【ジューンブライド】駆け落ち阻止?

■ショートシナリオ


担当:夢村円

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:2人

冒険期間:06月25日〜06月30日

リプレイ公開日:2007年07月03日

●オープニング

 彼は、執務室の机でペンを軽く鳴らした。
『叔父様。私は、あの二人に幸せになってほしいのです。叔父様なら、お解かりでしょう?』
『お父さん。お願い!』
 確かに良く解かる。
 許されない恋。望みの無い結婚‥‥。その先の悲劇。
 パチン。羽ペンが折れた音がした。
 そして、暫くの後。
「あの失礼します‥‥次の仕事が‥‥! っていない? パーシ様!」
 書類を持ってきた騎士の悲鳴にも似た声が、執務室に響いた。
【少し出かける。商人の家と冒険者ギルド】
 足元に落ちたメモに気付くまで‥‥。

「冒険者に頼みがある。キャメロットでこれから駆け落ちをしようとしている恋人同士が居る。その駆け落ちを阻止してくれ」
 若い軽戦士はそう言って腕組みをする。
 明るい金髪、緑の瞳。ヴァルと名乗った青年の正体を知るものは多い。
 そして彼が言った『恋人同士』の名は吟遊詩人ロビンに商人の娘レティ。
「先ほどお嬢さん達が、その恋人同士の駆け落ちを助けて欲しい、という依頼があったのですが‥‥」
「ああ、その二人だな。二人の駆け落ちを止めてくれ」
 きっぱり、はっきりと迷い無く『ヴァル』は言う。
「お嬢さんたちは『お父さんが冒険者ギルドに駆け落ちの手伝いを依頼することを薦めた』と言っていましたが、『貴方』がそれを阻止せよとおっしゃるのですか?」
 彼の正体を知った上で係員は『ヴァル』に問う。
「ああ、本気で止めにかかってくれ。方法は任せる」
 できるなら相手の冒険者や、恋人達にできるなら傷をつけないで欲しい、と言ったがそれさえも冒険者の選択に任せるというのだ。
「本当に周囲の期待を裏切り望む道を行こうと思うならこれくらいの試練は乗り越えて貰わねば困る。望みを叶えようとするならそれ相当の覚悟が必要なのだからな」
『ヴァル』の言葉には説得力があった。
 確かに、それができないようでは、今、逃亡に成功したとしても今後襲い掛かってくる苦悩を乗り越えることなどできはしないだろうが‥‥。
「俺自身が出たかったが、今は手が離せない。もし、彼らが冒険者の試練を乗り越えられたら、後の処理は引き受けよう。頼んだぞ」

 彼はそれだけ言って去っていった。
 
 報酬と依頼書。そして‥‥
「夢を、望みを叶える為の覚悟‥‥か」
 彼の思いだけを残して。

●今回の参加者

 ea0021 マナウス・ドラッケン(25歳・♂・ナイト・エルフ・イギリス王国)
 ea0673 ルシフェル・クライム(32歳・♂・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ea3888 リ・ル(36歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 eb0062 ケイン・クロード(30歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 eb0908 リスティ・ニシムラ(34歳・♀・ファイター・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb2628 アザート・イヲ・マズナ(28歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・インドゥーラ国)
 eb2745 リースフィア・エルスリード(24歳・♀・ナイト・人間・フランク王国)
 eb3776 クロック・ランベリー(42歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)

●サポート参加者

一条院 壬紗姫(eb2018)/ ランデル・ハミルトン(ec1284

●リプレイ本文

○迎えられた客と招かれざる客
 小さくても品揃えの良い品を扱う雑貨屋だった。
 その日、店はいつもと違う様子にザワめいていた。
「いいですか? レティさんの為にもこの駆け落ちは阻止しなくてはなりません」
 使用人達にリースフィア・エルスリード(eb2745)は激を飛ばす。
「お嬢様の為? ですか?」
 彼女が望むなら駆け落ちを助けたいと思うものさえもいたからだ。
「ええ‥‥。考えた末の事なのでしょうが、その選択はやはり間違いなのです」
 きっぱりと顔を上げ、リースフィアは使用人達に告げる。
「安易な駆け落ちは断絶を生むだけ。それにどこに行こうと待っているのは苦しい生活。大切なこの時期に無理をすることも母子に良くありません。悪いようにしないから任せて欲しいのです。私達を信じて‥‥」
 その誠実な瞳を疑える者がいようか。
 使用人達は頷き、冒険者への協力を約束する。
「さすが‥‥だな」
 いつの間に? 背後で腕を組むリ・ル(ea3888)に微笑みながらリースフィアはまじめな目を向ける
「‥‥リルさん。いえ、ただ、内通者がいたりしたら‥‥少々やっかいなことになります。意思の統一は何より重要と考えます」
「確かにな。駆け落ちはまず周囲を不幸にし、次に本人を不幸にする。そいつをどっちも解ってくれればいいんだが‥‥」
 振り返り階段の上を見上げる。今頃親子同士の会話が行われているはずだが‥‥。
 ガシャン!
 何かが壁に当たって割れる音がする。どうやら話し合いは決別に終わったようだ。
 やれやれと、肩を下げるリルとリースフィアの後ろでトントントン、ノックの音がした。
「おや、お前さん達は‥‥」
 やってきた若い娘は二人。丁寧に頭を下げると手短にここに来た目的を口にした。
「‥‥いいだろう。ちょっと待ってな」
 リルは微笑むと階段を上っていく。そして待つこと暫し。
 憔悴しきった顔で現れた夫婦に
「実は‥‥」
 彼女達は誠実な眼差しで話しかける。それに付き添うリル。

 逆にリースフィアは上の部屋に向かい扉を開けた。
「ま、あんたが誰を好きになろうがどうしようがあたしにはまったく関係のないことではあるんだけどねぇ」
 投げつけられたであろうコップを黙々と拾うアザート・イヲ・マズナ(eb2628)の横で
「生まれてくる子はあたしのようなハーフエルフの可能性があるわけだ。あんたは自分の子供が迫害されることに耐えられるかね?」
「だから‥‥よその国に‥‥」
「荷を引き、死体と並んで眠った事は‥‥ハーフ故の事じゃないが、よその国だろうと同じだ。禁忌の存在がどんな扱いを受けるか、よく考えるんだな」
「‥‥‥‥」
 リスティ・ニシムラ(eb0908)とアザートの言葉にレティは反論することもできない。下を向いている。
 リースフィアは思った。生まれてくる子の試練は運命付けられている。キエフならまだましかもしれないが、子供の成長にあそこほど悪影響がある国もあるまい。なら‥‥
「親子で、その子を守ってくれる人と共に試練を乗り越えて欲しいと思うのは甘いのでしょうか?」
 結論はまだ出ない。答えを出すのは冒険者ではないのだから。

○質問の答え
 くすくす‥‥。
「外見はお化粧で隠せても身長は隠せないって知ってます?」
「おいたはダメさねえ〜」
 くすくすくす‥‥。
 笑いながら伸びてくる手に後ずさり‥‥そして彼女は悲鳴を上げた。

「やれやれ」
「よう、お帰り。どうだったい?」
 溜息をつきながら帰還したクロック・ランベリー(eb3776)をリルは笑顔で迎える。
 だが対抗依頼の参加者を調べに行ったクロックにはどうしても笑顔が出ない。
「向こうの連中もかなりの実力者揃いだ。手加減はできないぞ」
 いくつか指を折りながら挙げた名前にルシフェル・クライム(ea0673)は苦笑する。
 知った名前が随分といた。
「まあ、相手が誰があろうと突破させるわけにはいかないんだけどな」
「おや、そっちもお帰りかい?」
 いつの間にか戻ってきていたマナウス・ドラッケン(ea0021)はリルに小さく手をあげた。
 どうだった、とはこちらには聞かない。
「まあ、言うだけの事は言ってきました。それを、聞いてくれるかどうかは‥‥彼次第です」
 静かに目を閉じるケイン・クロード(eb0062)。どうしてもロビンに言いたいことがあると言った彼がロビンとの会見で何を思ったかはマナウスでさえ解らない。だが解ることもある。
「‥‥逃げる事は絶対に許されない。それが、答えだから」
 彼の瞳の裏に写るのはきっと、酒場で出会った銀の髪の少女。
 薄く笑い、マナウスは仲間達の方を見た。
「そっちの準備は万全みたいだな」
「ああ、ちょっと暴れられたけど、もう諦めたみたいだぜ。作戦の内容については口を割らなかったけど多分明日の朝ってところだろう。本当は逃がしたいんだが、ここまで潜入されてるとな‥‥とりあえず、リースに任せてレティの部屋に転がしておいた」
 肩を竦め笑うリルに冒険者達は頷きあう。
 勝負は明日。
 見張り当番を決めて冒険者はそれぞれに、持ち場に別れていった。

 その日の夜は静かだった。
「おや? なんですか?」
「少し、聞きたいことがある」
 そんな会話があった他は、本当に静かな夜が更けていった。

○決意の調べ
「やれやれ、来ましたか!」
 ケインは小さく微笑む。昨夜の静けさを吹き飛ばす思いもかけない敵の登場にだ。 
 ゲゲロゲロ!
「うわっ! なんだ?」
 外の見張り手伝いの使用人は、突然現れた異様な物体に、皆、目を見開いている。
 巨大な人の乗るガマガエルに、ド派手な着ぐるみの忍者。
「下がっていてください。危ないですよ。噛み付かれますから」
 使用人達を下がらせたケインは苦笑する。
「妖怪“鬼鳥ふうふ”なのであるぅ〜。冒険者、覚悟であるぅ〜〜」
 巨大な体格に似合わぬ素早さで庭を飛び跳ねる大ガマと忍者。
「女性、ではありませんね。なら思いっきりいかせて頂きましょうか!」
 剣を抜いてケインは大ガマに飛びかかって行った。

 外で起こった騒ぎは、室内の冒険者達にも届いていた。
 聞こえる地響き。高笑い。一人になってしまったケインを助けに行きたいところではあるが、
「今は、それどころじゃないな」
 と彼らは踏みとどまった。これはおそらく陽動、
 ならばもう建物の中に入っている可能性がある。
「‥‥アザート。皆に伝えてもらえるか?」
 それを最初に感じたルシフェルはアザートに伝言を頼んだ。
 無言で頷きアザートは走り出す彼のおかげで。
 廊下を鳴らす足音が聞こえてくる直前。
 リルとクロック。そしてルシフェルは揃って彼らを。
「よう! おいでなさったな?」
「!」
 出迎えた。
 不意を付かれた冒険者達にクロックは
「すまんがここから先はとおさんよ」
 と腕を組み、リルは
「先に進むと言うのなら手加減はしないぜ」
 と邪笑を湛える。槍を構え
「二人の思いは解るが、ご両親の気持ちも解る。悪く思うな」
 告げた彼らに、旧知の女騎士が一人、一歩、前に出た。
「私が足止めします。どうぞ、先へ! 躊躇っている暇はありません! さあ!」
 三人の冒険者を一人で足止めしようとする。そのあまりにも彼女らしいあり方に
「直接対決をすることになるとは思わなかった。でも逃がしはしないぜ」
 リルは知らず楽しい気分になっていた。
 だからほんの少し、隙があったかもしれない。
「貴方達に実力で叶うとは思っていません。だから‥‥今回は援軍を呼びます」
「援軍?」
「ルヴィリア!」
 騎士の声と共に突進してきた毛玉を押さえきれなかったのだから。
「犬? うわっ! こらっ! 止めろ!!」
 イニシアチブを取られ、犬は完全に勢いに任せリルを押し倒していた。
「猫だったら完璧だったのでしょうが。足止めにはなるでしょう。貴方が動物を傷付けられる人だとは思いませんから」
「確かに!」
 一瞬、両方の場を笑顔が支配する。
 だが直ぐに二人と一人は顔を合わせ武器を構えた。
 憎しみ合う相手ではない。目的も、きっと本当は同じ。
 だが、今は敵。
 一触即発の彼らの眼前に‥‥
「!」「?」「!?」
 突然大きな穴が開いた。
 二人は背後に、騎士は前に飛びのいた。
「大丈夫ですか?」
 駆けつけた仲間に気付き、騎士は微笑んでいる。
「‥‥手伝います。とにかく時間を‥‥」
「ええ」
「悪い、避けてくれよっと!」
 犬を抱き上げ、他の部屋に放り込みリルは仲間達と顔を合わせる。床に開いた穴を見つめて言った。
「ウォールホールの魔法か」
 今、自分達と彼女達を隔てている穴。無理すれば飛び越えられないことは無いかもしれないが‥‥
「ま、焦ってもしょうがないな? 呪文が終わるまでに結果が出るかもしれないしな、一時休戦だ」
「結果?」
 冒険者達の視線は、その時、互いではなく目に見えない方向。
 遠い二人を見つめていた。

 聞こえてくる足音。
 頷きあったリースフィアは一歩前に出てリスティは逆に一歩下がる。
 窓際のレティと、捉えた小さいメイドを奪われない為に。
 捕虜に気付き責める様な眼差しを向ける冒険者達にリースフィアは
「こんなことはしたくは無かったのですが、侵入者には心からのおもてなしを」
 冷静に告げた。そんな彼女に足元から悔し紛れの声が飛ぶ。
「面子や世間体ばかり考えて、片親のいない子供がどんな気持ちなのかを考えての行動じゃないよ。妊婦さんに負担は絶対かけちゃダメ!」
 少し苛立った思いでリースフィアは彼女を見下ろす。
「貴方にそのセリフお返しします。私は侵入者を撃退するだけです」
 その目は厳しく、真剣。
 だから、だろうか? 一人は彼女ではなく、後ろのリスティに呪文を放つ。
「!」  
「効かない? 何故?」
 動揺するように目を瞬かせる冒険者。
「女性を無理やり眠らせるのは趣味悪いよ?」
 リスティにかけたスリープの魔法を彼女は自分の力で破ったのだ。
「なんという‥‥」
 驚いたように口にするロビン。
 だが、次の瞬間一人の冒険者が取った行動は、それ以上に冒険者を驚かせる。
 黒髪の彼女はいきなりリースフィアの眼前に立った。
 持つものは何もなし。
 目を瞑り手を合わせても完全に無抵抗。二人は思わず顔を見合わせた。
 完全に意表をつかれた一瞬の隙。そこを狙われて‥‥
「行って!」
 捕まえられた少女を助けるより先に彼女自身が、依頼の為、二人の為に動いた。
 身体で押し出すように窓際のレティを奪還する。
「ロビンさん! 彼女を連れて! 早く!」
「ロビン!」
 愛する人を恋人は抱きしめている。だが、彼の足は止まっていた。
 どうしたのだろう? と。
 状況は冒険者優位に進んでいる。レティは奪われたが、奪われてはいない。 
「逃げるのか?」
 彼らの背後には仮面を付けたマナウスとアザートも彼を見つめている。
 前を後ろから『敵』に囲まれ、恋人達を。
「何かから逃げた先に幸福なんて無い。それでも‥‥」
「逃げるのか?」
 背後からマナウス達が覚悟を問うように言う。
「お行きなさい。早く!」
 逆に味方の冒険者達は促す。だがそれでも、ロビンの足は動かなかった。
「ロビン?」
 暫く考えるように目をつぶっていたロビンは
「お屋敷の冒険者さん。お願いがあります」 
「なんですか?」
 顔を上げリースフィアに話しかけた。
「どうか、取り次いで下さい。ご両親に話がある。と」
 言った彼は、足元に落ちた竪琴を拾い奏でる。
 朝靄の中、その音は、優しく甘く、人々に思いを伝えてくれた。
 彼の、心からの決意を‥‥。 
 
○一つだけの願い。
 ロビンの竪琴の音色が響いて後、ヴァルからの依頼を受けた駆け落ち阻止組の冒険者達は、全員が無言でその場を離れた。
「私達の役目は、ここまでですね」
 リースフィアの言葉にああ、とリルは頷く。
「ここから先は、あいつらの問題。そして‥‥それを助けるのは奴らの仕事だ」
 だから、冒険者達はここにいる。
 彼らとは道一本隔てた遠くから、彼らを見守っているのだ。
「ま・多分、もう大丈夫だろう。あの目は、最初とは大違いだった」
「そうですね」
 ケインは頷く。マナウスの言う最初、とは酒場で初めに彼と出会った時のこと。
 あの時の彼は、本当に酷い目をしていた。吟遊詩人だというのに音も不安定そのもの。
 だが、今は愛する者を腕に抱き、強い決意を持って家族と対峙している。
 それに冒険者の援護があるのなら、説得は時間の問題だろう。
「それに‥‥どうやらあいつが下準備して行ってたらしいからな? まったく余計なおせっかい野郎だぜ」
「あいつ?」
 親愛の篭ったリルの悪口に首をかしげるリスティの横でアザートは
「‥‥家族というのは、面倒なものだな」
 と呟いた。
「まあそう言うな。家族とて人間。ぶつかり合うこともある。だがそれを超えてこそ真の絆が繋がれる。人間社会の最小単位だからな」
 冒険者の背後から声が降る。ある者には聞き覚えのある、ある者には聞き覚えの無い九番目の声。
「今回はご苦労だったな。期待通りの成果をあげてくれたことに礼を言う」
「ヴァル‥‥」 
「あんた、依頼人か?」
 まあな、と肩をあげた依頼人ヴァル。
「あんたの期待とは‥‥いや、なんでもない」
 アザートは質問を、そっと胸に封じた。
 昨夜聞いたケインの答えが心をよぎる。
『僕は聞きました。『彼女と子供を本当に愛するなら、最初に両親に話をしておくのが筋であった。今になって駆け落ちなんて‥‥同じ冒険者として、男として、都合の良い考えだとしか思えない。彼女の両親から彼女を奪い‥‥この街から逃げ‥‥それで彼女と子供を本当に幸せに出来るか? 本当に彼女達を護りたいなら、この国で、この街で護る‥‥その選択は、覚悟は出来ないのか?』と

 ひょっとしたらと思う。
 ヴァルはあの青年に『覚悟』をつけさせることを一番、望んでいたのだろうか?
 向こうでは銀の髪の少女が必死に両親を説得している。ここからは遠くて声は聞こえない。
 でもケインには彼女がなんと言っているか、解る気がした。きっと、気持ちは同じだから。
「‥‥後は彼らが幸せになってくれる事を願うだけだから、ね」
 微笑むケインを見ながらルシフェルも、ヴァルもそして冒険者達も頷いた。
 願いは一つ、思いは一つ。
 冒険者は皆、その思いで動いたのだから。

 冒険者達は帰路に着く。
「でもな、ヴァル。娘達へのスパルタが過ぎるんじゃないか?」
「いやいや、もう少し悩んで欲しかったところだな。あの子達はまだまだ甘すぎる‥‥」
(「この依頼出したことがバレて‥‥あとでどうなってもしらんぞ」)
 そんな会話をしながら‥‥ふと全員が誰とも無く振り向いた。
 彼らが見たものは互いに手と心を結び合うロビンとレティ。
 そして二人に差し出された手。

 冒険者は歩き出す。
(『どうか、幸せに』)
 心からの願いを彼らに残して。

 その後、依頼人は娘達にバレて、膨れっ面をされたとか言うの噂は別の話である。