穢れなき乙女

■ショートシナリオ


担当:ゆうきつかさ

対応レベル:1〜4lv

難易度:やや難

成功報酬:1 G 44 C

参加人数:12人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月10日〜07月17日

リプレイ公開日:2004年07月16日

●オープニング

 江戸から少し離れた場所に小さな村がある。
 この村では毎年のように村の安泰を願い、穢れのない乙女が神像の前で舞を踊る事になっているらしい。
 今年の舞は村で一番美しい女性である静香が踊る事になっているのだが、湖に毒蛙が住み着き始めてしまったため、他の湖で身を清める事にしたようだ。
 湖から村までそれほど距離はないものの、途中には小鬼達が根城としている洞窟があるため、冒険者達に護衛をお願いしたいという事だ。
 小鬼達の住んでいる洞窟は森の途中にあるのだが、20匹近くの小鬼達が群れで生活しているため、なるべくなら刺激を与えない方がいいだろう。
 小鬼達を全滅させる事が出来れば何か宝が手に入るかも知れないが、あまりに数が多いため返り討ちに遭う可能性が高いからだ。
 戦っている途中で静香が傷つけられてしまったら報酬がなくなるだけでなく、冒険者としての信用もなくすため、誰かが囮となって小鬼達をひきつけ、その間に湖にむかった方が無難である。
 また静香を護衛する時に関してだが、彼女が穢れる事を防ぐため、なるべく男性陣から遠ざけて欲しい。

●今回の参加者

 ea0233 榊原 信也(30歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea0437 風間 悠姫(32歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea0489 伊達 正和(35歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea1347 李 鈴華(19歳・♀・武道家・シフール・華仙教大国)
 ea3094 夜十字 信人(29歳・♂・神聖騎士・人間・ジャパン)
 ea3200 アキラ・ミカガミ(34歳・♂・ナイト・人間・フランク王国)
 ea3220 九十九 嵐童(33歳・♂・忍者・パラ・ジャパン)
 ea3264 コルセスカ・ジェニアスレイ(21歳・♀・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea3744 七瀬 水穂(30歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea3865 虎杖 薔薇雄(35歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea3889 霜月 流(29歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea4223 竜堂 姫子(40歳・♀・僧兵・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

「さぁて‥‥、今回の仕事は用心棒か‥‥。男達は静香に近づけないので護衛には限界がある‥‥。先に出発してもらい小鬼退治に励んでもらうか‥‥」
 静香から男達から遠ざけるため、風間悠姫(ea0437) が小鬼達の退治を頼む。
 男達は少し残念そうにしていたが、依頼を失敗させるわけには行かないため、ここは我慢をするしかないようだ。
「ふむ、今回は麗しき女性を穢れる事なく送り届ける事が仕事なのだね。ふっ、この虎杖薔薇雄その任務美しく遂行してみせよう」
 真っ赤な薔薇に包まれながら、虎杖薔薇雄(ea3865)が真っ白な歯を輝かせる。
「女性を守るのは騎士の役目。全力でお守りします」
 瞳をキラリと輝かせ、アキラ・ミカガミ(ea3200)が爽やかな笑う。
 ふたりともあまりにインパクトが大きいため、静香がショックで気絶しそうになっている。
「ダメですよー。それ以上は穢れた野郎は侵入禁止なのですー」
 ジト目でアキラを睨みつけ、七瀬水穂(ea3744)が頬を膨らます。
 静香は恐怖のあまり腰を抜かしてしまったが、アキラ達には全く悪気がないため少し困っているようだ。
「それじゃ、私達は、先に行かせてもらうよ」
 大きな溜息をつきながら、竜堂姫子(ea4223)がアキラの耳を引っ張った。
 他の相手なら気にかける事はないが、相手が相手なので一応ツッコミを入れておく。
「イタタッ‥‥。もう少し優しくしてくださいね。ポロリと落ちたら笑えませんし‥‥」
 真っ赤に腫れた耳を撫で、アキラがニコリと微笑んだ。
「さてさて、小鬼退治と洒落込みましょうかね」
 そして夜十字信人(ea3094)は愛馬『小次郎』の背中に荷物を積み、姫子達の後をついていくのであった。

「はぁ〜‥‥、暑い。もうすっかり夏なんだなぁ〜‥‥」
 大粒の汗を拭いながら、アキラがパタパタと手で仰ぐ。
 太陽がサンサンと降り注いでいるためか、汗を拭いても吹いても流れてくる。
「んん‥‥平和だねぇ‥‥良い事だ‥‥」
 小鳥達のさえずりを耳にしながら、姫子が大きな深呼吸をした。
 少し森に入ったため、さっきよりはマシらしい。
「あたし、李鈴華いうねん♪ よろしゅうにな♪ ジャパン語、昔華国に来たジャパン人から習ってん」
 女性陣と男性陣をつなぐ伝令役として仲間に加わり、李鈴華(ea1347)が人懐っこい笑みを浮かべて頭を下げた。
「こちらこそ宜しく頼む。色々と分からない事も多いと思うが、何かあったら遠慮せずに聞いてくれ」
 漢笑いを浮かべながら、伊達正和(ea0489)がビシッと親指を立てる。
「さて、まず問題は途中の森に巣食う美しくない子鬼達だね。彼らに静香君が襲われてしまっては意味がない。なるべく我々だけで退治してしまわないとね」
 爽やかな笑みを浮かべ、薔薇雄が薔薇の匂いをそっと嗅ぐ。
「‥‥見ろ。ここに獣の死骸があるぞ」
 小鬼が喰い散らかしたと思われる獣の死骸を見つけ、榊原信也(ea0233)が険しい表情を浮かべて辺りを睨む。
 獣の死骸を調べる限り、それほど時間が経っていないため、小鬼達がこの辺りを縄張りにしている可能性も高い。
「この辺りに潜んでいるとなると‥‥あの洞窟が怪しいな」
 近くに大きな洞窟を見つけ、九十九嵐童(ea3220)がゆっくりと小柄を構える。
「ブーン、危険物発見やねん♪ みんなー、敵やねん、気張りやー」
 嵐童のまわりを飛び回り、鈴華が小鬼達を発見した。
 洞窟の入口には2匹の小鬼が見張りについており、何処からか捕まえてきた鶏を齧っているようだ。
「‥‥美しくないな。どうせ齧るなら、もっとマシなモノを齧れ!」
 小鬼達をビシィッと指差し、薔薇雄が草むらに隠れて熱く語る。
「この様子なら不意打ちも出来そうですね。‥‥どうしますか?」
 警戒した様子で洞窟を見つめ、霜月流(ea3889)が小鬼を睨む。
 小鬼達は眠そうにあくびをすると、棍棒をブンブンと振り回し、なにやらオーガ語で雑談を続けている。
「正直な事を言えば、もう少し木陰で休みたいね。静香さんがここにいないのは残念だけど‥‥」
 軽く冗談を言いながら、アキラがニコリと微笑んだ。
 少し水浴びしたい気分だが、その前に小鬼を倒さなくてはならない。
「あたしは報告に行くで〜」
 女性陣に小鬼の居場所を伝えるため、鈴華が全速力を出して飛んでいく。
「さーてとっ、露払いと行きますか小さくても鬼退治だ」
 自分自身に気合を入れ、正和がニヤリと笑う。
「参ります!! 危なくなったら助けてくださいね!!」
 草むらの中に自分の馬を隠し、信人が刀を構えて攻撃を仕掛ける。
「敵はたったの2匹だ。討ち漏らすなよ!」
 信人と一緒に小鬼達を切りかかり、嵐童が火遁の術で攻撃した。
 小鬼は大きく悲鳴をあげ、真っ赤な炎を纏いながら、洞窟の中で息絶える。
「‥‥出てきたな、小鬼め‥‥。こちとらとっとと帰りたいんだから、とっとと倒れてくれよ?」
 逆手に持った忍者刀で洞窟の奥から現れた小鬼を斬りつけ、信也がすぐさま後ろに飛ぶと洞窟めがけて火遁の術を叩き込む。
 小鬼達は勢いよく外に出たため、信也の攻撃をモロに喰らって悲鳴を上げる。
「洞穴は蛇は出ぬもの鬼が出る」
 炎を纏った小鬼を見つめ、正和が素早くソニックブームを叩き込む。
 マサカズの攻撃を喰らって勢いよく吹っ飛ぶ小鬼。
「竜堂家の捧術、見せてあげるよ!」
 六尺棒を素早く構え、姫子がむかってきた小鬼を次々と殴る。
「ふっ、美しく斬ってあげよう」
 敵の攻撃を軽やかにかわし、薔薇雄が日本刀を振り下ろす。
「なるべく街道には近づけさせないようにしてください!」
 小鬼達を挑発しながら、流が短刀で斬りつける。
「任せてくださいっ!」
 小鬼の攻撃を刀で受け止め、信人が短刀を突き刺し、小鬼を一匹始末した。
「静香さん達のいる場所には決して近づけませんよ」
 チャージングを使って小鬼を貫き、アキラが短槍を引き抜き辺りを睨む。
 そのため小鬼達はアキラの事を警戒し、ジリジリと後ろに下がっていく。
「みんな! 踏ん張るよ!」
 コアギュレイトを使って小鬼の動きを封じ込め、姫子が勢いよく六尺棒を振り回す。
 既にほとんどの小鬼が戦意を失い、今にも逃げ出しそうな雰囲気だ。
「ここで逃がすわけにはいかないからな」
 疾走の術を使って小鬼達を追いかけ、信也が火遁の術で小鬼達を焼き払う。
 小鬼達のかなり数は減ってきたが、それでも討ち漏らせば静香達にも危険が及ぶ。
「陸奥流は素手もいけるのだ」
 小鬼の振り下ろした棍棒で日本刀が弾き飛ばされたため、正和が相手の懐へと潜り込みスタンアタックを炸裂させる。
「あと少しだ! 気を抜くなよ」
 スタンアタックで小鬼を殴り、嵐童がナイフで素早くトドメをさす。
「‥‥美しく散らせてやろう」
 嵐童と背中合わせになりながら、薔薇雄が目にも留まらぬ速さで刀を振るう。
「‥‥これで、終わりだ!」
 最後の小鬼を始末し、信也が手裏剣を回収する。
「ここは、一筆‥‥コレで良し!」
 空中に指で【一見落着】と書き、姫子がニコリと微笑んだ。
 本当なら本物の紙を使いたかったのだが、とても高価であるため今回は断念したらしい。
「ふっ、どんな事になっても私は美しい」
 そして薔薇雄は髪を掻き上げ、爽やかな笑みを浮かべるのであった。
 その後、小鬼達の住んでいた洞窟を調べてみたが、大したものは置かれていなかったらしい。

「行き道は男達のおかげですんなり行けるかも知れんが、撃ち漏らしが襲ってくる事もありえる‥‥。十分警戒しておこう‥‥」
 静香を馬に乗せて街道を進み、悠姫が大きな溜息をつく。
 街道にはたまに男が通り過ぎるため、心臓に悪くて仕方がない。
「ところで馬がオスだった場合は、やっぱりマズイのか?」
 重要な事に気づいたため、悠姫が大粒の汗を浮かべて静香を睨む。
「多分‥‥、大丈夫だと思います。私達の村には『男は狼、猿並に危険』という言葉があるので、危険なのは人間と犬と猿です、きっと♪」
 穢れのない笑みを浮かべ、静香がほんわかと答えを返す。
 村の言い伝えを曲解しているためか、それ以外のオスはそれほど警戒していないようだ。
「そんなものなんですかねー?」
 いまいち静香の言葉が理解できず、コルセスカ・ジェニアスレイ(ea3264)がハテナマークを点滅させる。
 一体、村で何があったのだろう‥‥。
 疑問だけがコルセスカの中でみるみるうちに膨らんでくる。
「とりあえず近づく男は手当たり次第に倒しましょう〜♪ 静香さんにとって男はすべて穢れです〜♪」
 十手をプンスカと振り回し、水穂が上機嫌な様子で街道を歩く。
 手当たり次第に男達を攻撃しているためか、水穂達の周りには妙なテリトリーが出来ている。
「ぶーん、見つけたで〜。こっちは危険や、小鬼がおるで〜。あたしが近道を案内しちゃる♪」
 静香のまわりを飛び回り、鈴華が森を指差した。
「‥‥本当に大丈夫なんですか?」
 心配そうに鈴華を見つめ、コルセスカが首を傾げる。
 目の前の森は薄暗く、何か出そうな雰囲気だ。
「ちょっとはあたしを信じや〜。バッチリ調査はしてあるで〜」
 自分の胸をポンと叩き、鈴華が森の奥へと入っていく。
「鈴華さんを信じましょー♪ もしもの場合は私たちだけで撃退します!」
 十手を力強く握り締め、水穂が鈴華の後を追いかけた。
「‥‥何だか心配になってきたな。まぁ、何とかなるか」
 だんだん考えるのが面倒になったため、悠姫が静香を連れて森に入る。
「きっと‥‥大丈夫‥‥ですよね‥‥」
 そしてコルセスカは十字架に祈りを捧げ、悠姫達と一緒に清めの湖へとむかうのだった。
 その後、彼女達は村で静香の舞を堪能し、ほんわかとしながら村を後にしたらしい。