●リプレイ本文
●偵察班
(「‥‥江戸に来て初めての依頼‥‥、頑張らないとっ!」)
自分自身に言い聞かせるようにしながら、レラ(eb5002)が拳をギュッと握り締める。
春になって小鬼達の数が増えてきたため、ここで退治しておかないと面倒な事になってしまう。
「お日様さんお日様さん、どうか教えてくださいな」
金貨を媒体にしてサンワードを発動させ、チュプペケレ(eb5099)が小鬼達の居場所を確かめる。
しかし、ハッキリとした場所は分からず、漠然とした場所だけが告げられた。
「えーっと、こっちですかね? ‥‥多分?」
キョロキョロと辺りを見回し、レラが大きなハテナマークをピコピコさせる。
「一応、方向だけは分かっているんですが‥‥」
サンワードの答えを頼りにしながら、チュプペケレが森の奥へと進んでいく。
「あっ! いました、小鬼ですっ!」
ハッとした表情を浮かべ、レラが小鬼達を指差した。
小鬼達は2〜3匹で固まって巡回をしており、レラ達の存在に気づいて持っていた角笛を吹き鳴らす。
「こっ、このままじゃ、あたし達の存在が他の小鬼達にまで気づかれちゃうっ!?」
慌てた様子で悲鳴をあげ、チュプペケレが短刀を握り締める。
小鬼達は棍棒を振り上げ、唸り声を上げて襲い掛かってきた。
「森を汚すモノは許しません! 汚らわしき小鬼よ! この森から立ち去りなさい!」
短刀を素早く構え、レラが小鬼達をジロリと睨む。
しかし、小鬼達が角笛を鳴らしたせいで、他の場所からも小鬼達がゾロゾロと集まってきた。
「うっ‥‥、何だか数が多くありませんか?」
引きつった笑みを浮かべながら、チュプペケレがダラリと汗を流す。
「に、逃げましょうか。何処か遠くの方へっ!」
そう言ってレラが小鬼達を引きつけ逃げていく。
仲間達が小鬼達の根城を潰す、その時まで‥‥。
●洞窟の入り口
「‥‥ん? 何だか小鬼達の様子がおかしいな」
近くの茂みに隠れて小鬼達の様子を窺いながら、クンネソヤ(eb5005)が不思議そうに首を傾げる。
小鬼達は何やらギャアギャアと騒いでおり、何匹かで固まり森の中に入っていった。
「どうやら森の中で何かを見つけたようですね。‥‥ひょっとして、レラさん達の身に何かが?」
小鬼達のむかった方向を見つめ、景山清久(eb1803)が心配した様子で口を開く。
ほとんどの小鬼が森に行ってしまったため、洞窟内に攻め込むのは楽になったが、囮として森の中にいるレラ達の安否が気になるところである。
「どちらにしても拙者達がこの場を離れるわけにはいかないでござる」
険しい表情を浮かべながら、風魔隠(eb4673)が洞窟の入り口を睨む。
小鬼達が森にむかったせいで、入り口の警備が手薄になっているため、洞窟内に攻め込むのなら今しかない。
「よぉし、それじゃ作戦開始と行くか。このままボケッとしていても、埒が明かないしな」
ロングボウを使ってシューティングPAEXを放ち、セタ(eb5137)が見張りの小鬼を仕留めてニヤリと笑う。
「まだ一匹残っていますっ!」
残った見張りの小鬼が角笛を鳴らそうとしていたため、清久が印を結んでサンレーザーを放つ。
「チィッ‥‥、外したかっ!」
悔しそうに舌打ちした後、クンネソヤが霞小太刀を構えて小鬼に迫る。
小鬼は動揺しているためか、うまく角笛を鳴らす事が出来ず、叫び声をあげて仲間を呼ぼうとした。
「こ、これはマズイ事になったでござるっ!」
銀のトレイを素早く構え、隠が小鬼に迫っていく。
小鬼は慌てた様子で角笛を構え、隠の攻撃を何とか避ける。
「‥‥油断したようですね」
すぐさま小鬼の背後に回り、清久がサンレーザーを放つ。
小鬼は何が起こったのかも分からぬまま、角笛をポトリと落として絶命する。
「ふぅ‥‥、危ないところだったな。後は洞窟に残っている小鬼だけか」
絶命した小鬼を茂みに隠し、セタが疲れた様子で汗を拭う。
何とか見張りの小鬼を倒す事が出来たが、洞窟の中には小鬼達のボスが残っている。
「どうする? このまま他の仲間達と一緒に鉄兜のヤツを倒しちまうか?」
警戒した様子で霞小太刀を構えながら、クンネソヤが洞窟の中を覗き込む。
「いや、森にむかった小鬼達が戻ってくる可能性が捨て切れない以上、このまま入り口で待機しておくべきでしょう。場合によっては洞窟の中で挟み撃ちに遭いますし‥‥」
最悪の事態を想定し、清久が洞窟の入り口に残る事を提案する。
「うーむ、確かに‥‥。それは充分にあり得る事でござるな。それにここで待機していれば、鉄兜が逃げてきても退治する事が可能でござる」
ほとんどの小鬼が森の中にいる事を思い出し、隠が納得した様子で頷いた。
「それじゃ、俺達はここで小鬼達を迎え撃つか!」
そう言ってセタがロングボウを構えて茂みに潜む。
小鬼達がいつ現れてもいいように‥‥。
●洞窟内
「‥‥妙じゃな。小鬼達が隠れているわりには、やけに静かな気がするのじゃが‥‥」
ランタンを照らして洞窟内を進んでいき、カルナ・バレル(ea8675)が辺りを睨む。
洞窟内にはいくつも部屋があるのだが、入り口で騒ぎがあったため、小鬼達が奥の部屋に避難しているようである。
「確か、小鬼達の頭は鉄兜って言われているんだよね? そいつさえ倒す事が出来れば、他の小鬼達が烏合の衆となって山奥に逃げ出すんだから、さっさと倒しちゃおうよ」
念入りに部屋の中を確認した後、月下真鶴(eb3843)がカルナの後を追いかけた。
「かなり卑怯なボスらしいからな。意外と鉄兜を外しているかも知れないぞ?」
疲れた様子で溜息をつきながら、レヴィアス・カイザーリング(eb4554)が壁伝いに進んでいく。
小鬼達の棲む洞窟はそれほど広くは無いため、鉄兜が隠れているとすれば一番奥の部屋しかない。
「‥‥いたわ。小鬼達のボスが‥‥」
険しい表情を浮かべながら、フォルナリーナ・シャナイア(eb4462)がシルバークルスダガーを引き抜いた。
鉄兜は女子供を盾にして、自らの身を守っている。
「情けないヤツじゃのぉ。そこまでして自分の命が惜しいのか」
呆れた様子で溜息をつきながら、カルナが鉄兜をジロリと睨む。
鉄兜はまわりにいた子供達を掴み上げ、警告の意味を込めてギャアギャアと鳴く。
「本来なら、弱い者を守るのがボスの役目なのに‥‥。逆に弱い者を盾に取って、自分だけ助かろうとするなんて……許しがたいわね」
怒りに満ちた表情を浮かべ、シャナイアがシルバークルスダガーを握り締める。
「卑怯な真似を‥‥。やはり退治する必要がありそうだな。これから生まれてくる子供達のためにも‥‥」
すぐさまオーラパワーを発動させ、レヴィアスが鉄兜に攻撃を仕掛けようとした。
しかし、小鬼の雌達が壁になり、レヴァアスの攻撃を必死で防ぐ。
「己が為に子鬼を盾にしてまで逃げようとするその浅ましさ、このような輩なら切り捨てても何の痛痒も覚えませんね」
鉄兜のみに狙いを定め、真鶴が間合いを詰めていく。
「じゃが、このままでは子供達まで巻き込んでしまうぞ?」
心配した様子で真鶴に声を掛け、カルナがダラリと汗を流す。
子供の小鬼は円らな瞳をウルウルさせ、カルナ達に命乞いをするようにしてキュ〜と鳴く。
「わたしが使えるブラックホーリーは、邪悪な者にはダメージを与え、邪悪でない者にはダメージを与えない魔法。これなら、子供を盾にするような頭にはダメージを与える事が出来るし、まだ子供の小鬼にはダメージを与えずに済むかもしれないわ」
わずかな可能性に願いを託し、シャナイアがブラックホーリーを放つ。
「ギャアアアアアアア!」
シャナイアの放った一撃によって左肩が吹っ飛び、鉄兜が悲鳴を上げて彼女に体当たりを喰らわせた。
「逃げても無駄だっ! 洞窟の外にも仲間達がいるからな」
わざと鉄兜を逃がし、レヴィアスが後を追っていく。
「ギャア、ギャア、ギャア!」
入り口に待機していた冒険者達に気づき、鉄兜が驚いた様子で踵を返す。
「‥‥言ったでしょ。このような輩なら切り捨てても何の痛痒も覚えないって‥‥」
戻ってきた鉄兜を睨みつけ、真鶴がバーストアタックEXを放って鉄兜ごとかち割りトドメをさす。
その後、洞窟に戻ってきた小鬼達も退治され、残った小鬼(雌達)は子供達を連れて山奥へと逃げていくのが確認された。