魂砕き(ソウルクラッシャー)

■ショートシナリオ


担当:ゆうきつかさ

対応レベル:フリーlv

難易度:難しい

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:12人

サポート参加人数:-人

冒険期間:04月22日〜04月27日

リプレイ公開日:2006年04月27日

●オープニング

●嘘!
「フレディが‥‥逝ったか」
 風の噂で戦友が散った事を知り、ジェイソン(本名:玉介)がゆっくりと目を閉じる。
 フレディは昔から変わっていたが、真っ直ぐな性格だったため、誰からも好かれていた。
「‥‥お頭っ! フレディの仇討ちをっ!」
 手下の河童が一斉に頭の皿を輝かせる。
 彼らの思いはひとつであった。
 英雄フレディの仇討ち‥‥。
 ‥‥冒険者達に対する復讐だ。
「再び、この右手を使う事になるとはな」
 恐ろしさのあまり封印された右腕を見つめ、ジェイソンが気合と共に包帯を外す。
 数多くの息子達を葬ってきた黄金の右腕。
 その名もシンボル・クラッシャー(別名:魂砕き)。
 どんなに屈強な漢でもキャンタマーを鍛えている者はいない。
 そのため封印された伝説の技である。
「‥‥今日はやけに右腕が疼くな」
 そしてジェイソンは山を降りた。
 フレディを葬った者達の顔を知らぬまま‥‥。

●今回の参加者

 ea0031 龍深城 我斬(31歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0448 レイジュ・カザミ(29歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea2564 イリア・アドミナル(21歳・♀・ゴーレムニスト・エルフ・ビザンチン帝国)
 ea3809 山浦 とき和(33歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea4233 蒼月 惠(24歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea5898 アルテス・リアレイ(17歳・♂・神聖騎士・エルフ・イギリス王国)
 ea6159 サクラ・キドウ(25歳・♀・ナイト・人間・神聖ローマ帝国)
 ea8528 ラガーナ・クロツ(28歳・♀・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea9547 夜十字 信人(22歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 eb2411 楊 朱鳳(28歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 eb3536 ディアドラ・シュウェリーン(21歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb4842 雨森 刹那(27歳・♂・武道家・ハーフエルフ・華仙教大国)

●リプレイ本文

●えろがっぱーず
「玉吉さんを踏んでわたくしが来ましたよぉ?」
 能天気な笑みを浮かべ、蒼月惠(ea4233)が嬉しそうにパタパタと手を振った。
「玉吉を‥‥踏んだ、だと‥‥!?」
 玉吉という言葉に反応し、ジェイソンが鋭い視線を惠に放つ。
「あはははははは‥‥、冗談ですよ、冗談っ! 一緒に玉吉さん‥‥じゃなかった、フレディの仇を討ちましょうっ!」
 気まずい雰囲気が漂う中、惠がジェイソンの肩をぽふぽふと叩く。
 ジェイソンはずっと惠を睨んでいたが、彼女にキャンタマーが無い事を知り、つまらなそうに視線を逸らす。
「うう、事情は全く知りませんが、何やら切羽詰った様子ですね。何かの縁でしょうから、少々力を貸しましょう」
 興味本位で河童を間近で見たくなったため、アルテス・リアレイ(ea5898)がジェイソンに協力を申し出る。
 元々、えろがっぱーずについて何も知らないため、彼らがどんな目的で温泉に忍び込もうとしているのか分からない。
「素人が関わると‥‥命を落とす事になるぞ」
 妙にクールな表情を浮かべながら、ジェイソンが警告まじりに呟いた。
「命を‥‥落とすんですか?」
 思っていた以上に危険な任務である事を悟り、アルテスが驚いた様子で汗を流す。
 ジェイソンの口ぶりから多数の死者が出ている事は確かなのだが、その事と温泉がどうしても繋がらない。
「ううっ‥‥、何で俺はこんな所にいるんだろ?」
 何処か遠くを見つめながら、夜十字信人(ea9547)が溜息をつく。
 いつの間にか仇討ちの協力者として河童達に一緒にいたのだが、それまでの経緯を自分でも覚えていない。
「あんまり深く考えちゃ駄目ですよぉー♪」
 のほほんとした表情を浮かべ、惠が信人に答えを返す。
 彼女も何となく河童達と一緒にいるため、彼らの考えに賛同しているわけではない。
「僕もイギリスから着たばかりでよく分かりませんが、親友の敵討ちをするため温泉に行くようですよ」
 苦笑いを浮かべながら、アルテスがボソリと呟いた。
 アルテスもえろがっぱーずの目的をハッキリと理解しているわけではないのだが、いまさら考えを改め直すつもりがないため、このまま温泉に行くつもりでいるらしい。
「えーと、つまり、アレだな? 友達の仇討ちなわけか。‥‥悲しい事だな‥‥」
 同情した様子でジェイソンを見つめ、信人がぽふりと肩を叩く。
 詳しい事は良く分からないが、倒すべき相手は理解する事が出来た。

●えろがっぱ・きら〜ず
「イギリスにも温泉があればいいのに‥‥。そうすればこんな素敵な風景がたのし‥‥いや、イギリス人も健康的に過ごせるだろうになあ」
 妙に爽やかな表情を浮かべながら、レイジュ・カザミ(ea0448)が温泉の木陰に隠れて女湯を覗く。
「きゃあ〜、チカンよ〜っ!」
 それと同時に女湯の方から悲鳴が上がり、カザミめがけてたくさんの桶が飛んでくる。
「うぐっ‥‥、まさかこんなに早く気づかれてしまうとは‥‥ぐはっ!」
 桶の一撃を顔面に食らい、カザミが鼻血を噴いて吹っ飛んだ。
「‥‥大丈夫か? ここの温泉は覗きが多発しているからな。ストレス解消をするため、温泉に来ている客も多いらしいぞ」
 苦笑いを浮かべながら、玄武がカザミの顔に氷嚢を置く。
「別にちょっとぐらいなら、見せてあげてもいいと思うんだけどねぇ。玄ちゃんだって見たいでしょ? 私の裸をさっ! ‥‥って、何を言わすんだい、このスケベっ!」
 恥ずかしそうに頬を染め、山浦とき和(ea3809)が玄武の背中をバンバンと叩く。
「つーか、俺は何も言ってねーだろうがっ! そもそも俺は覗いちゃいねぇ!」
 大粒の涙を浮かべながら、玄武がブツブツと愚痴をこぼす。
「嫌だよ、この人ったら! 恥ずかしがっちゃってさ!」
 玄武の背中をパチンと叩き、とき和がクスクスと笑う。
「いや、恥ずかしくねぇし‥‥」
 危うく三日月の仮面が落ちそうになりながら、玄武が激しく首を横に振る。
「痴話喧嘩はその辺にしておけ。そろそろ奴らがここに来るぞ」
 プロテクターを玄武に手渡し、龍深城我斬(ea0031)が呆れた様子で溜息をつく。
 我斬の作ったプロテクターは丈夫な鉄を使っており、衝撃吸収用に柔らかい毛皮が仕込んである。
「あっ、俺の事は気にしないでくれ。専用のプロテクターがあるからな」
 プロテクターを我斬に返し、玄武が股間の位置を調節した。
 どうやら彼は亀の甲羅を使ったプロテクターを常に装着しているらしい。
「それにしても、ジェイソンには困ったね。フレディが勝手に死んだと思い込んでいるようだし‥‥。僕はフレディが是非、男の裸を見たいっていうから見せてあげただけなんだけどなぁ。‥‥言わば善意で見せてあげたんだから復讐されるいわれはないよね」
 温泉に散ったフレディの顔を思い出し、雨森刹那(eb4842)が納得のいかない様子で愚痴をこぼす。
 彼は他人に罪を擦りつけようと思っているため、その標的をカザミにコッソリと決めた。
「‥‥あれ? 不完全な試作品が一個無くなってるな???」
 不思議そうな表情を浮かべ、我斬が大きなハテナマークを点滅させる。
「気のせいじゃないのかな? それよりも早く隠れよう」
 男湯と女湯の立て札を取り替え、イリア・アドミナル(ea2564)が我斬の袖を掴む。
 既に立て札が惠によって取り替えられていた事に気づかぬまま‥‥。

●温泉
「やっぱり温泉はいいなぁ〜。日頃の疲れが一気に吹っ飛ぶからね」
 しみじみとした表情を浮かべながら、楊朱鳳(eb2411)が温泉に浸かって溜息を漏らす。
 最近、覗きが多発しているためか、用心棒として雇われている冒険者達は入浴料がタダである。
「せっかくジャパンに来たのですし‥‥、温泉には入らなければ‥‥意味がありませんよねぇ。河童は‥‥まあ、無視という方向で‥‥」
 河童の事など記憶の彼方に埋めておき、サクラ・キドウ(ea6159)がのんびりと温泉に浸かってニコリと笑う。
 えろがっぱーずの襲撃がある事は確かだが、温泉に用心棒達がいるため、かなり安心しているようだ。
「まぁ、この温泉には河童が現れるのね? 是非一匹、モルモットとして欲しいわ‥‥。せっかくジャパンに来たのだから、何か記念になるようなものが欲しいしね」
 妖艶な笑みを浮かべながら、ディアドラ・シュウェリーン(eb3536)が瞳をキラリと輝かせる。
 例外を除いて河童は日本にしか存在していないため、色々と興味を持っているらしい。
「どうでもいいが返り討ちに遭うんじゃないぞ。あいつらは神出鬼没だから‥‥」
 何者かの気配を感じたため、ラガーナ・クロツ(ea8528)が警戒した様子で辺りを睨む。
「うぐっ‥‥」
 ‥‥何か妙なものと目が合った。
 緑色の身体と、頭の皿‥‥。
「‥‥み、み、見られた‥‥!!」
 顔を真っ赤にしながら、ラガーナがダラリと汗を流す。
 驚きのあまり悲鳴を上げる事が出来ないため、目を丸くしたままその場から動けない。
 ジェイソンからあの言葉が呟かれるまでは‥‥。
「‥‥何だ、男か」
ラガーナの中で何かが切れた。
 ぷちんと大きな音を立て‥‥。
「俺は女だあああああ!!」
 怒りに満ちた表情を浮かべ、ラガーナが悲鳴を上げてジェイソンを殴る。
「ぬぐぉっ!」
 悲鳴を上げて後ろに吹っ飛び、ジェイソンが信人に直撃した。
「うぐっ‥‥」
 その拍子に信人の胸元が露わになり、その場にいた全員がキョトンとした表情を浮かべて動きを止める。
「おまえ‥‥、女だったのか!?」
 唖然とした表情を浮かべ、ラガーナが信人の胸を指差した。
「お、俺は男だああああああああああああああ!」
 恥ずかしそうに頬を染め、信人が雄叫びを上げて温泉の中に飛び込んだ。
「と、とにかく落ち着けっ! キミが女だったら、私達の仲間じゃないかっ! 一緒に協力し合って、えろがっぱーずを倒さないか?」
 慌てた様子で信人の事を取り押さえ、朱鳳が自分達の仲間に入れようとした。
「だから俺は男だって言っているだろうがっ! あれか? あれがないから、女だって決めつけているだろっ! 今日はたまたま置いてきただけなんだよっ!」
 ウッカリ忘れてしまった事を強調し、信人が不機嫌な表情を浮かべて朱鳳を睨む。
「‥‥おんや? 何か知り合いに良く似た少年が居るな。しかもあのプロテクターは俺が作った試作品じゃねえか。‥‥‥‥いや、流石にあいつでも小さくはなれないよな? ‥‥と言う事は隠し子か? いや、それだと計算が合わん。何にせよ、とっ捕まえて聞いてみるか」
 面倒臭そうな表情を浮かべながら、我斬が信人に峰打ちを放って溜息をつく。
 信人は『ウッ!』と悲鳴を上げた後、そのまま我残の胸の中へと倒れ込む。
「彼女の事は僕に任せてくれますか。女の子をこんな所に放置しておいたら、色々と危ないでしょうから‥‥」
 含みのある笑みを浮かべながら、イリアが信人を抱き上げ安全な場所に避難した。
「と、とにかく‥‥、今はえろがっぱーずの退治です‥‥。」
 手拭いを使って胸元を隠し、サクラがGパニッシャーを手に取った。
 えろがっぱーず達は裸には興味がないのか、フレディを殺った相手を捜している。
「‥‥あれ? サクラさん?」
 大粒の汗を浮かべながら、アルテスがサクラと目が合った。
 てっきり男湯を襲撃すると思っていたため、予想外の出来事に驚いている。
「アルテス‥‥、やっぱり‥‥そうだったんですね‥‥。‥‥遠慮はしませんからね‥‥?」
 満面の笑みを浮かべながら、サクラがGパニッシャーを振り下ろす。
「ご、誤解ですっ!」
 慌てた様子でサクラの攻撃をかわし、アルテスが詳しい説明をしようとした。
 しかし、彼女がまったく容赦しなかったため、Gパニッシャーの一撃を喰らって温泉の底へと沈んでいく。
「アルテス‥‥あなたは私が直々にお仕置きです‥‥。覚悟してくださいね‥‥」
 天使のような笑みを浮かべ、サクラが気絶したアルテスをズルズルと引きずっていく。
「‥‥アルテス、お前の死は無駄にはしない。安らかに逝くといい」
 妙にクールな表情を浮かべながら、ジェイソンが何者かの気配に気づいて後ろをむいた。
「みんな馬鹿な真似をして、ゴルゴの旦那が悲しんでいるぞ。まぁ、今回の件も玄武の手下がやった事だろうけどな」
 冗談まじりに微笑みながら、我斬がカザミに合図を送る。
「貴方がジェイソンさんだね。少し前に貴方のお仲間に協力させてもらった。だが、今回はあえて敵に回らせてもらうよ。シンボル・クラッシャー‥‥、その技が勝つか、僕の葉っぱが勝つか、勝負させて貰いたい!」
 堂々とマントを脱ぎ捨て全裸になり、カザミが葉っぱ一枚でジェイソンと対峙した。
「‥‥貴様か。フレディを殺ったのは‥‥。気配で分かる。俺達と同じニオイがしているからな」
 キリリッとした表情を浮かべ、ジェイソンが指の関節をパキポキと鳴らす。
 事前に刹那からフレディを殺ったのは、カザミであると聞いていたため、ここで退くつもりはないようだ。
「そこまでよっ!」
 次の瞬間、何者かの声があたりに響く。
「なん、何者だっ!」
 ハッとした表情を浮かべ、ジェイソンが辺りを見回した。
「ひと〜つ! 人の尻を付け狙う。ふた〜つ! 不埒な悪趣味三昧。み〜っつ! 醜い心根の河童ども。漢の股間‥‥、もとい! 漢の沽券に関わる一大事、救って見せましょ、とき和姐さん」
 妖艶な笑みを浮かべて口上を述べていき、とき和が颯爽と温泉に姿を表した。
「悪いけど、これは僕の獲物だよ。邪魔をしないでくれるかな」
 プロテクターを着けぬまま、カザミがジェイソンに勝負を挑む。
 それと同時にジェイソンが右手を構え、カザミの股間めがけて攻撃を仕掛ける。
「いったい何処を狙っているんだい? 僕はここだよっ!」
 爽やかな笑みを浮かべながら、カザミがジェイソンに当て身を喰らわせた。
「ぐはっ‥‥」
 大袈裟に血反吐を辺りに撒き散らし、ジェイソンがブクブクと温泉の中に沈んでいく。
「どうやら、こちらの負けのようですね〜?」
 このままだと一緒に罰を受けなくてはならないため、惠がジェイソン達を見捨ててスタコラと逃げていく。
「おやおや、仲間達は逃げてしまったようだね。‥‥追うよ」
 瞳をキラリと輝かせ、とき和が玄武を連れて河童を追う。
「もうっ‥‥、あんまりいじめたら、可愛そうじゃないの? 何の心配もする必要はないわ。私が守ってあげるからっ!」
 優しく語りかけながらジェイソンを抱きしめ、ディアドラが高速詠唱でアイスコフィンを発動させた。
「まぁ‥‥、緑色の肌をしているわ‥‥、頭の上にあるのはお皿?
これが、ジャパニーズモンスター・妖怪なのね。名称はカッパというの‥‥ふぅん」
 凍りついたジェイソンを見つめ、ディアドラが満足した様子で腕を組む。
 このままモルモットにする事は難しそうだが、色々と研究する価値がありそうだ。