●リプレイ本文
●襲われた村
「うぐっ‥‥、物凄いニオイですね」
黄泉人の群れに襲撃された村に辿りつき、アウル・ファングオル(ea4465)が表情を強張らせた。
村は襲撃された状態のままになっており、辺りには村人達の死体が転がっている。
「やっぱり黄泉大神が復活したのかしら? それとも別の存在が黄泉人達の新たなリーダーになったとか‥‥。どちらにしても、梓弓を忘れてきたのが痛手ね。もしも黄泉人が現れても、戦う事が出来ないわね」
八幡伊佐治(ea2614)から借りた鳴弦の弓をゆっくりと構え、アイーダ・ノースフィールド(ea6264)が村の中を歩いていく。
冒険者ギルドの情報によれば、村人達の生き残りが住んでいるという話だが、この状況を見る限りでは、とても人が住んでいるとは思えない。
「黄泉大神が復活なんて‥‥、あり得ないわ。でも、本当の黒幕が別にいたのなら‥‥、今回の事件も納得する事が出来るわね」
妙な胸騒ぎに襲われながら、朱蘭華(ea8806)がボソリと呟いた。
蘭華は黄泉大神が倒されるところを間近で見ていた事もあり、すぐに復活する事はないと思っているのだが、一緒に同行していた沖田の様子がおかしかったため、何か引っかかっているようだ。
「とにかく生き残った村人達を探してみよう。黄泉人に関して何か情報が得られるかも知れないしな」
インフラビジョンを使って辺りを睨み、白河千里(ea0012)が提灯を照らして生存者を探す。
「‥‥日が暮れてきたわね。早く生存者を探しましょう」
なかなか生存者が見つからないため、蘭華が手分けして探す事を提案する。
もちろん、少しでも異常があれば仲間達を呼ぶ事を条件にして‥‥。
「あ、あれは‥‥」
しばらくして、伊佐治が飼い犬『諭吉』が突然ワンワンと吠える。
場所は村外れにある壊れた長屋。
長屋の中には生存者らしき村人が座っており、空ろな表情を浮かべて宙を見つめている。
「どうやら生き残りのようですね。‥‥ここは危険です。俺達について来てくれますか。出来れば黄泉人について詳しい話を聞きたいので‥‥」
村人にむかって声を掛け、アウルがダラリと汗を流す。
‥‥異様な気配。
村人がぎこちなく首を横に動かした。
「気をつけろ! そいつは人間じゃないっ!」
デティクトアンデットを使って村人の正体を見破り、伊佐治が仲間にむかって警告する。
「間違いないわ。‥‥黄泉人よ」
オーラパワーを発動させ、蘭華が黄泉人を睨む。
黄泉人は武器を持っていないものの、特殊な能力があるため油断は出来ない。
「‥‥やっぱりね」
それと同時にアイーダが鳴弦の弓を構え、村人にむかって弓矢を放つ。
「グガッ‥‥ゲゴッ‥‥」
頭からドクドクと血を流し、黄泉人が正体を現す。
黄泉人は恨めしそうに身体を揺らし、空にむかって唸り声を響かせた。
「‥‥となると村に転がっていた死体は死人憑きか。まったく‥‥次から次へと面倒な事を‥‥」
死体があちこちで起き上がってきたため、千里がチィッと舌打ちする。
「だが、一体誰が‥‥。壁に『黄泉大神参上夜露死苦』と落書きでもしてあれば楽なんだが‥‥」
ホーリーライトを使って死人憑きを照らし、伊佐治が疲れた様子で溜息をつく。
罠である事を警戒していた事もあり、苦戦するような状況ではないのだが、例え全滅させたとしても、貴重な情報を得る事が出来ないためヤル気が出ない。
「馬鹿者! 思わず探してしまうではないか」
恥ずかしそうに頬を染め、千里が伊佐治を殴りつける。
「はははっ、冗談だ。そんな事よりも囲まれているぞ」
険しい表情を浮かべながら、伊佐治がコアギュレイトを発動させた。
全く身動きがとれず、ジタバタと暴れる黄泉人。
その隙にアウルがスマッシュEXを放ち、警戒した様子で後ろに下がる。
「まさか‥‥、また会う事になるとはね。全然、嬉しくはないけど‥‥」
オフシフトを使って黄泉人の攻撃をかわし、蘭華がすぐさま爆虎掌を炸裂させた。
黄泉人だけなら何とか倒す事が出来そうだが、死人憑きを全滅させるためには、少し時間が掛かりそうだ。
「とにかくコイツらを倒す必要があるようね」
そう言ってアイーダがオーラパワーを発動させ、鳴弦の弓を掻き鳴らして死人憑きの動きを封じ込める。
祈るような表情を浮かべ‥‥。
●黄泉人
「‥‥初めて来た京都で、どえらい依頼に入っちまったな、俺‥‥」
ションボリとした表情を浮かべ、レナン・ハルヴァード(ea2789)がガックリと肩を落とす。
黄泉人に関する情報を集めている途中で、自分が危険な依頼に首を突っ込んでいた事に気づき、いまさらだが後悔をしているらしい。
「それにしても黄泉人とは‥‥。京都じゃ、新撰組の一番隊が入隊試験を始めたようだし、やっぱり何かあるんだな‥‥」
冒険者ギルドに頼んで手に入れた地図を広げ、鷲尾天斗(ea2445)かせ溜息をつく。
黄泉大神が倒されてから、それほど経っていないのだが、京都で慌しい動きがあるため、何かが引っかかっている。
「しかし、黄泉大神は倒されたんだろう? それなら黄泉人が現れるはずがない。黄泉大神に匹敵するほどの強いヤツでも現れない限り‥‥」
持参した日本酒をグイッと飲み、御堂鼎(ea2454)がボソリと呟く。
残念ながら敵の正体までは分からないが、黄泉大神が倒された事で活発に動き始めた事は間違いない。
「せっかく黄泉路の果てまで行って、黄泉大神を退治したというのに‥‥」
悔しそうな表情を浮かべ、ティーゲル・スロウ(ea3108)が辺りを睨む。
スロウの目の前を美しい女性が横切った。
「う、美しい‥‥」
途端にスロウの口から溜息が漏れる。
この世の物とは思えないほどの美しさ。
ジッと見つめているだけで、魂まで蕩けてしまいそうである。
「あれは‥‥人ならざる者の気配! おぬし、何者だっ!」
デティクトアンデットを使って女の正体を見破り、王零幻(ea6154)がレジストデビルを発動させた。
「おほほほほほほほほっ‥‥、妾の正体を見破ったところで何が出来る! 貴様らは既に妾の策に嵌ったのじゃ! 愛しきヒトの命を奪った罪は重いっ!」
狂ったような笑い声を響かせ、女が飛び跳ねるようにして後ろに下がる。
それと同時に黄泉人達が正体を現し、次々と村人達を襲っていく。
「‥‥死を玩ぶ黄泉人‥‥ヴァンパイアに似たモノ‥‥彷徨える亡者達を、もう一度永久の眠りに‥‥」
黒い感情が湧き上がり、カレン・ロスト(ea4358)が女を睨む。
謎の女は不敵な笑みを浮かべながら、黄泉人達を嗾け暗闇の中へと姿を消した。
「さて‥‥久しぶりに戦おうか、腕はなまっちゃいないからね!」
オーラパワー、オーラエリベイション、オーラシールドの順番で発動させ、リーゼ・ヴォルケイトス(ea2175)が刀を抜く。
黄泉人は村人達をすぐには殺さず、恐怖と苦しみを味あわせながら、ジワリジワリと痛めつけている。
「‥‥愛しいヒトか。一体、誰の事を言っているんだ? 黄泉人に知り合いはいないが‥‥」
女の言っている意味が分からず、レナンが首を傾げて呟いた。
どう考えても逆恨みにしか思えないため、女が怒っている理由が分からない。
「ひょっとして黄泉大神の事を言っているのか!? それならば色々と納得する事が出来る。黄泉大神を倒したのは俺達だからな」
女が狂気に走った理由を悟り、スロウが黄泉人を攻撃する。
「それじゃ、あの女は黄泉大神を倒した冒険者を誘き寄せるため、わざと自分達に不利な情報を流したというわけか」
黄泉人にトドメをさし、天斗がダラリと汗を流す。
‥‥嫌な予感が脳裏を過ぎる。
「いや、それだけが理由ではない。仮にそうだとしても、納得のいかない事がいくつもある‥‥。しかし、逆の考え方をすれば、黄泉大神のために何かをしようとしていたのかも知れない。その途中で黄泉大神が倒され、私達に復讐を誓ったんじゃないのか?」
黄泉人達にスマッシュを放ち、鼎が汗を拭って辺りを睨む。
村人達のうち何人かは黄泉人に捕まっているため、すぐにでも助けに行く必要がありそうだ。
「‥‥元々、黄泉大神は神皇家にたてついた豪族だったのでは‥‥、という噂もある。ならば黄泉大神に近しい者が居ても、別に不思議な事ではないからな」
コアギュレイトを使って黄泉人の動きを封じ、零幻がホーリーを使ってトドメをさす。
あまりにも情報が少な過ぎるため、もう少し情報を集めておかねば、ハッキリとした事は言えない。
しかし、黄泉大神と女が一本の線で繋がっている可能性は高そうだ。
「もしかすると、黄泉大神が彼女の受けた苦しみと悲しみを癒す存在だったのかも知れませんね」
傷ついた村人をリカバーで癒し、カレンがボソリと呟いた。
「どちらにしたも、今さら許してもらえないんじゃないのかな。黄泉大神が蘇ったら話は別だけど‥‥」
シュライクを使って敵を倒し、リーゼが大きな溜息をつく。
「気持ちは分からなくもないが‥‥、敵対している以上、殺り合わなくてはならないとは皮肉なものだな。リゼ、バックは守る。‥‥遠慮なく戦ってくれ」
リーゼの背後に移動し、スウロが黄泉人を睨む。
黄泉人は錆びついた刀を握り締め、頭をユラユラと揺らして攻撃を仕掛けてくる。
「だったらやるしかないだろう。どちらか片方が倒れるまで‥‥」
そう言ってレナンが日本刀を振り下ろす。
頭蓋骨が割れてパックリと口を開け、黄泉人がその場に崩れ落ちる。
「俺の名は人外を狩る双刀の猛禽鷲尾天斗! この名を地獄の手形代わりに逝ってきな! 鷲尾流二天『弧月蝶』」
黄泉人の攻撃を十手で受け止め、天斗がカウンターを放ってトドメをさす。
村の中に黄泉人が紛れ込んでいたため、村人達がパニックに陥っているが、鼎達が安全な場所まで誘導をしているため、それほど被害は出ていない。
「‥‥黄泉人は強い。みんな‥‥、気を抜くな!」
零幻の言葉に頷く仲間‥‥。
‥‥戦いは終わらない。
黄泉人達が倒れるまで‥‥。