外道、再び

■ショートシナリオ


担当:ゆうきつかさ

対応レベル:5〜9lv

難易度:難しい

成功報酬:3 G 29 C

参加人数:7人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月08日〜07月13日

リプレイ公開日:2005年07月13日

●オープニング

●外道
「うえ〜ん、怖いよぉ‥‥」
 子供達の泣き叫ぶ声が辺りに響く。
 大人達は皆怯え、身を寄せ合って震えている。
 血溜まりの中で息絶える若者。
 村の広場に積まれた死体の山。
 ‥‥その天辺に外道はいた。
「‥‥泣くな。鬱陶しい‥‥」
 血まみれの刀を握り締め、外道が村人達を威嚇する。
 まるで次の獲物を探すかのようにして‥‥。
「うわあああん、怖いよぉ〜」
 再び辺りに子供達の泣き声が響く。
「し、静かにっ! 恨むなら冒険者達を恨むといい。奴らを呼び寄せるためには、大量の生贄が必要だからな」
 次の標的にされる事を恐れ、母親達が必死で子供達の口を塞ぐ。
「さぁて、次はどいつかな?」
 血のついた刀を肩に掛け、外道が怪しく口元を歪ませた。
「抵抗する者はすべて斬る。それが例え女子供であろうとも‥‥」
 警告まじりに呟きながら、外道が死体の山から飛び降りる。
「た、助けてくれ!」
 怯えた様子で子供を抱き寄せ、村人の一人が外道にむかって命乞いをし始めた。
 他の村人達の目も気にせず‥‥。
「だったら冒険者達の首を取って来い。奴らはずる賢いからな。お前達に交渉を持ちかけてくるかも知れん。だが、そのまま言いなりになるんじゃないぞ。きちんと監視をおいておくからな。お前達も気づいていないだろう。この村の中に俺の手下がいた事を‥‥」
 含みのアル笑みを浮かべ、外道が刀を振り上げる。
 今までにないほど邪悪な笑みを浮かべながら‥‥。
「ひっ、ひぃ‥‥」
 恐怖のあまり悲鳴を上げ、村人のひとりが目を閉じた。
「‥‥安心しろ。殺しはしない。そろそろ俺の名前を語って悪事を働いていた男がアジトの場所を吐く頃だ。そうなればアジトが襲撃されるのは目に見えている。お前達はそこで冒険者達の足止めをしてほしい。自分達の愛するものを助けるために‥‥」
 そう言って外道が村人から子供を奪い取り、高笑いを上げながらアジトのある方角へと歩いていく。
 たくさんの部下を引き連れて‥‥。

 それから数日後。
 冒険者ギルドに依頼が届く。
 依頼の内容は外道の捕縛。
 地図には外道達が数日前に訪れた村の場所が描かれていた。

●今回の参加者

 ea1289 緋室 叡璽(30歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea4173 十六夜 桜花(28歳・♀・侍・人間・ジャパン)
 ea7767 虎魔 慶牙(30歳・♂・ナイト・人間・ジャパン)
 ea9276 綿津 零湖(31歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 eb0356 高町 恭也(33歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb1484 鷹見沢 桐(28歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 eb1822 黒畑 緑太郎(40歳・♂・陰陽師・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●奇妙な村
「え〜っと、この村に外道という賊が現れた聞き、伺わせてもらったのですが‥‥何かご存知の事はないでしょうか?」
 最後に外道が目撃された村に辿り着き、綿津零湖(ea9276)が村人達にむかって声をかける。
「それはご苦労様です。ささっ、こちらで詳しい話を‥‥」
 村人達は一瞬戸惑った表情を見せたが、直ぐに揉み手で迎え入れ村の宿屋まで連れて行く。
「‥‥あからさまに怪しいですね」
 零湖の耳元で囁きながら、十六夜桜花(ea4173)が辺りを警戒した。
 村は異様に静まり返っており、誰かに監視されているような気分である。
「しっ‥‥、気づかれます」
 静かに首を横に振り、零湖が村人達の後をついて行く。
 村人達の案内した宿屋は物凄く綺麗に掃除されており、零湖達が部屋に到着したのと同時に温かい料理が運ばれる。
「その食い物はあんた等の物だ。気を使わんでいいぜ」
 目の前に置かれた料理には手をつけず、虎魔慶牙(ea7767)が保存食にかじりつく。
「いえいえ、憎き外道を倒していただけるのですから、遠慮せずに召し上がってください。それに‥‥料理を食べていただけないなら、詳しいお話も出来ませんので‥‥」
 いやらしい笑みを浮かべながら、村人のひとりが慶牙に迫る。
「‥‥そう来たか。分かったよ。食えばいいんだろ」
 仲間達のアイコンタクトに気づき、慶牙が大袈裟に料理を食べたフリをした。
 本当は食べたくなかったのだが、ここで村人達の警戒心を高めてしまっても意味はない。
(「‥‥女、子供の姿はまったくなしか‥‥」)
 村人達の雰囲気からある程度の状況を察し、零湖が外道の手下がいないか辺りを睨む。
 ‥‥異様な気配。
 外道の手下はすぐ傍に立っていた。
 怪しく瞳を輝かせ‥‥。
「うまく村人に化けたつもりでしょうが、殺気までは消す事が出来なかったようですね」
 すぐさま日本刀を引き抜き、桜花が外道の手下を威嚇する。
「‥‥愚かな奴め。このまま薬で眠っていれば、楽に死ねたものを‥‥」
 短刀を引き抜き桜花を睨むと、外道の手下が畳にむけて唾を吐く。
「あんた、馬鹿だろ? 村の連中はみんな痩せこけているのに、てめぇだけガタイがやけにイイんだよっ!」
 どぶろくを口に含んだあと、慶牙が斬馬刀を振り下ろす。
「おっと‥‥、危ねぇ! おい、てめぇら! 何をボサッとしてやがる! ‥‥分かるだろ?」
 不機嫌そうな表情を浮かべ、外道の手下が村人達にむかって声をかける。
 村人達は少し躊躇したようだが、包丁などを握って慶牙を睨む。
「やめておけ。そんな武器じゃ、俺達は殺せねぇ‥‥」
 何処か寂しげな表情を浮かべ、慶牙が静かに首を横に振る。
「うっ、うわあああああっ!」
 怯えた様子で雄たけびをあげ、村人が包丁を振り下ろす。
「殺れねえって‥‥言っただろ」
 包丁を素手でガッチリと掴んだまま、慶牙が悲しげな表情を浮かべて口を開く。
 村人は慶牙を見つめたまま腰を抜かし、ガタガタと身体を小刻みに震わせている。
「たくっ‥‥、根性がねぇな! まぁ、いいさ。代わりはいくらでもいるからな」
 いやらしい笑みを浮かべて村人の頭に短刀を突き刺し、外道の手下が畳に落ちていた包丁を拾ってペロリと舐めた。
「なんと‥‥酷い真似を‥‥」
 アイスチャクラムを作り出し、零湖が外道の手下に攻撃を仕掛ける。
 外道の手下は余裕で攻撃をかわしたが、零湖は決して諦めず更なる一撃を放つ。
「やるじゃねえか。だが、それだけの人数じゃ俺は殺れねえぜ」
 含みのある笑みを浮かべ、外道の手下が包丁を構える。
「‥‥余裕ですね。この状況で‥‥」
 外道の手下を睨みつけ、桜花が出入り口に立って逃げ道を塞ぐ。
「当たり前だろ! こっちはてめぇらの倍‥‥いや、4倍だ! 死ぬ気でやりゃあ、お互い無傷じゃいられんだろ。‥‥やっちまえ!」
 外道の手下を合図に村人達が一斉に襲い掛かる。
 瞳には涙を浮かべ‥‥。
 家族の名前を呟きながら‥‥。
「馬鹿野郎っ! まだ分からねえのか!」
 村人達を一喝し、慶牙がゴクリと酒を飲み干した。
「‥‥騙されているんだよ、あんたらは。その証拠に、家族はなぁ‥‥」
 そこで慶牙が口をつぐむ。
 ここで真実を語るべきか悩みつつ‥‥。
「家族は‥‥なぁ‥‥」
 拳を震わせ、吐き捨てる。
 真実を語るため、力を込めて‥‥。
「言ってみろよ。真実をさ! 人間ってのは壊れやすいんだぜ。心も‥‥身体も‥‥な!」
 満足した様子でゲラゲラと笑い、外道の手下が慶牙を何度も挑発する。
「ひ、酷い‥‥」
 あまりの非道さに心が痛み、桜花がポトリと涙を流す。
 ‥‥村人達は知っていた。
 だが、信じたくなかっただけなのだ。
「てめえらが来なきゃ、コイツらもこんな思いはしなくて済んだのになぁ。まったく罪作りな奴らだぜ」
 村人達の肩を叩き、外道の手下がニヤリと笑う。
「少し‥‥黙っていてくれますか」
 とうとう我慢が出来なくなり、零湖が警告まじりに呟いた。
「ははっ! そうだよ、その目! てめえらだって同じじゃねえか! 俺と同じ人越しさ」
 挑発するようにして両手を開き、外道の手下が馬鹿にした様子で零湖を睨む。
「あんた‥‥外道だな‥‥」
 鋭い視線を外道に放ち、慶牙がボソリと呟いた。
「‥‥さあな。だが、さっきの言葉は本当だぜ。てめえらも俺と同じだろ。心の中じゃ、人殺しを楽しんでいる。気が変わったら、いつでも東の砦に来てくれ。そんときゃ、特等席を用意するぜ! じゃあな!」
 そう言って外道が村人達を盾にして宿屋から逃げていく。
 不気味な笑みを浮かべながら‥‥。

●外道のアジト
「‥‥ここか。外道のアジトは‥‥」
 警戒した様子で辺りを睨み、高町恭也(eb0356)が忍び足を使ってアジトの傍まで近づいた。
 外道のアジトは洞窟の中に存在しているのだが、その入り口には何故か見張りすら立っていない。
「‥‥ここが外道のアジトか。ヤツには相応しい場所だな‥‥」
 クールな表情を浮かべながら、緋室叡璽(ea1289)が松明をかざす。
 途中で罠が仕掛けてある可能性もあるため、慎重に辺りを見回しながら進んでいく。
「‥‥不気味なくらいに静かだな。やはり罠か」
 インフラビジョンを使って辺りを睨み、鷹見沢桐(eb1484)がひとつずつ部屋を確認する。
 ほとんどの部屋はそのままの状態だったが、外道の手下が隠れている様子はない。
「この様子じゃ、その可能性が高いな。だが、このまま手ぶらじゃ帰れんだろ?」
 ムーンアローを放っても全く反応がないため、黒畑緑太郎(eb1822)が警戒した様子で洞窟の奥へと進んでいく。
「妙な匂いがするな‥‥。それに‥‥静か過ぎる。まさか、人質達は‥‥」
 洞窟の奥から異様な臭いが漂ってきたため、恭也が険しい表情を浮かべて走る。
 臭いのする方向を目指して‥‥。
「やはり‥‥そうか」
 山のように積まれた死体を目の辺りにしたため、叡璽が視線を逸らして拳を握る。
 村人達の死体は死後数日ほど経っており、腐汁で汚れた地面に無数のウジが這い、まともに正視出来ないほどだ。
「‥‥私達に対する挑戦か」
 外道の嘲笑う姿が脳裏を過ぎり、桐が言葉を吐き捨てた。
 村人達の死体は苦悶の表情を浮かべており、身体には無数の拷問痕が残っている。
「まさかこの中に外道がいるって事はないよな」
 再びムーンアローを発動させ、緑太郎が本物の外道を探す。
 死体の中に外道が隠れていれば、ムーンアローが命中するはずなのだが、やはり反応はないようだ。
「‥‥待て。壁に文字が書かれてないか?」
 調査の途中で異変に気づき、恭也が死体の山を退かしていく。
 ほとんどの死体が腐っているため、移している途中でボロリと崩れ、そのたび刺激臭が辺りにもわんと漂った。
「‥‥物凄い臭いだな」
 纏わりついてきたハエを払い、叡璽が恭也と一緒に死体を退ける。
「後で埋葬してやらんとな。このまま放っておいたら目覚めが悪い」
 村人達の死体が死人憑きになる可能性も高いため、桐が外道達の使っていた荷車を見つめて死体を積んでいく。
「これで文字が読めるな。どれどれ‥‥畜生。フザけた事を!」
 壁に書かれた文字を読み、緑太郎が怒りで拳を振るわせる。

『腰抜けどもへ、臆していないのなら、東の砦まで来いがいい』

 ‥‥それは外道からの挑戦だった。