●リプレイ本文
●死人憑き
「この村の何処かから黄泉人の気配がするわね。‥‥間違いないわ」
警戒した様子で辺りを睨み、南雲紫(eb2483)が村の中に入っていく。
死人憑きの確認された村はすっかり荒れ果てており、村人達の住んでいた小屋は無残に破壊されている。
「‥‥黄泉人ってのは、ホントに次から次へと出て来るな。いい加減、自分らのネグラに戻ってもらいたいもんだよな」
面倒臭そうに頬を掻き、劉紅鳳(ea2266)が溜息をつく。
‥‥異様な気配。
その気配は村の奥から漂っている。
「‥‥死人憑きにされた人達を安らかに眠らせる‥‥てのは偉そうな考えか?」
冗談まじりに微笑みながら、劉紅鳳(ea2266)が金属拳を指にはめた。
暗がりの中で揺れる黒い影。
間違いない‥‥死人憑きだ。
「どれだけの村が喰われたのか。ここもそのひとつなんやね。屍は土に、魂は天へ還り‥‥」
市女笠で顔を隠したまま、鷺宮吹雪(eb1530)が道返の石に祈っておく。
道返の石を使用する事で直径15mの結界を張る事が出来るため、しばらくの間は死人憑き達の力を弱める事が出来る。
「‥‥別にこの国に愛着があるわけじゃないし、神皇家が何をして恨みを買ってるのかもそんなに興味ないけど、きっちりと仕事だけはさせてもらうよ」
群れを成して襲い掛かってきた死人憑きを倒すため、アマラ・ロスト(eb2815)が薙刀『但馬国光』を振り回す。
死人憑きはそれほど知能が高くないため、アマラの攻撃など全く気にしていない。
「やれやれ、次から次によく湧くものだな、こいつらは‥‥。まぁ、遠慮も手加減も必要ない相手だからな。せいぜい派手に暴れさせてもらうとするか」
カウンターアタックを放ち、紫が地道に死人憑きを倒していく。
死人憑きは疲れる事を知らないため、短時間で倒さないと立場が逆転してしまう。
「助けてやれなくてごめんよ‥‥あたしに出来るのは、あんたらの『命無き生』を終わらせる事ぐらいなんだ」
子供の死人憑きにトドメをさし、紅鳳がグッと唇を噛む。
もう少し早く気づいていれば助ける事のできた命‥‥。
子供の瞳から涙に似た液体がこぼれ落ちる。
「こんな幼い子まで死人憑きに‥‥許せませんね」
道返の石を握り締め、吹雪が死人憑きの群れを睨む。
死人憑きは空ろな瞳で頭を揺らし、両手をあげて吹雪を襲う。
「吹雪さん、後ろに下がっていて!」
オーラエリベイジョンを発動させ、アマラが死人憑きに斬りかかる。
大量の腐汁を浴び、青ざめた表情を浮かべるアマラ。
気分的にはかなり辛いものがある。
「さよなら‥‥来世では惑わないようにね‥‥」
そう言って紫が死人憑きにトドメをさした。
●怪骨と怨霊
「仲間達が死人憑きと戦っている間に我々は怪骨達を退治しよう」
少しずつ数の減り始めた死人憑きの間をすり抜け、風間悠姫(ea0437)が怪骨と怨霊の退治にむかう。
死人憑きと比べれば怪骨と怨霊の数は少ないものの、油断していればあっという間に囲まれてしまうため馬鹿に出来ない状況だ。
「ここまで死人が増えているって事は何かの前触れかも知れないわね。近々、何かとんでもない事が起こるかも‥‥」
険しい表情を浮かべて辺りを睨み、鷹神紫由莉(eb0524)が黄泉人との関わりを探す。
村は荒れ果てているが、黄泉人との関連を示すものはなく、怪骨達が襲ってくるため、細かく調べる事は難しい。
「‥‥そうかも知れないわね」
ハーフエルフの特徴である耳を隠し、朱蘭華(ea8806)がオーラパワーを発動させた。
怪骨は悠姫の腕に噛みつき、腐った肉がぶら下がったままの右腕で殴る。
「クッ‥‥、いつの間にっ!」
すぐさま怪骨にスマッシュを放ち、悠姫が傷ついた腕を守るようにして辺りを睨む。
怪骨は錆びた刀や、木の棒を握り締め、次々と攻撃を仕掛けてくる。
「迂闊に触ると火傷しますわよ」
ライトニングアーマーを身に纏い、紫由莉がスマッシュを放って怨霊を倒す。
怨霊は紫由莉の背後から攻撃を仕掛けてきたが、ライトニングアーマーの電気を食らって消滅してしまう。
「‥‥これで終わり‥‥バオ・フー・チャン‥‥」
左の龍叱爪で怪骨を殴り、蘭華が爆虎掌でトドメをさす。
「これで一安心ね。他の人達の援護に行きましょう」
ホッとした様子で汗を拭い、悠姫がゆっくりと辺りを見回した。
辺りで揺れる黒い影。
青白い炎が村の外で揺れている。
「まさか‥‥囲まれてる!?」
青ざめた表情を浮かべながら、紫由莉がダラリと汗を流す。
青白い炎は次第にポツポツと増えていき、カラカラと乾いた音が辺りに響く。
「‥‥これだけの数‥‥どれだけの村を飲み込んできたのかしらね」
龍叱爪を素早く構え、蘭華がジリジリと後ろに下がる。
怪骨達が増えた理由はよく分からないが、必ず操っているヤツがいるはずだ。
その黒幕が姿を現すまで、蘭華達は時間を稼がなくてはならない。
自らの命を懸けて‥‥。
●黄泉人
「‥‥遥か昔。とある地方の豪族が恨みを抱いて死んだ。そして、黄泉人達と共に都を脅かした彼らを神皇家は討伐し、封印した。‥‥その事件は神皇家にとって明るみになってはいけないものだった‥‥。その恨みとは、いったい何なのでしょうね?」
仲間達が死人達を引きつけている間に、字冬狐(eb2127)が遠回りして黄泉人の気配がする場所にむかう。
黄泉人と神皇家は少なからず関係があるようだが、情報が遮断されているため詳しい事は分からない。
「それじゃ、その恨みを晴らすため、ヤツらは俺達に攻撃をしているってわけか?」
納得のいかない表情を浮かべ、日比岐鼓太郎(eb1277)が首を傾げる。
黄泉人達の行動を見ている限り、神皇家に関わりのある者だけでなく、人間そのものに恨みを持っているようにも思えてしまう。
逆に考えれば、それだけ黄泉人達の恨みが深いのかも知れない‥‥。
「とりあえず、そんな昔のよく分からない出来事により、あの、らぶりーな神皇様の命が狙われているなんて許せません! なんとしてでも黄泉人達の復讐を阻止せねば‥‥」
きゅーとな神皇様を思い出し、冬狐が拳をギュッと握り締める。
神皇家に対して黄泉人達がどんな恨みを持っているのかよく分からないが、らぶりーきゅーとな神皇様を守るためなら、どんな事でも出来そうだ。
「ひょっとしてアイツが黒幕か。行くぜ、アカギ! アカネ!」
自分の飼っている犬と鳥に声をかけ、鼓太郎が草むらの中を進んでいき、黒幕らしき女に斬りかかる。
女は鼓太郎を見つめてニィッと笑い、天を見上げて咆哮を上げた。
(「か、身体が‥‥う、動かないっ!」)
それと同時に冬狐達の身体がビリビリと痺れ、全く身動きが取れなくなる。
「憎い‥‥憎い‥‥憎い‥‥」
まるで念仏のように呟きながら、女がユラユラと歩く。
氷のように冷たい視線と白い肌。
目を合わせているだけで、魂が吸い取られそうなほど美しい。
(「このままでは‥‥やられてしまう‥‥」)
女の右手がゆっくり伸びる。
鼓太郎の頭を掴むため‥‥。
「‥‥まだじゃ‥‥」
‥‥女が言った。
鼓太郎の目の前で動きを止めて‥‥。
「まだまだおぬしらは苦しんでもらわねばな‥‥。和が一族の恨み‥‥、この程度の事で晴れはせぬ‥‥」
女が笑った。
怪しく口元を歪ませて‥‥。
(「動け‥‥動け‥‥動け!」)
心の中で祈りながら、鼓太郎が身体を震わせる。
グッタリと倒れたまま、動こうとしないアカギとアカネ。
2匹とも息はあるようだが、女の咆哮によって意識を失っているようだ。
「また会える日を楽しみにしているぞ」
鼓太郎の頬を撫で、女がクスリと笑って背をむける。
うわ言の様に何やらブツブツと呟きながら‥‥。