●リプレイ本文
「さぁて‥‥、今回の仕事は用心棒か‥‥。男達は静香に近づけないので護衛には限界がある‥‥。先に出発してもらい小鬼退治に励んでもらうか‥‥」
静香から男達から遠ざけるため、風間悠姫(ea0437) が小鬼達の退治を頼む。
男達は少し残念そうにしていたが、依頼を失敗させるわけには行かないため、ここは我慢をするしかないようだ。
「ふむ、今回は麗しき女性を穢れる事なく送り届ける事が仕事なのだね。ふっ、この虎杖薔薇雄その任務美しく遂行してみせよう」
真っ赤な薔薇に包まれながら、虎杖薔薇雄(ea3865)が真っ白な歯を輝かせる。
「女性を守るのは騎士の役目。全力でお守りします」
瞳をキラリと輝かせ、アキラ・ミカガミ(ea3200)が爽やかな笑う。
ふたりともあまりにインパクトが大きいため、静香がショックで気絶しそうになっている。
「ダメですよー。それ以上は穢れた野郎は侵入禁止なのですー」
ジト目でアキラを睨みつけ、七瀬水穂(ea3744)が頬を膨らます。
静香は恐怖のあまり腰を抜かしてしまったが、アキラ達には全く悪気がないため少し困っているようだ。
「それじゃ、私達は、先に行かせてもらうよ」
大きな溜息をつきながら、竜堂姫子(ea4223)がアキラの耳を引っ張った。
他の相手なら気にかける事はないが、相手が相手なので一応ツッコミを入れておく。
「イタタッ‥‥。もう少し優しくしてくださいね。ポロリと落ちたら笑えませんし‥‥」
真っ赤に腫れた耳を撫で、アキラがニコリと微笑んだ。
「さてさて、小鬼退治と洒落込みましょうかね」
そして夜十字信人(ea3094)は愛馬『小次郎』の背中に荷物を積み、姫子達の後をついていくのであった。
「はぁ〜‥‥、暑い。もうすっかり夏なんだなぁ〜‥‥」
大粒の汗を拭いながら、アキラがパタパタと手で仰ぐ。
太陽がサンサンと降り注いでいるためか、汗を拭いても吹いても流れてくる。
「んん‥‥平和だねぇ‥‥良い事だ‥‥」
小鳥達のさえずりを耳にしながら、姫子が大きな深呼吸をした。
少し森に入ったため、さっきよりはマシらしい。
「あたし、李鈴華いうねん♪ よろしゅうにな♪ ジャパン語、昔華国に来たジャパン人から習ってん」
女性陣と男性陣をつなぐ伝令役として仲間に加わり、李鈴華(ea1347)が人懐っこい笑みを浮かべて頭を下げた。
「こちらこそ宜しく頼む。色々と分からない事も多いと思うが、何かあったら遠慮せずに聞いてくれ」
漢笑いを浮かべながら、伊達正和(ea0489)がビシッと親指を立てる。
「さて、まず問題は途中の森に巣食う美しくない子鬼達だね。彼らに静香君が襲われてしまっては意味がない。なるべく我々だけで退治してしまわないとね」
爽やかな笑みを浮かべ、薔薇雄が薔薇の匂いをそっと嗅ぐ。
「‥‥見ろ。ここに獣の死骸があるぞ」
小鬼が喰い散らかしたと思われる獣の死骸を見つけ、榊原信也(ea0233)が険しい表情を浮かべて辺りを睨む。
獣の死骸を調べる限り、それほど時間が経っていないため、小鬼達がこの辺りを縄張りにしている可能性も高い。
「この辺りに潜んでいるとなると‥‥あの洞窟が怪しいな」
近くに大きな洞窟を見つけ、九十九嵐童(ea3220)がゆっくりと小柄を構える。
「ブーン、危険物発見やねん♪ みんなー、敵やねん、気張りやー」
嵐童のまわりを飛び回り、鈴華が小鬼達を発見した。
洞窟の入口には2匹の小鬼が見張りについており、何処からか捕まえてきた鶏を齧っているようだ。
「‥‥美しくないな。どうせ齧るなら、もっとマシなモノを齧れ!」
小鬼達をビシィッと指差し、薔薇雄が草むらに隠れて熱く語る。
「この様子なら不意打ちも出来そうですね。‥‥どうしますか?」
警戒した様子で洞窟を見つめ、霜月流(ea3889)が小鬼を睨む。
小鬼達は眠そうにあくびをすると、棍棒をブンブンと振り回し、なにやらオーガ語で雑談を続けている。
「正直な事を言えば、もう少し木陰で休みたいね。静香さんがここにいないのは残念だけど‥‥」
軽く冗談を言いながら、アキラがニコリと微笑んだ。
少し水浴びしたい気分だが、その前に小鬼を倒さなくてはならない。
「あたしは報告に行くで〜」
女性陣に小鬼の居場所を伝えるため、鈴華が全速力を出して飛んでいく。
「さーてとっ、露払いと行きますか小さくても鬼退治だ」
自分自身に気合を入れ、正和がニヤリと笑う。
「参ります!! 危なくなったら助けてくださいね!!」
草むらの中に自分の馬を隠し、信人が刀を構えて攻撃を仕掛ける。
「敵はたったの2匹だ。討ち漏らすなよ!」
信人と一緒に小鬼達を切りかかり、嵐童が火遁の術で攻撃した。
小鬼は大きく悲鳴をあげ、真っ赤な炎を纏いながら、洞窟の中で息絶える。
「‥‥出てきたな、小鬼め‥‥。こちとらとっとと帰りたいんだから、とっとと倒れてくれよ?」
逆手に持った忍者刀で洞窟の奥から現れた小鬼を斬りつけ、信也がすぐさま後ろに飛ぶと洞窟めがけて火遁の術を叩き込む。
小鬼達は勢いよく外に出たため、信也の攻撃をモロに喰らって悲鳴を上げる。
「洞穴は蛇は出ぬもの鬼が出る」
炎を纏った小鬼を見つめ、正和が素早くソニックブームを叩き込む。
マサカズの攻撃を喰らって勢いよく吹っ飛ぶ小鬼。
「竜堂家の捧術、見せてあげるよ!」
六尺棒を素早く構え、姫子がむかってきた小鬼を次々と殴る。
「ふっ、美しく斬ってあげよう」
敵の攻撃を軽やかにかわし、薔薇雄が日本刀を振り下ろす。
「なるべく街道には近づけさせないようにしてください!」
小鬼達を挑発しながら、流が短刀で斬りつける。
「任せてくださいっ!」
小鬼の攻撃を刀で受け止め、信人が短刀を突き刺し、小鬼を一匹始末した。
「静香さん達のいる場所には決して近づけませんよ」
チャージングを使って小鬼を貫き、アキラが短槍を引き抜き辺りを睨む。
そのため小鬼達はアキラの事を警戒し、ジリジリと後ろに下がっていく。
「みんな! 踏ん張るよ!」
コアギュレイトを使って小鬼の動きを封じ込め、姫子が勢いよく六尺棒を振り回す。
既にほとんどの小鬼が戦意を失い、今にも逃げ出しそうな雰囲気だ。
「ここで逃がすわけにはいかないからな」
疾走の術を使って小鬼達を追いかけ、信也が火遁の術で小鬼達を焼き払う。
小鬼達のかなり数は減ってきたが、それでも討ち漏らせば静香達にも危険が及ぶ。
「陸奥流は素手もいけるのだ」
小鬼の振り下ろした棍棒で日本刀が弾き飛ばされたため、正和が相手の懐へと潜り込みスタンアタックを炸裂させる。
「あと少しだ! 気を抜くなよ」
スタンアタックで小鬼を殴り、嵐童がナイフで素早くトドメをさす。
「‥‥美しく散らせてやろう」
嵐童と背中合わせになりながら、薔薇雄が目にも留まらぬ速さで刀を振るう。
「‥‥これで、終わりだ!」
最後の小鬼を始末し、信也が手裏剣を回収する。
「ここは、一筆‥‥コレで良し!」
空中に指で【一見落着】と書き、姫子がニコリと微笑んだ。
本当なら本物の紙を使いたかったのだが、とても高価であるため今回は断念したらしい。
「ふっ、どんな事になっても私は美しい」
そして薔薇雄は髪を掻き上げ、爽やかな笑みを浮かべるのであった。
その後、小鬼達の住んでいた洞窟を調べてみたが、大したものは置かれていなかったらしい。
「行き道は男達のおかげですんなり行けるかも知れんが、撃ち漏らしが襲ってくる事もありえる‥‥。十分警戒しておこう‥‥」
静香を馬に乗せて街道を進み、悠姫が大きな溜息をつく。
街道にはたまに男が通り過ぎるため、心臓に悪くて仕方がない。
「ところで馬がオスだった場合は、やっぱりマズイのか?」
重要な事に気づいたため、悠姫が大粒の汗を浮かべて静香を睨む。
「多分‥‥、大丈夫だと思います。私達の村には『男は狼、猿並に危険』という言葉があるので、危険なのは人間と犬と猿です、きっと♪」
穢れのない笑みを浮かべ、静香がほんわかと答えを返す。
村の言い伝えを曲解しているためか、それ以外のオスはそれほど警戒していないようだ。
「そんなものなんですかねー?」
いまいち静香の言葉が理解できず、コルセスカ・ジェニアスレイ(ea3264)がハテナマークを点滅させる。
一体、村で何があったのだろう‥‥。
疑問だけがコルセスカの中でみるみるうちに膨らんでくる。
「とりあえず近づく男は手当たり次第に倒しましょう〜♪ 静香さんにとって男はすべて穢れです〜♪」
十手をプンスカと振り回し、水穂が上機嫌な様子で街道を歩く。
手当たり次第に男達を攻撃しているためか、水穂達の周りには妙なテリトリーが出来ている。
「ぶーん、見つけたで〜。こっちは危険や、小鬼がおるで〜。あたしが近道を案内しちゃる♪」
静香のまわりを飛び回り、鈴華が森を指差した。
「‥‥本当に大丈夫なんですか?」
心配そうに鈴華を見つめ、コルセスカが首を傾げる。
目の前の森は薄暗く、何か出そうな雰囲気だ。
「ちょっとはあたしを信じや〜。バッチリ調査はしてあるで〜」
自分の胸をポンと叩き、鈴華が森の奥へと入っていく。
「鈴華さんを信じましょー♪ もしもの場合は私たちだけで撃退します!」
十手を力強く握り締め、水穂が鈴華の後を追いかけた。
「‥‥何だか心配になってきたな。まぁ、何とかなるか」
だんだん考えるのが面倒になったため、悠姫が静香を連れて森に入る。
「きっと‥‥大丈夫‥‥ですよね‥‥」
そしてコルセスカは十字架に祈りを捧げ、悠姫達と一緒に清めの湖へとむかうのだった。
その後、彼女達は村で静香の舞を堪能し、ほんわかとしながら村を後にしたらしい。