【聖杯戦争】見えざる闇の手

■ショートシナリオ


担当:夢村円

対応レベル:4〜8lv

難易度:難しい

成功報酬:3 G 12 C

参加人数:8人

サポート参加人数:4人

冒険期間:07月28日〜08月05日

リプレイ公開日:2005年08月04日

●オープニング

 華美なまでに豪華なその館で、男は腹を震わせていた。怒りと、いくらかの屈辱に。
「まったく、とんだ茶番だったわ。‥‥折角、貴族を取り込んで権力と財力、両方を手に入れる機会だったというのに‥‥」
「親父は単純なんだよ。貴族の力を手に入れるのに娘と結婚、なんて悪いとはいわねえけど、もっと頭を使えよ」
 嘲るような含みをもった声に、彼は振り向くが‥‥怒りは見せず、笑顔で手を広げる。
「おお! 帰っておったのか。どうだ? 商売の方は?」
「勿論上手く行ってるさ。だけど‥‥イギリスが面白くなりそうだから帰ってきたんだ。戦争が、始まるんだろう?」
「そのようだな。この街は中立を宣言しておるが。まあ、今の現状では戦争などしている余裕はあるまいて‥‥」
「だから、親父は単純だって言うんだよ。戦争は折角の儲けのチャンスじゃないか? 火が燃え始めているならそれをどんどん燃やさないと。‥‥それにやりようによっては‥‥親父の欲しがってた貴族の力も手に入るかもしれないぜ?」
「どういうことだ?」
「まあ、俺に任せろって。とりあえずは、オクスフォード侯に連絡して‥‥と。貴族や権力者なんてしょせんは俺達の儲けの道具でしかないんだってことを教えてやるよ」
 煌びやかな館の中で、そう言った青年の顔は暗く、輝いていた。

「なに? シャフツベリーから兵が?」
「はい。先ほど通り過ぎていった一団が掲げていた旗は、紛れも無く青い鷹。いかが‥‥致しましょう?」
「大至急キャメロットに連絡を! まさか‥‥ディナス伯が‥‥?」
 不安を抱きながら彼は、大急ぎで書をしたためた。
 それを持った駿馬の使者は一団を追い越してキャメロットに走る。

「オクスフォード侯のところ新たに貴族が参戦した、と連絡があった。当初中立を表明していたシャフツベリー伯ディナス殿の部下だと彼らは名乗ったという」
 その数は小隊程度であるが、彼らはシャフツベリー伯爵家のシンボルである青い鷹の旗を掲げアーサー王に反逆すると声高く告げたという。
「だが、どう考えてもおかしいんだ。シャフツベリー領は先のゴルロイス卿の乱で作物や領地に大きな被害が出た。元々は豊かな地だったが、今はどう考えても戦争に参加する余裕などない筈だ。少し前に土地の富豪からの縁談を断るために冒険者の手を借りたほど、今は財力に余裕はない」
 もう少し時間が過ぎれば力を取り戻すだろうが、その時ならまだ考えられなくは無いが‥‥少なくとも今の挙兵は明らかに不自然だった。
「ディナス伯とは何度か会ったし、一度出した発言をそう簡単に翻すような人でもない。この挙兵にはきっと‥‥何かがある」
 依頼そのものは隣接地域ソールズベリー、セイラムのライル・クレイドからだ。と係員は言った。
『オクスフォード軍に参加したその小隊に接近し、挙兵の真相を掴んで欲しい。何か陰謀の匂いがする‥‥』
「中立を宣言していた貴族がいきなり参戦ということで、アーサー王陣営には少なからず士気に影響が出ている。本当にシャフツベリー軍なのか、そしてそうだとしたらその意図は何か。調べて欲しい。だが、軍に近づくなら‥‥戦争の只中に足を踏み入れることになるから、注意しろよ」

 決戦の野は各地から集いし兵達が徐々に動き始めている。
 その中に青く飛ぶ鷹の旗は‥‥空に飛んでいた。
 暗い暗雲の空を‥‥

●今回の参加者

 ea1504 ゼディス・クイント・ハウル(32歳・♂・ウィザード・人間・ビザンチン帝国)
 ea2182 レイン・シルフィス(22歳・♂・バード・エルフ・イギリス王国)
 ea2686 シエル・ジェスハ(28歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea3441 リト・フェリーユ(20歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea5635 アデリーナ・ホワイト(28歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea6030 タチアナ・ユーギン(32歳・♀・バード・エルフ・ロシア王国)
 ea7044 アルフォンス・シェーンダーク(29歳・♂・クレリック・エルフ・イギリス王国)
 ea7235 ルイーゼ・ハイデヴァルト(26歳・♀・神聖騎士・エルフ・フランク王国)

●サポート参加者

ウォルフガング・シュナイダー(ea0433)/ ヴァルテル・スボウラス(ea2352)/ 朱 華玉(ea4756)/ ヒューベリオン・グリルパルツァー(ea8902

●リプレイ本文

 戦いは一進一退を繰り返している。
 オクスフォード候の乱と呼ばれるその戦いにおいて、最初は劣勢と見られていたアーサー王の軍は冒険者の力を借り、ついに侯爵軍を後退させることに成功していた。
 今、侯爵軍は撤退と兵の再編に動いている。
 勝利を手に入れるためにどちらの軍も一兵でも多くの力を欲しているその地で事件は起きていた。

「あの軍は何だ! 中立から一転して偽王殲滅に地からを貸す、とやってきたはいいが、この天下分け目の戦いで、ロクに働きもせずに後方にいるとは!」
「それだけではない! 近隣の村々を襲って略奪をしているという噂もあるぞ。真の王を目指す我々が民衆を敵に回していいはずがないというのに!」
「士気にも影響する。一体何処の所属だ。あの最低の軍は」
「青い鷹、ウィルトシャー シャフツベリー伯爵家、ディナスの軍だ!」

「あらあら、酷い評判ですわね。その軍の方は‥‥」
 兵士達の愚痴に竪琴の手を止めタチアナ・ユーギン(ea6030)は頷いた。
「そうともさ、戦わないだけならまだしも、味方の足を引っ張るわ、無用の略奪を繰り返してすっかり信用を無くしてるんだぜ。あいつらは!」
「そのくせ糧食や武器はいっちょ前に持っていきやがる。ああ! あんな奴らに来てもらいたくなかったぜ!」
 ただでさえ敗戦ムードが漂いいらいらとした思いを抱く彼らはイライラとした思いを全て彼らにぶつけていた。
「偽王を打倒し、正しい王家を作る。オクスフォード侯のお考えに略奪などで一般人を苦しめるなど害しか無いと解っているはずなのになあ?」
 そう思うだろ? と意見を問われてリト・フェリーユ(ea3441)ははい、と頷いた。 
 思った以上にオクスフォード軍は紳士的でオクスフォードの街の側まで連れて行って欲しい。そう頼んだリトや旅の僧侶であるアルフォンス・シェーンダーク(ea7044)。 
 そして吟遊詩人のタチアナも素直に軍の末端に入り込むことが出来た。
 ここにいる人物達も同じ人間。
 歌に感動し泣き、笑い、怒る同じイギリスの空気を吸って生きる人間。
 こうして近づき触れることで、少し嬉しくもなり寂しくもなる。
 戦争さえ無ければ戦うことなく友になれたかもしれないのに。
「さて、どうしましょうか?」
 こっそりと三人は顔を合わせ考える。
「しっかし、本当に評判悪いな。あの軍。しかも前線に出てこないからなかなか近づけないし‥‥」
 ダルそうに頭をかきながらアルフォンスは遠くに見える青い鷹の旗を見た。
 友人ヒューベリオン・グリルパルツァーから聞いた付け焼刃では近くにいかないと紋章の差異は解らない。だが、大きな旗と小さな旗は微妙なところで色合いや意匠が違うようにも見える。
「とりあえず、シャフツベリーに行った人を待ちましょうか? その返事を確かめてから乗り込むかそうでないかを」
 リトの提案に二人は頷いた。決戦まであとわずか。そろそろこの地もきな臭さもより一層際立つようになっている。
 危険から少しでも離れるようにと許された戦場外れのテントに三人は潜り込む。
 戦場を覆う黒い思惑、陰謀の嵐。
「それを、少しでも晴らす風になりたいね。リーフ」
 心配してくれたヴァルテル・スボウラスや仲間達の顔が思い浮かぶ。ここは甘えの許されない戦場だからこそ。
 リトは大事なものを抱きしめて、それからテントに戻った。

 突然の来訪に驚きながらもシャフツベリー伯、ディナスは冒険者達を喜んで迎えてくれた。
 特に恩を感じる顔があったのが説明や手続きを大いに省かせた。
 養子であるヴェルもケンブリッジ留学の準備を一端止めて、手ずから茶を運ぶ。だが
「なんだと!」
 その茶を取り落とさんばかりの驚きと怒りの声が、応接間に響き渡る。
「シャフツベリー軍と名乗る一団が戦争に参加? しかもよりによってオクスフォード侯の側にだと!?」
 はい、と事情を説明するレイン・シルフィス(ea2182)と伯爵の会話を見ながら、聞きながらゼディス・クイント・ハウル(ea1504)はふむ、と考えた。
(「これは、やはり予想通りかな?」)
 ゼディスの頭の中ではこの不自然な状況を調べるにあたりいくつもの原因と理由が想像され、対応が考えられていた。
 伯自身が出兵の事実を知っていた場合、知らなかった場合、望んで出撃した場合、そうでない場合。
 今の行動が演技で無い限りは彼は、出兵の事実を知らずそれを望んでもいなかった、ということになる。
「では、やはりこの挙兵は伯爵様の御意思ではありませんのね」
「無論だ!」
 確認する意味で問いかけられたアデリーナ・ホワイト(ea5635)の質問に微塵の躊躇いもなく即答が帰された。
「今回は領地を守るので手一杯であったが、私は私なりにアーサー王に忠誠を誓っている。決して敵に回ることなど有り得ない!」
「ならば‥‥」
 顔色、声色変わる事無い淡々とした声が場に楔を刺す。
「ならば、話は簡単だ。誰かがなんらかの意図を持ってシャフツベリー軍の名を騙っているのだろう」
「‥‥一体、どうやって、何の為に‥‥」
 考え込む伯爵にレインは問う。
「伯爵‥‥領地全体に関わる事なのです。無礼を承知でお伺いします。軍旗の盗難がありませんでしたか?」
「調べさせよう。ヴェル!」
「はい!」
 側で控えていた少年が即座に部屋を退室する。待つこと数刻。戻ってきた彼は父の側で結果を囁いた。それを冒険者達にも、と促され彼は同じ言葉を繰り返す。
「古い軍旗が一枚足りなくなっているようです。ここ数年殆ど遣うことが無かったため、管理も甘く、気付かれなかったのかもしれません」
 城の一角、物置のような場所にしまわれていた。城を見張るものはいるが他の備品も置かれているため鍵はなく、出入りもそう難しくは無かったかもしれない。と彼は続ける。
「私のミスだな。まさか、このようなことになるとは‥‥」
 顔を下に向ける伯爵にやはり表情を変えずゼディスは言う。
「正直なところ、シャフツベリー軍がオクスフォード側につくこと自体に関心は無い。それは為政者の判断である以上部外者が口出しするべきことでもないからだ。だが、もしこの事態が望まないものであるならば協力はしよう」
「隣接都市のライル様も心配しておられます。一刻も早く対処をお望みでしたら‥‥ご協力を頂けますかしら?」
「無論だ。よろしく頼む」
「解りました。お任せ下さい」
 強い決意を込めてレインは立ち上がった。その心は熱く深く燃えている。聖なる騎士のごとく。

「では、よろしくお願いします。急いで戻ってきますから。箒よ‥‥魔力を糧に‥‥飛べ!」
 戦場で待つ仲間の元へ戻ったレインを見送った後、ゼディスは周辺の調査にあたっていた仲間シエル・ジェスハ(ea2686)とルイーゼ・ハイデヴァルト(ea7235)と顔を合わせた。
「で、どうだった? この街の状況や噂は?」
「伯爵が挙兵の為に何かを動かした、って話はありませんでしたよ。この街は戦争の噂があっても静か、復興に皆必死だとか」
「ただ、気になる話も聞きました。最近この街にも僅かにいたゴロツキと呼ばれる連中がいなくなった、と。それがシャフツベリー軍が出撃した、と伝えられた頃とほぼ同じだとか‥‥」
 そして、ルイーゼはさらに続ける。
「そのゴロツキに若い男が声をかけていたと‥‥」
「若い、男‥‥か」
 若い男など、どこの町にも必ずいる。だが、その男の影が何故ゼディスの胸に引っかかった。
「それから、戦争に向けてゴンゼル商会がキャメロットで動いていたようだ、とも知人が言っていましたよ。この戦争で商人達は少なくない利益を得ているようですし‥‥戦争時ですから、儲けに走るのも商人の性、ということでしょうね」
 朱華玉からの連絡を仲間に告げながらルイーゼ自身も考える。この挙兵、一体誰がなんの為に。
「若い男といえばゴンゼル商会の跡継ぎ息子がノルマンから帰ってきた、という噂を聞きました。関係あるかどうかは解りませんが‥‥」
 まだ、今は情報が足りない。明らかに。
「‥‥今回こちらに来た俺達にできることは少ないかもしれないな。数の配分を誤ったか?」
 タチアナは自分が書いた書簡に思いを馳せた。ディナス伯の名において出兵を否定したあの文書。
「向こうに行かれた方々に危険が及ばないといいのですが‥‥」
 微かな不安、そして感じる陰謀の匂い。
 静穏なまでの街の上空に蠢く灰色に曇った空が、まるで忍び寄る影のようで冒険者達は言い知れぬ不安を感じずにはいられなかった。

 息を切らせるレインの横でタチアナは読んでいたその手紙をため息と共に地面に落とした。
「やっぱり、そうなのね。彼らはシャフツベリーの正規軍では無い‥‥」
「教えてもらった特徴を持っている旗は‥‥一つだけだな。後は、微妙に色や意匠が違う。盗んだ旗を元に誰かが造ったと見て間違いねえだろうよ」
 ここ数日旗を集中して見つめていただけに、アルフォンスの判断は最後の情報により確定された。
 その辺を突きつければ彼らがシャフツベリー軍でないことは、証明できるかもしれない。
「できれば‥‥自供も得たい所よね。でも、明日にはきっと最終戦闘が始まるわ。今晩には‥‥あら? リトさんは?」
「ああ? あいつならシャフツベリー軍のところに行くって行ってたぜ。薬とかの状況を見てくるとかなんとか‥‥」
「えっ!!」
 レインが慌てて立ち上がった。その様子にタチアナとアルフォンスは目を瞬かせる。
「どうしたんだ? 一体?」
「シャフツベリー軍と名乗る連中は正規軍では無いんです。軍を名乗るだけのゴロツキかも。だから下手に女性が近づいたら‥‥」
「「彼女が危ない!!」」
 三人は同時に天幕から飛び出した。
 暗くなりかけた草原の向こうに明かりが揺れる。静かに、息を潜め、心を研ぎながら。
 
「きゃああ!!」
 強い力で押されて細いリトの身体は簡単に天幕の端まで飛ばされる。
「や、止めてください。私は、ただの看護人で‥‥」
「こんな戦場に女一人で来るなんて、ただの看護人じゃねえだろう?」
「俺達が相手をしてやるよ。丁度、略奪にも飽きてきた頃だからな」
 腕を掴まれて、彼女は片手で持ち上げられてしまった。
 末端の兵士を狙って話を聞こうとしたのが拙かったのか、オクスフォード軍のモラルのある兵士とは違う獣のようにぎらついた眼差しがそこにあった。
「やめて、‥‥助けて‥‥」
 か細い声と抵抗は男達の残虐性を増す結果にしかならない。脂ぎり汗にまみれた男の顔が近づいて服を千切ろうとしたその時だ。
「眠れ!」「漆黒の眠りを!」
 ガタン!
 音を立てて、二人の男達が同時に膝を折った。同時にリトもまた膝を打ち付け地面に落ちる。
「大丈夫か?」
「アルフォンスさん! タチアナさん! ‥‥レインさん!!」
 泣き出しそうになりながらタチアナの胸に顔を埋めるリト。どれほど恐ろしい思いをしたか想像するだけも苦しい。
「一体何事だ?」
 物音を聞きつけたのだろうか? 一人の男が天幕に入ってきた。
 明らかに目の前で夢を見る男達よりは少し上の空気と鎧を纏う‥‥男。
「お前ら一体ここで何をやっている! さてはスパイ‥‥か‥‥」
 リトをそっとレインに預けタチアナはその銀の髪を揺らし、白い手を男に伸ばして近づいていった。
「お話を聞かせて? 貴方達は一体どこの誰なの? 誰に頼まれてここにやってきたの?」
「俺達は‥‥頼まれて来たんだ。ここで、シャフツベリー‥‥の者と名乗って‥‥後は好き勝手にしろ‥‥と」
 かかった、とタチアナは思った。チャームの魔法で彼は自分に好意を持ったはずだ。
「金も、装備も‥‥旗も貰った。‥‥危なくなったら、適当に‥‥逃げていいと。泥棒も、略奪も‥‥思いのままにしろ‥‥と」
「誰に? 誰に言われたの?」
「知らない‥‥若い男‥‥。ぼろ儲けさ。村からの金。軍からの支給品、そして報酬‥‥」
「一体誰が‥‥?」
「おい!」
 外の様子を伺っていたアルフォンスはタチアナに声をかけた。
「人が集まってきそうだ。早く逃げた方がいい!」
「‥‥解ったわ。リトさん、走れる?」
「は、はい」
「行きましょう!」
 よろめくリトを助けながら四人が天幕を離れたのとほぼ、同時だった。
 ざわめきを聞きつけた新たな男達が、そこにやってきたのは。
「おい! しっかりしろよ。何を寝てやがるんだ?」
「もうじき大規模な戦闘が始まるって話だ。とっととずらかろうぜ!」
 肩を振られて、ぼんやりと立ち尽くしていた男と、眠っていた男達の眉が動いた。
 そして‥‥。

 翌朝。最終決戦の戦端が開かれた時、シャフツベリー軍と名乗っていた男達は一兵たりともウィンザーの野に現れることは無かった。
 残された天幕と青い鷹の旗が、一人虚しく空を飛んでいた。
 やがて、踏み倒され地面に落ちるまで。

 戦闘はアーサー王軍の勝利で幕を閉じた。
 敵と回った貴族達はそれぞれに、王の裁きを受けることになるだろう。
 シャフツベリー伯ディナスは一時敵に組したとして反乱貴族の一員に数えられたが、本人の訴えと隣接領主、そして冒険者の報告により処分は保留となった。
 だが、ウィンザーの野の近辺の住人達は戦争の発端となったオクスフォード侯よりも、アーサー王よりも、シャフツベリーの名を憎しみの敵と心に刻んだという。

『ひとまず、成功かな?』
 そう暗く微笑んだ声を冒険者も、誰もまだ聞くことは無い。
 闇の見えざる手がそっと伸びつつあることも‥‥。