【聖剣探索】失われた血族
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■ショートシナリオ
担当:夢村円
対応レベル:1〜5lv
難易度:難しい
成功報酬:2 G 66 C
参加人数:8人
サポート参加人数:1人
冒険期間:10月30日〜11月07日
リプレイ公開日:2009年11月06日
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●オープニング
忙しい時、人手が必要な時というのは重なるものである。
「誰か、手の開いているものはいないか?」
そう言って、円卓の騎士パーシ・ヴァルが冒険者ギルドにやってきたのは、バロールとの戦いに多くの冒険者が向かったその直後であった。
「手が‥‥と言われても、今冒険者の多くが出払っているのはご存知の通りです。何か緊急の事でも」
係員の問いにパーシは苦い顔で頷く。
大至急、シャフツベリーに向かって欲しい、と言って。
「先にケイが銀の腕と呼ばれる神と対面した時、ある情報が得られた。バロールと呼ばれる存在を倒す為に古き神々が三本の聖剣を作ったと‥‥」
報告書の中にはこうあった。
『我々が【邪眼】を封印した時、いつの日か封印が解かれた時のために大いなる力を持つ三本の剣を作った。カリバーン、カラドボルグ、そしてエクスカリバーだ‥‥』
「その情報を元に調査をしていたところ、その一本、カリバーンの所在らしきものが明らかになったのだ」
新たな情報に驚きを浮かべる係員にパーシは続ける。
「カリバーンは古き血を受け継ぐある騎士の一族が、代々守り続けていたらしい。その血族は既に滅んでいるらしいが、一族の領地や墓所についてシャフツベリーの領主が情報を得ている。彼の元に赴き詳しい話を聞いてくる。そして領地や墓所に何か手がかりが無いか探す。それが依頼だ‥‥」
王家の聖剣エクスカリバー。それと並ぶ聖剣がもし見つかれば激化が予想されるデビルとの戦いにおいて、間違いなく大きな力になるだろう。
「だが‥‥今のイギリス全土の様子は皆も知るとおりだ。デビルの横行も著しい。それはシャフツベリーも例外ではない。その上、ぺリノアと呼ばれるその血族は聖剣を狙うデビルによって滅ぼされたと聞く。言うまでも無いが油断はするべきではないぞ」
バロール戦に出払った者が多く、手が開いているものは少なかろうと若手を中心に依頼をかけたパーシであるがそうはっきりと釘は刺す。
「何が起きるかわからない。一日も、一刻も早く迎い、情報を得てきてくれ。頼む」
「解りました。ですが‥‥卿は大丈夫なのですか? 顔色がお悪いようですが‥‥」
「気にする必要は無い。少し夢見が悪いだけだ。‥‥夢など見ている暇は無いのだがな‥‥」
そう言って城に戻っていったパーシ・ヴァル。
彼は知らない。
運命の輪が彼や彼の周囲を巻き込んで、回り始めようとしていることを‥‥。
●リプレイ本文
○消えた血族
「良く来たな。待っていたぞ」
シャフツベリー領主、ディナス伯爵はやってきた冒険者を笑顔で出迎えた。
「ご無沙汰しておりますぅ、皆さんお変わりありませんかぁ?」
優雅にエリンティア・フューゲル(ea3868)は頭を下げた。
ああ、と頷く領主の顔は明るい。
「なんとかな。懐かしい顔達との再会も、それらが明るい笑顔なのも嬉しい限りだ」
「そうですねえ〜」
くすくすとエリンティアはアルテス・リアレイ(ea5898)やセレナ・ザーン(ea9951)と顔を合わせ含み笑った。
横では葉霧幻蔵(ea5683)がもごもごと声のようなものをあげる。
正装であるとまるごとはにわを纏われて暴れられては堪らないので現在半拉致状態。
‥‥ちなみにそれを誰が成したかは秘す。
「それで、伯爵、本題なのですが‥‥」
「ああ。そうだな」
セレナに声をかけられ伯爵はいくつかの文献、そして肖像画を冒険者に差し出した。
「この絵は‥‥」
金髪、緑の瞳、どこか懐かしさを覚える男性の肖像画を見つめるセレナに伯爵はそれがぺリノア候であると答えた。
「ぺリノア候は、シャフツベリーから程近い荘園を治められていた一族の主だ。優れた騎士の一族で、幾度と無くこの地方の危機を守って頂いた。優れた人格者でもあり、私もまだ若き頃、彼らに憧れた覚えがある」
「騎士の一族‥‥ですか? それが滅んだ‥‥と?」
七神蒼汰(ea7244)の問いに伯爵は再び頷く。
「今から、もう30年になろうか‥‥。本当に突然の事だった。ある日驚く程のデビルがこの地方にやってきたのだ。そして奴らは街々や家々を襲う事無く、ただぺリノアの一族のみを襲い、滅ぼした。無論、我が父をはじめ周辺領主は、事情を知り彼らに援軍を送ろうとした。だがその間すら無かったと聞く。何者かの指揮があったようだがそれさえも解らぬままほぼ一夜で一族は全滅したのだ」
デビルは一族を滅ぼすとまた姿を消した。理由は今も解らない‥‥。
「あの一族が何かを守る一族であったらしいとは聞いていたが、聖剣を守る一族と言う話を知ったは最近の話だ。そもそも、あの一族の館と墓所には近づけなかったからな」
「それは‥‥どういう‥‥」
意味だと問いかけたエリンティアに伯爵は立ち上がる。
「我々はずっと彼らの館と墓所に手を付けられずにいた。理由は‥‥行けば解るだろう。できるなら彼らを解放してやって欲しい。できうる限りの援助はしよう。これはシャフツベリー、いやウィルトシャー地方の住人達の心からの願いだ‥‥」
彼の言葉と、見せた背中の意味を冒険者達は、直ぐに知る事になる。
○遺る者達
目的地は既に廃墟となった小さな城。
そこで冒険者達を迎えたのは、一足先に調査を開始していた筈の仲間達だった。
「‥‥あれぇ〜? どうしたんですぅ〜?」
浮かない顔で腕組みをするリ・ル(ea3888)とキット・ファゼータ(ea2307)。
その視線の先にはタロットを繰るアルテリア・リシア(ea0665)がいる。
「先に中を調べてる筈じゃなかったんですか?」
「そのつもりだったんだけどな‥‥」
くいくい、と扉を指すリルの様子に首をかしげながらアルテスは城の扉を開き‥‥
「え゛?」
中を見て凍りついた。
背後から他の仲間も中を覗き込み‥‥同様に動きを止める。足は先には進まなかった。
理由は一つ。屋敷の中にゴーストが見て取れたからだ。
しかもその数は少なくとも十数体以上いそうだ。
ふと、彼らのうちの一体が扉から覗く視線に気付いたようだ。
『ちがう‥‥。お前達は違う!!』
そんな叫びをあげ飛び掛ってくるゴースト。
アルテスは慌てて扉を閉じため息をついた。
「あれは‥‥滅ぼされた血族の方、なのでしょうか?」
「多分、な。殺されてなお、魂が縛られてるんだ。何に心を残しているのか解らないが‥‥」
ゴーストの一匹や二匹が十匹や二十匹になろうと、冒険者にとって倒すのは実はそれほど難しいことではない。だが、
「この館の先住者で何か思いを残してると思うと、無下にできなくてな」
少し苦笑が混じり入った笑みを浮かべるリル。そこに
「おまたせ〜〜〜」
声を上げアルテリアが立ち上がったのは彼女が館の構造研究や占いをしていたことを丁度聞き終わった直後の事である
「どうでしたか?」
静かに問うたセレナにアルテリアもまた、うーんと悩んだ声をあげていた。
「あのね、誰かを待ち何かを守ってるって出たの。あんまり無理に浄化させちゃうのは拙い気がするわ」
「彼らが守っているもの場所、はお分かりですか?」
「それは地下みたい。入り口は建物の中庭、かな?」
「で、どうするでござるか?」
聖水を片付けながら、幻蔵は仲間達に問いかけた。
「どうすもなにも調べるしかないだろ? 仕事だし、依頼だし。別に剣ひとつで戦況がひっくり返るとは思えないが、それで人の心が奮い立つ薬になるならあったほうがいい。それに‥‥」
「それに?」
問いかけられたキットはくるりと逃げるように顔を背けた。
「あいつらもこのままにしとくより思いを遂げて、天に昇った方がいいにきまってる」
「そうだな。その方がいいな。よーし、作戦会議だ」
キットにリルは、そう言って笑いかけると仲間達に声をかけたのだった。
○待つ者達
冒険者達は全員で固まって調査に向かった。
城の中に部外者が入ってきた事で、一時揺れたゴースト達も、
『私達に敵意はありません、どうか道をお開け下さいませんか?』
セレナがオーラテレパスの魔法をかけると冒険者達に道を譲ってくれた。
「何を語ってくれるわけではないことが、残念ですけれど‥‥あ、あれですわね」
今は枯れた庭園の真ん中に、それはあった。
大きな石碑。
「これを押せばいいんだな?」
「あれ? 動かした形跡があるりますね。ディナス伯爵達が来た時のでしょうか?」
言いながら男達が力を合わせて石を押すと、音を立ててそれは動き‥‥その下に階段が現したのだ。
「おー、お約束でござるな」
「こんな時でもこういう探索に少なからず胸躍ってしまうのは‥‥僕もやっぱり冒険者なのですね」
アルテスの呟きを無言で肯定しながら、一列になって冒険者達は階段を下りる。
短い階段のその先は、ディナス伯が教えてくれた通りの地下墓所になっていた。
教会を思わせる静かな空間にいくつもの棺が並べられている。
ここまでは話に聞いたとおりだった。亡くなった者達をここに埋葬したのだと‥‥。
そして最奥には、不思議な祭壇が築かれていた。
「妙な祭壇だな。壁に彫刻が彫られてるのに中央の十字架が凹んでる? 普通飾りって浮き出てくるもんじゃないか?」
リルがそんな呟きと共に手を触れようとしたその時、彼の眼前0距離に不思議な影が現れたのだった。
「わっ!」
思わず後ずさるリル。それが剣を帯びた男性のゴーストである事は他の冒険者にも見て取れた。
敵意は感じられない。
だが不思議な圧迫感でそれ以上、先に進ませてはくれなかった。
『‥‥男ならパーシ。女ならリーゼ‥‥。お前達に鍵と希望を託す。いつか戻って来い。我らが宝を受け継ぐ者よ。待っているぞ‥‥』
それだけを繰り返している。
「パーシ? まさか?」
「なんとなく似ていると思っていましたの‥‥まさか、この方は‥‥」
伯爵から託された肖像画を胸に抱きながらセレナは呟く。
『いつか、戻って来い‥‥お前の故郷へ‥‥』
彼は遠い誰かに向けてそう繰り返すのみだった。
○伝えられた『情報』
冒険者達は城での探索を終えて帰りの準備を始めていた。
「でも、良かったじゃない。情報っぽいのも手に入ったしデビルも出なかった。後はパーシ様に彼にここに来てもらえばもっと何か解るんじゃないかしら。ゴーストさんの言うパーシがパーシ様かは知らないけど」
タロットカードを広げるアルテリアの声は明るいが
「そうですねぇ〜。でも〜なんかしゃくぜんとしないですぅ〜」
エリンティアはどこか膨れた顔だ。
「確かに、な。城中これだけ探してもこの一族が『カリバーン』を守ってるって情報は出てこなかった。ゴースト達も何も言ってなかった。なのになんで『カリバーン』がここにあるって情報が流れてきているんだ?」
リルは腕組みをする。紋章その他を環伽羅も調べてくれたのに出てこなかった一族の秘。それが何故‥‥。
「しかし、聖剣カリバーンに失われた騎士の血族ペリノアか。希望の宝とか封印を守る一族とか、この間もおんなじ様なことがあったし、このあたりはそういうの多いのかな‥‥」
「! ちょっと待って下さい〜〜」
恋人を思う蒼汰の軽口。だがエリンティアの声が凍り、その表情が珍しくも青ざめる。
「どうしたんだ?」
心配そうに問うキットの横でエリンティアの頭が急速に回転したある結論を導き出す。
「この地方は〜、確かにそういう封印とかおおいですぅ〜、そして〜このシャフツベリーにはぁ〜封じられていたデビルがいたんですぅ〜。以前、デビルに一族は滅ぼされたのだといってましたよねぇ〜」
「でも、時期的にあいつは違うだろ。あいつの封印が解かれたのは割と最近だ」
「でもぉ〜、同じデビル同士で繋がりとかはあるかもですぅ〜。封印の剣の事を聞いて手に入れようとして、でもあのゴーストさんたちに邪魔されたとしたらぁ〜」
「! 封印の一族の生き残りを探してそっちから手に入れようとする!? まさか、ワザと情報を流しておびき出そうと?」
「デビルが出なかったのは、もう既に先を越されていたから?」
冒険者達の顔が一様に青ざめた。
パーシをおびき出す為にカリバーンの情報をデビルが流した。
でも、パーシは来なかった。と、いうことは‥‥。
「皆! 急いで戻るぞ!」
「待って!」
アルテリアは最後のタロットを捲り、唇を噛むとそれを握り締めたまま走り出した。
最後のカードは『吊られた男』
到着と同時に冒険者は知る。
ヴィアンカの誘拐と、パーシ・ヴァルの失踪を。