【錬金術師の試練?】小さな先住者
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■ショートシナリオ
担当:夢村円
対応レベル:11〜lv
難易度:やや難
成功報酬:9 G 49 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:10月10日〜10月18日
リプレイ公開日:2008年10月18日
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●オープニング
「ウィンスレットの遺跡です。お間違いの無いように。地図に間違えて記載されては困りますし」
依頼人フィーナ・ウィンスレット(ea5556)はそう記録係に念を押して、冒険者ギルドに再び依頼を出した。
「ウィルトシャー地方、エーヴべリーの外れに古い錬金術師が作ったという遺跡があります。その遺跡には錬金術師が残した宝が眠っているようです」
あれから、フィーナは少し伝説や言い伝えを調べてみた。
かの地に住んでいたという錬金術師はどうやら普通とは違う変わり者だったようだ。
ちなみにこの普通、とは世間一般に言われる錬金術師、と呼ばれる人々のことである。
「自分の屋敷に閉じこもり、怪しい薬を調合したりする俗世と関わりを持たない隠者。偏見にも程がありますがそういうタイプの人ではその錬金術師は無かったようですね」
妻子を持ち、人付き合いがよく、薬の調合よりも料理が好きだったとか、そんな話が御伽噺のように伝わっていたらしい。
けれど彼はある時から、ぷっつりと人前から姿を消した。
迷宮を作りそこに閉じこもり、誰とも会う事無く十数年が過ぎ‥‥そしていつしか彼の伝説だけが残ったという。
「あの遺跡を以前調べた時、金塊やダイヤを入手した仲間がいます。それも宝箱に入っていたわけではなく本当に無造作に置かれていたので奥に行くほどにきっと、面白い何かが見つかると思うのです」
だから、その調査に同行してくれる仲間を彼女は募集するという。
「ただ、あの遺跡には今、大量のラットが住み着いているようなのです。ジャイアントラットではなく普通のラットですが、その数はゆうに100、いえ、200をもっと超えると思われます。それを駆除しなくては先に進めないでしょう」
ただ場所が迷宮であるだけに、相手がただのラットであるとはいえ係員には注意が必要に思われた。
その点を指摘するとフィーナもええ、と頷き同意する。
「一匹一匹であれば私達にとっては苦もなく倒せる相手です。ですがあれだけの数となると数の暴力に負けてしまう可能性があります。一人で突出すれば10匹を倒しているあいだに100匹にかじられておしまいです。
かと言って戦闘場所は遺跡の内部。遺跡を破壊・倒壊させるような広範囲・高威力の魔法を使えばラットは倒せても私達も生き埋めです。宝を手に入れるどころか命を失うハメになりかねません」
だから、その点を踏まえた上で慎重な調査、対策ができる人物を募集する、と彼女は言う。
「報酬は前回どおり自腹。見つけた財宝は見つけた本人が買い取るか山分け、ということでよろしくお願い致します」
そう言って彼女はにっこりと、黒く(?)微笑んだ。
最初にそこにもぐりこんだのはおそらく、たった一匹のラットであったろう。
だが、数十年いや百数十年の時を経て主のいない迷宮は彼らの王国となった。
小さくて大きな先住者。
彼らの手から再び迷宮を、遺跡を人間の手に取り戻せるか否か。
人間の威信をかけた戦い(?)が今、始まろうとしていた!
少し大げさではあるが‥‥。
●リプレイ本文
○ラットの帝国
ウィンスレットの遺跡、と後の地図には残されるかもしれないその遺跡の扉は、今は大きく開かれている。
馬を近くの村に、大きな荷物を入口の側に置いて冒険者達はカンテラを掲げ、再び遺跡の中の探索を始めたのだ。
第一層は扉の前方に広がる迷路。
迷宮と呼ばれるほど複雑でもなく、また広くも無い。
冒険者達はスムーズに迷う事無く部屋の端までたどり着いた。
扉に閉ざされた部屋の前。
「この先は確か階段でしたね。そして‥‥その先の部屋には」
扉に手をかけたワケギ・ハルハラ(ea9957)は知らず手が震える自分を感じていた。
前回の探索で見たもの。それが夢であれば、と思ったのだが‥‥。
バタン!!
微かに、ほんの僅か開けた扉をワケギは全力で閉じた。
「どうでしたかぁ〜? やっぱりまだいますかぁ〜?」
「その顔だと、確かにいた、ようですね」
いつもと変わらぬ様子のエリンティア・フューゲル(ea3868)の問いに、依頼人フィーナ・ウィンスレット(ea5556)の質問に、そして仲間達にワケギは
「ええ‥‥。確かにいます。数も減っていないようです。階段下にびっしり‥‥」
ごくり。
思わず皆が唾を飲み込む。
「やはり、対決は避けられないか‥‥。どうする? フィーナ?」
腕を組むレイア・アローネ(eb8106)に決まりきった事を、とフィーナは邪笑する。
「自然の驚異とは恐ろしいものです。ですが自然の驚異に恐れおののいていては錬金術師の名がすたります。万物を超越してこそ錬金術師。殲滅あるのみです」
はっきりと言い放たれては雇われ冒険者達は従うのみだ。
「ほら、丁度いい餌もいますし‥‥」
「ラットの王国か、まあ黒害虫の王国よりはましってもんだが‥‥って、フィーナ? 誰を見て言っている?」
ひとりごちていたリ・ル(ea3888)は背中に届いた黒い視線に背筋を凍らせた。
「あら? 別にリルさんの事だ、などとは言っていませんよ」
「言ってるだろ!」
「フィーナ、流石に生き餌はちょっと‥‥」
「ラットも餌を選びますか?」
「そう言う問題じゃない!!」
「おーい。仕事前に治療が必要な怪我なんてするなよ〜」
リルとレイア、フィーナの掛け合い漫才を苦笑いしながら見ていた空木怜(ec1783)は
「ん? 何を考えてるんだ?」
考え顔のマナウス・ドラッケン(ea0021)と閃我絶狼(ea3991)に声をかける。
「いや‥‥」「なに‥‥ちょっと気になってな」
二人は顔を見合わせ呟いた。
「どうしてあいつらは今も、この迷宮にいるんだろう?」
「どうして錬金術師は普通の生活の果てにこんなものを作って隠遁生活なんてしたんだろう?」
二人、のみならず冒険者達は扉を見つめる。
この遺跡を制覇した時、その理由も解るかもしれない。
今は、答えられるものはいないけれど‥‥。
○餌、作戦、最終手段
「す、すみません‥‥」
ワケギは転んでできた傷を手当する怜と仲間達に頭を下げた。
メロディーとテレパシーを使用してラットを外におびき出そうとする作戦。
餌を使ってラットをおびき出し、アイスコフィンで固めようとする作戦。
どちらも空振りに終わったのだ。
「メロディーは、なんだか聞く耳持ってくれませんし、餌を使ってのおびき寄せは突進が思った以上に凄くて‥‥数匹凍らせているうちに数十匹が襲ってきて」
できれば殺さないで済ませたい、という彼の優しさであったのだろうがそれは彼らには通用はしなかった。
「と、いうことはもう、手加減や遠慮をする必要はありませんね」
「‥‥最初からするつもり無かったくせに‥‥」
「誰です!」
闇に紛れた呟きの追求をとりあえずフィーナも置いておき、さて、と改めて考える。
「奇しくも一度の攻撃である程度倒してもそれ以上の数に襲われたら次が続かない、ということが解ったわけです」
「普通のラットでも数百匹になると対処に困りますねぇ。魔法で一気に片付ければ楽なんですけどぉ〜」
「俺の魔法なんか使ったら遺跡、崩れそうだしな‥‥」
魔法の使い手二人が頭を捻る。
「そうですわね。遺跡が壊れなければ良いのです」
「どうするつもりだ? フィーナ?」
リルの問いにフィーナは怪しく笑って説明する。
作戦自体は至極まとも。
けれど、何故だろう。
冒険者達は背筋に走る何かを抑えることができなかった。
○地底奔る聖母の裁き
「行くぞ!」
階段の扉をマナウスがゆっくりと開く。
まだ扉を開けたくらいではラットが近づいてこないのは解っている。
ゆっくりと細い階段をフォーメーションを組んで降りていく‥‥やがて、
キシャアア!!
人の存在を感じたのだろう。階段に一番近い所にいたラットが警戒と威嚇の声を上げながら冒険者に向けて突進してきた。
「レイア!」
「おう!!」
マナウスは敵をぎりぎりまで引きつけ、投網を投げる。
最初の十数匹は網の下に絡め取られじたばたと暴れている。だがそれも気にさえしないように突進してくる第二陣。
「後ろから、まだ来ます!」
ワケギの声にフフフ、楽しそうにフィーナは笑った。
「では、遠慮なく逝かせて貰いましょうか」
「フィーナ! 危ない!」
精神を集中させるフィーナに飛び掛るラット。それをマナウスは身を挺して庇った。
彼の動きに合わせ、レイアと絶狼が手に持っていた炎をラットに向ける。
一瞬の足止め。それで十分だった。
「危ないぞ! 下がれ!」
「避けて下さい。巻き込まれても責任をとれませんよ!」
リルの言葉にハッとし、前方の三人は身を翻した。
「ライトニング‥‥サンダーボルト!!!」
バシュン!
フィーナの手から放たれた電撃は、マナウスの横とレイアの髪を掠め、前方に群がるラット達を蹴散らしていく。その勢いは凄まじかった。
ほんの一瞬、ラット達の足が動きが止まった程に。
「派手な魔法は遺跡に悪影響、じゃなかったのか?」
「ライトニングサンダーボルトはその性質上石などに当たれば効果が消滅します。遺跡に害を加えることは無い筈です。でも、あれくらいではまだまだですね」
フィーナの言葉通り、ラット達の足止めは一瞬に過ぎなかった。ぞろぞろとまた階段を上ってくる。
「大群は殲滅します。細かい取りこぼしなどはお願いしますね」
「フィーナさん〜。あの辺が一番密集しているようですぅ〜。遠慮無しにやっちゃって下さいぃ〜」
エリンティアが自身もスクロールの用意をしながら闇を指差す。
「怜! ホーリーフィールド! 頼むぞ!」
「任せとけ! ドカンと頼むぜ!」
白い結界が魔法使い達を守るように張り巡らされる。
「ワケギさんも、皆の援護と索敵。お願いします」
フィーナの指示に冒険者達のフォーメーションが再び起動する。
「仲間の魔法にやられたら、冗談じゃすまないからな。後ろに一番気をつけろよ!」
「解ってる!」「ハハハ!」
突進してくるラット達に手の中で魔法を練りながら絶狼は小さく呟いた。
「適当な所で逃げてくれると助かるんだけどなあ、こっちの目的は遺跡の探索で鼠退治は手段に過ぎないわけで‥‥頼むぜ!」
思いはきっと届かないと解っている。けれどもそんな願いと共に絶狼は二つの稲光の間に彼の魔法を打ち込んだ。
○第三の扉
肉が焼ける臭いがする。
一つ一つであれば興味をそそる臭いであるのかもしれないが。今はそんな気はこれっぽっちもしない。
積み重ねられたラット達の死骸を焼きながらリルは顔を顰め、鼻を押さえた。
「王国に足を踏み入れたのはこちらだから、正直可哀想にも感じるな」
「このまま死体を放置もしておけない。こいつらが病気を運ぶっても言われてるんだ」
「仕方ないな。‥‥ああ、こいつも頼む」
マナウスは通路にしかけた鳥もちの罠とラットを炎の中に投じた。殆どは死んでいた筈だが微かに断末魔のようなものも聞こえてくる。
「恨むなら依頼主を恨んでくれ、問題ないからな」
呟くリルと十字を切る怜。マナウス達の背後から
「リルさん!」
声がした。
「わっ‥‥って、ワケギか。脅かすなよ」
「フィーナさんが呼んでます。地下の部屋に来れますかって?」
「なんだ?」
ワケギに促され、リルは遺跡に再び足を踏み入れた。
血の臭い漂う階段下の大広間で調査に残っていた冒険者がリルを迎える。
「ここは昔、食料倉庫、だったようだ。齧られた木箱の残骸などが沢山残ってたよ」
「通風孔のようなものも見つけた。ほら、ここから何匹かは逃げたり、出入りしていたのかもしれん」
穴だけではない。床もラットの血や足跡が分厚く積もっている。
宝石も壁や床にいくつも見つけたが、ラットの糞まみれの石を今は拾う気になれなかった。
「それからぁ〜。これ見て下さいぃ〜」
リルにエリンティアは小さな石の箱を差し出す。その中には二つの小さな白骨が入っていた。
おそらくラットのつがい。
「この二匹はぁ〜多分飼いラットですぅ〜。それの子孫が長年の間増えたんですねきっとぉ〜」
「最初はきっとここも食料が多くて住みやすかったのかな。その後どうして逃げなかったかは解らんが」
「そんな話の為にリルさんを呼んだのではありません」
絶狼とエリンティア、どこかしんみりと話す二人を気にせずフィーナはリルの手を強く引き寄せて扉の前へと立たせた。
「この扉が次の層への入口のようなのです。鍵はかかっていませんが重いので、開けて頂けませんか?」
「俺が?」
ええ、頷くフィーナに不審なものを感じながらもリルは言われるままに石扉の前に立つ。
カンテラは地面に置き、六尺棒で扉を叩く。反応は無い。
そして、ゆっくりと扉に両手をかけた。押し開きの扉はリルの力に応えるように静かに開き‥‥。
「げふっ! な、なんだこりゃ!」
頭上に怪しい白茶色の粉を降らせた。
「こいつは‥‥小麦粉? おい! フィーナ!」
「どうやらこの先にはいろいろなトラップが待っていそうですわ」
リルの抗議を綺麗に無視して、フィーナは楽しげに微笑んでいた。