【英雄 想う人】優しい森

■ショートシナリオ


担当:夢村円

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:5

参加人数:10人

サポート参加人数:8人

冒険期間:05月12日〜05月22日

リプレイ公開日:2008年05月20日

●オープニング

「さて、どうしたものか」
 一通の手紙を手に円卓の騎士、パーシ・ヴァルは何度目かの溜息をついた。
「何を困っておいでなのですか?」
 側で書類の整理をしていた従騎士が心配そうに問う。
「別に困っているという訳ではないが」
 呟きながら彼は、ピンと指で羊皮紙を弾く。
 丁寧で端整な字でその手紙にはこんな思いが綴られていた。

『パーシ様。
 先日はいろいろとお世話をおかけしました。
 円卓の騎士の皆様がお仕事にお忙しいのは存じておりますが、一度休暇を取られてはいかがでしょうか?
 リトルレディも寂しがっていると思いますし、五月のイギリスは美しい花のシーズンです。薔薇はこれからにしても、あちらこちらで木の花、草の花が美しく咲いています。
 こんな時に、のんびりとピクニックでも楽しめればと失礼とは思いまいたが、お手紙を差し上げました。
 上司のいない状態でも仕事が滞りなく出来るように、時々は部下の方に仕事を任せなくては!

 ぜひのご検討をよろしくお願いいたします。

 シルヴィア・クロスロード(eb3671)』

 目の前で彼女が喋っている声が聞こえてきそうな程、彼女らしい手紙。彼女らしい提案。
「まったくおせっかいな奴だ」
 もう一度、手紙を弾く。
 けれどもその提案を知った従騎士どころか部下達の殆どが
「良いではありませんか」
「パーシ様は働きすぎでは?」
「ぜひお休みを取っていらして下さい」
「留守中はしっかりと守りますから」
 と肯定&追い出しムードである。
「せっかくシルヴィアさんのお誘いです。たまにはお嬢様と一緒に休んでこられてはいかがでしょうか?」
 副官の騎士までもがそう言う。
 ‥‥いつの間にやら彼女はパーシの部下の騎士達を味方に付けていた様だ。
「やれやれ‥‥ん?」
 言いかけてふと、彼は何かに気付いたように副官に確認した。
「今は5月の7日、だな‥‥」
「そうですが? 何か?」
 パーシは答えなかったがその時、パーシは見た事の無い表情をした、と後に副官は思った。
 遠い何かを見るような、憂いを湛えた目を‥‥。
「‥‥そうだな。たまには休みをとってみるか」
 立ち上がり部屋を出ようとする彼は
「その時には後を頼んだぞ」
 微笑んでいた。いつもと変わらない円卓の騎士の笑みで。

 パーシからの返事を受け取ったシルヴィアはその足で冒険者ギルドに依頼を出した。
「のんびりとピクニックに行きませんか? パーシ様とリトルレディと一緒に」
 依頼と言うより誘いではあるが円卓の騎士とその息女との旅行と言うのは興味を持つものがいるかもしれない、と係員は思った。
「しかし、ピクニックにしちゃあ、遠い所にいくんだな」
「パーシ様のご希望なんです。何でも生まれ育った故郷の森、だとか」
 目的地を見て呟いた係員の疑問は、実はシルヴィアも思った事だった。
 片道歩いて五日はかかる遠いウェールズの森。パーシや冒険者だけならともかく幼いリトルレディには少しキツイのではないか。と。
 しかしそれを問うた時、パーシは
『その森には、俺の母上がいるんだ。いい機会だからヴィアンカを見せてやろうと思ってな』
 と言ったのだ。
 その時、彼が少し寂しげな表情を見せたのが気にはなるが、彼なりの考えがきっとあるのだろう。
「パーシ様の自慢の森だとおっしゃっていました。きっと遠くまで歩く価値はあると思いますよ。暇があれば手合わせに応じて下さるともおっしゃっていましたしお時間のある方はぜひ」 

 建前にも本音にも嘘はない。
 皆で、のんびりと休暇とピクニックを楽しみたいと思う。
 けれど、それと同時に
 パーシの生まれ育った場所が見れる。
 家族に挨拶できる。
『恋する乙女』としては胸が高鳴るのを感じずにはいられなかった。
 

●今回の参加者

 ea2307 キット・ファゼータ(22歳・♂・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea3991 閃我 絶狼(33歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea5322 尾花 満(37歳・♂・ナイト・人間・ジャパン)
 ea6557 フレイア・ヴォルフ(34歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea6970 マックス・アームストロング(40歳・♂・ナイト・ジャイアント・イギリス王国)
 ea7244 七神 蒼汰(26歳・♂・ナイト・人間・ジャパン)
 ea9951 セレナ・ザーン(20歳・♀・ナイト・ジャイアント・イギリス王国)
 ea9957 ワケギ・ハルハラ(24歳・♂・ウィザード・人間・イギリス王国)
 eb3671 シルヴィア・クロスロード(32歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ec0246 トゥルエノ・ラシーロ(22歳・♀・ファイター・ハーフエルフ・イスパニア王国)

●サポート参加者

アルディス・エルレイル(ea2913)/ 七神 斗織(ea3225)/ タケシ・ダイワ(eb0607)/ 青柳 燕(eb1165)/ 桜葉 紫苑(eb2282)/ レイチェル・ダーク(eb5350)/ レア・クラウス(eb8226)/ マティア・ブラックウェル(ec0866

●リプレイ本文

○黄金の光景
 五月、六月のイギリスは黄金の季節。
 国中が花で溢れる。
 クロッカス、ビオレはそろそろ終わりだが、マーガレット、キンポウゲ、アイリス、クローバー。
 歩く道に花が途切れる事は無く咲き、道行くものの目と心を楽しませてくれる。
「いい天気だ。絶好のピクニック日和だな」
 空を見上げながら呟く閃我絶狼(ea3991)に
「そうだな。こういう静かで穏やかな時間も悪くない」
 パーシ・ヴァルは頷いた。
「静か?」
 思わず絶狼はツッコミを入れる。
 自分達は最後尾を歩いているが前の一行は、静かという形容詞とはとても程遠い。
「うわ〜。綺麗なお花がいっぱい」
 嬉しそうにはしゃぐ声をあげるのはヴィアンカ・ヴァル。彼女と手を繋ぎながら歩いていたセレナ・ザーン(ea9951)は、ふと草陰の小さな花に気付いて足を止める。
「本当に。あら、これは‥‥なんという花でしょうか?」
 薄い黄色の花を見て、ああとフレイア・ヴォルフ(ea6557)は笑う。
「それはプリムラ。もう名残の花だね。この花は香りも良くて‥‥ってこら! ニル! いい匂いだからって花を食べるんじゃないよ」
「絶狼さん。ガオくんも何か葉っぱを食べているようですが宜しいのですか? 音呼もダメです!」
 ワケギ・ハルハラ(ea9957)は心配そうに小さな猫(?)の顔を覗き込む。
 慌てて走り出す絶狼。
「おい! 変なもの食べてるんじゃないだろうな‥‥。あ、ミントか。それならまあ大丈夫だろうけど」
「犬猫も春で浮かれてんだな。‥‥お前も少しは浮かれたらどうだ?」
 楽しげな娘と冒険者達と動物達を優しく見つめていたパーシは
「見送りにきた奴にも似たようなことを言われたがな。俺には難しすぎる」
 キット・ファゼータ(ea2307)の声にただ苦笑した。
 その隣を静かに、無言で歩くシルヴィア・クロスロード(eb3671)。
 二人の様子に肩を竦めながらキットは空を見上げる。
 桜葉紫苑が予告したとおり、当分の間、良い天気は続くだろう。
 透き通った空に彼の鷹が楽しげに踊っていた。

 ウェールズの方はイギリスの中でも高地が連なる険しい土地だと聞く。
 パーシが目的地と示した場所はその中から見れば比較的キャメロット寄りであるが、それでも普通に子供と一緒に歩けば五日はかかる。
「休みは十日程しか無くてな」
 ピクニックというには少し、早足の旅。
 けれども、冒険者は元より健脚だし唯一の子供であるヴィアンカも父や冒険者に馬に乗せてもらいながら旅を楽しんでいる。
「おい! 少し休憩にしようぜ!」
 そして、馬上のヴィアンカが疲れたであろう頃を見計らってキットが声をかけてくれるので
「疲れていないか?」
 自分を馬から抱き下ろしてくれる父に、
「うん! 大丈夫!」
 いつも少女は輝く笑顔を見せるのだった。
「ヘンルーダは、大丈夫か?」
 ヴィアンカの馬から遅れることほんの僅か。
 馬を止めた七神蒼汰(ea7244)は先にひらり、と降りると同時、馬上の娘に向かって手を伸ばした。
「だ、大丈夫。騎士を目指す者がこのくらい馬に乗っただけで疲れてなんかいられないわ」
 差し出された手を薄桃色に染められた手で握り、ヘンルーダと呼ばれた娘はトン、と大地を踏む。
「さて、では食事にするとしようか。ふむ、キャメロットから作ってきた食事も残り僅かだな‥‥」
 一行の食事を自ら進んで担当する尾花満(ea5322)は、うむと唸って荷物を見た。
「心配しなくても大丈夫だよ。保存食は山ほどあるし、お菓子も沢山持ってきてある。いざとなったら、あたしとフリードでなんか狩ってくるからさ。ね?」
 夫に鮮やかに笑うフレイアに、名前を呼ばれたフリードは弓を磨いていた手を止め顔を上げた。
「それは‥‥。ですが僕が、役に立てるのでしょうか‥‥」
 自身無げなフリードの額をピン、フレイアは小突いて軽く溜息をつく。
「この旅はいい訓練の機会だって誘った時言ったろう? どんな事も無駄にしない。どんな事も学ぶ。それが強くなるって事だ。そうだ。パーシ殿?」
「何だ?」
 休憩の支度をしていたパーシに向かってフレイアは軽いウインクをする。
「後で狩でもしないかい? 武器は持ってきてるんだろ? この子に見せてやって欲しいな。『弓の使い方』ってのをね?」
「それは構わないが、無駄な殺生はしないぞ」
「そりゃあ勿論。じゃあ、決まりだ。って訳だよ。満」
「じゃあ、明日からは温かい料理も食べられるわね。ならほら、シルヴィア。お弁当もそろそろ出さないと痛んじゃうわよ」 
 満と一緒に一行の食事を担当していたトゥルエノ・ラシーロ(ec0246)は横にいた親友を肘で突いた。
「はい。あの‥‥。一日、過ぎてしまったのですが‥‥どうぞ!」
 後押しをされ、逡巡の末、布包みをシルヴィアは差し出す。
「ああ」
 中に入っているのは焼き菓子やパンとそれに挟まれた肉や魚。バックパックに入れていたので少し歪んでいるような気がするが
「頂こう‥‥。ああ、なかなかの味だ」
 パーシは素直に食べてくれた。レア・クラウスの占いが良い結果を与えてくれたのかもしれない。
 料理の腕はまだまだだが、満は言っていた。
「一朝一夕で覚えずとも良い。まず大事なのは『食べてくれる人への想い』。それを忘れず励めば、自ずと腕は上がるものだ」
 なら、一番大事なものは山と詰めている。
 シルヴィアは花のような笑顔を見せ、満達の手伝いを続ける。
 食べ盛りの子供達。ヴィアンカやキット達も料理に手を伸ばし口に運ぶ。
「形は今一だけど、食えるな」「おいしいよ」
「あ、ありがとうございます」
 彼女は知っていたろうか? 礼を述べるシルヴィアを、見つめる瞳があった事に。
「何してるんだ? 翡翠が心配してるぞ?」
 足元にやってきた犬と、蒼汰に気付いたヘンルーダは振り返り、一瞬ハッとした顔を見せると
「彼女‥‥パールが好きなのね?」
 そう呟いた。
「ああ、そうらしいな。パーシ卿もそれを知っている。けど、気付かないフリをしている。嫌いでは無い筈だけどな」
 蒼汰は頷き続ける。
「自分が幸せになっちゃいけない。そう思ってるのかな」
「バッカみたい‥‥きっと兄様の事を気にしてるのね。でも‥‥」
 悔しげに手を握り締めるヘンルーダを蒼汰は瞬きをして見つめる。
 彼女は変わったか、と。暫く前、いや、ひょっとしたら出発前のあの時から‥‥。
 アルディス・エルレイルやレイチェル・ダークと話していたパーシの横で彼女は確か妹と‥‥
「なあ、ヘンルーダ? 」
 蒼汰はそっと恋人(?)の名を呼びかける。
「! な、なあに?」
 ハッと、我に返ったようにヘンルーダは蒼汰の方を向く。
「あの時、何を話してたんだ?」
「あの時って‥‥!」
「出発ま‥‥」
 彼女は顔を瞬間で朱に染める。そして
「何って、何でもないわよ! パールも貴方も女心解ってないんだから!!」
「えっ!?」
 真っ赤になって走り去って行くヘンルーダを訳もわからない蒼汰とコリー犬。そして
「青春である。よい光景である」
 微かなペンを走る音が見送っていた。
「ほら、もっと食べないか?」「みんなで沢山作ったからね。あ、それはシルヴィアの作よ」
「この弓の使い方は‥‥」「ああ、これは、ここをこうして‥‥」
「ほら、ヴィアンカ。こぼしてるぞ。せっかくのいい服が汚れてって、お前なんでずっとバックパック背負ってるんだ?」
「な、ないしょ! ね? セレナ」「そうですわ。女性のカバンには秘密が詰まっているのですよ」
「絶っ太。もう諦めろ。ほら、パンくずは落としてやったから」
「音呼! パーシさんの魚を取っては‥‥」「別に構わんよ。ほら、やろうか?」
 青春の姿と、楽しげな冒険者達の休息。そんな黄金の光景をマックス・アームストロング(ea6970)は
「いい光景である!」
 嬉しげに楽しげに、羊皮紙に写し取っていた。

○花の奥の貴人
 その森には美しい花の絨毯が敷き詰められていた。
「凄い。これはブルーベルの群生ですね」
 ワケギは冷静に分析するが、他の冒険者達。特に女性達は言葉も無い。
 青い釣鐘にも似た小さな花。ブルーベルが木々の根元や、光差す草葉の間に広がっている。
 所々に白いアクセントを与えるのは白い鈴蘭。
「見て! 綺麗!」
 ヴィアンカが馬上から指差した頭上には白と紫、そして黄金の花が房をまるでシャンデリアのように垂らしていた。
 細いが手入れされた道をパーシが案内するまま呆然と歩いていた彼らはやがて、開けた森の奥に小さな家を見つける。
「お帰りなさいませ。パーシ様」
「久しぶりだな。ジーノ。レーツェル」
 出迎えた老夫婦に、冒険者が見たことの無いような笑顔を見せたパーシは振り返って冒険者達を二人に指し示す。冒険者は少し驚く。人がいるとは思わなかったのだ。
「彼らは俺の友。そしてこいつが俺の娘だ」
「キャッ!」
 突然抱き上げられさらに驚いた顔のヴィアンカ。教会で礼儀作法は教えられているが初対面の挨拶は彼女の口から出ては来なかった。
 無理も無いだろう、と冒険者達は思う。
「パーシ様の、お子様?」「奥様も‥‥さぞお喜びでございましょう」
 二人の老人はそのまま泣き崩れてしまったからだ。
 悲嘆ではなく、喜びの涙。
「えっ?」
 その時、この森と、この旅の真実にヴィアンカ以外の全員が気付いてしまっていた。

「母親に会いに行くのに見せたいって言い方が気になってはいたんだよな」
「まあ‥‥な」
 絶狼と、キットは腕組みをしながら木を挟んでほぼ背中合わせに立っている。
 森に来て二日目の朝。明日にはもう帰らなければならないから、実質今日がここでのんびりと遊べる最後の日となる。
 二人の視線の先には花を摘むヴィアンカと、セレナ。動物達。
 それを見つめながらメロディーを口ずさむワケギ、スケッチを続けるマックスがいた。
 フレイアと、パーシ、フリードは森で今日の夕飯用の狩をしているのだろう。
 満とトゥルエノは家の台所を借りての食事の支度中。シルヴィアも姿をどこかに消していた。
 全員が努めて明るく空気を作ろうとしているのが解る。
「まったく、こうなる事をアイツが解っていなかった筈無いだろうに」
 キットの口調は言葉ほど、相手を非難はしていない。
 それ程に、森の空気は優しかった。
 ブルーベルの花の奥に眠る貴人。
 この森に住んでいたパーシの母親の思いが今も残っているのかもしれない。
「母上‥‥ただ今戻りました」
 昨日、パーシは森についてまず最初に小さな石碑の前に進み出た。
 ブルーベルの香りの中、騎士の礼で跪く彼の姿に
「パーシ‥‥様」
 冒険者の幾人かは目を伏せ、
「はじめまして。セレナと申します。ヴィアンカ様には仲良して頂いておりますの」
「パーシ卿は、いい騎士だよ、心配しないでいい」
 幾人かは感じていたかのように礼をとり、また静かに頭を垂れ祈りを捧げた。
 後に彼は言う。
「あれは俺の母上の墓だ。俺のせいで死なせてしまった‥‥な」
 と。
 昨日の夜、家を冒険者達に明け渡しパーシとヴィアンカはキットが提供したテントに眠った。
 そして冒険者は
「もし聞かれたら話してよいと言われております」
 老夫婦から話を聞いたのだった。
 それは彼の昔話。
 パーシが子供の頃、ここで母親と身の回りの世話をする老夫婦と暮らしていた頃の話だった。
 母親を愛し、日々の獲物を母に捧げ猟師か農民として平凡に、だが平和に暮らす筈だったパーシは、やがて旅の騎士と出会い騎士を夢見る事になる。
「僕は、騎士になりたい。輝く心と魂を持った騎士になって、僕が助けられたように誰かを救う者になりたい!」
 母の反対を押し切り旅立った事。
 そして彼が
『騎士として生きるなら、その志を叶えるまでここに戻ってはなりません』
 母の最期の言葉を守ったが故に最近まで知りえなかった事。
 母が、彼の旅立ちを見届けて直ぐに悲しみの余り死んでいた事を。
 パーシ自身つい最近までそれを知らなかったという。
 暗い思いを抱いて冒険者は眠りについた
「おはよう! 良く眠れたか?」
 翌朝のパーシはあまりにもいつも通り。
「今日は一日好きにして構わない。せっかくだから楽しんでくれ」
「‥‥あの馬鹿!」
 足元の石を蹴飛ばして、キットは呟いた。そして木から背中を離す。
「どこ行くつもりだ?」
 絶狼は問う。
「あいつの言うとおり好きにさせてもらう! ヴィアンカ!」
 走り出すキットに絶狼は肩を竦め、そして‥‥楽しげに笑ったのだった。

○優しい森
 森の中に剣戟が響き渡る。
「いいかい、良く見ておくんだよ。剣と弓の違いはあっても戦いで隙を見るタイミングはそう違いは無い」
「はい」
 フレイアの言葉にフリードは頷いた。
 絶狼の審判の元、今は二対一の変則試合が行われている。
 受けるはマックス、攻めるのは人間のキットと満。
「始め!」
 絶狼の手が下がり、キット達は走り出した。
 先手必勝で攻めてくるか。守りを固めるマックスは放たれた真空の攻撃をとっさにかわした。
 満はまだ攻めに来ない。タイミングを伺っているのか。
 槍と剣のリーチの差はあっても、こちらには遠距離攻撃の手段は無い。
 マックスは攻撃に行くのを止めて、腰を入れ槍を構えた。
 相手の攻撃を待つ先方に勿論二人は気付いているが、ここで逃げては意味がない。
「よし‥‥行くぞ、満!」
「おう!」
 二人は同時に駆け出す。
(「よし! どちらか、一方は受けて」)
 カウンターの用意を整えマックスが深く呼吸をした瞬間、
「行くぞ!」
「何!」
 彼は、見ている観客よりも早く、その声をあげた。
 キットが満の肩を踏み台にして飛び、今やマックスの頭上より高くにキットの剣がかざされている。そして真下には地を這うように突進してくる満の姿。
「タアッ!!」
 二人同時の攻撃、左右からの連携は十分に考慮していたが、まさか上下から来るとは。
 カウンターの方角を頭上のキットに変えて槍を大きく振るう。
「うっ!」
 空中で避ける事もできずキットは攻撃をまともに喰らって大きく剣を空振り、着地する。だが、その時には勝敗は決まっていた。
「そこまで!」
 喉元まで近づいた満の剣を確認し、絶狼は宣言する。
 安堵の息が広がった。
「二対一はやはりキツイであるな。でも上下攻撃とは恐れ入ったのである」
「でも、空中では逃げられないから、そうそう実戦では使えないかもな」
 笑って敗北を認めるマックスに、キットは考える。
「次は私なんだけど。マックスさん、大丈夫かしら?」
「無論!」
 近づくトゥルエノにマックスは槍を握り締めなおしキットは下がり、第二カードが開始される。
 今度は一対一。槍対槍の勝負だ。
 互いに近い技術と能力。ほんの小さなことが勝敗を決める。
 その戦いを蒼汰はヘンルーダも共に見つめていた。
「凄いわね‥‥。私には遠すぎる」
「そんなの努力次第でいくらでも近づけるさ。終わったら前みたいにやるか? お互いの腕があれからどれだけ上がったのか知りたくないか?」
 明るく誘う蒼汰に、だがヘンルーダは首を横に振る。
「‥‥私、まだ本当に届かないもの」
「ヘンルーダ‥‥」
 蒼汰がかける言葉を捜しているその間に第二戦の勝負はついた。
 ガシャン!
 トゥルエノの槍が地面に刺さる。
「そこまで!」
「あ〜あ、あと少しカウンターのタイミングが合わせられれば勝機はあったかもしれないのに、深く踏み込みすぎたわ」
「実力の伯仲した相手に余計な小細工は無用であるからして。でも、いい勉強になったのである」
「確かに、な」
 握手しあうマックスとトゥルエノの言葉に同意するように、いつの間にか来ていたパーシの言葉かかぶさる。
「お互いの実力が均衡している時は、ほんの一瞬のタイミングの読み違いが今のように勝敗に繋がるから気をつけないといけない。でも‥‥落ち着いたか?」
「狂化を恐れていられないから。それを頭に置いて戦うの。覚悟ができていると、やっぱり動きが違うみたいね」
 試合の内容を的確に評価し、冒険者にアドバイスを与えるパーシ。
 手合わせは続き、今度はパーシも加わって武器を合わせる。
 いつも以上の鋭い捌きに冒険者は、彼の思いを感じた気がした。
 母の前で、不恰好な事はできないという‥‥。

 傾きかけた夕日。剣の先ももうじき見えなくなる。
 そこで訓練は終了となった。
「手合わせも終わったし、なあ。ヴィアンカ、もう一度追いかけっこでもするか‥‥ん?」
 言いかけてキットはふと、気がつく。
「パーシが、いない?」
 狩の獲物の鹿は残されている。だが、さっきまで手合わせていた騎士の姿はどこにもなかった。
「この森でパーシさんが迷うとは思わないけど、皆で捜しましょうか? 私ももう一度手合わせお願いしたいし」
 トゥルエノの言葉にフレイアも、冒険者達も頷く。
「夕飯の用意、頼むよ。満。行こう、シルヴィア」
 もう直ぐ夕刻、森は茜色に染まりかけていた。 

 パーシ・ヴァルの姿を誰よりも早く見つけたのはシルヴィアだった。
「シルヴィア?」
 ブルーベルの絨毯の上、彼は母親の石碑に祈りを捧げていた。
 呼びかけられて刹那、彼女は困惑する。
 気付けば彼女一人。一緒にいたフレイアもトウェルノもいない。
(「頑張れよ」)
 そんな、聞こえない声に励まされ、彼女は一歩、一歩彼女は近づいていった。
 足を揃えその場に立った。パーシの横へ、と。

 呟くパーシに銀狐のファーを首元にかけるとシルヴィアは膝を折り言葉に出して思いを伝える。
「パーシ様は人々に慕われている騎士で人々の希望となる立派な騎士です。どうか、パーシ様を誇りに思って下さい」
 立ち上がったシルヴィアに、横でパーシは自嘲するように呟く。
「丁度今頃だったな。俺が家を出てたのは。母上は俺が騎士になるのを嫌っておられた。きっと今も許しては下さっていないだろう」
「いいえ!」
 シルヴィアは強く、真っ直ぐに否定しパーシの顔を見つめた。
「お母上がパーシ様の思いを解らぬ筈も、否定する筈もありません。もし悔やんでおいでだとしたら、パーシ様やリトルレディの成長を見れなかった事と、パーシ様が幸せに背を向けておられる事、きっとそれだけです」
「シルヴィア」
 一度、目を伏せたパーシは深い新緑の瞳を開きシルヴィアを見つめ告げた。
「お前は勘違いをしている」
「えっ?」
 強い声ではないがはっきりとした思い、彼女は返事と行動を封じられたように瞬きし立ち尽くす。
 静かな彼の返事
「今のお前の気持ちには応えれない」
 それに今、まさに告げるはずだった告白が心臓へと戻っていく。
 立ち尽くす彼女にパーシは続けた。
「俺は本来騎士に成るべきではなかった者だ。愚かで身の程を知らない者が栄光を手に入れるには代償が要る。俺は知らずそれを常に周囲の人間に払わせ続けていたのだ。愛する母、親友、妻。守りたいと思う者をこそ俺は失ってきた。母上はきっとそれを知っておられたのだ」
 呪いの様な定め、淡々と告げるパーシにシルヴィアは声を荒げる。
「だから自分は幸せになってはいけないというのですか? 貴方が幸せに背を向ける事を喪われた方達が望むと‥‥」
「違う。それが勘違いだ。俺は今の自分が不幸だとは思っていない。十分に幸せの中を生きている」
「えっ?」
 シルヴィアは瞬きする。いつも他者を思いやり、自分の事は二の次。
 そんな彼が今の自分は幸せだと言い切るとは思ってもいなかったからだ。
「確かに以前の俺はそうだった。償いの人生を生きるべきだと思い幸せを感じていなかった。騎士と成る為に多くの者を犠牲にしてきた俺が幸せになってはいけないと思っていた。だがそれが間違っていると教えてくれたのはお前達、冒険者だ」
 彼は慈しむようにシルヴィアを、そして遠くの仲間達を見つめる。
「夢を叶え、過分を超えた地位を手に入れ、友と我が子と共に今、生きている。俺は確かに幸せだ。そして何より俺が騎士として誰かの笑顔を守れた時の多幸感‥‥。騎士である事が幸せなのではない。騎士として人を救える事が今の俺の最高の幸せなのだ」
 誰かの笑顔、誰かの幸せ。それこそが自分の幸せだとそういい切るパーシにシルヴィアは再び言葉を無くしていた。彼はあまりにも大きすぎる‥‥。
「とはいえ、全ての者が救えたわけではない。ここまで昇っても俺の力はまだ足りない。だから、俺は上を目指す。前に進む。犠牲になった者達の為にも俺は進まなければならないし、進んでいきたいと思っている。母上を悲しませても俺は命尽きるまで真実の騎士を目指し進む。今、そう報告した」
「その横に私は立てない‥‥と?」
 泣き出しそうな顔のシルヴィアにパーシは頷く。
「俺はお前を愛しいと思う。だがそれはある意味ヴィアンカと同じ。庇護するものとして。信念を覆す程の恋を与える者では今はない。俺にはまだ遠い理想を実現する方が先だからだ」
 もう諦めるしか無いのか‥‥と。悲しい思いが広がっていく。
「だが」
 言葉が優しく続くまで
「未来の事は解らない。その時までお前が俺についてきたいと望むならそうすればいい。剣を捧げると言うなら受けよう。部下共もお前の事を気に入っているようだ」
「えっ?」
 シルヴィアの顔に光が射す。希望の光が。
「勘違いするなよ。本当に愛する者、共に歩みたいと思う女性がいれば俺は、多分娘が反対しても、王が反対しても自身で膝を折り、乞い願う。かつてキャロルにしたようにな」
 良い父親ではないが。イタズラっぽく笑った彼は、マントを返し静かに歩き出す。
「本当に共に歩みたいと思う女性がいれば‥‥」
 手を握り締めるシルヴィア。遠ざかる背中に思いを送る。
 答えを得た今、シルヴィアの目指す道はもう決まっていた。

 話を聞いていたのか、そうでないのか。
「パーシ」
 歩くパーシ・ヴァルに木に背を預けキットは声をかける。横にはヴィアンカを連れて。
「なんだ?」
 と彼は答えない。ただ、足を止める。
「みんながお前を目指してる。みんながお前の背を見てるんだ。アイツもヴィアンカも‥‥俺も」
 少年の思わぬ言葉にパーシは目を少し、見開く。
「お前からそんな言葉を聞けるとはな」
「茶化すな!」
 少年の目は真剣にパーシを見つめる。
「どんなお前だろうとお前がらしくあり続けるなら、俺も変わったりしない。あまり俺をガッカリさせるようなことはしてくれるなよ」
「お前は‥‥俺より早かったな」
「ん?」
 意味の解らない言葉に瞬きするキットの横を彼は微笑し通り過ぎる。
「ついて来い。でないと置いていくぞ」
 遠い昔、出会った時から変わらぬ背中、変わらぬ笑みを受け止め、キットはヴィアンカの手を繋ぐと
「誰が置いていかれるか! 逆に追い抜いてやる」
 昔に戻ったような気持ちで追いかけていった。

○幸せの時
「つまりアレね。俺と共に歩きたいのなら相応しい女になれと」
「まったくスパルタだね。彼も」
 帰路、顛末を知り肩を竦める女達の声も表情も明るい。
「でも諦めろと言われた訳ではありませんから。目的が定まったのなら後はそこに向かうのみです」
「それは一年後? 三年後? 十年後かな? 俺達が進む分、あいつも前に進むんだしもう少し気楽になった方がいいと思うがね。俺は」
 拳を握り締めるシルヴィアを茶化すようにキットは声をかける。
 シルヴィアは苦笑する。彼なりのエールだと解っていても振られたばかりの恋する乙女には若干胸が痛む。
 でも
「でも諦めるつもりはありませんよ。これが私の夢であり、希望ですから」
 今はそう答えられる。彼の答えを手にしたのだから。
「そうね。貴女が諦めない限り、手を貸すわ」
 優しいトゥルエノの言葉とは反対に
「じゃあ、好きにすればいいさ。俺が口を挟む事じゃない」
 キットは肩を上げ前を歩く。誰かがキットはパーシの昔に似ているらしいと言っていたがそう思うと少し愛しくもあるが‥‥
「でも乙女の心を傷つけたお返しはさせて頂きましょうか。今晩です」
「なんか言ったか?」
「いいえ、何も?」
 振り返った少年は気付かない。
 その言葉に彼以外の人間が浮かべた微笑の意味を。

 森でヴィアンカとキットは追いかけっこをした。
 ヴィアンカがキットを捕まえたら一つ言う事を聞く。
 それがヴィアンカとキットの約束だった。
 明日はキャメロットに着くと言う夜。ヴィアンカは真剣勝負の末手に入れた権利を行使すると宣言したのだ。
 そして
「しばらくじっとしててね♪」
 キットに目隠しをする。
「なんだよ? 一体?」
 何も知らされてなかった彼の耳に聞こえてくるのは柔らかい竪琴の調べ。
「今日集った僕達が〜 貴方に贈る唄は〜♪
 生けとし生ける者へ 捧げる為の詩〜♪」
 ワケギの歌声。
「えっ?」
 目隠しが落ちた先には燃え上がる炎と飾られた花。広げられたご馳走そして
「一度目の奇跡は
 貴方が生まれた事

 二度目の奇跡は
 貴方が出逢った全て

 三度目の奇跡は
 貴方を祝えるこの日

 四度目はこれから
 四度目はまだこれから

 おめでとう、有難う〜
 これまでも〜これからも〜」

 自分の為に歌う仲間達の姿があった。
 竪琴を奏でるのはパーシ。イタズラっぽく笑っている。
「先日がお誕生日だと聞きました。これは皆からのお祝いですよ」
 驚きの余りオフシフトで逃げられもしない。頭を撫でるシルヴィアにキットは、あっと声をあげた。
 皆がなにやらこそこそしていたのはこれか、と。
「ほらヴィアンカ。あれ渡してやれよ」
 絶狼がヴィアンカを前へと促す。
「お金は私達が出し合って、選んだのはヴィアンカ様ですわ」
「キャメロット中歩き回って、迷って、悩んでやっと見つけたノルマン渡りの品だろ?」
『どんな物が良いかって? そうだなあ、普段から使える様な実用品か、あるいはゲンを担げる様なお守りとか』
 出発前、丸一日かけてセレナや青柳燕と選んだ品を
「はい」
 とヴィアンカは手渡した。丁寧に包まれた中から出てきたのは美しい帯。
「ポエムは付けなかったのであるか?」
 マックスの言葉は無視してキットはそれを、手に取る。
「お兄ちゃんがいつも無事でありますように」
 微笑む少女と仲間達。その思いにキットは
「ありがとう」
 一言の、だが心からの言葉で答えた。

 満の手料理に、酒もお菓子も山ほど。
「このスイカ美味しい!」「鹿のハーブ焼き絶品ですね」
「お嬢。甘酒飲むか? こっちはマティア・ブラックウェルからのもらい物だけど」
「こら! ヴィアンカに酒飲ませるな」
「ヴィアンカ様、こちらも美味しいですよ」「ありがとう!」
「いい子だね。ヴィアンカも、みんなも。うちの子達もあんな良い子に育って欲しいな〜」
 その夜いつまでも続く宴会の中、
「ちょっと、いい?」
 蒼汰はヘンルーダに呼び出された。
「パールがね、言ってたんだって」
 何だ? と問う前に話し始めたヘンルーダの言葉を蒼汰は聞く。
「本当に共に歩きたいと思う女性にはどんな障害があろうと、男は頭を垂れて乞い願うって。で、思ったの。私は貴方にそうしてもらえる価値があるのかな? ‥‥って」
『兄をどうか宜しくお願いします。貴女はわたくしの事を一番に思って自分の事は二の次だった兄が、始めて執着を見せている方なのです‥‥』
 出発前、七神斗織に言われた事を噛み締めながら彼女は、意を決して蒼汰の前に立つ。
「まだまだ、私はパールどころか貴方にも叶わないし、力も足りない。騎士どころか見習いにさえなれてない、フローにも顔向けできない。あの子も迎えにいけない。でも、いつか貴方の隣に立てるように頑張るから、待っててくれる? ‥‥好きで、いてもいい? もし、いいなら‥‥私、頑張るから」
 二つのペンダントを握り締めて、自分を見つめる少女を蒼汰はそっと抱きしめた。
 そして‥‥。

「これはお土産です。どうかお持ち下さい」
 シルヴィアはキャメロットの門の前で、仲間達に一つずつカバンから取り出したものを贈る。
「これは?」
「パーシ様の森のハーブだそうですよ。ご夫婦に譲って頂いたんです」
 自分にも、ヴィアンカにも。そして
「パーシ様もどうぞ。故郷の名残に」
 パーシにも手渡した。
「ああ、貰っておこう」   
 微かに手が触れる。
「いつかまた母君にお顔を見せて差し上げて下さいね」
(「その時、できるなら共に」)
 感じる微かなぬくもりにシルヴィアは小さく願いを捧げた。
「言いたい事があるなら喧嘩しなよ。勿論、シルヴィアともね」
「どんな時でも私はヴィアンカ様の味方ですわ」
「うん。でも‥‥大丈夫」
 気遣うフレイアとセレナにヴィアンカは答える。
 足元に寄った絶っ太を撫でるその頬に浮かんだ笑みは旅立った時より少し大人びて見えた。
「そっか、ならいい旅だったね。久しぶりに夜は二人きりになれたし。ね、満」
「こ、こらっ! フレイア!」
 笑うフレイアに満の方が顔をさらに紅くする。
「僕も勉強になりました。弓、大事にします」
 フリードも弓を握り締めて、決意と感謝を述べる。
「そういえば、マックスさん、絵を描いていたのでなかったのですか?」
 ワケギの問いにマックスは苦笑交じりに
「‥‥あれは、その‥‥置いてきたのである。幸せの森へ」 
 静かに微笑んだ。ああ、と頷きワケギは呟く。タケシ・ダイワの忠告は胸に、けれど決意はさらに固くなる。
「命は奇跡、人の出会いは幸せ。パーシ様が、その奇跡と幸せを守る本物の騎士を目指すなら、命と奇跡を紡ぐ騎士を僕は目指したいです。その道は遥か遠いですが‥‥」
 旅の終わり。トゥルエノは空を見上げた。
「母‥‥ね。私も今度お墓参りに行こうかしら」
 どこまで続き森に、故郷に繋がる空を‥‥思いを込めて。

 遠い、ウィンザーの森。
 花に囲まれた墓石の前に、少女達の祈りと花束と、一枚の絵が残された。
 美しい貴人と、彼女を守る青年。彼を取り巻く人々の笑顔。
 幸せな騎士と人々の姿が、満開の花の中で微笑んでいた。