商人から貰った報酬よりも、青いスカーフと、その笑顔こそが気の早いサンタクロース達への何よりの贈り物となった。