盗まれた河童膏
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■ショートシナリオ
担当:ゆうきつかさ
対応レベル:3〜7lv
難易度:普通
成功報酬:2 G 45 C
参加人数:4人
サポート参加人数:-人
冒険期間:09月12日〜09月17日
リプレイ公開日:2005年09月18日
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●オープニング
先日、河童忍軍の里から、最新の河童膏が盗まれた。
河童膏は五輪祭で負傷した者達にとって、無くてはならない代物だ。
このままでは五輪祭の中止も考えられる。
そこでお前達に河童膏の回収と、河童達の捕縛を依頼したい。
河童膏を盗んだ河童達の数はふたり。
それぞれ居場所は突き止めてあるんだが、俺達では相手が強すぎて歯が立たない。
リーダー格の河童は左目に傷のある男で、その傷は青龍衆の首領であるゴルゴに傷付けられたものだ。
彼は青龍衆の中でも実力のある河童だったが、ゴルゴに歯向かったため始末され、谷底に落ちて死んだと思われていた。
今回もゴルゴに復讐するつもりでいたようだが、途中で気づかれてしまったため、河童膏を盗んで逃亡したらしい。
もうひとりの河童は男でありながら、玄武の貞操を狙っていた危険なヤツだ。
玄武に好きな女が出来てたため、嫉妬して実力行使に出ようとしていたらしい。
幸い玄武の背負っていた甲羅が彼の身を救い、一線を越える事は無かったがコイツが生きている限り、玄武が安心して眠る事は出来ないだろう。
五輪祭を楽しみにしている河童忍軍のためにも、どうかこの河童達を倒してくれないだろうか?
●リプレイ本文
●煙羅
「依頼とはいえ、随分と難儀な方が相手のようですね」
玄武からの報告を受け、拝峰巫女乃(ea9491)が酒場にむかう。
途中までは玄武も一緒に来ていたのだが、一條北嵩(eb1415)から伝言を聞き、慌てて何処かに走っていった。
「そりゃ、あんな事を言われたらなぁ。噂じゃプロポーズする予定だったらしいしね」
苦笑いを浮かべながら、北嵩が玄武の顔を思い出す。
玄武なりに事態を深刻に受け止めたのか、頭を抱えて悲鳴を上げていたらしい。
「とにかく煙羅とやらに接触してみる必要がありますね。依頼主の話ではこの酒場にいるようですが‥‥」
酒場の前で立ち止まり、巫女乃がボソリと呟いた。
依頼主の話では煙羅がこの酒場にいると聞いているのだが、既に冒険者達が動き出している事を知っている可能性が高いため、木刀を持たずに煙羅の隣に座わって会話を試みる。
「想いを遂げられず苦しまれているとお見受けしましたが、一杯如何です? 酒色を煽るようですが、求不得苦を砕くも僧の務め。一人酒では埋まる傷も埋まりませんでしょう。こんな生臭でよろしければお付き合いしますよ」
そう言って巫女乃が煙羅の杯にどぶろくを注ぐ。
「‥‥臭うわ。血の臭い‥‥。あなた、冒険者ね」
玄武の甲羅を抱きしめながら、煙羅が胡散臭そうに巫女乃を睨む。
「な、何を言っているんですか。私は冒険者なんかじゃありません」
激しく首を横に振り、巫女乃が気まずい様子で視線を逸らす。
あからさまに怪しまれているため、ここで迂闊な事は言えなくなった。
「‥‥何だか胡散臭いわね。これでもワタシは河童忍軍のひとり‥‥。冒険者と一般人の違いくらい分かるわよ」
舐めるような視線を送り、煙羅が怪しくニヤリと笑う。
「こんにちは〜、隣に座ってもいいかな〜♪ 俺、北嵩って言うんだけど‥‥素敵な物を抱きしめてんだね〜」
巫女乃に疑惑の目が向けられたため、北嵩が隣に座って話題を変える。
「こ、こ、こ‥‥、これは何でもないのよ。単なる甲羅。河童はみぃーんな持っているの!」
青ざめた表情を浮かべながら、煙羅がダラダラと汗を流す。
玄武の甲羅を大事そうに抱きしめて‥‥。
「へぇ〜、それじゃ河童は背中の甲羅と予備の甲羅があるんだね。ちょっとみせてくれるかな?」
そう言って北嵩が煙羅の甲羅を手に取った。
「こ、これは‥‥」
甲羅の裏に描かれた模様。
一瞬だが、亀や鳳凰の模様が見えた。
「勝手に見ないで! 失礼しちゃうわ!」
あからさまに動揺し、煙羅が抱きしめ店を出る。
それと同時に転がり落ちる河童膏。
「逃げて‥‥しまったようですね‥‥」
河童膏を拾い上げ、巫女乃がボソリと呟いた。
何とか河童膏は手に入れたため、依頼の目的を果たした事になるのだが‥‥。
何か‥‥引っかかる。
●邪眼
「‥‥忍びの掟は鉄の掟。かの忍軍にも麒麟衆と呼ばれる者がいるらしく、この者達の粛清に動いていたようですね。もっとも麒麟衆の中に裏切り者がいたため、彼らを逃がしてしまったようですが‥‥」
もうひとりの逃亡者である邪眼を捕らえるため、音無藤丸(ea7755)が潜伏先の小屋にむかう。
この小屋は邪眼が闇商人との取引場所として利用している場所のため、藤丸も自らの気配を殺してゆっくりと近づいていく。
「まさか替玉を使用してきたりしないでしょうね。忍者には特殊な術もあるようだし‥‥」
嫌な予感が脳裏を過ぎり、マハラ・フィー(ea9028)が辺りを睨む。
事前に依頼主から抜け道があると聞いていたため、川沿いを歩いて抜け道らしきものを探してみたのだが、それらしきものがなかったため両脇に土嚢を抱えたままで‥‥。
「‥‥可能性はありますね。もともと邪眼は青龍の手下‥‥。邪眼は青龍暗殺のため何度も襲撃を仕掛けたと聞いています。彼と戦って生きていた者はいないと言われるほどですから、邪眼の実力は青龍と互角であると考えるべきでしょう‥‥」
険しい表情を浮かべながら、藤丸がダラリと汗を流す。
だとしたら、ふたりだけでは勝ち目はない。
自分達の命を懸ける覚悟でもない限り‥‥。
「とにかく‥‥やるしかないわね。ある程度の危険は覚悟して‥‥」
闇商人の扮するため特徴的な耳を隠し、フィーが深呼吸をしてからコンコンと戸を叩く。
「‥‥誰だ」
少しだけ戸が開き、何者かの瞳が見える。
鋭く尖った刃物のように不気味な気配。
‥‥間違いない。
‥‥邪眼である。
「初めまして、遠くインドーラより渡りこの地で毒草や薬草を生業としているマハラよ。噂の薬、私にも譲ってもらえません? 継続して渡してもらえるなら、わたくしの取り分は売上の5割いえ4割でいいわ。あなたは色々な知識もくれそうですもの」
不敵な笑みを浮かべながら、フィーが邪眼に対して交渉を持ちかけた。
「お前‥‥闇商人じゃないな」
次の瞬間、邪眼の短刀がフィーの喉元を捕らえる。
「か、勘違いしないでよ。敵じゃ‥‥ないわ‥‥」
フィーの頬に汗が伝う。
「‥‥ギルドで闇商人の情報を聞いておくべきだったな」
邪眼の雄叫びが辺りに響く。
その声に驚き、たじろぐフィー。
「ば、馬鹿な! 拙者らが冒険者だと何故分かったんですか!」
納得のいかない表情を浮かべ、藤丸がジロリと邪眼を睨む。
「カマをかけたのさ。俺が用心深い人間だと聞いていなかったのか。じゃあな、また会おう!」
それと同時に邪眼が河童膏を放り投げ、高笑いをあげながら逃げていく。
「何故‥‥河童膏を‥‥。これを売るのが目的じゃなかったという事でしょうか」
驚いた様子で汗を流し、藤丸が河童膏を睨む。
邪眼が河童膏を手放した理由は分からない。
しかし、彼らの目的が別にあったことは確かだろう。