たーにっぷへっど ぱにっく!
 |
■ショートシナリオ
担当:夢村円
対応レベル:11〜lv
難易度:普通
成功報酬:7 G 21 C
参加人数:7人
サポート参加人数:-人
冒険期間:10月29日〜11月06日
リプレイ公開日:2008年11月06日
|
●オープニング
おじいさんは畑に蕪の種を撒きました。
「甘い、あま〜い蕪になれ。大きな‥‥いや、大きくはならんでいい。元気の良い蕪になれ‥‥」
おじいさん蕪を大事に大事に育てました。
毎日水をやり、肥料をやり、魔法の鍬をもって
「よし、よし、今年は大きくならんな。‥‥元気の良い蕪になれよ」
蕪はその愛情に応えるように、ぐんぐん、ぐんぐん育って‥‥
とても、とっても! 元気の良い蕪になりました♪
元気に畑を転がりまわっていた蕪たちは、畑を飛び出して遊びに行きます。
そして、いつの間にかまたできていた大きな蕪。
まるで子供を見送るようにどーん、と鎮座する巨大かぶと柵を壊し転がっていく蕪たちを見送りながら
「な、なんじゃああ〜。ワシの畑は呪われとるんかあ〜、かあ〜(リピート&リピート+エコー)」
おじいさんの元気な(?)絶叫が今年もまた空に、畑に響いたのでありました。
「近くの農家と街から、蕪を退治してくれという依頼が来てる」
係員は複雑そうな顔で、その依頼書を読み上げた。
「蕪の退治?」
冒険者の何人かは、今年も出たのかと小さく微笑する。
去年、そして一昨年とこの畑では秋になると大きな蕪が何故か生まれる。
そして、例年退治の依頼が出されていた。もうこれはハロウィン前の風物詩のようなものである。
少し前に退治の依頼が出されたがその時は人手が集まらず流れていた。
「体長はせいぜい葉っぱを含めて1m弱の蕪が10個。まあ、蕪としては十分大きいかな。それから殆ど動かない大きな蕪が一個。これは2mくらいだ」
小さな蕪の方は元気のよさが極め付けで、最近、とうとう柵を壊し街まで現れるようになった。
おじいさんは柵を何度も修理して食い止めようとするが、気付くとまた彼らは柵を壊していく。
幸い、まだ街をごろごろ転がるだけで大きな被害は出てはいないようだがおじいさんは、もうノイローゼ寸前であるし、街の人たちもこの異常事態を楽しめるのは、いいとことハロウィンまでだろう。
そして未だ動かぬ大きな蕪。
こいつが動き出したら一体どうなるか‥‥。
「おねがいじゃあ〜。なんとか来て奴らを止めてくれ〜」
おじいさんは半ば涙目であったという。
なぜこの畑でだけ、蕪が突然変異を起こすのか。
「もうじき、ハロウィンだ。この時期の蕪はジャック・オ・ランタンにするのに高く売れる。実際、昨年までもできた大きな蕪は退治後、ケンブリッジや好事家にけっこうな値段で売れたようだ。今年も急げば間に合うかもな。まあ、無理だったら皆で食べればいい。味はいいって評判だぜ」
そして、何故おじいさんは蕪を植えるのか。
冒険者にも係員にも解らないが、賑やかになりかけてきたハロウィン前の町並みを見つめながら、今年もやってきた蕪達と、おじいさんの顔を思い浮かべ、小さく微笑した。
●リプレイ本文
○大きな&小さな蕪
畑の中をごろごろと転がる蕪の姿。
それを最初に見た人物の反応は様々である。
驚く者、おののく者、興味深げに近づく者。
だが‥‥
「ぶわっはっはっは、マジだ。マジで蕪が転がってる!!」
大爆笑する者の存在はレアである。
「はははは‥‥。可笑しいぜ! じいさん、実は魔法使いなんじゃないのか? わっはっはっ!」
「全開だな?」「まあ、気持ちは解らない事もないけどね」
尾花満(ea5322)、フレイア・ヴォルフ(ea6557)の夫婦が余裕なのは既に以前この畑に来て、大きな蕪と対峙しているからであるが、まさかカジャ・ハイダル(ec0131)のツボにここまで嵌るとは流石に思っていなかった。
通常は
「面白いねえ。滅多に見られるもんじゃない」
と興味深げなクリムゾン・コスタクルス(ea3075)や
「な、なんという面妖な‥‥これが動く蕪というものか? 一体どうして」
レイア・アローネ(eb8106)のように驚くのが基本である。
まれに見た瞬間舌なめずりするような者もいるのであるが。
「今年も出たの‥‥大変であるな」
「笑い事じゃないんじゃ〜。柵はなんとか治したんじゃがいくつかが街の方に逃げてしまったんじゃ。頼む! なんとか捕まえてくれ!」
もはや涙目の老人に大丈夫、と磯城弥魁厳(eb5249)とシリル・ロルカ(ec0177)は頷き、微笑む。
「動く蕪とはいえ、大地からの恵みに変わりは無い。なんとか無事に収穫せねばのう?」
「満さんやフレイアさんの言うとおりなら、弱点や急所はそんなに変わりが無いようです。ご安心してお待ち下さい。‥‥行きますよ!」
まだまだ、爆笑を続けるカジャを軽く肘で小突いてシリルは促す。
「あ〜、笑った笑った。だが! 待ってろ! 捕まえて美味しく料理してやるぜ。ロタ! そうだローリングターニップヘッドだと長いなから今日からお前はロタだ! 」
「それで、どうします?」
「昨年はね〜」
ひゅう〜〜。
思いっきりポーズを決めたカジャの周囲に人は既に無く、孤独な風に包まれた彼は、
「ま、まってくれよ〜」
慌てて仲間達の後を追いかけていった。
○小さな蕪
冒険者達は相談の上、まず、町に逃げ出した小さな蕪を捕まえる事にした。
三人と四人に分かれて町で聞き込みをする。
動く蕪は嫌でも目立つ為、捜索は比較的容易かった。
「向こうの広場で数個目撃されているようだ。広い所の方が魔法を使うには良かろう?」
レイアの促しにカジャとシリルは頷く。
ハロウィンで賑わう人ごみの中、冒険者達が到着した頃には取り巻くような人々に囲まれて、体長1m前後。
「いや〜。本当に元気そうな蕪ですね」
子供サイズの蕪が広場をごろごろと転がっていた。
「近寄らなければ何もしないんですけど、ぶつかったり捕まえようとすると襲い掛かってくるんです」
「アーン、アーン! 追いかけられて押された〜」
泣き出す子供の頭をぐりぐりと撫でて
「もう大丈夫だからまかしとけ! あいつらはちゃんと捕まえてやるからな」
カジャは前に立つ。
「四個か‥‥一気に行くぜ。ってシリル。なんで俺の後ろにいる?」
「盾にしているだけですから、お気になさらず」
「気にするって!」
「そんな事を行っている場合じゃ無いぞ!」
確かに同国人の掛け合い漫才を楽しんでいる場合ではない。
蕪達は周囲の様子に気付いたのか今までと明らかに様子を変えてきている。
「来る!! 皆! 下がれ!」
周囲の人々に声をかけレイアは自らも跳びずさった。
転がってきた蕪は目標を失い近くの箱に激突する。木箱の破片が飛び散った。
「ひゅう〜。いい転がりっぷりだな」
「感心していないで! 来ますよ」
「おっと!」
シリルに促されカジャは再び転がり始めた蕪の方に向かう。
今度は二個が一度に来る。
「レイア! やるぞ。間違ってこけんなよ!」
「解っている!」
レイアは武器を置き、徒手空拳で蕪の前に立つ。狙いは蕪の足(?)元。
「止まれ!!」
身体に響いてくる衝撃を強く構えた足に逃がして、レイアは蕪の動きを食い止めた。
そこを狙ってカジャは
「落ちろ!!」
ウォールホールの魔法を繰り出す。
レイアの足先からほんの数センチ、黒い闇が地面に穴を穿った。
蕪は突然消えた地面の下に抵抗むなしく落下する。
「ふう、子蕪とはいえ、なかなか勢いが強いな」
「でも、蕪とのバトルも面白そうだ。よーし! ドンと来い。受け止めてやんぜ!」
レイアとの蕪とのバトルに触発されたのか、カジャも腰を強く踏ん張って構えを取った。
残る二個の蕪が襲い掛かってくるが
「あり?」
カジャとの激突の寸前、その動きをピタリと止める。
同じ場所に留まりジタバタする蕪。
「彼みたいに頑丈なのとぶつかったらつぶれてしまいますよ? 良かったらうちに来ませんか?」
どうやらシリルが影縛りの魔法をかけたようだ。
残念ながら蕪に勧誘は通じず、結局は捕らえることになってしまったのだが
「まったく、美味しいとこだけ持って行きやがって」
苦笑するカジャにシリルは無言でにっこりと微笑んだのだった。
○大きな蕪
「さて、残るは大きな蕪のみだな」
満は最後の蕪を前にして武器を、鞘にと収めた。
町を闊歩していた小さな蕪、そして畑をうろついていた蕪達もほぼ全て捕らえた。
落とし穴や罠が効果的に効いたのは良い事だったが、子供達が捉えられてもなお、ドンと動かぬ蕪は逆に不気味でもある。
「これは、もしや普通の蕪なのか?」
側に寄った満が蕪に触れようとした瞬間!
「危ない!」
フレイアの声に満は間一髪、身をかわし直撃を逃れた。
今まで、穴の中に身を埋め殆ど動かなかった蕪がついにその身を動かしたのだ。
「逃げろ。満!」
牽制の矢が、間髪入れず数本、蕪の前の地面に刺さる。一瞬の隙をついて満は言葉通り逃げ出した。
満の足は遅くは無い。
けれど、足を取られる土の上。しかもリーチとサイズでは叶わない大きな蕪相手では、追いつかれ潰されるのは時間の問題に思えた。
だが‥‥
(「いいか? 印付けてあるから、絶対落ちるんじゃねぇぞ。落ちたらカブの下敷きだぜ」)
ちらりと見た先にクリムゾンがそう言った印と、準備を整えた魁厳が見える。
そして、再び飛ぶ鏃の削られた矢。
「こっちだ!」
クリムゾンの矢の方向に蕪が向きを変えた瞬間。
満は反対方向にと跳び去り、魁厳と場所を交換した。蕪の眼前で魁厳は
「樒流絶招伍式名山内ノ壱 椿!」
高速詠唱で唱えた微塵隠れで土を巻き上げた。
突然の衝撃に蕪が動きを止める。それを確認し蕪の背中側に回り込んだ魁厳は
「許せよ。 美味しく頂戴するゆえ‥‥」
蕪を穴の中に蹴り落とすと、頭上の葉っぱを大きく切り裂いた。
最初は穴の中で動いていた蕪は、悲鳴もあげず静かな野菜に戻る。
土の中、本来あるべき姿に戻ったように。
○魔法の畑
トントン、カンカン、ざくざく。
畑に軽快な音が響く。
「ちゃんと元に戻しておく、って約束したからね?」
畑に掘った落とし穴を埋める音。
そして
「また、来年も必要になるだろうからな?」
「縁起でもないことを言わんでくれ!」
楽しげなカジャと困り顔の老人が一緒に柵を直す音である。
「しかし、まあ、見事に落とし穴が決まったね。苦労して作ったかいがあったってもんだ」
クリムゾンの言葉にフレイアも同意する。
畑の横ではいい匂いが働く冒険者の鼻腔と食欲を刺激し始める。
「レイア殿。味付けは薄めにな。魁厳殿。シチューの方の味はどうだ?」
「あと少し、というところか。味もだいぶ馴染んできておる」
調理担当者達は満を筆頭に手際よく料理を作っていく。
だが‥‥
「どうした? レイア殿? 蕪が焦げるぞ」
その中で妙に手が止まるレイアを気遣うように満は声をかけた。
「ああ、すまない。だが、あれだ。しかし生で触ってしまった私としては‥‥妙な抵抗があってな。確かにいい匂いではあるのだが、美味しそうとはどうも思えず‥‥」
鍋を揺すりながらレイアははあ、と溜息をつく。
大きな蕪をくりぬき、小さな蕪を捌いたロングソードをなんとなく使う気になれないのは、このもやもやと同じ理由だろう。
「鳥や獣は平気なのだが‥‥。買い取る者達も動いている所見ないが故に、面白がったり素直に食べたりできるのであろうなあ〜」
「気持ちは解らぬでもない。だが、動く野菜も、動かぬ野菜も、所詮は同じ命であると拙者は考える。無論、鳥、獣、魚達も。人のみならず生き物は全て他の命を食して生きている。だからこそ、その命を無駄にせぬ事が大事でありその命への供養ではなかろうかな?」
「ああ‥‥。そうだな」
微笑しレイアは鍋の中をもう一度見る。白く焼かれた蕪が今度は美味しそうに見えてくる。
「また、会えるかな?」
蕪は応えない。
代わりに
「お、旨いなこれ。酒にぴったりだぜ」
「うん。一昨年より味は良くなってるよ」
冒険者達に美味しい笑顔と言う返事は与えてくれたけど。
そしてハロウィンの夜。
「どうぞ皆さんも召し上がって下さい。ご迷惑をおかけしたお詫びです。腕利きの料理人が拵えた最高の蕪料理ですよ」
振舞われた蕪料理は人々を大いに喜ばせたと言う。シリルの素晴らしい女性好みの演奏と共に。
さらにもう一つ人々を喜ばせたのは、町の中央に飾られた巨大なジャック・オ・ランタン。
大きく笑うランタンは祭りを大いに盛り上げ、その後好事家に引き取られた。
冒険者への報酬が、最初の約束よりもかなり多くなったのは言うまでもない。
畑の隅、一株だけ残った蕪を老人は見つめる。
『じいさん。あの畑から蕪の種取ってるのかい?』
大きな蕪に毎年困らせられながらも毎年蕪を育てるのは何故かと自分でも思う。
けれど‥‥
「元気に育てよ」
老人はそう言って蕪を残して去っていく。
来年の春。
花が咲き、取れた種は蕪となりまた人々に笑顔とサプライズを与えてくれるだろう。
きっと‥‥。