【ラストサマー】お化け屋敷始めました

■ショートシナリオ


担当:夢村円

対応レベル:4〜8lv

難易度:普通

成功報酬:2 G 88 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月05日〜09月10日

リプレイ公開日:2005年09月13日

●オープニング

【昔々、ある所に貴族のお姫さまがおりました。
 明るく陽気な家族は領民からも周囲からも好かれ、中でも長子である彼女は笑顔で人々の心を暖かくする力を持っていました。
 ある日、彼女は偶然出会った旅の吟遊詩人と恋をします。
 しかし、娘を愛していた父伯爵はその結婚を許そうとはしませんでした。
 父伯爵だけではありません。家族も、周りの人々も皆大反対しました。
 何故なら‥‥吟遊詩人はエルフだったのです。
 しかし、二人は離れる事を拒み、お姫さまは家を出て、家名を捨て‥‥恋する吟遊詩人と結ばれました。
 皮肉にも、その後、家族は陰謀により謀殺され、生き残ったのは家を出たお姫さまだけになったのです。
 殺された家族は、心を残し幽霊と呼ばれるものになりました。
 彼らは屋敷から決して離れることなく、時に人々にちょっかいを出し、時に人々を脅かしながらも何かを待つように居続けたのです。
 寂しがりやの幽霊達の、それは小さなお話‥‥】

「事実は物語よりも、奇なるものですなあ」
 商人の言葉にロンデル伯爵、と呼ばれた幽霊は小さく苦笑したようだった。
『あの子が戻ってくる事を、この館を継いでくれることを、期待しなかった、と言えば嘘になる。だが、もう諦めていたよ。まさか孫が戻ってきてくれるとは思っていなかった。いろいろと手間をかけるな』
「いえ!」
 彼は楽しそうに笑って首を振った。
「交渉ごとなら、私の本業ですよ。確かに強欲な男でしたが、それだけに扱いやすいものです。あの子、リンのことについてはどうぞご安心を」
 冒険者の後押しもあり、リンは正式に商人の元に引き取られることになった。
 本当はもう12歳だというのに、10歳前後、下手したらそれ以下にしか見えなかった彼女がどのような処遇を受けていたのかは想像するだに悲しい。
 でも今、彼女は幸せな笑顔を取り戻している。
(「あの笑顔を守りたい‥‥」)
 商人は商売気抜きで、そう考えていた。
『で、どうするのだ? 今年もお化け屋敷とやらをやるのか?』
「やってもよろしいので?」
 伯爵の言葉に商人の顔が輝く。それとリンを大切に思う気持ちと、これは別の話。
 やってもいいというのであれば、ぜひともやりたい。思いっきり。
 そして‥‥。
『かまわんぞ。思いっきり派手にやるがいい。我々にとっても最後の夏だ』
「えっ?」
『いや、こちらの話だ。お化け屋敷、全面的に協力する故、また募集でもかけてみたらどうだ?』
 首を捻りながらも、許可が出た。
 解りました。そう頷いて彼は、館を出て冒険者ギルドへと向かった。


【ホラーハウス 従業員募集 
 様々なアイデアを持つ茶目っ気のある人物を待つ。 高級優遇。
 雇用条件
 1、幽霊を怖がらずに、浄化せずに接すること。
 2、お化け屋敷を盛り上げるに当たり、決してお客に危害を与えないこと。
 3、屋敷の中をなるべく壊さないこと。
 4、ハーフエルフに対して偏見を持たないこと。】

 ギルドにそんな変わった依頼が今年も、貼り出されていた。


『100年の夏、100年の思い出。我らも‥‥』

●今回の参加者

 ea0258 ロソギヌス・ジブリーノレ(32歳・♀・レンジャー・人間・エジプト)
 ea0679 オリタルオ・リシア(23歳・♀・バード・エルフ・イスパニア王国)
 ea5683 葉霧 幻蔵(40歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 eb0603 イリヤ・ツィスカリーゼ(20歳・♂・ナイト・人間・ロシア王国)

●リプレイ本文

 晩夏の最後の名残、太陽がまぶしく輝くある日。
 彼らは、その館に集まった。
「うわーいっ♪ お化け屋敷だお化け屋敷だぁっ♪」
 無邪気に元気良く、身体全体で跳びはねるイリヤ・ツィスカリーゼ(eb0603)の姿に、大人達はくすくすと、柔らかい笑い声を立てる。
 ここは、彼の言うとおり、お化け屋敷。ホラーハウス。
『大人』の中に、勿論『幽霊』もいる。
 そのことが、実はイリヤの笑顔をさらに華やかにさせている。
「お久しぶりですわ。伯爵様や、皆様はご機嫌はいかがでいらっしゃいますか?」
 上品にオリタルオ・リシア(ea0679)は頭を下げる。
「‥‥去年に続いて、今年もまた従業員としてお世話になりますね」
『そなた等にはいつも世話になるな‥‥』
「いいえ。こちらも楽しませて頂いておりますから」
「あ! 僕もごあいさつわすれてたあ」
 オリタルオと幽霊の会話に、アッとイリヤは小さな手を口元に当てた。
「ホンモノの幽霊さん! こんにちわ! 僕イリヤだよ。よろしく!」
 ぴょこん、と可愛らしく下げられた頭が上がると、瞳はもう星のように輝いている。
「すっごいなぁ、なんだか。ワクワクしてきちゃった‥‥ん?」
 小首を傾げてイリヤは少し、離れた扉の後ろ。そこに動いた小さな人物の影を見た。
「君‥‥‥だあれ?」
 自分より、小さく見える影に、彼はそっと、本当に注意深く近寄った。
「おんなの‥‥こ?」
 怯えた顔を見せる少女をイリヤはじっと見つめた。
『大丈夫だよ』『こわくない、こわくない!』
『おいで、リン。紹介しよう‥‥』
「ニャアー!」
 自分を励ますような澄んだ声と、優しい包み込むような声、そして腕の中の猫に励まされ、リンと呼ばれた少女は、それでも躊躇い足で数歩だけ前に出た。
「‥‥こん‥‥にちわ‥‥」
「ふむ、家族には大分、笑顔を見せるようになったんですけどね。この家の娘リンですよ」
「初めまして、あなたがリンさんですね。姉からお聞きしました。何かあればいつでもお力になりますから、よろしくお願いしますね」
 商人の横をすり抜け、少女を怯えさせないようにゆっくりと前に進みでたオリタルオは、膝を折り目線を合わせて、微笑みかけた。
「姉‥‥? あっ!」
 どうやら、以前自分を助けてくれた人物を思い出したようだ。表情が明るくなる。
「ねえ! こっちへおいでよ。ホラーハウスするんだって。みんなをびっくりさせるの、きっと面白いよ〜」
 ぐいぐいと、手を引くイリヤの目には今まで彼女を見てきた人物が寄せる、侮蔑や非難の目は無い。
 明るく、真っ直ぐな目で、自分を見つめている。
「ねえ、リンさんも一緒に脅かし役、やりませんか? 私、バンシーあたりやってみようと思うんですけど〜?」
 ロソギヌス・ジブリーノレ(ea0258)の態度もとても優しい。
「‥‥うん、やってみる!」
 躊躇いがちに、でもしっかりと頷かれたのを見てイリヤは顔を輝かせた。
「わ〜い、うっれし〜な〜、うっれしいなあ〜。あ‥‥お客さまみたいだよ!」
 リンの手を掴み、嬉しそうに降るイリヤを笑みで見つめて、ロソギヌスはは〜い、と玄関に駆け寄った。
 確かに、声がする。
「〜のもぉー! たのもぉー!」
 彼女は扉を開けた‥‥。
「一緒にがんばろーね。みんなを、キャアアー! っておどかしちゃうんだ」
「キャアア〜〜〜!!!」
「そう、あんな風に‥‥あれ?」
 布が裂けるような声に、そこにいた人物は目を瞬かせた。全員で向かった玄関で彼らは見る。
「お・お化け‥‥?」
「ゴースト? いや、クリーチャーでしょうか? まさか、この世にこんな生き物がいるはずが‥‥」
 足元で泡を吹いて倒れているロソギヌスの横をすっとすり抜けて、彼はオフシフトしながらじりじりとにじり寄って来る。
 ゴーストたちさえも後に下がらせる、その迫力。
「ふぎゃあ!」
 勢い良く吹く猫の威嚇にも、動じない。
 恐怖の館の幕が、今、開かれようとしていた‥‥。

 ビリリッ。
 白いドレスを、ワザと少し破いて少し汚してみる。
「これで‥‥いいんですか?」
 リンの差し出した服を見ながら、ロソギヌスは笑顔を見せながら指で、丸を作った。
「いい感じですよ。あとは前髪を、ちょっと乱れたように流して‥‥、暗がりに佇んで〜」
 ふむふむ、と娘幽霊とリンは頷いた。ロソギヌスは二人を相手に演技指導に余念が無い。
「あとは左脇抉りこむように‥‥じゃなくて哀しげに、そしてちょっと恨めしげに泣くべし! 泣くべし! です!」
『こう? ‥‥シクシクシク‥‥』
「エンエンエン、エンエンエン‥‥」
「こういう風に、少し自分を哀れむような感じでの表情を浮かべるといいですよ。‥‥ど、どうして‥‥どうしてわたしばっかり‥‥シウシウシウ‥‥」
 声を震わせてロソギヌスは鳴く。その様子は、確かに哀れを誘った。
「すご〜い」『じょうずね』
「なんといいますか、私、泣きたくなるようなことに事欠かなくて‥‥この間も道を歩いてたらとんでもない目に出会って‥‥うう‥‥」
 ホンモノの幽霊と、苦難の叩き売りを体験してきたハーフエルフにとっても、彼女の語る話は涙無しには聞くことができない‥‥?
「と‥‥とにかく、がんばりましょー。他のお化けから逃げてきた皆さんに、ただすすり泣くだけの恐ろしさを味わっていただきますよ!」
 涙目を擦って、笑顔を見せたロソギヌスに二人の少女も顔を見合わせ、笑顔で頷いた。

「オジサン! 冷た〜い、お水ある?」
 外から戻ってきたイリヤに、喉が渇いたのだろう、と商人は水の入ったカップを差し出した。だが、イリヤは違う、違うと首を降る。
「あのね。お化け屋敷で使うんだよ。だからね、う〜んと冷たいのがいいなあ」
「解った。用意しておくよ‥‥それなんだい?」
 答えながらふと、イリヤの手元を商人は見た。布袋の中がかさかさ揺れている。
「ああ、これ? さっきお外で探してきたんだよ。蜘蛛さんでしょ、あおむしさんでしょ。あとね。ムカデさ〜ん♪」
 ほら! とイリヤは袋から手を取り出した。中から取り出されたのはもぞもぞ動く、足長蜘蛛!
「うわあ!!!」
 尻餅を付く商人にイリヤは首を小さく傾げた。横にふわりと、子供幽霊が現れる。
『うわ〜、いっぱいだねえ』
「そうでしょ? これがぞわぞわ、ってきたら、きっとビックリすると思うんだあ〜。あ、猫さん、食べちゃだめだよ」
 子供同士は楽しそうだが、大人はその様子を、ただ、冷や汗たらりで見つめているしかできなかった。幽霊も人間もだ。
 
 ヒュルルルル〜。オカリナの音が不気味に響き渡る。
「この音を、合図になさって下さいね。私は、貴方の姿が消えたのを確認してから、前に出ますから‥‥」
「了解でござる。最初は可愛い女の子、子供が出てから、一気に畳み掛けるのがいいでござろうからな!」
 控え室となった奥の部屋で、オリタルオは同僚となった人物と打ち合わせに余念が無い。
「しかし、最初はその格好。本当に、出来損ないのクリーチャーか、嫌がらせにきたデビルかと思いましたわ」
「それは、光栄。大成功でござるな。名づけてゲンちゃん・エヴォリューション!」
 カッカと笑う葉霧幻蔵(ea5683)を前にオリタルオは、はあ、とワザとらしいため息を吐いて見た。
 笑うと言っても顔はスカルフェイスに隠れて見えない。骸骨のそれの上にはカモメの被り物。筋肉質で、長身の身体を隠すのはふわふわもこもこのまるごとメリーさん。
 これは、どう見ても人間とも、まとも生き物とも思えない。
『今の人間はこのようなファッションをするのか。面白いものだな‥‥』
「これが、標準と思っていただいても困るのですが‥‥まあ、ホラーハウスには最適かもしれませんわね」
 含み笑うロンデル伯爵に肩を竦めたオリタルオ。だが、幻蔵は思いっきり楽しげである。
『頼まれた品は‥‥これでよろしい?』
 奥方の呼び声にオリタルオは身体を後ろに向けた。古着をさらに汚したものであるが‥‥
「ええ、十分ですわ。ありがとうございます」
 服を受取ると、オリタルオは立ち上がった。幻蔵に、そして幽霊達に笑顔を見せる。
「では、もうじきお客さまも見えます。がんばりましょう」
「おお! 任せるでござるよ!」
『楽しみに、しているぞ‥‥』

 ホラーハウス『ロンデル伯爵の館』は開店である。今年も頭上に怪しい幽霊の幻影を湛えて‥‥。  
 称号も上がり、怖さもバージョンアップしたと評判である。

 コロコロコロ‥‥。
 足元に転がった何かを拾い上げた。その先を見てみると少年が‥‥膝を抱えて泣いている。
「お兄ちゃんとはぐれちゃったぁ〜。うえーん、恐いよぉ〜 優しいお兄ちゃん‥‥‥‥ありがと〜〜」
「うわああ!!」

 白いドレスの少女達が‥‥
『しくしくしく‥‥』「エンエンエン〜」
「シクシク、ウシウシウシ‥‥どうして、どうしてわたしばっかり〜〜〜〜!」
「ぎょええ〜〜〜!!」

 声に聞こえない声が聞こえる。
『‥‥苦しい‥‥』『‥‥痛い‥‥』『その娘は‥‥だぁれ‥‥?』
「どうしたんだ?」「いや、なんでもない!」「だから、どうしたんだ?」「なんでもない‥‥‥‥いやああ! 怖い! 怖い、こわい! 助けて!」

「キャアアアア、助けてー」
「さあて、そろそろ出番でござるかな? 方向が違う気もするが‥‥ん?」
 控え室の扉が、また開いた。今度は間違えて入ってきた人では無さそうだ。
「ちょっといい‥‥‥?」
「どうしたんでござるか? 従業員の方に来るかと思っておったのでござ‥‥」
「あたし、どうしよう‥‥ぐすん、ぐすん‥‥うわあ〜〜〜ん!」
 白いふわふわ柔らかい羊毛が包む膝に、小さなその子は顔と、身体を埋めた。
「どうしたのでござる?」
 と、彼は聞かなかった。
 彼女が答えるその時まで、ただ、黙って頭を優しく、撫で続けた。


 依頼最終日、今年も最後の客を無事、悲鳴と共に送り出した彼らは商人の用意したご馳走に舌づつみを打つ。
「仕事の後のこの達成感は、たまりませんね。今回は、泣くばかりではなく、相手を泣かせられたのが、嬉しいですわ」
 楽しげなロソギヌスの側ではイリヤがリンの皿に、料理を入れてやっている。
「ねえ、リンちゃん、これ食べなよ。美味しいよ」
「うん、‥‥ありがとう」
「一箇所、予定と違ったりもしましたけど、概ね大成功だったと思いますが‥‥今年の売れ行きは、如何でしたか?」
 賑やかな場から離れて、どこか浮かない顔の商人にオリタルオは軽く声をかけた。
「‥‥あっ! ああ、すみません、いえ、良かったですよ。昨年ほどではありませんが、儲けも十分に出させて頂きました」
「では‥‥どうして、そのような顔を‥‥あっ!」
 周囲を見回して、オリタルオは口元を押さえる。
 今、気付いた。いない。彼らが‥‥。
「まさか‥‥」

「黙って逝くのは‥‥ズルいと思うのである」
「やっぱり‥‥」
 中庭で、二人は空を見上げ声をかけた。彼らは見つける。家を愛しげに見つめる影達を。
『私達の役割りは、終った。心残りも‥‥もう無い』
「彼女が‥‥戻ってきたから、であるか?」
 友に教えられ‥‥気付いた幻蔵は、月明かりの中、影達が頷いたように見えた。
『あの子は、約束を守ってくれた。我々も、逝ってやらねばな‥‥』
『もう、あの人とケンカはしないで下さいね』
 婦人の言葉に幽霊は伯爵は苦笑したのかもしれないと、そう思う。
『‥‥解っている』
 憮然と呟いて、彼は幻蔵と、少女とそして、館を見た。彼は、彼らは月明かりに溶けて行きそうだ。
『後を、頼‥‥』
「待って下さい!」
 オリタルオの声が、消えかけた影達を呼び止めた。後ろには息を切らした冒険者と、商人。そして‥‥リンがいる。
「ひいおじいさま‥‥」
『もう、我々は行かなくてはな。お前の祖父母の、父母の待つ所に。大丈夫だ‥‥お前は、一人ではない』
 ふわり、リンの髪が風に揺れる。それはまるで幽霊が少女の髪を掻き乱したかのように。
『最後に楽しい思い出を残していけて良かった。幸せに暮らしてくれ‥‥それが一番の願いだ』
『いい子でいるのですよ』
『お兄ちゃん、お姉ちゃん。いつか、また遊んでね』
『でも、まだこっちにきちゃだめだぞ〜』
「待って!」
 今度の呼び声に、彼らは留まってはくれない。
 静かに、彼らは微笑んで、音楽的な笑い声を残すと、星空に上って行くように飛んで‥‥消えていった。
「また‥‥ひとりぼっちに、なっちゃう‥‥」
 草むらに膝をつき、泣き出すリンに、イリヤはそっと手を差し伸べる。
「一人じゃないよ」
「何か、あったら呼んで下さい。姉もきっと‥‥」
「大丈夫ですよ。もう、友達ですから」
「ゲンちゃんが、ついているのでござる!」
「何かか困った時は、ギルドに依頼してね。きっと助けに来るから」
 手を取り、立ち上がったリンにゆっくりと商人は近づき、そして抱きしめた。
「家族になろう‥‥。君はもう、一人じゃない」
 足元では猫がそっと足に擦り寄る。身体全体で、何かを伝えようと。
 暖かい手。抱えられたぬくもり、柔らかな思い達。
 それを身体全体で感じながら、リンは黙って頷いた。

 冒険者達の手元に五冊の古い聖書が遺された。
 表紙を開いてみるとこんな文字が見て取れる。
『エメリア メアリー』『エドワード エディ』『ミリアム ミリー』『ギリアン・ムーア ロンデル』『マリン』
 家族達の名前、絆、『思い』の書。
 そして、その端にはこんな文字が残されていた。
『愛すべき者達に、心からの祝福と感謝を‥‥ありがとう』

 こうして彼らは眠りについた。
 冒険者達からの笑顔を胸に抱いて。
 永遠の夢路へ‥‥。