黄泉比良坂決死隊

■ショートシナリオ&
コミックリプレイ


担当:ゆうきつかさ

対応レベル:7〜13lv

難易度:難しい

成功報酬:8 G 20 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:10月05日〜10月18日

リプレイ公開日:2005年10月11日

●オープニング

●決死隊
 平織虎長配下を中心とする大和追討軍は、亡者軍の首領である黄泉大神を倒すため微妙な関係にある源徳
旗下の一隊に白羽の矢を立てた。
「話は分かりました。――国家の大事、謹んで承ります」
 要請を受けた新撰組は最強を使う。
 一番隊隊長、沖田総司が指揮する精鋭部隊を組織した。
 すべては石舞台古墳の強力な防衛網を破り、黄泉比良坂を通って根の国に至り、黄泉大神を倒すため‥‥。

「命を捨てる覚悟のある者だけ、僕について来て下さい」

 ‥‥沖田が言った。
 生きて帰れる保証はない。
 恐怖は士気に影響する。

「‥‥俺達は駒か?」

 誰かが言った。
 皮肉のある含みを込めて‥‥。

「‥‥かも知れません。もちろん、それは僕も同じ事。あなた方を見捨てて逃げるつもりはありません。それに今回の任務は黄泉大神を倒す事が目的であって、生きて帰ってくる事が目的ではありません。たとえ命を落とす危険があっても、このまま黄泉大神を放っておけば、いずれ地上は亡者の溢れる世界となるでしょう」

「生きて変えれる可能性は‥‥?」
 鋭い一言。
 志願者達の間に緊張が走る。
 誰も死にたいと思って戦う者はいないから‥‥。

「‥‥5割です。残りの5割は皆さん次第。志願者が少なければ、僕達の部隊は全滅し、大和の地を手放す事になるでしょう」
 ‥‥それが沖田の答えである。
 比喩ではない。追討軍が石舞台古墳を攻撃してから亡者軍の動きは変わった。
 今は黄泉比良坂につながる石舞台古墳は人間達が死守するが、いつ再奪取されてもおかしくはなかった。
 彼らのために、大和各地で追討軍や冒険者が身を挺して戦っているが、決死隊が敗れたら、その時に再び黄泉比良坂攻略を行う力が残っているとは思えない。
 楽観的に見ても、戦いの決着が数ヶ月は遅れるだろう。
 命を賭けるに値する一戦。

●今回の参加者

 ea0130 オリバー・マクラーン(44歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea3108 ティーゲル・スロウ(38歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea6647 劉 蒼龍(32歳・♂・武道家・シフール・華仙教大国)
 ea8806 朱 蘭華(21歳・♀・武道家・ハーフエルフ・華仙教大国)
 ea8820 デュランダル・アウローラ(29歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 ea9275 昏倒 勇花(51歳・♂・パラディン候補生・ジャイアント・ジャパン)

●リプレイ本文

●石舞台古墳
「‥‥これだけしか集まらなくて、申し訳ないわね」
 黄泉大神を倒すために結成された決死隊に参加し、朱蘭華(ea8806)が沖田総司(ez0108)に頭を下げた。
 石舞台古墳には巨大な石を積み上げて作った玄室があるのだが、封印が破壊された時に封土が吹き飛び、黄泉比良坂の入り口が剥き出しになっている。
「‥‥気にしないでください。蘭華さんが悪い訳ではありませんし‥‥」
 ゆっくりと首を横に振り、沖田がニコリと微笑んだ。
 作戦の失敗は『死』を意味している。
 無理に参加しろとは沖田も言えない。
「‥‥そんなに悲しい顔をしないでっ! あたしまで悲しくなっちゃうから‥‥」
 大粒の涙を浮かべながら、昏倒勇花(ea9275)が巨体を揺らして沖田に抱きつく。
「あ、あの‥‥、あなたは?」
 困った様子で勇花を見つめ、沖田が気まずく汗を流す。
 誠の鉢金を巻き、巫女装束を纏い、卒塔婆を担いだジャイアント。
 ‥‥沖田は言葉を失った。
「あたしは癒しの乙女、こんとーちゃん。でも心無い方は、あたしの事を『最終兵器彼氏』と呼ぶわ‥‥」
 ただならぬオーラを漂わせ、勇花が寂しそうに溜息をつく。
「よ、よろしく‥‥」
 勇花のおかげて緊張が解れたのか、沖田が苦笑いを浮かべて挨拶した。
 先程とは異なり、表情にも余裕がある。
「大丈夫さ! 俺がついてりゃ、百人力だっ! 任せておけよっ!」
 自分の胸をポンと叩き、劉蒼龍(ea6647)がニヤリと笑う。
 元から危険は承知のうえ、いまさら逃げるつもりはない。
「頑張りましょう。‥‥何とかなるわ」
 仲間達に対してオーラパワーを付与し、蘭華がゆっくりと辺りを見回した。
 新撰組一番隊の隊士も作戦には参加しているが、相手にするのが人間ではなく死人のため、彼らといえど生きて帰れる保証はない。
「ここで倒れるわけにはいかないからな。‥‥俺にはやるべき事が残っている!」
 鬼神ノ小柄を握り締め、ティーゲル・スロウ(ea3108)が気合を入れた。
 精鋭部隊のひとりとして参加している以上、虎長の期待に応える必要がある。
「乙女には花を‥‥。童には笑顔を‥‥。戦士には死地を‥‥。そして、死者には安らぎを‥‥。それが世界のあるべき姿。それを妨げるなら、例え神であろうとも‥‥斬る」
 道返しの石を勇花に渡し、デュランダル・アウローラ(ea8820)が魔剣『トデス・スクリー』を握り締め、クールな表情を浮かべて呟いた。
 今回の依頼で使用したアイテムは、追加報酬として沖田から渡されるため、使い惜しみをする必要はない。
「好奇心が猫を殺し、諦めが人を殺す。此処には我々のみ、ならば我々がやらねば誰が出来るか? さあ、行こう。想像に考えうる最大最悪の事態に比べれば、この程度はおそれるに足らない‥‥」
 闇の中で蠢く死人達の気配を感じながら、オリバー・マクラーン(ea0130)が黄泉比良坂の入り口を睨む。
 何者かの視線に気づかぬまま‥‥。

●黄泉比良坂
「‥‥本当に真っ暗だな」
 ランタンを使って照らし、蒼龍が黄泉比良坂を下りていく。
 黄泉比良坂の内部は暗くじめじめとしており、しばらくの間は、なだらかな坂道を続いている。
 決死隊の隊員は不意打ちに備え、楔形に陣形を組むと、正面の切り込みに沖田、勇花、デュランダル。
 雑魚の払いに新撰組隊士、蘭華、オリバー。
 斥候及び遊撃に蒼龍。
 回復にスロウと役割を分担した。
「これじゃ、何処かに敵が潜んでいても分からんな」
 警戒した様子で辺りを睨み、スロウがランタンを照らす。
 人間とは異なり死人には気配がないため、不意打ちされないように注意する。
「既にまわりを囲まれているような気もしますが‥‥」
 険しい表情を浮かべながら、オリバーがロングソードを引き抜いた。
 ‥‥異様な気配。
 心臓の高鳴りと共に、嫌な予感が脳裏を過ぎる。
「まさか、これって‥‥」
 左腕に装備した龍叱爪を素早く構え、蘭華が警戒した様子で辺りを睨む。
 暗闇にボンヤリと浮かぶ無数の髑髏。
 ‥‥死霊侍がそこにはいた。
「悪い予想ほど、よく当たるな」
 魔剣『トデス・スクリー』にオーラパワーを付与し、デュランダルが死霊侍との戦闘に備える。
 死霊侍は侍が悪意と共に蘇った存在で、生前の剣術を覚えているため強敵だ。
 その背後には死人憑き、怪骨、怨霊などの姿もあり、簡単に先には進めない。
「‥‥やるしかないってわけね」
 ゆっくりと軍配を構え、勇花が死人達と間合いを取る。
 いつまでも刀を抜こうとしない沖田を気にしながら‥‥。

●数十分後
「‥‥バオ・フー・チャン‥‥これで何体目かしらね」
 死人達の攻撃をオフシフトでかわし、蘭華が爆虎掌を放って叩き込む。
 ‥‥既に倒した死人は数十体。
 次から次へと死人が襲い掛かってくるため、油断しているとすぐにまわりを囲まれてしまう。
 しかも死人達は疲れる事がないため、状況的にはこちらの方が不利である。
「やれるだけやるしかない。心していくぞ!!」
 ホーリーライトを使って辺りを照らし、スロウが一気に間合いを詰めて『我流剣技・葬魔刀(シュライク)』を放つ。
 死人達を倒すたび何とも言えない臭いが漂い、胃液が込み上げてくるような感覚に襲われる。
「‥‥大丈夫か? みんな顔色が悪いぞ」
 心配した様子で仲間を見つめ、蒼龍がランタンを照らす。
 明かりを持っているせいか、蒼龍は死人に狙われ続けているが、回避能力が高いためなかなか敵の攻撃が当たらない。
「本音を言えば‥‥限界です。これだけの死人を相手にしていますからね」
 ライトシールドを使って死人の攻撃を受け止め、オリバーが疲れた様子で汗を拭う。
 一番隊の隊士は死人達に襲われ、生き残っているのは数名だ。
「こ、このままじゃ、マズイわね‥‥」
 死霊侍の攻撃を軍配で受け流し、勇花がカウンターを使って相手を掴み、スープレックスを使って敵の集まっている場所に放り投げる。
「か、囲まれたか‥‥」
 怪骨めがけてスマッシュEXを放ち、デュランダルが魔剣についた腐汁を払う。
 ‥‥明らかに切れ味が落ちている。
 しかし、沖田は動かない。
「なぜ戦わないっ! ここまで来て、怖気づいたか!」
 沖田をジロリと睨みつけ、スロウが納得のいかない様子で文句を言う。
「違うっ! そうじゃないんだよっ!」
 ‥‥沖田が答える。
 わずかに声を震わせて‥‥。
「この刀を抜いたら‥‥僕が‥‥僕じゃなくなるから‥‥」
 そう言って沖田がゆっくりと刀を抜く。
 真っ青な刀身を輝かせ‥‥。

●沖田
「化け物だな、ありゃ‥‥」
 ‥‥刀を抜いてからの沖田は無敵だった。
 まるで紙を切るような感覚で、次々と死人達を倒していく。
 無表情のまま、黄泉比良坂を駆け下りながら‥‥。
「お、おい、待てよ! 俺達を置いていく気か?」
 慌てた様子で声をかけ、蒼龍が沖田の後を追いかける。
「す、すみません‥‥。でも、目的地には着いたようですね」
 荒く息を吐きながら、沖田がクスリと笑って辺りを睨む。
 目の前には地底湖が広がっている。
「ここは‥‥黄泉の国ね‥‥」
 地底湖の中心に建てられた社を見つけ、蘭華が警戒した様子でゆっくりと歩く。
「グッ‥‥グォォォォォ!」
 社の中にはカサカサの肌をしたミイラが鎮座しており、蘭華達の姿に気づくと唸り声を上げて立ち上がる。
 黄泉人達を率いる首領、黄泉大神。
 飛鳥の地を恐怖のどん底へと陥れた、祟り神‥‥。
「我を‥‥再び‥‥封印するのか」
 その言葉に反応するようにして、湖の中から黄泉人達が現れる。
 蘭華達を殺すため、ふらふらと頭を揺らし‥‥。
「ひとつ‥‥聞きたい事がある。酒天童子について、何か知らないか? 知っているのならお前を倒して答えを聞くまでっ!!」
 スロウの攻撃が黄泉大神に炸裂する。
 バースト+シュライク+チャージングの複合技。
 ‥‥『我流剣技・葬魔刀・砕』である。
「知らぬ」
 素っ気無く答えを返し、黄泉大神が素早く刀を振り下ろす。
「ぐおっ‥‥」
 持っていた刀を落とし、スロウが黙って膝をつく。
 ‥‥実力の差があり過ぎる。
 まともに戦っても勝ち目はない。
「期待しているわよ、隊長さん」
 オーラパワーを沖田に付与し、蘭華がすぐさま後ろに下がる。
 その隙に黄泉大神が咆哮をあげ、蘭華達の動きを封じ込めた。
「‥‥なるほど。これは効きますね」
 オーラエリベイションとオーラパワーを発動させ、オリバーが黄泉人めがけてロングソードを振り下ろす。
「は、早く倒さないと‥‥。後ろから死人達が迫っているわ」
 いまにも逃げ出したい衝動に駆られ、勇花がオリバー達にむかって声をかける。
 何とか恐怖の咆哮に耐える事は出来たが、このままでは挟み撃ちされてしまう。
「‥‥マズイな」
 荒く息を吐きながら、デュランダルが目を閉じる。
 ‥‥一筋の汗が頬を伝う。
 大量の血を見てしまうと狂化してしまうため、目を閉じたまま一気に黄泉大神との間合いを詰め、全身全霊を込めた一撃『ブラストセイバー・クロス(カウンターアタック+スマッシュEX)』を黄泉大神に叩き込む。
 それと同時に放たれた一撃。
 ‥‥デュランダルは宙を舞う。
「大丈夫だっ! ‥‥まだ生きている!」
 デュランダルの生死を確認し、蒼龍が大声を上げる。
 死人達と戦っていた隊士の大半は命を落としてしまったため、早急に決着をつけねば目的を果たす事なく全滅してしまうだろう。
「‥‥動けますか?」
 デュランダルに優しく手を差し伸べ、沖田がニコリと微笑んだ。
「あ、ああ‥‥」
 朦朧とする意識の中、デュランダルが魔剣を握る。
「一気に攻めるぞ。しくじるなよ」
 ‥‥スロウが動く。
 沖田達の動きに合わせて‥‥。
 黄泉大神の咆哮が辺りに響く中‥‥。
「クッ‥‥」
 険しい表情を浮かべて刀を握り沖田が走る。
 一撃‥‥二撃‥‥三撃‥‥。
 スロウ達の攻撃が次々と命中し、黄泉大神が崩れ落ちた。
「これで‥‥終わりです‥‥」
 黄泉大神の断末魔が響く中、沖田がゆっくりと刀を納める。
「それじゃ、帰りましょうか」
 ホッとしたような表情を浮かべ、沖田がニコリと微笑んだ。
 黄泉大神が倒された事で、地上には平和が戻るだろう。
 しかし、それはすべての始まりでもあった。

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