【聖人探索】今は遠き夢の彼方
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■ショートシナリオ
担当:夢村円
対応レベル:7〜13lv
難易度:難しい
成功報酬:6 G 84 C
参加人数:10人
サポート参加人数:1人
冒険期間:09月14日〜09月24日
リプレイ公開日:2005年09月25日
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●オープニング
事件と言うのは、いつも何でもない日常の光景から始まるものだ。
――それはオクスフォード候の乱の開戦前まで遡る。
「王、ご報告が」
メレアガンス候との戦端が開かれる直前のアーサー王を、宮廷図書館長エリファス・ウッドマンが呼び止めた。
軍議などで多忙のただ中にあるアーサー王への報告。火急を要し、且つ重要な内容だと踏んだアーサーは、人払いをして彼を自室へと招いた。
「聖杯に関する文献調査の結果が盗まれただと!?」
「王妃様の誘拐未遂と同時期に‥‥確認したところ、盗まれたのは解読の終わった『聖人』と『聖壁』の所在の部分で、全てではありません」
エリファスはメイドンカースルで円卓の騎士と冒険者達が手に入れた石版の欠片やスクロール片の解読を進めており、もうすぐ全ての解読が終わるというところだった。
「二度に渡るグィネヴィアの誘拐未遂は、私達の目を引き付ける囮だったという事か‥‥」
「一概にそうとは言い切れませんが、王妃様の誘拐を知っており、それに乗じたのは事実です。他のものに一切手を付けていないところを見ると、メレアガンス候の手の者ではなく専門家の仕業でしょう」
「メレアガンス候の裏に控えるモルゴースの手の者の仕業という事か‥‥」
しかし、メレアガンス候との開戦が間近に迫った今、アーサーは円卓の騎士を調査に割く事ができず、エリファスには引き続き文献の解読を進め、キャメロット城の警備を強化する手段しか講じられなかった。
――そして、メレアガンス候をその手で処刑し、オクスフォードの街を取り戻した今、新たな聖杯探索の号令が発せられるのだった。
『遠い昔、神様は戦いを続ける人々に希望の宝を授けました。
そして、その道しるべを残し、この地上を人々に委ねたのです。
人々が宝を求める時、道しるべを正しく辿れば黄金の道の先、光が行くべき先を示すと伝えられています‥‥』
『ただいま。ヴィアンカはもう寝たのか?』
『ええ、もっとお話してって言って、今やっと‥‥』
『キャロル‥‥お前にも、苦労をかけるな。家を出させて本当だったら‥‥』
『いいのよ。私は、あなたの事が大好きなんですもの。私は、幸せよ』
『俺は、必ずお前とヴィアンカを守る‥‥絶対に‥‥』
「えっとなあ、元の依頼はシャフツベリーの領主から、なんだ。なんでも最近、インプやグレムリンだの下級デビルが姿を見せるようになった、どうしてか真相を探って確かめて欲しい、ってことさ」
どこか、いいにくそうな顔つきで、係員は依頼を冒険者達の前に提示した。依頼そのものは別にそう難しいものでも無い。だが、その様子に冒険者達は首を傾げる。
「それは別に構わないけど、元の依頼は‥‥って、どういう意味だよ? 今は、その依頼じゃないっていうのか?」
「その通りなんだ。依頼内容は変わってないんだが、ちょっとおまけがついてる。あと依頼人も追加されてて‥‥」
「おまけ? 追加?」
「なんだか聞こえが悪いなあ。他のいいようは無いのか?」
言葉を濁す係員の配慮を気にも留めず、彼はそう言って笑った。
「えっ?」
後ろを振り向いた冒険者達はその目に驚きの表情を浮かべた。ポカンと口を開けている者もいる。
「まあ、事実だから仕方ないがな」
そこには快活な笑顔を浮かべた騎士が笑顔を浮かべている。
「パーシ・ヴァル!」
オクスフォード攻略戦の後、一時行方不明になったと騒ぎになった円卓の騎士が目の前にいる。笑っている。
それは、依頼に関わらなかった冒険者達をも安堵させる明るい笑みだった。
「いろいろ迷惑や心配をかけたようだな。いや、王城に戻ったら王にも部下にも、きっちり絞られた。やれやれだ」
「当たり前です! ご自分の立場をお考え下さいといつもいつも、言っているのに!」
後ろの人物が上げるキーキーという声に、パーシは肩を竦めた。良く見ればパーシ探索の際に依頼を出した騎士だ。
「お怪我も完治していないというのに、また冒険に出るなどと‥‥私は本当は反対なんですからね‥‥くどくどくどくど‥‥」
「王命だ、仕方あるまい」
口調と顔は仕方ない、とは言っていないが、厳しさを秘めた彼の言葉に冒険者達は首を傾げる。
「王命?」
デビル退治が何故?
「実は、先の聖杯探索の折に集めた石版が指示す聖杯の手掛かりとなる聖壁の場所、その一つがシャフツベリーらしい。そこで、調査に向かえということなのだ」
先の戦争の折り、宮廷図書館から聖壁の場所や、聖壁の伝説を伝える聖人の居場所を記した調査結果が何者かに盗まれた。デビルの介入があったという噂もあり、王命で行われたいくつかの調査でも聖人、聖壁の周囲にデビルの影がある。
「そこで、俺がその地の調査に向かうことになったのだが‥‥こいつらが、一人での探索行を許してはくれなくてな」
「当然です。まだお怪我も治りきっておられない。左手骨折に打撲、裂傷。よく平気で動き回れたと司祭様もあきれてたんですよ!」
また声を荒げる部下に小さく苦笑し、パーシ・ヴァルは改めて背筋を伸ばした。その身のこなしと威厳はもう円卓の騎士のものだ。
「冒険者に、聖杯探索への同行を要請する。目的は聖壁の発見と保護、調査。その中には勿論、それを付狙うデビル出現の際の退治も含まれている」
ここまで聞いて冒険者は納得する。
「聖壁の場所は、ゴールドヒル。シャフツベリーにある丘の名前だがおそらく、そこにある。ウィルトシャー地方は巨石遺跡が多い土地柄だから、遺跡に身近すぎて気が付かないんだな。きっと‥‥」
「? 随分、あんた詳しいな。場所まではっきりと調査されてたのか?」
係員の軽いツッコミにパーシは横を向いた。何かが彼の顔を曇らせている。冒険者達でさえ見た事の無いなんとも言えない‥‥顔。
「それは‥‥どうでもいい。あと、俺がこの依頼に、自分の依頼を重ねたことはシャフツベリー伯には言わないで欲しい。これは、頼みだ‥‥」
詳しくは、後ほど。そう言って彼はマントを返して去って行った。
「‥‥キャロル。ヴィアンカ‥‥」
「えっ?」
微かな呟きを頭の中で確認する冒険者達の前。
一人残された部下は、主を追おうとして、一瞬、その足を止めた。
「パーシ様は、シャフツベリーの名を聞いた時、顔色を変えられました。そして、何が有ろうと自分が行くと言って退かれなかったのです。一人ではなく、せめて冒険者と。それに同意していただくのが精一杯でした。何か、思いがお有りのようで‥‥」
振り返り、彼は頭を下げる。
「お願いです。パーシ様をお助け下さい。そして、思いを成し遂げる助力を‥‥」
「シャフツベリー。あそこにまた足を踏み入れることになるとはな」
ギルドから外に出た彼は、空を見上げ佇んでいた。
「これも、聖杯が俺に与えた試練か‥‥。大切な者を守れなかった俺が、本当に国や民を守れるのか‥‥」
弱気になった自分を奮い立たせるように彼は槍を握り締めなおす。後ろから部下の足音が聞こえる。
「せめて、俺は、俺のなすべきことをせねばな‥‥。お前に顔向けができん。‥‥キャロル」
振り返り、部下を迎えた顔は、もう円卓の騎士の顔だった。
●リプレイ本文
夏の炎暑でもなく、冬の極寒でもない。
秋の、初秋の空は、高く青く気持ちよく、旅に出るには絶好の日和といえた。
「今度の相手はデビルだぞ〜♪ パラの戦士はやっつける〜♪」
小枝を元気に振りながら楽しげなボルジャー・タックワイズ(ea3970)の歌に周囲の冒険者達から、くすくすくす‥‥。そんな笑顔が聞こえてきた。
「楽しそうだな。まあ、こんないい天気だ。浮かれたくなる気分もわかるってもんだ」
アーディル・エグザントゥス(ea6360)は小さく笑ってボルジャーの方を見る。
「まったく、依頼よりも遊びに出たいよなあ。こういう時は」
「くれぐれも言っておくが、これは仕事だからな。それから、単独行動は慎んでもらおう。無思慮な単独行動で依頼を壊すような者を俺は冒険者などとは認めないぞ」
少し浮かれ気味だった気分は円卓の騎士の言葉に引き締まる。
どうやらタケシ・ダイワから何か進言があったらしい。思いっきり釘を刺された形になって、はいはい、とアーディルは軽く手を上げた。苦笑の顔で。
「街にデビルが出たということじゃから、確かに油断は出来ぬな。準備はしておかんと‥‥」
狂闇沙耶(ea0734)の言う準備とは精神的、物理的、両面を併せ持つ。
ちなみに彼女は物理的な準備もしていた。身軽な服装にシルバーナイフを忍ばせてある。
「悪魔に武器は効かないけれど、魔法のハンマーでやっつける〜」
楽しげな歌声に思い出したような顔をして、愛馬に積んだ荷物をイェーガー・ラタイン(ea6382)はポンポンと叩いた。
「もし、武器が無い人がいればお貸ししますよ。銀の武器の余分がいくつかあります」
「なら、銀のナイフを一本お借りできますか? 大事に使わせて頂きますから」
丁寧に礼を取るアルテス・リアレイ(ea5898)に勿論、と頷いてイェーガーはナイフを取り出した。
「ありがたくお借りいたします。デビル退治と聖壁の探索。どちらも神聖騎士として見過ごすわけにはいかない仕事ですからね‥‥」
大事にナイフを拭いてしまったアルテスの横でテスタメント・ヘイリグケイト(eb1935)が微かに笑みを浮かべる。
同じような思いを抱いてきた白と黒の神聖騎士が肩を並べて歩くとは‥‥。と。
彼がハーフエルフであることは簡単に解るが、それを偏見とする者はここにはいない。あくまでここでは、であるが。
いよいよ、明日にはシャフツベリーに着くだろう。
街道沿いの宿屋に足を止め、冒険者達は万全を期すことにした。
宿に荷物を置いて窓の外を見る。
まだ、少し日が落ちるのが早くはなっているが‥‥太陽の光はまだ残っている。
ふと、思いついたようにボルジャーは武器を持つと隣の部屋の扉を叩いた。
「パーシさん、ちょっといいかな?」
気さくな返事が返る。
「なんだ?」
リオン・ラーディナス(ea1458)が腕組みをしていると、気がついた冒険者達も庭に出てきた。
「何を見ておられるのです?」
彼らの視線の先には白銀の槍を持ったパーシ・ヴァルとハンマーを持ち上げるボルジャーの姿があった。夜枝月奏(ea4319)の問いかけにリオンは答える。
「ボルジャーが、パーシ卿に手合わせを頼んだんだってさ。見ものだと思って‥‥」
それは、確かに見逃せない。
彼らの視線を受けて、庭に身構えた二人は笑顔を見せる。
「パーシさんが強いか、パラの戦士が強いか勝負だ!!」
「お手柔らかにな」
「いざっ!」
声と同時、先手必勝とばかりにボルジャーは地面を踏み切った。姿勢を低くして一気に懐に飛び込もうと、した瞬間彼は眼を見開いた。
「あれ? いない?」
目測で踏み込んだ場所にすでにパーシの姿は無かった。構えたハンマーが空を切る。
「ほらほら、一方向ばかり見てると一撃をかわされた時弱いぞ!」
「うわっ」
武器を持っていない方向から薙ぎ払われた槍の柄がボルジャーの腹に当たる。とっさにかわして急所の直撃は避けたが横腹に当たった衝撃にボルジャーはワザと大きな声を上げた。
「痛ってえ! パーシさん早えよ! おいらだって動きの素早さには少しは自信があったのになあ」
ぼやくボルジャーにパーシは笑みを向けて問う。
「俺が、どうして雷の騎士と呼ばれるか解るか?」
「あ、なるへそ? んじゃ降参」
ボルジャーは素直すぎるほど素直に手を上げた。パラと人間の身長差もあるが大ぶりなハンマーを振り回して戦うには槍使いの雷の騎士はどう考えても分が悪い。
「槍使いには自分の攻撃間合いに敵を入れない技術が必要だ。それをなお踏み込んで戦おうというのであれば細かい技術も学んだ方がいいかもしれんぞ?」
「なるほど。でもさあ、おいらのやり方は我流だし〜」
「力と素早さを併せ持っているのだから、やはり自分の戦闘の幅を広げるためにも‥‥」
「そっか、なら〜」
あっと言う間に終った戦いの後、それより長い時間を二人は真剣に話し合っている。
リオンは依頼の時から感じていた感想を率直に口にした。
「高位な人なのに、高慢な感じしないね」
「ふむ、わしも仕事の後、手合わせを願ってみるか? リオン殿もどうじゃ?」
楽しげに笑って誘う沙耶にリオンは首と手を横に降る。
「オレはいいよ? オレはただの学生。て事で遠慮しておく、光栄な話だけど」
(「でも‥‥いつかオレも‥‥」)
眩しげに二人を、そしてパーシをリオンは見つめていた。
「ご馳走様。明日はこんなにのんびり食事はできないだろうなあ」
食堂のテーブルから食器が片付けられた。
ふう〜と息をついたところで、雑談を兼ねた打ち合わせが始まる。
「最近は聖人探索関係の依頼を続けて受けております。先だっても宮廷図書館でお仕事を手伝った時の資料を確認してきましたので、お役に立てればと‥‥」
「ねえ、どんなところなのかしら。シャフツベリーって、パーシさんはご存知?」
「パーシ殿?」
話を振られて、少し驚いたようにパーシは顔を上げた。
アルカード・ガイスト(ea1135)の話を聞いてから、サリュ・エーシア(ea3542)は情報の提供を求める、とパーシに問うたのだ。
疑問は正しいことであり、質問も当たり前のことでもあるので、ああ、と頷いてパーシはバックパックから羊皮紙を一枚取り出しテーブルに広げた。
「これは、手描きの地図‥‥ですか?」
目を細めながら地図を見た奏は瞬きをした。大まかではあるが、なかなか書き込まれてある。
「街そのものは大きくは無い。郊外に広がる農地と森が生み出す作物と木材、そして金銀の工芸品を主工業とする小さな街だ」
「詳しいね?」
依頼を受けるまで少し円卓の騎士に対して緊張気味だったリオンだが、ここ数日の相談などで少し、ほんの少し気安い気分になってそう問いかける。
「‥‥まあな」
曖昧に笑ってパーシは顔を地図に向けた。答えは返らない。
(「かわされた、のかな?」)
そして、と街の外れを彼は指差す。
「ここがゴールドヒル。街外れにある古い遺跡のある丘だ。ここから見る街の風景は美しく、また夕日が遺跡に当たると白い石が黄金色に染まる。だから、黄金の丘、ゴールドヒルと呼ばれているんだ」
この地に、今、デビルたちがどの程度現れて、どの程度被害を出しているのか、は解らない。
「依頼を聞く限りでは殆どが下級デビルのようだけどな。だから‥‥街についたら気を抜くなよ」
厳しい口調に冒険者達は真顔で頷いた。強敵では無いとはいえ、油断はできない。してはいけないと言外に彼は言っている。
「いずれ、ケンブリッジからも報告が届くでしょうが、俺は少し前まで向こうにいました。最近あちらでもいろいろと騒ぎがあり、‥‥その背後に常にデビルという名の暗雲を感じます。この聖壁の探索にもその暗雲が邪魔をしてくるかもしれません」
イェーガーは向こうでの出会いを思い出し、考えながら言った。ケンブリッジの騒動、戦争と資料の盗難。その影に感じる‥‥黒い意思。
デビルたちの出現はそれに何か関わっているのだろうか‥‥。
「先ほど、ゴールドヒルとおっしゃいましたか? ならば聖壁はその地にあるやもしれません」
以前宮廷図書館で資料整理の手伝いをした折、そのような情報があったのをアルカードは覚えている。
「聖壁は聖人の蒼き瞳に照らされ〜、だっけ? 蒼い瞳なんていくらでもいそうだけどなあ〜」
やれやれと、息を吐き出すアーディルの言葉に一瞬パーシの肩が動いたとサリュは感じた。
(「気になるわね‥‥」)
思えば依頼を受けてから見る表情がずっと曇ってる。街に近づくごとに‥‥。
「街外れの森に古い家がある。明日には案内するから、そこを拠点にして動くことにしよう。情報収集は頼んだぞ」
「家? 大丈夫なのか? 誰か住んでるんじゃ?」
「心配はいらない。今は空き家の筈だし、俺の持ち物だから」
「パーシ卿の?」
立ち上がった彼に聞きたい事は実はまだあった。
だが、彼は一度だけ振りかえって、一言だけ言って‥‥去って行く。
「明日は早い。早く休んでおくことだ」
誰も彼を止めなかった。止める事はできなかった。
シャフツベリー領主、ディナス伯は冒険者からの取次ぎに直ぐに応じ現れた。
一瞬テスタメントの耳に眼を止めるが、言葉に出さず、否定もしない。吸い込まれそうな蒼い瞳が柔らかく微笑む。
出来た人物であるという噂は本当らしいと、密かに彼らは思った。
広い館に今は一人で暮らすという彼は、依頼に応じてくれた冒険者にできる限りの助力を約束する。
「効率を考え、既に仲間は街で聞き込みを始めている。早ければ今日中にでも仕事を始められるだろう」
「速やかな依頼遂行の為、どうかご助力をお願いいたします。では、失礼ですが早速‥‥」
優雅に礼を取るとサリュは依頼に必要な事を問いかける。
質問は悪魔の動向についてが主になる。出現数や出現頻度、出現場所、出現した悪魔の種類等。
ディナス伯は部下を呼び資料を持ってこさせると詳細に説明する。
「報告のあった限りではだが‥‥」
現れたデビルは小型のデビルが十数匹。それに毛むくじゃらの悪魔が数匹。主に夜、街の中を暴れまわっている。
「だが、食べ物などを奪いに来る他は以外に、人を襲うことは少ない。人気の少ない郊外のあたりに出現することが多いようなのだ」
故に人的な被害は大きくない。
「出現理由に心当たりは?」
サリュの質問に伯爵は首を降る。まったく無いと。
「今までこのようなことは殆ど無かった。戦争後から急に増えたのだが一体、どうして‥‥?」
まだ冒険者達に返事の仕様が無い。
預けられた街の地図と資料の羊皮紙を受取って、後は全力を尽くすと約束するしかなかった。
「そういえば、依頼期間中はどこに泊まるつもりだ? この領主館を使ってもいいぞ。今は私一人しか住んでおらん。部屋は余っている」
「失礼ですがご家族は?」
妻帯者であることは聞いている。失礼にならないように言葉を選びながらアルテスは聞いた。
「息子と娘、妻は今、家を離れている。両親は早くに亡くなり、弟と妹も今は既に亡い。この地を私は一人で治めておる」
「それはそれは‥‥」
眼を伏せてアルテスは謝罪する。
「とりあえず、知人が持ち家を貸して下さいましたので。仲間も待っておりますからありがとうございます」
好意に対して誠実に感謝を言い述べてサリュは頭を下げた。
「ほお、この街に知人がいるのか? では仲間の皆にも頼むと伝えてくれ。何かあったら連絡しよう」
「はい、ではこの森の入り口の古い家に‥‥」
冒険者が示した場所を見つめ、伯爵は目を離さない。顔色が変わった。
「どうか、なさいましたか?」
「何故、この家を使っているのだ?」
どこか、追求じみた厳しい声に、サリュは懸命に言葉を捜す。
「えっと、キャメロットの知人がシャフツベリーで仕事をするなら使ってよい、と。自分の持ち物だから‥‥と」
「知人? あいつが‥‥か」
ぎりり。そんな声が聞こえたような気がしてリオンは伯爵の顔を見た。
まるで唇を噛み締めているような、いや実際に噛み締めている。強い、強い憎しみにも似た目でサリュの指先に何かを見つめて。
「お前たちはあいつの‥‥いや、いい。とにかく仕事は必ず為せ。頼んだぞ!」
さっきまでの友好的な笑顔とは正反対に、厳しい命令の口調を残し伯爵は去っていった。
「どうしたというのだ? 一体?」
テスタメントの言葉に答えられる者はここには、誰もいない。
「あ〜、エールだいぶやられちゃってんね。これもデビルのせい?」
「そうなんだよ。夜毎来ては、酒や食いものを荒らしていく。困ったもんだぜ」
おかげで、近頃店も開けられない、と店主は悔しそうにボルジャーに語った。
「来るのは夜?」
「そうだ。自警団も結構見回ってくれてるんだが夜の闇に紛れてしかけられるとどうにもこうにも‥‥」
自警団にはリオンが言っている。ここに来るのが確実ならば‥‥。
「よっし、おいらにまかせろ。今日の夜はおいら達が見張りをしてデビルどもをやっつけてやるからさ」
「お願いするよ」
ポンと胸を叩いたパラの戦士に店主は深々と頭を下げた。
『昔々、神々は、地上に人と精霊と動物達を作りたもう。
動物達は牙と爪と力を、精霊達は魔法と自然の力を、彼らは賜り地に広がっていく。
人の子に与えられたのは知恵。それに勇気と希望。
与えられたのは大きな力、けれども未熟な人には難しき力。人は、やがて戦いをはじめ、自らを滅びの道を歩む。
人を哀れに思い、神は、聖なる宝、聖杯を授けたまわん。
大いなる導き手と共に。
人が自らの足で歩み始めた時、神は聖杯をいずこかに隠し、天へと帰る。
人が聖杯の力に頼らぬように。
導き手の力に甘えぬように。
神に与えられた力を忘れなければ、導き手の元、いつか再び道は開かれる』
店の婦人がまるで我が子に話すようにそんな昔話をしてくれた。
「シャフツベリーに伝わる伝説。この街に生まれた人間なら誰でも知ってるよ」
軽く拍手をしてアルカードは話をしてくれた感謝を述べた。これは聖杯探索の重要な手掛かりになるかもしれない。
「この街には聖杯の伝説があるのかあ。で、古い教会とかに心当たりは無い?」
頷きながらアーディルは酒場で老人や地元の情報通に聞いてみる。
「古い教会? 教会の場所は多分動いて無いけど、昔はよくゴールドヒルに教会の連中が儀式に行ったりしてたよな」
「そうそう、でも、あそこにあるのは昔の異教徒の遺跡だって話も」
「聖壁っていうのは‥‥知らないね。あるとしたら、多分ゴールドヒルだろうけど」
頷きながら沙耶と奏はパーシから預かった概略の地図に印をつける。
敵の出てくるのは主にゴールドヒル近辺と、街の酒場近辺。
「とりあえず今夜はデビル退治じゃな」
「たとえ未来の人が救われようと今が、明日が救われなければ未来など来ない。だから、まずは明日の為に全力を尽くしましょう」
奏の言葉に冒険者達は頷いた。この街は必ず救わなければ。
「あっと、そこの兄さん」
店を出かけたアーディルを婦人は呼び止めた。自分の話を随分真剣に聞いてくれた青年にありがとうと言ってから。
「昔話、伝承なら、ご領主が詳しい筈。街を最初に築いたのはあの方の先祖だからね。代々シャフツベリーの優しき領主とその蒼き瞳はこの地の宝って言われてるくらいさ」
「なるほど‥‥」
「あ、でも今の御領主はどうかねえ。昔から領主としての英才教育を受けてきたから伝承なんて聞いてたかどうか‥‥」
「妹君も弟君も今はお亡くなりになってるしなあ」
「解った。ありがとう」
そう言って彼は仲間から少し遅れて外に出る。
「大いなる導き手ねえ。こいつは一度、領主さんに聞いてみたほうがいいんだろうな?」
そして、自信満々の足取りで彼は領主館と反対方向に足を進めて行った。
「あ〜! あれほど一人歩きはダメだって言ったのに!」
彼の不在にイェーガーが気付き、仲間達が探し始めるのはそれからすぐのこと‥‥。
「あれは、パーシ卿?」
アーディルは直ぐに見つかった。単独行動を諌められて頭を掻いた彼は、ふと目線の先に見慣れた人物を見る。
「へえ、意外‥‥」
子供が集まる広場。その中央で、彼が竪琴を奏で昔語りを語っているのだ。
『かつて、大地に誇り高き聖なる存在あり。それは優しく人々を守り、聖なる力へと導く。
今は、いずこかに眠る優しきかの者よ。
人を守りて傷つき倒れし御方よ。
我らは誓う。自らの力にて歩みを進めん事を。
いつか共に肩を並べ、汝の前に勇気を示さん事を‥‥』
「人は、いつも大いなる力に守られている。自分に恥じない行動をするんだぞ」
「うん、ありがとう。パーシさん!」
子供達は笑顔で、手をつなぎ帰っていく。手を振り見送っていたパーシはぴくり、身体を震わせた。
「いつからそこに?」
「パーシ殿は竪琴も嗜まれるか?」
彼の持つ古い竪琴を見る沙耶の言葉に、首は横に振られた。
「嗜むってほどじゃない。家の中に忘れていたものを持ち出しただけだ。結構音は、ずれていないものだな」
寂しげな顔で竪琴を横にやると、パーシは立ち上がって歩き出す。
「ケンカしていた子供達を諌めるためとはいえ、嘘はいけないかな‥‥」
「えっ?」
その時イェーガーは見た。かすれて、疲れたような声と共に彼が見せた一瞬の、いたたまれないような表情を。
頃は日暮れ、二手に別れていよいよ本番のデビル退治。
「デビルめおいらがやっつけてやる!」
元気にハンマーを振り回すボルジャーに奏は小さく微笑んだ。
「来たぞ! 油断するな!!」
テスタメントの声と同時に、キキキキキ! 甲高い声と羽の羽ばたきの音が冒険者達の耳に聞こえてきた。
「ここは奴らにとって補給箇所。ここに来る奴を潰しておけば、確実に街への被害は減るはずです。‥‥炎よ、刃金の助けとなれ」
炎をも纏わせた剣をリオンは持ちかえると、一番手近にやってきたインプを反転して斬った。
ざっくりと斬り捨てられた身体はもう動かない。
インプ程度ちゃんと準備しておけばそれほど、彼らには怖い敵ではない。
「ここに来たのは10ってところかな? あ、そ〜れ!」
ハンマーを思いっきり振りかぶって、ボルジャーもまたインプの頭を砕く。
「意外と少ないよね。身を隠しているのもいるのかな?」
「そうかもしれませんが、本命は、きっと遺跡に」
眼を閉じて呪文を紡ぎ‥‥アルカードは声を上げた。
「空に、姿を隠しているのが一匹。後は、目に見えるものだけです」
「それじゃあ、とっとと終らせて、パーシさんと合流を目指すとしようか‥‥それっ!!」
「こんな雑魚にいつまでもかまっていられませんからね」
踏み込んだ冒険者達の見下す視線に、低脳なデビルたちでも気付いた。
それは、当然怒りとなって彼らを無思慮な特攻へと導く。
「まるで、悪魔祓いのようだ。だが‥‥これ以上はさせぬ。陰に生きし邪なるものよ。その身をもって裁きを受けよ」
黒い光がデビルたちの間で破裂する。
彼らの乱れた攻撃を裁けない冒険者など今、その場には誰もいなかった。
ゴールドヒルの丘の上で、冒険者達は同時刻、街の中で戦っているであろう仲間よりも少し苦戦を強いられていた。
数が違う。ホーリーライトとカンテラに照らされた闇の中に20は越えるだろうデビルたちが周囲を取り囲んでいる。
「あ、おれ、戦いはムリですから!」
自信満々にそう言って下がったアーディルをため息で見つめ、パーシは槍を身構えた。
「ならば、邪魔にならないように下がっていろよ!」
「聖なる剣よ。俺に力を」
「大ガマ! ここなら多少暴れてもかまわんぞ。デビルを倒せ!」
迅速な判断と、行動で三人は敵の攻撃の中に踏み込んでいった。
イェーガーの剣はデビルこそを打ち砕く剣。その褐色の刀身に襲い掛かったインプたちは次々と地面に崩れていった。
沙耶もまた、その俊敏な動きでガマの弱らせた敵に止めを刺す、また逆もあってコンビネーションを存分に発揮していた。
そしてパーシ・ヴァル。雷の騎士の二つ名の意味を共に戦った者は理解するという。
変幻自在の槍使いと素早い動きは、雑魚デビルの敵う所では無かった。
多少息を切らせながらも、彼らは確実に敵の数を減らしていった。終わりが見えてくる。その時だ。
「うっ!!」
最前列で戦っていたパーシの背中に突然緋色の線が浮かぶ。思わず膝が付かれ、肩を押さえる。背後は透明な空間。
「パーシ卿!」
アルテスはかすかな気配の先に向けてホーリーを放った。鈍い呻き声と共に毛むくじゃらのデビルが姿を現す。
銀のナイフで止めを刺すと、彼はパーシの前に立った。
「大丈夫ですか?」
「すまない。姿を消している敵に気をつけるんだ!」
「他を心配する前に治療よ! 無茶しないで!」
パーシが立ち上がり、また戦いに赴こうとするのをサリュは全力でマントを引いて止めた。
彼の位置にアルテスが入り、敵を食い止める。その隙に彼女はリカバーをかけた。
「どうして、そこまでするの! 王命だから?」
「‥‥違う」
治療の間、光が放たれる間彼は小さく囁いた。
「俺は、守らなくちゃいけない。神は守ってくれない。‥‥あいつが残したものを、信じたものを俺は守る」
「えっ?」
傷が塞がるとパーシはまた槍を持って、敵に向かって飛び込んでいく。
治療が終った今、それを止める術はサリュには無い。
「パーシさん‥‥」
敵の数は減っていく。
そして丘を駆け上ってくる仲間達が着く頃には、もう逃亡さえも許されずデビル達は地に落ちていき‥‥太陽が差す夜明け。
息を切らせる彼らの足元には一面のデビルの死体が転がっていた。
「とりあえず依頼は終了、って報告してきたけど、パーシ卿。聖壁の方はどうすんの?」
答えは返らない。沈黙をパーシは続けていた。
「資料では、蒼い瞳の聖人に照らされてとありますが‥‥ディナス伯は知らないと言ったのでしょう? 他には‥‥」
アルカードの言葉にアーディルは頷いた。依頼完了の報告の後、聖壁の伝説について何か知らないか、と問うたが彼は知らないと、答えた。
「んじゃ、とりあえず、ゴールドヒルに言ってみようよ。埋まってるかもしれないから調べて掘り返してみれば〜」
「その必要は、無い」
「えっ?」
スコップを担いだボルジャーは瞬きする。他の冒険者達もだ。
「もう直ぐ日が暮れる。そろそろ、道が開かれる」
「えっ?」
立ち上がったパーシは、家の扉を開いた。
「付いて来い。聖壁が多分見られるぞ」
そう言って振り向いた後、彼は前をいく。冒険者達は当然後を追いかけて言った。
ゴールドヒルの遺跡を昼間調べた冒険者達もいる。その時は純白の石が、ただ無造作に立っているだけに見えた。
だが、落ちていく夕日を真っ直ぐに受けると、石の一つ一つが確かに黄金色に輝いて見えた。
「綺麗ですね」
「なるほど。黄金の丘に相応しい‥‥」
白の聖職者も、黒の騎士も等しく同じ光景に魅入る。
どんな細工師も作れないと言われた美しい光景を見つめる冒険者の間に立ち、パーシは石の影を追いかけている。
一番小さい影から順番に、道を辿り最後に一番長く伸びる影の指示した石の裏側に立つ。
「ここに、来て見ろ」
美しい光景から離れることに一瞬戸惑いながらも、冒険者達はパーシの指示に従った。そして彼の立つ位置から彼の指示す方向を見る。
「これが聖壁でしょうか? まさに神の奇跡ですね」
アルテスは十字を切った。
それは不思議な絵画。いくつもの石に分割されて描かれたその絵は、その場所から太陽に向かって見つめることで初めて見えてきたのだ。
黄金色の風景に魅入っていてはけして解らない幻の絵。
「獣、かな? 白くて大きくて‥‥綺麗だ」
「それにとても優しい目をしていますよ」
リオンはまるで自分達を見つめているような壁画の絵に率直な感想を言った。大きな獣は奏が言ったとおりまるで微笑んでいるように優しい目をしている。
獣の周囲には光が溢れ、人々が笑顔で微笑む。その視線の先には聖なる杯が‥‥。
「なあ、パーシさん。これのこと、あんたは最初から知ってたんじゃ? いや、ひょっとしてあんたが」
「あるのは、知ってた。妻が教えてくれたからな。だが‥‥」
「やはりお前か! パーシ・ヴァル!!」
黄金の光、静寂を切り裂くように怒鳴り声がした。半端に言葉を閉じた声の主を求めて彼らは石の外に出る。
「ディナス伯? 何故こちらに?」
首を捻るアルテスを、いや冒険者を無視して伯爵はパーシの前に立つと、渾身の力でその顔を殴りつけた。
「!!」
状況が解らず戸惑う冒険者の中、サリュと沙耶は無抵抗に殴られたパーシの側に駆け寄る。
「一体、何をなさるのですか?」
「突然の暴挙、伯爵といえど許しがたいぞ!」
「‥‥いいんだ」
食って掛からんばかりの二人を制してパーシは無言で立ち上がった。
「この街に二度と足を踏み入れるな、と言っておいた筈だ。キャロルとヴィアンカを死なせたお前が円卓の騎士だと? 笑わせる!」
蒼い瞳に浮かぶ怒り。見下したような視線。一言一言に込められた憎悪がパーシに鋭く突き刺さる。彼は一言の反論もしない。
「今回はデビル退治に協力したということで、多めに見てやる。だが、二度とこの地に足を踏み入れるな。とっと去れ!」
彼の命じるまま、パーシは歩いて丘を下っていく。
「一体‥‥何が‥‥」
「諸君らの行動には感謝する。だが、これは我々の事だ。放っておいて頂こう」
そして、伯爵もまた丘を下る。
冒険者達は、遠ざかっていく二つの影と、闇に薄れ溶けて消えていく聖壁の絵をただ、見守っていた。
「パッラッパパッパ! おいらはパラっさ! パラッパパラッパ! おいらはファイター!」
ボルジャーは明るく踊ってみる。空気を少しでも変えようという意図もある。
だが、街道を歩く仲間からは沈黙が返るのみ。
「反応が無いと、辛いなあ」
苦笑するボルジャーの横でリオンも、少しでも明るく場を盛り上げてみようとするが
「ま、名声よりも力よりも、彼女の一人でも欲しいモンだよあははは〜‥‥ふぅ」
言っていてどこか寂しく、情けなくなってくる。はあと、落ちる深いため息ひとつ。
パーシの表情は表向きは変わらない。だが、数日とはいえ、共に過ごした者には解る。
彼の傷が。
人の心を救いたいと願っていても、心の奥底に深い、深い傷を持つものに踏み込むことはサリュには躊躇われた。
言いたいこと、伝えたい思いはあるが、今のパーシには沙耶も声をかけられずにいる。
「パーシさん!」
そんな中、イェーガーは意を決したように彼の横に駆け寄った。
「なんだ?」
無造作な笑みでパーシは聞き返す。精一杯の勇気を振り絞ってイェーガーは言った。
「過去は忘れてはならない、でも囚われ過ぎてもいけない、と思います。俺達は足元を固めて先に繋げなければならないと思いますから‥‥」
生意気な事を言った、と思う。だが、パーシは優しく笑って怒らなかった。
「君にも、思い人がいるのか?」
はい、とイェーガーは頷いた。
「俺の想い人はエルフで、想いを貫いてなお彼女達を守る為には、パーシさんに克てる程強くなければなりませんから‥‥」
「そうか‥‥。ならば守ってやれ。全力で。でないと後で、後悔するぞ」
ぽん。肩を叩いてパーシは一歩前に進み出た。その背中に何故だか、励ますはずが励まされたようにイェーガーは感じた。
「後悔しない選択とは‥‥自分が信じた道なのだとおもいます。それでも何かにぶつかって、思い悩む事はあるとおもいます。それは‥‥ヒトだからなのでしょう」
「なあ、過去を何時までも悔やんでもそれは建設的とは言えないとおもう。だからこそ過去を教訓として学び、明日に活かす。過ちを繰り返さない、この一点のみが過去への贖罪だとおもう」
アルテスとアーディル。二人はパーシの背中に向けて思いを告げた。余計なことかもしれないけれど言わずにはいられなかった。
ふっ‥‥小さな笑い声が聞こえた気がした。振り返ったパーシ・ヴァルの笑顔は明るい。
「キャメロットに戻ろう。まだまだ、君達の力は必要とされているからな」
「帰る前にパーシ殿。わしとの手合わせをぜひ!」
未来を見つめる強い心達が、笑顔を紡いで、歩き出していく。
それを空をから太陽が、聖なる獣のように優しく見守っていた。
シャフツベリーの聖壁は、聖杯の導き手、大いなる獣の存在と姿を示していた。
冒険者の前に現れた伝説に、その優しい瞳に、いつか本当に出会う日が来るだろうか?
いくつかの思いを抱いて、彼らは街を後にした。