●リプレイ本文
●紳士の股間は振り向かない
「はぁ〜い♪ 若葉屋を生き抜いた、わたくしが来ましたよぉ?」
元気よく手を振りながら、蒼月惠(ea4233)がえろがっぱーずと合流した。
今回えろがっぱーずがターゲットとして選んだ温泉は歴代の戦士が散っていった場所でもあるのだが、彼らが覗くポイントは今までノーマークだった男湯である。
「ばっ、馬鹿っ! そんなに大声を出したら、奴等に気づかれてしまうだろ!」
慌てた様子で惠の口を塞ぎながら、フレディが警戒した様子で辺りを睨む。
ここで漢達に気づかれてしまえば、えろがっぱーず初の試みは失敗に終わる。
「はぁ〜い、そこまで! ‥‥久しぶりじゃないか。あんた達が初めて現れた時に、このとき和さんの肌を拝んだのを忘れたとは言わせないよ?」
含みのある笑みを浮かべながら、山浦とき和(ea3809)がフレディを睨む。
「‥‥知らん。それは多分、別の部隊だろう。我々えろがっぱーずは横の繋がりがほとんどない。ある意味、ライバル関係にあるからな」
気まずい様子で視線を逸らし、フレディがコホンと咳をする。
さすがにここで『お前は今まで食べた米の数を覚えているか?』というような聞き方をすれば、間違いなくドツキ倒され酷い目に遭うため本音は言えない。
「まぁ、私だって河童の顔を見分ける事は出来ないから、嘘をついていても分からないんだけどね。‥‥それにしてもコソコソと何してんのさ♪ 河童さんとは縁があってたくさんの方と会ってるけど、それにしてもなんか貫禄ないわねえ、あんた達。私のダーリンは本当の河童じゃないけど、より河童らしいのさ。胸を張って、甲羅を誇らしげに見せて歩きなよ」
フレディ達の背中を叩いてピンとさせ、とき和が呆れた様子で溜息をつく。
「だから静かにしろっ! 俺達はとあるミッションを成功させるために、ここに来た‥‥」
やけにクールな表情を浮かべながら、フレディが無駄に覗きを熱く語る。
「つーか、覗きだろ。あんま格好つけるなよ」
フレディの頭をペシペシと叩き、玄武が面白がってケラケラと笑う。
玄武は河童忍軍の一派を束ねる首領であり、とき和の良き(?)夫である。
「えっ‥‥、玄ちゃん? どうして、ここにっ!?」
驚いた様子で玄武を見つめ、とき和がダラリと汗を流す。
しばらくの間、玄武が任務で家を留守にしていたため、突然の再会に驚いているようだ。
「そりゃ、お前が心配だったからさ。これ以上、お前に寂しい思いはさせたくないし‥‥」
とき和の肩を抱き寄せながら、玄武が恥ずかしがってテヘッと笑う。
「そんな事を言って本当は女湯でも覗きに来たんじゃないだろうねぇ」
玄武の言葉に胡散臭いものを感じたため、とき和がジト目でジロリと睨む。
「ばっ、馬鹿っ! 違うって!」
慌てた様子で首を振り、玄武が自分の無実を訴える。
本当に、とき和が心配で温泉に来たのだが、焦っているため言葉が出ない。
「それじゃ、男湯を覗きに来たんですねぇ。ふ、不潔ですっ!」
危険な妄想を大爆発させながら、惠が警戒した様子で後ろに下がる。
「ち、違うって! お、俺は本当にコイツが心配で‥‥」
だんだん間違った方向性に突っ走っていったため、玄武が必死になって自分の目的を語っていく。
「やっぱり覗くんですね。‥‥男湯を」
満面の笑みを浮かべながら、惠がキッパリと言い放つ。
「‥‥うぐっ。結果的にはそうなるな」
自分が罠に嵌められた事を悟り、玄武が気まずい様子で口篭る。
とき和を守るためにはえろがっぱーずに同行しなくてはならないため、結果的には玄武も男湯を覗く事になるだろう。
●私の股間は凶悪です
「じゃーーん、今日からおニューの褌『梅色褌』。清十郎もこういう可憐なもの(やぎ)を書けば良いのになあ。あんなに腕が良いんだから‥‥」
とき和から頼まれていた張り紙を貼り終え、一條北嵩(eb1415)が腰に両手を当てて自分の股間(本当は褌)に語りかける。
「‥‥たくっ、随分と呑気だな。それにしても、河童達は何を考えているんだか。男の裸なんか見ても楽しくないと思うんだが‥‥」
愛犬ちびすけの身体をゴシゴシと洗い、湯田鎖雷(ea0109)が呆れた様子で溜息をつく。
ちなみに彼の愛馬めひひひひんはメスのため、今回は外で待機する事になったらしい。
「いやー、こうやって若者と一緒に風呂に入るのも悪くはないぞ。せっかくの親子水入らずなんだし、もっと楽しまないと‥‥」
愛息子である鎖雷の行動を観察しながら、湯田直躬(eb1807)が冗談まじりに微笑んだ。
「そんなガキじゃねえんだから、いまさら親子水入らずもねえだろ。何だか妙な張り紙も貼ってあるようだし、もう少し警戒しておくべきじゃないのか?」
仲間達に全く危機感がなかったため、鎖雷がブツブツと愚痴をこぼす。
「‥‥早く大人になるといいですね」
鎖雷さんの身体をちらっと一瞥した後、ネフェリム・ヒム(ea2815)がクスリと笑う。
「つーか、俺は大人だっ! 一体、俺の何処が子供に見えるんだよ? こらっ! そこで笑うなっ!」
恥ずかしそうに頬を染め、鎖雷がジロリとネフェリムを睨む。
「まあまあ、ついてるもんは、皆一緒なんだし気にすんな」
堂々と全裸で風呂に入り、伊達正和(ea0489)が鎖雷の肩をぽふりと叩く。
「だから、そういう意味じゃねぇ!」
大粒の涙を浮かべながら、鎖雷が正和に魂の篭った一撃を炸裂させた。
「ぐはっ‥‥、効いたぜ! お前はもう‥‥ボウヤじゃない」
独自のワールドを展開し、正和がげふっと血反吐を吐いて倒れ込む。
「これで鎖雷殿も大人の仲間入りでござる♪ あっ‥‥、冗談でござるよ、もちろん」
鎖雷が殺意の波動を纏っていたため、旋風寺豚足丸(eb2655)が青ざめた表情を浮かべて首を振る。
「おいおい、その辺にしておけよ。これ以上、仲間が減ったら、えろがっぱーずの思う壺だぞ。たくっ、それにしても何で男湯なんて覗くのかねぇ‥‥。女湯を覗くのなら喜んで強力するのに‥‥」
鎖雷の肩をぽふりと叩き、雨森刹那(eb4842)が残念そうに溜息をつく。
わざわざ同性の裸を覗くほど、刹那も酔狂ではないようだ。
「夢は夢のままの方がいいと思うんだが‥‥」
トカゲのフーゴを抱き上げ、アルバート・オズボーン(eb2284)が風呂に入っていく。
トカゲのフーゴはアルバートの股間からにょっきりと顔を出し、不思議そうに首を傾げるのであった。
●俺の息子は百万馬力
「ぬおおおおおおおお‥‥。に、人間の男の股間には、ト、ト、トカゲがぁ! まさに前門のトカゲ、後門の菊というわけか!」
あまりの出来事に驚きながら、フレディがダラダラと汗を流す。
あらためて男体の神秘を知ったため、身を乗り出してアルバートの股間を観察する。
「‥‥って、何を言っているんだか。おおおおおっ、股間にトカゲがあああっ!」
フレディの頭をぽふぽふと叩き、玄武が驚いた様子で目を丸くした。
ちなみに玄武は河童ではなく人間なので、アルバートと同じモノ(?)があるのだが、予想外のものがアルバートの股間にあったため、驚きのあまり言葉が出ない。
「ふたりの場合は‥‥ミミズ?」
ふたりの股間をこっそり見つめ、惠が恥ずかしそうに呟いた。
「ち、違うっ!」
青を真っ赤にしながら惠を睨み、玄武が慌てた様子でツッコミを入れる。
いくらなんでもそこまで小さくはないようだ。
●尻子玉は微笑まない
「こっちで待機しておいて正解ですね。男風呂なんて覗いても、何も得はないと思うんですが‥‥」
妙にコソコソとした怪しげな集団を発見し、ミカエル・テルセーロ(ea1674)が茂みに身を隠す。
定員オーバーで温泉に入る事が出来なかったため、ミカエル達は庭で待機していたのだが、えろがっぱーずが現れてくれたおかげで、彼らの行動も無駄にはならなかった。
「きっとフレディさんは、西洋風に言うところの、いわゆるチェリーボーイなのでしょう。‥‥ふふふ、可愛いですね‥‥」
妖しげな笑みを浮かべながら、香椎梓(eb3243)が熱い眼差しをフレディ達に送っている。
フレディ達を捕まえたら色々と指導をするつもりでいるため、少し興奮しているらしい。
「疲れを癒す目的の温泉が覗かれてしまっては、落ち着いて浸かっている事も出来ませんし、やっぱりここは御仕置きしかありませんね」
えろがっぱーずが動き出した事を確認し、みかえるが慎重に後を追っていく。
彼らにこれ以上、罪を重ねさせないためにも、ここで退治しておく必要がありそうだ。
●菊と薔薇
「何だか妙な視線を感じるな」
股間からヒョッコリと顔を出したフーゴを見つめ、アルバートが不思議そうに首を傾げる。
先程から何者かの視線を感じるため、気になって仕方がないらしい。
「ひょっとすると、何処かにえろがっぱーずがいるのかも知れないのでござるな」
警戒した様子で辺りを睨み、豚足丸が股間を隠す。
「それじゃ、僕達の身体を見て、いやらしい事でも考えているのかな? そこにいる正和みたいにさ」
正和の股間をマジマジと見つめ、刹那が冗談まじりに微笑んだ。
刹那は顔と髪型だけなら女性に見えるため、正和が勘違いをしてムラムラしているのだと思ったらしい。
「ば、馬鹿っ! 誤解すんじゃねえっ! 俺は男色の気は一切ねえぞっ!」
慌てた様子で股間を隠し、正和が顔を真っ赤にする。
温泉に入っている途中でアトランティスに旅立った恋人の裸体が脳裏を過ぎり、男の証が怒れる竜の如き勢いでそそり立ってしまったらしい。
「まぁ、それならいいんですが‥‥」
不敵な笑みを浮かべて立ちあがり、ネフェリムが正和を見下ろした。
「分かったから、その物騒なモノをこっちにむけるな。俺にそっちの趣味はねぇ」
ちょうど目の前にソレがあったため、正和が気まずい様子で視線を逸らす。
「みんな緊張し過ぎじゃないか? もう少しリラックスしたら、どうなんだ? ‥‥こうやってさ」
北嵩の誕生日祝いも兼ねて、鎖雷が彼の背中をゴシゴシと洗う。
「‥‥って、何か距離近いよ‥‥さ、鎖雷? やっぱ、お返しもしないといけないな、うん。ほら、後ろむいて向いて♪ あっ‥‥、後頭部が不自然だ」
鎖雷の後頭部を気にしながら、北嵩がダラリと汗を流す。
「‥‥ん? なんだ?」
キョトンとした表情を浮かべ、鎖雷が不思議そうに首を傾げる。
「ねえ、鎖雷さん――じゃなかった鎖雷、イナバウアーって何だろう?」
鎖雷の後頭部から視線を逸らし、北嵩が慌てて話題を変えた。
「そうだな。口で説明するのも面倒だから、俺が実際にやってみよう。こうやって身体を後ろに逸らして‥‥あっ!」
茂みの中に隠れていた河童と目が合い、鎖雷がハッとした表情を浮かべて動きを止める。
「河童だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
‥‥そして人間(冒険者一行)対河童(えろがっぱーず)の戦いが始まった。
●大きい事はいい事だ
「だ、だから俺は嫌だったんだっ!」
いまにも泣きそうな表情を浮かべながら、フレディがスタコラと逃げていく。
とき和に進められてやっていたイナバウアーがアダとなり、鎖雷達に発見されてしまったらしい。
「そ、そんな事を言ったって仕方がないじゃない。まさかあっちも同じ事をするなんて思わなかったんだから‥‥」
予想外の出来事に驚きながら、とき和がブツブツと愚痴をこぼす。
「とにかくここは逃げるしかねぇようだな。しっかり掴まってろよっ!」
すぐさまとき和を抱き上げ助走をつけ、玄武がフレディを踏み台にして塀を飛び越える。
「お、俺を踏み台にするなっ!」
頭を踏まれた拍子に前のめりに倒れ込み、フレディが納得のいかない様子で文句を言う。
「もう少し頭を上げてくださぁ〜い。よいしょっと♪」
フレディが立ち上がろうとした瞬間を狙い、惠が勢いをつけてジャンプした。
「ぐわああああああああ、皿っ、皿がああああああああああ!」
皿にヒビでも入ったのか、フレディが頭を押さえて悲鳴を上げる。
「はいはい、お疲れ様です」
もぐら叩きの要領でフレディの頭をハリセンで叩き、ネフィリムがニコリと微笑んだ。
既に他の河童達はアルバートによってた捕縛され、股間や尻にピンポイントアタックを喰らっている。
「何というか‥‥凄い光景だ」
惨めな格好のまま吊るされている河童を見つめ、ミカエルが同情した様子で汗を流す。
河童達はまるでテルテルボウズのようになりながら、庭先に吊るされぶらんぶらんと揺れている。
「まぁ、これだけ素敵な殿方がいれば、ムラッとしてしまう気持ちも分かりますが‥‥」
女性のフリをしてフレディを介抱し、梓が優しく頭を撫でた。
「うぐっ‥‥。だが、とうとう男体の神秘は拝めなかった‥‥」
薄れ行く意識の中で、フレディが溜息をつく。
「そこまで言うんだったら、可愛そうだから見せてあげようかな」
腰に巻いていた手拭いを脱ぎ捨て、刹那が自らの肉体を披露する。
「!!!!!」
あまりの出来事に驚くフレディ。
しかし、そこには薔薇の花や、菊の花など存在しておらず、代わりに現実という名のケモノが存在しているだけだった。
「あまりの出来事に言葉を失っているようね。‥‥いいわ。今度はたっぷりと、女体の神秘を見せてあげる‥‥」
そう言って梓も手拭いを脱ぎ捨て、フレディに自らの身体を披露した。
「これは天の助け! 心のオアシス、感謝する‥‥って、ぎゃああああああああああああああっ!!」
逃げるようにして梓の腰に抱きつき、フレディが青ざめた表情を浮かべて悲鳴を上げる。
なんと梓の股間にも同じものがついており、勢い余って頬擦りしてしまったようだ。
「覗きなんて言語道断な事をするから、こんな目にあうんですよ。少しは反省してくださいね」
グッタリとしたフレディを見つめ、ミカエルが呆れた様子で溜息をつく。
フレディの中で男に対する幻想が音を立てて崩れたのか、虚ろな瞳でなにやらブツブツと呟いている。
「ムムッ‥‥、これはちと、やり過ぎたようですな。こういう時は癒しの舞を踊るしか‥‥」
妙な使命感に燃えて腰蓑を身につけ、直躬が瞳をキラリと輝かせた。
「以前から雨乞舞‥‥、いや、癒しの舞いを披露する事が出来る機会を狙っていた甲斐があったというものだ‥‥。さぁ、遠慮なく癒しの舞いを瞳に焼き付けておくといいっ!」
他の河童同様にフレディを庭先に吊るし、直躬が腰を揺らして雨乞舞を踊りだす。
彼らの心が完全にトラウマで埋め尽くされてしまうまで‥‥。