春からの届け物

■ショートシナリオ


担当:夢村円

対応レベル:1〜3lv

難易度:やや易

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:5人

サポート参加人数:-人

冒険期間:04月13日〜04月20日

リプレイ公開日:2005年04月20日

●オープニング

「ふう、やっと昼休み〜」
 若い青年教師は一本の木にもたれかかると背中をすすと滑らせ、地面に腰を下ろした。
 入学式を控え、死ぬほど多忙な今日この頃、せめて昼休みくらいはゆっくりと学園を抜け出した彼の頬を風が擽っていく。
 イギリスでも北のほうに位置するケンブリッジの風は四月はじめでもまだ冷たい。
 だが、ぽっちりと、確かに感じるぬくもり‥‥それは春の気配だった。
「もうすぐ春だなあ‥‥ふわああ〜〜」
 大きく手を伸ばし、欠伸を一つ。
 右手にかじりかけのパンを握ったまま、何故だか知らないほど眠気を感じる。
 春の木漏れ日の布団と、小鳥の歌う子守唄に彼はいつしか深い、眠りに落ちていた‥‥。

『おい! おい、そこのおっさん!』
 誰かが、誰かを呼ぶ声がする。おっさん、という形容詞を付けられるのは自分では無いだろうが‥‥そう思いながらも彼は、自分を呼ぶ声の方向に疑問を投げかけた。
「お、おっさんって、僕のこと?」
『他に誰がいるよ!』
 そう返したのは少年だった。茶色い髪、茶色い瞳の快活な少年。
 ケンブリッジの学生だろうか?
「おっさんはやめてくれないかな。僕はこう見えてもまだ20歳になったばっかりで‥‥」
『そんなことはいいんだよ。なあ、おっさん、あんた人間だろ? 冒険者ってやつを知ってるか?』
 少年の疑問に彼は目を数度瞬かせた。人間だろ? どういう意味だろうか‥‥。
 彼の疑問など気にする様子も無く、少年は彼の服の裾を引いた。その目はなかなか真剣である。
『人間の冒険者に頼みがあるんだ。森の奥。広場の真ん中に住んでるじいさまに、この箱を届けて欲しいんだよ』  
 差し出された木箱は少年の頭ほどに小さい。差し出されるままに受取るととても軽い。振ってもさらさらと微かな音がするばかり‥‥。
『じいさまはさあ‥‥まあ、悪いやつじゃないんだけど、とにっかく! 寝起きが悪くてさあ、下手に俺らが近づくと誰彼かまわず枝で、びしばしっ! って叩きやがるんだ。だけどじいさまに目を覚ましてもらわないことにはおちおち春の準備もできなくて、俺らも困るわけで‥‥とにかく頼むわ! その箱を鼻先で開けて中身を振りかけてやればいいからさ!』
 姿形に似合わぬ腕組みをし、勝手に告げて勝手に納得したように頷いた少年は、これまた勝手に靄の向こうに消えていく。
「ちょ、ちょっと待って‥‥」
『そうそう、じいさまは火がだいっきらいだから! じいさまを燃やしたり殺したりしたら、俺たち森の住人全部を敵に回すことになるぜ‥‥、まあ、じいさまに魅了されたらそんなことは考えないだろうけど‥‥あ、魅了されたら困るんだ。とにかく気をつけろよ〜』
「じいさまって‥‥?」
『その箱はじいさまに会うまで開けるなよ〜、森のみんなの気持ちが入ってるんだからな〜』
「だからこれは一体? 君は‥‥?」
『じゃあ、頼んだぜ。報酬は先払いしとくから‥‥』
「ま・待ってって言ってる‥‥おい‥‥ま‥‥」

 コーン、ゴーン。
 昼休憩の終わりを告げる鐘の音が彼を夢の世界から引き戻した。
 手にはかじりかけのパン、妙に冴えたような頭。
 自分は、昼寝をしていたらしい。
「あれは‥‥夢?」
 立ち上がった足元でカタン、と音がする。彼は足元を見て‥‥目を見開いた。
 そこには夢で見たのと同じ小さな小箱と木の皮に描かれた森の地図、そして‥‥
「ソフルの実‥‥これが報酬?」
 転がった木の実、そして箱を彼は拾い上げる。
 箱から微かに春の若葉の匂いがしたような気がした‥‥。 

「それが、依頼ですか?」
 クエストトリガーの生徒の言葉に、黙って彼は頷いた。
 教師と言えど赴任したての彼とは大差ない年の係員生徒はまあいいですけど、と用紙を差し出す。
 さらさらと内容を書いて彼は小箱と地図、それからソフルの実を売ったお金を用紙と一緒に返した。
「まあ、夢だと笑ってくれてもいいけど‥‥多分、夢じゃない。証拠もあるしね‥‥」
 苦笑の顔を少し、真剣に戻して彼は続ける。
「少し、下調べしてみたけどケンブリッジの森の奥。ここから歩いて二日〜三日くらいのところに地図の通りぽっかりと開いた広場があるらしい。その中央にじいさま、と依頼人が言った相手が住んで‥‥は、いない」
「は? 住んでいない?」
「ええ、そこはひたすら深い森の中、人っ子一人、どころかオーガも何も住んでいない平和な森らしい」
「なら‥‥じいさま、ってのは‥‥何です?」
「多分トレント。木の精霊だと思うよ」
 木の枝で叩く、火が嫌い。そして‥‥魅了させる。
 仮にもケンブリッジ教師そのくらいの予想はつく。
「じゃあ、その依頼人は‥‥、箱の中身は?」
 興味津々の係員のから箱を、少し遠ざけて彼は笑った。子供のような悪戯っぽい笑みで。
「それは、行ってみてのお楽しみ、でいいんじゃないかな? 僕は仕事で学校を離れられないから‥‥代りに見て来て欲しいな」
 

 春風が揺らしたのか、それとも‥‥。
 カウンターの上で、小さな箱がカタタン! 微かに揺れる。
 自分を運んでくれる人物を待つように。
 自分が行くべき相手の所に行きたいと告げるように‥‥。

●今回の参加者

 eb1421 リアナ・レジーネス(28歳・♀・ウィザード・人間・ノルマン王国)
 eb1675 夕凪 せせら(26歳・♀・志士・パラ・ジャパン)
 eb1883 デギーニン・イワノビッチ(70歳・♂・神聖騎士・人間・ロシア王国)
 eb1961 アリオク・バーンシュタイン(28歳・♂・神聖騎士・人間・ロシア王国)
 eb1978 ガルネ・バットゥーラ(32歳・♀・バード・ジャイアント・イスパニア王国)

●リプレイ本文

「ねえ? 『人間』の冒険者じゃなくてもいいかい?」
 背後から聞こえる大きな、でも優しい声に依頼人は後ろを向く。
 そこには背が低い方ではない彼よりも頭一以上大きい人物が立っていた。
「私ゃ『人間の』冒険者じゃないけど、一緒に行く分にゃ構わないだろ? 森林を歩くのなら任せておくれよ」
「‥‥ああ、勿論。よろしくお願いする」
 質問の意味を理解して、彼はにっこり微笑む。
 笑うガルネ・バットゥーラ(eb1978)を、依頼人の青年は見上げて聞く。
「大きいな。君は戦士かい?」
「いいや、吟遊詩人」
「‥‥‥‥‥‥」
 微妙な沈黙に、ガルネは苦笑するように頭を掻く。
「確かにジャイアントが吟遊詩人してる、ってのは珍しいかもしれないけどさ」
「女性に失礼ですよ。先生。‥‥はじめまして。ガルネさん。僕はアリオク・バーンシュタイン(eb1961)。よろしければご一緒させて頂けませんか?」
 ふと見ると背筋を伸ばした若者が立っている。フォレスト・オブ・ローズの生徒だろうか? 
「よろしくアリオク君。騎士さんか。心強いね。一緒に頑張ろう」
「こちらこそ。騎士とはいえまだ見習いの身ですが‥‥」
 ぽぽん、と肩を叩いたガルネは青年と笑顔を交わした。
『‥‥私も入ってもよろしいでしょうか?』
『お手伝いできる事はあるかなあ?』
「えっ?」
「はあっ?」
 作戦の計画を話そうとしていたテーブルにかけられた声二つ。二人は同時に顔を向けた。
 細身の女性と、少女がそこにいる。
 驚きは突然声をかけられたから、でも女性がやってきたからでもない。
 聞こえた言葉がイギリス語では無かったからだ。女性の言葉は‥‥理解できる。アリオクにはゲルマン語だと解った。
 だがパラの少女の言葉は、彼らの耳には魔法の呪文とほぼ同じ‥‥。
「あ〜、これは‥‥噂に聞くジャパン語ってやつ?」
 ガルネは呪文を唱えテレパシーで問いかけてみる。
『こんにちはっと。手伝ってくれるのかい?』
『あ! ありがと〜、まだイギリス語覚えてなくて困ってたんだ♪』
 夕凪せせら(eb1675)と名乗った少女は、ニコリと明るく笑った。アリオクも女性の言葉を通訳する。
「リアナ・レジーネス(eb1421)さんと、おっしゃるそうです。これで仲間が四人ですね」
「いや、五人じゃ!」
 今度、聞こえてきたのはイギリス語。再び返った視線を闊達な笑い声が迎えた。かくしゃくとした老人、と呼ぶにはまだ早いのだろうが自分達の倍以上の年経た人物の登場に目が少し、丸くなる。
「諸君! わしは神聖騎士のデギーニン・イワノビッチ(eb1883)じゃ。若人の困りごとと聞いて手助けせん! と参った。末席に加えて頂けまいか?」
 礼儀ある‥‥そして優しげな眼差しと言葉。言語として通じたガルネとアリオクだけではない。リアナとせせら。二人の頬にも微笑が浮かぶ。
「こちらこそよろしく。デギーニン殿。ねえ、若き騎士と経験豊富な老騎士がいて、森歩きが得意なジャイアント、パラの剣士、そして魔法使いがいる。これなら何でもできるよ。ね?」
 返った答えは笑顔。頷きあう微笑み。
 見事な混成パーティがまるで学院の開かれた扉を象徴するようで教師は何故か嬉しく、誇らしかった。
  
 ケンブリッジの森はキャメロットより北にあり、雪こそ消えてはいるが、まだ時折冷たい風が吹いてくる事がある。
「クシュン!」
 可愛いくしゃみにアリオクは薪を抱えながら大丈夫ですか? とガルネに聞いた。
「大丈夫。でも、朝晩はまだやっぱり少し冷えるね」
「そうですね。でも僕の故郷は、今頃まだ雪があるでしょうから、こちらは大分暖かいと思いますよ」
「わしの若い頃は、冬の寒さの中でも旅をしたものじゃ。北国の冬は長い。だからこそ、春の輝きが眩しい‥‥」
 同郷同士、同じ思いがあるようだった。デギーニンとアリオクの会話をガルネは楽しそうに聞いた。
 見知らぬ国の話、見たことの無い風景、そして、冷たい中にも微かに感じる春の香りを孕んだ風の匂い。
 書庫の中に篭っていては解らない事だ。
『そろそろ、お食事にしませんか?』
『お腹すいたよ〜、ご飯たべよ〜♪』
 向こうから声をかけるリアナとせせらに手を振る。
「ガルネさん、後でまた歌や旅の話など聞かせて下さいね」
「勿論!」
 三人は冴えた空気の中を駆け出していった。

 森は奥に行くほど深く、空さえも見えないほど生い茂った木に溢れていた。
 人の入らない獣達と木々の、そこは楽園。
 それ故に、旅慣れない冒険者達には一つの試練でもあった。
 土地勘に優れたリアナとガルネが先頭を歩き、せせらが身軽に周囲を警戒する。
 後方の護衛はアリオクとデギーニンが受け持った。動物の気配はするが‥‥襲ってくる様子も無いと二人は感じていた。
 馬も入らず、途中に置いて歩くこと暫し。突然、それは現れた。
『うわあ〜、すっごおい♪』
 はしゃぐようなせせらを止められず冒険者達は小さく笑う。
 深い森の中でぽっかりと開いた空間。足元に石も無ければ、深く生い茂った草も無い。あるのは、一本の見上げるような大樹だけ。‥‥不思議な場所だった。
『あ、あれが‥‥そのおじいちゃんかな‥‥‥‥ってわああ!!』
「せせら嬢!」
 興味本位でぴょんぴょんと近づいたせせらの眼前に
 ブン!
 突然何かが横切った。
『あわわ‥‥びっくりしたあ』
 身振り手振りで、そう伝えるせせらを庇うように起こしながら、ガルネはそれを見た。
 大きく伸びた木の枝が、ぶんぶんと振り回されるように揺れている。
「これが、やっぱり例のじいさまだね‥‥ホントに寝ぼけてるんだ‥‥」
 他人事のように苦笑するガルネはせせらと共に後に下がった。良く見てみると顔に見えるようなしわがあるが‥‥それが、動く様子は無い。
 どうやら、周囲の音や気配を感じているようだ。
「さて、どうするか‥‥」
「わしが、話してみるとしよう!」
 静かにゆっくりとデギーニンは前に歩み出た。とりあえず、木の枝は‥‥動かない。 
「ご老人、近頃はめっきりと暖かくなってきたのお‥‥春の準備をそろ‥‥そろ‥‥」
 少し間をとり、穏やかに話しかけていたデギーニンの様子を見ていた冒険者達であったが、何だか怪しい様子にふと目を瞬かせた。
「いや、ご立派な木で、見事な風格であらせられるなあ‥‥」
「イワノビッチさん、しっかり!」
 ずるずるずる。ほえと、微笑むデギーニンをアリオクは引っ張って戻る。
 さわさわ‥‥、キラキラ‥‥。
 木々がとてつもなく美しく、高貴なものに見えているようで‥‥。
「大樹老の、木々の囁きや、甘い花のような香りは素晴らしい。傷つけるなど許されぬな‥‥ああ、幸せじゃあ‥‥」
 どうやら魅了されているらしい。すっかり癒され、和んでしまったデギーニンに彼らは小さく肩を竦めた。
 元々戦闘向きのメンバーは多くないし、トレントを傷つけたくも無い。
 ならば‥‥。
「デギーニン殿がハマったのはあそこだから‥‥」 
 ガルネはアリオクに目配せした。テレパシーでせせらにも話し作戦に誘う。
「よし、行くよ!」
 スッと立ち上がったガルネはデギーニンが立っていた場所よりも少し離れた場所で深く、息を吸い込んだ。
 ♪〜〜♪〜♪
 大きな身体から深い歌声が、森に響いていく。


『ごきげんよう
 森のあるじへ春の挨拶
 夢の春より
 うつつの春を

 森の小鳥の声をお聞きよ
 春はまだかと歌っているよ

 森に住んでる幼な子達が
 春はまだかと待ちわびてるよ』

 我々に敵意は無い。それを伝える歌だ。そして、もう一つ。
 動き出した仲間達を目で確認しながら、彼女は歌を続けた。

『ごきげんよう
 森のあるじへ春の挨拶
 夢の春より
 うつつの春を

 実り豊かで平和な木々が
 春の日差しを待ちわびてるよ

 春の予感に包まれながら
 心豊かに目覚めておくれよ〜』

『今です!』
『行くよ!』

 歌う彼女と反対側に足音を忍ばせて近づいたリアナとせせらが、二人でトレントの枝に一気にロープをかけた。
 音を立てて揺れた枝、せせらは軽く弾かれるがリアナは何とか避け、そして‥‥

『失礼します!』
 
 パカッ!
 全速力で駆け寄って、リアナは小さな木箱を開いた。
 ふんわり感じる、春の匂い。
 そして‥‥中に見える白いものを一気にトレントの眼前へと降りかけた。
 
『ブオオオ〜〜〜!』

「やったか!」
 ガルネは歌を止め、アリオクも演奏を止めて様子を見守った。
 吹き抜ける南風が、トレントの頭上に白いものを巻き上げる。
 風と、純白の花吹雪。冒険者達は、一瞬目を閉じた。

「えっ?」
 おそるおそる、冒険者が目を見開いた時。
『うわ〜、綺麗。桜みたい』
 せせらははしゃぐように跳びはねた。
 トレントは静かな一本の大樹として、その枝に白い花を一杯に咲かせている。
 微かに桃色の気配が見えるがまるで、雪が咲いたように花が一気に開いた様子は夢を見ているか、それとも幻か。冒険者達は暫しその空間に息を呑んだ。
 冴え渡るような春の青空に、花は美しく冴える。
 緑の香り、木々の揺らめき。そして‥‥花色の風。
 冒険者達は、この森に春が来た事を確かに感じていた。

『押さえつけてしまい申し訳ありません』
「わしも若い頃にはやんちゃをしたものじゃ。どうか、許してやって欲しい」
 リアナはデギーニンと一緒に木に絡まったロープを丁寧に解いた。
 目を覚ましたはずのトレントであるが、まったく動かず、反応も示さない。攻撃もして来ない。
「ホントに目を覚ましたのかねえ?」
 トントン、ガルネがノックをするように叩くがこれも反応は無い。
『大丈夫だよ。元々じいさまは気がいいんだ。目を覚ませばむやみやたらに攻撃したりしないって』
 聞こえてきた声。仲間の声ではないそれに、冒険者達は振り向いた。
 満開の笑顔を咲かせる、少年がそこにいる。
「君は‥‥」
『ごくろうさん♪ お陰で俺たちも安心して春できる。礼を言うよ』
 それだけいうと、少年の姿はまるで、青いもやのように消えていく。
「あ、待って下さい。君は‥‥」
 少年の肩を掴もうとしたアリオクの手は空をきった。瞬く間、そこにはもう、誰もいない。
「アリオク君?」
「‥‥僕は、一つ願いが叶いましたよ。精霊に会うという‥‥。報酬を一つ、余分に貰った気分ですね」
 ガルネに向かって笑って見せたアリオクの向こうで、なにやらせせらが手招きをしている。
 冒険者が近寄ると、彼女は手一杯に抱えたものを差し出す。黄色と白の花束だ。
『見て見て! お花。制服に良く似合うでしょ?』
 気が付くと、足元に今まで気が付かなかったデイジーが咲き乱れていた。まるで黄色と白の花は金貨、銀貨のようにいや、それよりもずっと美しい。
「これも、森からの特別報酬かな?」
 黄色のデイジーを一本、手折ってガルネは襟元に付けた。
 心なしか、森の木々の緑も輝きを増したように見える。
 深く、深呼吸をして彼女は、静かに佇むトレントに歌った。

『ごきげんよう
 森のあるじへ春の挨拶
 夢の春より
 うつつの春を… 』
 
 返事は言葉として聞こえはしなかった。木の皺も動いた様子は無い。
 それでも彼女は微かに、だが確かにトレントが微笑んだように感じて、静かに笑ってお辞儀をした。

 
 毎年やってくる春の訪れ。
 だが、今年はほんの少し違って見える気がする。
 この思いは、きっと春からの贈り物。
 依頼人の先生にも話してあげよう‥‥。小さな報酬と共に。

 そんな思いを抱きながら冒険者達は振り返り‥‥森を後にしたのだった。