【灯 心の灯火 外伝】 真実のひとかけら

■ショートシナリオ


担当:夢村円

対応レベル:5〜9lv

難易度:やや難

成功報酬:4 G 12 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:03月02日〜03月12日

リプレイ公開日:2005年03月09日

●オープニング

「もう少しで‥‥手に入るはずだったのに‥‥あの、宝が‥‥」
 彼は暗闇の中で手を握り締めた。

 先だって北の聖母亭を襲った一味は冒険者の手によって捕らえられた。
 的確な連絡があったおかげでセイラムの騎士が早く駆けつけることができ、結果冒険者数名が軽い怪我を負ったことと、聖母亭の一部が焼けた以外、大きな被害は出なかった。
 現在、聖母亭は修理と改装中。
 ランドルドとその一味は、セイラムに護送され、そこで取調べを受けることとなった。
 だが‥‥。

「黙秘だと?」
 報告を受けたセイラム領主ライル・クレイドは部下の報告に苛立つような声を上げた。
 北の聖母亭襲撃の罪で捉えられたランドルドだったが、余罪らしきものは実は山のようにある。
 一つ、金貸しとして貸した金に法外な利子をつけて何人もの人を破滅に追いやった。
 一つ、借用書を書き換えられて、借りた金額の倍以上を支払わされた。
 一つ、借りた金を盗まれて、借金だけを背負う羽目になった。
 一つ、知らない間に家族が借金をしたと偽の借用書を作られた。
 などなど。
 一味の数名が捕縛されたのをきっかけに、それらの被害は広く訴えられるようになり、彼の罪に疑いの余地は無い。
 まして、逃亡先の洞窟から周辺地域の家々から盗まれた宝物なども見つかっている。
 例え、黙っていようが彼が罪から逃れられることは無く、またその罪が軽くすむことは決してない。
 だが、自白は重要だった。
 特に今回の北の聖母亭での事件においては不明な点も多く、動機などについて自白が欲しい所だった。
 しかし海千山千のランドルドを取り調べ、自白を促せるほど、セイラムの執務官や騎士の実力は高くなかったようだ。
「まったく‥‥セイラムの自衛や、管理のための組織作りは今後の課題だな‥‥」
 頭を抱えながらも彼は羊皮紙に手紙を書くと、部下を呼んでそれを渡した。
 使者をキャメロットに送る手配である。
「‥‥彼らなら、きっと我々にはできない視点からの取調べが出来るだろう‥‥」
 それが依頼の理由だった。

 セイラム侯 ライル・クレイドからの依頼は盗賊一味の取調べへの協力だった。
「なんでも、捕らえられたはいいが黙秘して罪を逃れようとする盗賊がいるんだとよ」
 リーダーのランドルド。腹心の部下で身を持ち崩した剣士。8名の盗賊団の仲間。
 その一味を取り調べ、自白を促すことが今回の依頼内容だと係員は語った。
「いずれ極刑にはなるだろうが、現状はとりあえず身体を傷つける拷問は禁止。それ以外は魔法を使っても、別の手段を使っても構わない。このまま墓場まで秘密を持っていかれるのも気持ちが悪いしな。どうだ? やってみないか?」
 簡単なようで、難しい話だ。でも‥‥
「何か、秘密を聞けるかもしれませんね‥‥。彼しか知らない何かを‥‥」
「ああ、無いと思うが奴らを逃がしたりするなよ。取調べは牢の中で行われるが逃がしたりしたら大変だからな」
 冗談めいた忠告に肩を竦めながらも、真実の欠片の一つを探してみようか。と。
 冒険者はその依頼に、手を伸ばした。

●今回の参加者

 ea0640 グラディ・アトール(28歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea1135 アルカード・ガイスト(29歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea2765 ヴァージニア・レヴィン(21歳・♀・バード・エルフ・イギリス王国)
 ea2804 アルヴィス・スヴィバル(21歳・♂・クレリック・エルフ・イギリス王国)
 ea3731 ジェームス・モンド(56歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea5304 朴 培音(31歳・♀・武道家・ジャイアント・華仙教大国)
 ea6382 イェーガー・ラタイン(29歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea7487 ガイン・ハイリロード(30歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)

●リプレイ本文

 秘密は、人の心を悩ませ、苦しませる。
 でも、明かしてしまえばそれは秘密ではない。
 真実の欠片を捜して、彼らは集まった。

「あれだけ悪い事して黙って通そうなんて‥‥あのオッサン、何考えてんだか」
 腕を組み苛立つような口調で怒るグラディ・アトール(ea0640)にそうだね、とアルヴィス・スヴィバル(ea2804)は答えた。
 頬には笑みが浮かんでいる。
「まあなかなか楽しそうじゃないか? ねえグラッチ?」
「ぐらっちって言うな!」
 抗議をさらりと無視してアルヴィスはやる気満々だ。
「尋問が今回の依頼ですか」
 依頼主の説明にアルカード・ガイスト(ea1135)は少し考えた。
「ふむ‥‥これだけの悪事。私は3,4回死罪にしてもお釣がくると踏んでいますが、実際はどうです?」
「‥‥閉じ込めて置くなら一生を二度、三度牢の中で過ごすほどだな」
 なら、と何か彼は思いついたようでもある。
 なにやら相談を持ちかける横で
「‥‥私達は、表に出ないほうがいいかしら?」
 仲間に事情の説明をしていたヴァージニア・レヴィン(ea2765)はジェームス・モンド(ea3731)に相談の顔を向けた。
「そうだな‥‥あいつらも余計意固地になって話さないかもしれない。なら、最初は皆に任せて俺は下調べをしてくる‥‥。証拠品の調査、してもいいか?」
「私は、そうね。ちょっとやってみたいことがあるから‥‥」
 ガイン・ハイリロード(ea7487)はやれやれ、と苦笑して領主に肩をすくめる。
「領主さん、現行犯でとっ捕まった奴を自白に持ってけない官憲にも問題がありそうだよ。まあ、できる限りのことはするけどね」
 依頼主は苦笑いしながらもガインや、イェーガー・ラタイン(ea6382)他の皆の要請で、盗賊を一人一人部屋分けて尋問する事、と必要品の手配を確約した。
「‥‥水に漬けてる時に擽るというコラボも効果的かね?」
 ガインの拷問提案に、頷いた者、ちょっと顔を顰めた者もいたが‥‥。人相手。頭で考えていても仕方ない。
 身体を清め、服を着替え、真剣な目をした朴培音(ea5304)は仲間達に声をかける。
「まずはやってみよう。それからだね」
 彼らは動き始めた。

 また来た。そんな顔で彼は相手を見つめた。尋問はこれで三度目だ。
 一度目はこうだった。
「俺はイェーガー・ラタインと言います。いくつか質問したい事がありますから答えてください」
 半ば諦め顔で盗賊はイェーガーを見た。
 最初の質問に男は首を傾げる。
「君の名前は? 出身地はどこ?」
「大切な人はいる? 家族や、恋人はいませんか?」
「その人に伝えたい事は?」
 最初の一回目、彼はそれを無視した。
 繰り返し‥‥何度同じ事を聞かれても完全に黙秘を続けた。
「そうですか。では‥‥後で」
「はあ?」
 拷問でもかけられるか。と思っていただけに彼はあっけに取られた。
 イェーガーはスタスタと去っていく。
「何だ? 一体?」
 暫くの後、イェーガーはまた現れる。
「今度は何だ? 一体?」
「別に難しい質問ではありませんよ? 君の名前は? 出身地はどこ?」
「お、おい?」
「大切な人はいませんか? その人に、伝えたい事は?」
 同じ質問を、繰り返し。
 あまりにも根気良く聞かれるので、彼はつい、答えてしまった。
 自分の名前、出身地。親や家族はいない。憧れている女性が一人‥‥。
 答えているうちにイライラとした思いがこみ上げてくる。
「家族に恵まれている奴が、盗賊なんかになるかよ!」
「そうですね‥‥では、また‥‥」
 そう言うとまたイェーガーはまた部屋を出ようとする。だが、今度は部屋を出る直前、一度だけ足を止めた。
「さっきの質問の意味が、解りますか?」
「どういうことだ?」
 イェーガーは答えず、部屋を出る。
 そして、今、三回目だ。
「お前、一体何を考えてやがんだよ!」
 言葉を待っていたようにイェーガーは優しく答えた。
「貴方は、自分が生きていた事を誰かに覚えていて欲しいと思いませんか?」
「何?」
 イェーガーはゆっくりと静かに語る。
 このままでは極刑になること。誰にも知られずに死んでいくこと‥‥覚悟はしていても、それは辛い宣告だった。
「もし貴方が真実を告げるのならば、貴方の大事な方に貴方の言葉を必ず伝える事を約束します。話してくれますか?」
 ふと、直接誘ったことも無い、憧れていた人の顔が心に浮かぶ。
「‥‥俺の、知っている事はそう多くないが‥‥いいか?」
「はい」
「俺はあの親子の殺された所を見た。あの二人は‥‥宿を改築しようとしていた。あそこに人が埋められているって‥‥」
 支給された羊皮紙に、羽ペンでその自白は書き留められた。

 向こうの緩やかな尋問に比べ、こちらの対象者はかなり参っている。
「いや〜、君達なかなか口割ってくれないから、こっちも楽しん‥‥いやいや苦労してるよ。まあ、これだけ人員駆り出されてるって事は君達よっぽど色々やったか、あるいは何か重要な事隠してるんだろうねえ‥‥」
 黙る盗賊を横に、童顔のガインは心から楽しそうに竪琴をかき鳴らす。
 だが、その言葉は表情に似合わず心底物騒である。
「君達は死刑確定なんだって。いやいや、死刑ったって色々あるんじゃない? 火あぶりとか斬首刑とか生きたまま張り付けにして餓死させるとか‥‥」
 自分より、弱いものに対しては好き勝手をしてきた彼らではあるが、自分がやられる立場になると、やはり嫌な気分になるようだった。
 顔色が変わる。そこに追い討ちをかけるように‥‥
「まあまあ一曲サービスしちゃうよ、どんな曲が好きだね?」
 返事を待たずに彼は曲を奏でた。
 どんどろどろ〜♪
 真っ暗なまでの葬送曲、レクイエムだ。
「や、止めやがれ!」
 耳を押えるが、曲は聞こえてくる。亡霊の幻影さえも見えてきそうだ‥‥。いや、実際に見える?
「そ、そこにゴーストがぁあ!」
 そこに声が聞こえた。
「‥‥助けて、差し上げましょうか?」
「なんだって?」
 声の先にはアルカードが笑みを浮かべている。作った笑顔であるが、それ故に盗賊には恐ろしく見えた。
「私はご領主より最も有益な情報を出した者は減刑を考慮しても良いとの許可を頂いています」
「本当か?」
「但し、チャンスは一人だけ。と言う訳ですので気に食わない奴の尋問は‥‥解りましたね?」
「了解。あんた喋んなくてもいいよ。じゃあな!」
 あっさりとガインは立ち上がって去ろうとする。そして、アルカードも‥‥
「ま、待ってくれ!! 話す、俺が知っている事は話すから‥‥助けてくれ!」
 彼ら二人が、顔を見合わせ、にやりと笑った事を盗賊は知らない。
「素直だねえ。いい事だよ。うん」
 くるりと二人は身体を回す。
「じゃあ、話してもらいましょうか?」
「昔、俺がまだ駆け出しだった頃、ランドルドは先代の盗賊長を倒して地位を手に入れたんだ。盗賊長の宝が目当てだったらしいんだが‥‥その宝は直前に持ち出されていた」
 今から十年以上前の話だ。思い出しながら盗賊は語り始めた。

 手錠も、足かせも取られた状況の盗賊と培音は向き合っていた。
 頬に深い傷を持つ剣士は、今は武器を持っていないが十分な凄みを内側から放つ。
「北の聖母亭の件で、君と話し合おうと思ってきたんだ。名前を聞かせてもらえないかな?」
 少し離れた所に椅子を置き、気軽な感じに声をかけてみる。
「二人で、あるいはもっと大勢でこんな仕事をやったときは、遅かれ早かれ誰かが口を割るってことを、君もよく解ってるはず。きっともう他の誰かは口を割ってるよ?」
 視線も動かず、答えも返らない。ふうと、息をつき、培音はポンと手を叩いた。
「今日は、もう食べ物を与えられた? 持ってきてあげようか?」
 椅子を外に持ち出した彼女の手には簡単な食事。パンと水と、僅かの肉が置かれてあった。
「良かったらどうぞ?」
 さりげなくさっきより近づき、肩に身体に手が触れる。
 その時だ!
「うわあっ!」
 ほんの一瞬の隙を突いて培音は足を払われ、地面に組み伏せられた。
 ジャイアントの体格を倒せるとは‥‥かすかな、油断があったのかもしれない。
「人を、甘く見すぎないことだ。実力のある戦士はお前一人では無いのだぞ」
 足と手を男の力で押えられ身体の動きは完全に拘束されていた。
「まあ、女は女だな。さて‥‥」
 剣士の手が培音のナイフに伸びようとしたその時だ。
 ボガッ!
 背後からの奇襲に剣士の意識と力が一瞬抜けた。その隙に脱出した培音が鋭い一撃を腹に与える。
「大丈夫か?」
 心配そうなジェームスの言葉に大丈夫、培音は身体の埃を払う。
「ありがとう。助かったよ」
「いや。だが‥‥手間を取らせてくれる。今度は縛るぞ」
「すまない」
 椅子に化けて中を伺っていたジェームスがいなかったら‥‥。培音は小さく苦笑した。
「‥‥証拠は上がってるんだ、お前も早く楽になりたいだろ」
「こんなことが繰り返されれば後になって君が本当のことをいっても、もう誰も信じてはくれない。正直に話さないか?」
 意識が戻った後の二人の尋問に剣士は小さく笑った。剣を合わせた相手を見て‥‥覚悟を決めたのかもしれない。
「何が聞きたい?」
「事件の真相と、殺害事件の犯人だ。レティシアの家族が金を借りた形跡も無いのに何故あそこを狙ったのだ?」
「こんなことが起こったのは初めてなの、それともそれまでに何度もあったことなの?」
「母子の殺害事件なら犯人は私だ。我々は盗みも、殺しもいくつもやってきた。だがあの宿は特別なのだ。あの宿の先代、いや先々代は盗賊長の知り合いだったらしい‥‥。彼は古い知り合いから小さな箱を託された」
 剣士は語り始めた。ランドルドの欲、いやセンチメンタルから始まった、事件の真相の一部を‥‥。

「おや、意外な所で会うね。ランドルド君?」
「お、お前は!」
 手枷に拘束されたままのランドルドは、顔を見知った冒険者の出現に声を上げる。
「とうとう、ヘマやっちゃったのかい?」
「う、煩い! 何をしに来た?」
「おやおや、ご挨拶だね」
 完全な敗者の立場で顔を背けるランドルドに、アルヴィスは小さく肩を上げ楽しそうに笑う。
「取引をしないかい? そっちは情報、此方は‥‥ね?」
 声を潜めたアルヴィスの言葉にランドルドの目の光が変わった。
「それは‥‥どういう事だ?」
「おっと、それは君次第だよ」
 じゃあ、また。と手を振って部屋の外で待つ友と去っていった冒険者をランドルドのギラギラとした目が見つめていた。

「無断使用、ゴメンなさいね」
 彼女は、そう言うと小さく呪文を唱えた。

 数日後、アルヴィスはまた独房をグラディと一緒に訪れた。
「おや、随分痩せたね。ダイエットでもしてるのかい?」
「冗談を‥‥言うな。くそっ‥‥」
 アルヴィスの言葉にランドルドは憔悴しきった顔をふん、と背けた。
 ここ数日、夜毎見えるレイスの影。
『墓場まで俺を襲った訳を言わないつもりならあの世でどんな目に合うか考えると良い。懺悔するなら許してやろう』
 最初は気にしなかったが、段々と気分は悪くなっていく。レイスが、あの青年ではなく、違う顔にさえ見えてきて‥‥。
 そんな事を口に出すのも悔しく彼は、拳を握り締めた。
「情報を話せば‥‥逃がしてくれるのか?」
「さあ〜、どうかな? もう君の部下は自白を始めてるみたいだし〜、もういいような気もするし‥‥うわっ!」
 手枷をつけたままのランドルドが突然アルヴィスに向かって突進した。痩せたとはいえ巨漢に押しやられ彼はよろめいて膝を付いた。
 扉に向けた全力疾走は僅か数メートルで終わりを告げた。
「逃がすか!」
 待機していたグラディが突進を押えたからだ。シールドソードの盾の部分を構え、強く、前に押し出す。
 ランドルドは見事に地面に転がった。
「気をつけろよ。アル」
「流石、グラッチ、お疲れさん」
「ぐらっちって言うなって‥‥」
 無様に床に寝転ぶランドルドを見下すように二人は見た。
「流石に往生際が悪いね」
「‥‥諦めのいい盗賊など‥‥ものの役には立たんわ」
 顔を顰めるランドルドに二人が苦笑を浮かべ、何かを言おうとした時だ。
 チン! 
 小さな音を立てて何かが床に落ちた。ランドルドが投げたのだろう。それは、小さな古びた銀の鍵だった。
「これは‥‥?」
「‥‥お前達、北の聖母亭の手のものだろう? あそこには銀の箱があるはずだ。埋めてあるか、隠してあるか知らんが‥‥それは箱の鍵の一つだ。持っていけ」
「おや、今度は随分諦めがいい?」
 茶化すな。そう言った後、ランドルドは目を閉じた。
「あれは、ワシがかつて仕えた盗賊長が自分にとって最高の、唯一無二の宝と言っていたものだ。‥‥それが欲しくて盗賊長を殺め、宝を追った。だが、手に入らなかった。あやつが箱を隠さなければ‥‥」
「あやつ‥‥ってまさか?」
「今も、あそこにいるだろう。ワシが埋めたのだからな。ワシの命運も‥‥尽きたな」
 部屋に静寂が流れた。もう、これ以上は喋るまいと二人が部屋を去ろうとした時、くぐもった声が聞こえた。
「その鍵は好きにするがいい。だが‥‥もし箱の中身を知れたら、そして気が向いたら‥‥」
「なんだい?」
「いや‥‥いい」
 二人が去った後には、静かな沈黙だけが流れて行く。
 かすかな嗚咽が聞こえたような気がしたのは気のせいだと、外で話を聞いていたヴァージニアは思うことにした。

 全員の尋問を終え、情報は一本の糸に繋がった。
 裏取りはこれからだが‥‥嘘では無いようだ。
 やがて刑は執行されるだろうか‥‥。
「少なくとも嘘は言ってませんよ? それに私は真実が知りたいだけですから」
 そう言う仲間達の中、一人の青年は、そっと街へ向かう。
「‥‥約束は、守りますよ。必ず、伝えます」


 冒険者は情報と、銀の鍵を手に入れた。
 彼らとレティシアが望めば、真実への扉は開く。
 だが‥‥それがもたらすものが幸福か、不幸か‥‥。
 まだ誰にも知る事はできなかった。