●リプレイ本文
●えろがっぱーず・紅
「怪しいヤツめッ! 貴様は何者じゃっ!」
参加した者の中に見慣れぬ顔がいたため、彼女達のリーダーである紅が夜十字信人(ea3094)の胸倉を掴む。
紅達にとって人間の男は憎むべき存在であり、倒すべき相手。
その男がメンバーの中にいるだけでも寒気がする程である。
「ぼ、僕は夜十字信t‥‥ごほんっ! 夜十字信子。‥‥愛(と書いて『ネタ』)と正義(と書いて『エロ』)と河童の味方だ」
ダラダリと汗を流しながら、信人が裏声を使って答えを返す。
一応、彼なりにメイド服を着て女装をしてみたのだが、紅達が怪しんでいるためキャンタマァーの危機である。
「それなら試してみればイイんじゃない? ‥‥こうやってね」
含みのある笑みを浮かべながら、クリス・ウェルロッド(ea5708)が信人の股間をムンズと掴む。
今回はクリスも黒の忍装束に身を包み、黒子頭巾を使って口元を隠し、女性としてえろがっぱーずに参加しているらしい。
『ば、馬鹿っ! 何をしやがんだよっ!』
クリスだけが聞こえるように近寄り、信人が小声でブツブツと喋る。
『こうでもしないと、彼女達に怪しまれてしまいますよ。‥‥大丈夫。スカートの中に手を入れただけですから‥‥』
紅達にむかって愛想笑いを浮べながら、クリスが信人の股間を弄るフリをした。
「‥‥大丈夫。彼女は女よ」
しばらくスカートの中で指を動かした後、クリスがホッとした様子で右手を抜いた。
「どうやら‥‥勘違いのよう‥‥だな?」
ふたりの事を怪しみながら、東儀綺羅(ea1224)が紅の判断を待つ。
「‥‥疑ってすまなかった」
申し訳無さそうな表情を浮かべ、紅がペコリと頭を下げる。
「き、気にしないでください。誰にでも間違いはありますから‥‥。そんな事よりも今は男共に鉄槌を下す時です。この手に掴め、キャンタマァーってね」
ようやく疑いが晴れたため、信人が紅達に向かってウインクした。
「そ、そうだな‥‥。信子の言う通り我々が倒すべき相手は男っ! そして乙女の幸せを奪う存在であるキァンタマァーなのだから‥‥」
拳をギュッと握り締め、紅がメラメラと闘志を燃やす。
「乙女の幸せ‥‥ですか。何か深い事情がありそうですね」
同情した様子で紅を見つめ、クリスが優しく肩を叩く。
紅は何も答えようとはしなかったが、何か酷い目に遭ったらしい。
「それ以上は何も言わなくていいぞ。あたしだってそこまで鈍感じゃないからな。‥‥手伝ってやろうじゃないか。英雄達の愛した、この技で‥‥」
紅の気持ちを察したのか、綺羅が拳を高々と掲げてニヤリと笑う。
「本当にすまない。‥‥よろしく頼む」
綺羅の言葉に胸を打たれてしまったのか、紅が瞳を潤ませ深々と頭を下げる。
「よし、逝くぞ者ども!」
そう言って信人がえろがっぱーず・紅を引き連れ、冒険者達の待つ漢湯へむかう。
わざとらしく乙女走りをしながら、気づかれないように‥‥。
●漢湯
「いやー、参ったね。まさか、河童の乙女達が来るとは夢にも思わなかったよ。河童とはいえ乙女達に手を出すのは躊躇われるし、でも命(と書いてタマと読む)を潰される訳にもいかないし厄介だなー」
苦笑いを浮べながら脱衣所で服を脱ぎ、雨森刹那(eb4842)が温泉にチャポンと浸かる。
えろがぱっーずの襲撃が噂されているため、漢湯に使って彼女達が来るのを待っているのだが、いつ襲撃してくるのか分からないため気が抜けない。
「またもやゴールデンボウルの危機ってわけだね! ‥‥ならば守らなければならない。何故なら、僕は伝説の葉っぱ男。この葉っぱに守られているものこそが、ゴールデンボウルなのだから!」
意気揚々と漢湯に浸かり、レイジュ・カザミ(ea0448)がえっへんと胸を張る。
相変わらず葉っぱ一枚で行動しているが、今回は温泉という事で違和感が無い。
「‥‥んー、良くわからんが、河童淑女の襲撃があるんだな。女性だとやはり野郎の裸が見たいものなのだろうか?」
いまいち状況が飲み込めず、石動悠一郎(ea8417)が不思議そうに首を傾げた。
念のため褌の下には木製のプロテクターを装着し、金色に塗ったダミーの玉を入れているのだが、それだけでは安心する事が出来ないというのが本音である。
「いや、えろがっぱーずの目的は、漢の大切な命(と書いてタマと読む)っ! それを潰す事が目的らしい」
険しい表情を浮べながら、ルカ・レッドロウ(ea0127)が温泉に浸かって答えを返す。
河童の娘に恨まれるような理由は無いが、襲撃してくる以上は迎え撃つしか無さそうだ。
「それは確かに一大事だな。それに比べて、お主らは気持ち良さそうだな」
温泉に浸かるペット達を見つめながら、悠一郎が呆れた様子で溜息をつく。
悠一郎のペットは妙な塊と玉なので感情を読み取る事は出来ないが、その動きによってある程度の気持ちは分かる。
「さて、それじゃ潰しに行きますか! ‥‥じゃなくって、殿方の大切なモノを潰されないようにしないとね。事情は分からなくもないけど、だからって生命の元(?)を潰させるわけにはいかないから‥‥」
仲間達が一瞬ビクンと驚いたため、紅流(ea9103)が冗談まじりに微笑んだ。
流が漢湯にいただけでも驚いているため、これ以上の刺激は危険である。
「どちらにしても、恋人のある身で大事なものをなくすわけにはゆかぬ‥‥」
妖艶な笑みを浮かべながら、ギーヴ・リュース(eb0985)が竪琴を鳴らす。
気合の褌を締めているためか、ある程度の覚悟が出来たようだ。
「‥‥文字通り命(と書いて以下略)の取り合いになるわけか。‥‥これまで幾多の戦場を共にしてきた俺の相棒だ、こんなトコロで朽ちてたまるかよ! 思い起こせば、タチの悪いトラップに引っかかって鉄製のハンマーにタマをぶちぬかれ悶絶したコトもあった‥‥そう、俺はあの日以来『ゴールデンハンマー』の称号を背負うコトになったんだ」
何度もキャンタマァーの危機に陥ったせいか、ルカがしみじみとした表情を浮かべて昔話をし始めた。
「何も恐れる事なんてないさ。その技にかからなければいいんだからね。身のこなしが軽ければ問題無し!そういう意味では、この僕の葉っぱ一枚スタイルは、まさにベストなバトルスタイルと言えるんだけど‥‥」
自信に満ちた表情を浮かべ、カザミが葉っぱを配ろうとする。
「いや、葉っぱじゃ、身を守る事なんて出来ないと思うんですが‥‥」
葉っぱをつけた瞬間、何か大事なもの(常識とか‥‥マテ)を失ってしまうと思ったため、クライフ・デニーロ(ea2606)が丁重に断った。
「とりあえず‥‥何か代わりになるものを装着しておくべきだな‥‥」
完成した温泉卵を握り締め、アルバート・オズボーン(eb2284)がニヤリと笑う。
これさえ股間につけていれば、キャンタマァーを潰される確率が激減した。
「夜十字め、今度こそ引導を渡してやる!」
殺気に満ちた表情を浮かべ、キシュト・カノン(eb1061)が大きめな樽をすっぽり被る。
樽に開けた覗き穴から瞳をキュピィーンと輝かせ‥‥。
●対決
「‥‥どうやら待ち伏せされていたようね」
悔しそうな表情を浮かべながら、紅が拳をギュッと握り締める。
情報漏洩を防ぐため、色々な暗号を使っていたつもりだが、全く意味がなかったようだ。
「お、男同士が肌を露出する場所にいるとは‥‥。ジャパンとは男色の国なのですか!? 私の故郷では男同士が肌を露出する事自体が罪なのに‥‥。男色は畏怖すべき最大の背徳行為っ! これは無視するわけには行きませんねっ!」
熱心な神の信仰者であるため、クリスが男達に対して嫌悪感を抱く。
「うっ‥‥、何か勘違いをされているみたいだね」
引きつった笑みを浮かべながら、刹那が気まずい様子で汗を流す。
彼自身、まったくそっちのケがないため、勘違いされた事に対して酷く心を痛めている。
「とうとう現れたなっ! 喰らえ、ヴァレルビーーーム!」
疾風の如き速さでオーラショットを炸裂させ、キシュトが信人にむかって斬りかかる。
「また貴様か‥‥しつこいぞ‥‥樽男‥‥! オーラショットなんて放ちやがって! クリス、背中は任せる、‥‥って、居ねぇ!?」
インビジブルの巻物を使って既に姿を消していたため、信人が大粒の汗を浮べてキシュトの攻撃を受け止めた。
「む、ヴァレルビームではない事が『ばれる』とはな。ヴァレルだけに‥‥。がははは」
凍えるほどに寒いギャクを炸裂させ、ヴァレルが高笑いを響かせる。
「吹き荒れろ、虎落笛(もがりぶえ)‥‥!」
あまりの下らなさに溜息をつきながら、信人がクレイモアによるスマッシュEX&バーストアタック&ソニックブームを放ってキシュトを倒す。
「完璧な‥‥桜‥‥だ。ラストサムラァーイ! ‥‥ガクッ」
樽が真っ二つに割れて股間から風呂桶が転がり、キシュトがやり切った男の笑みを浮かべてグッタリと倒れる。
「ま、まさかキシュトさんが倒されるなんて‥‥。クッ‥‥、この葉っぱ男の名にかけて! 僕はゴールデンボウルを守り抜く。そう、先日現れたジェイソンですら、僕には勝てなかった。女の子だとて、容赦はしないよ。さぁ、どこからでも来るがいいさ!」
挑発的な笑みを浮かべ、カザミが堂々と両手を開く。
「貴様が我らの英雄達を‥‥。許さない。絶対にっ!」
それと同時に紅の右手がキラリと輝き、目にも止まらぬ速さでカザミの横を通り過ぎた。
「フッ‥‥、今回も僕の勝ちのようだね」
勝ち誇った様子で笑みを浮かべ、カザミがえっへんと胸を張る。
「‥‥甘いな。貴様の命は既に尽きた。これを見ろ!」
カザミの言葉に動揺する事もなく、紅が一枚の葉っぱを突きつけた。
「ば、馬鹿なっ!? 僕の命ともいえる葉っぱが‥‥ぐはっ!」
葉っぱを奪われたショックで目の前が真っ暗になり、カザミがぐはっと血反吐を吐いて倒れ込む。
「カザミ‥‥、あんたの死は無駄にはしねぇ。遠慮なく掛かってこいよっ! イギリス・キャメロットのミスターデンジャラスとは俺のコトだっ!」
雄叫びを上げてえろがっぱーずを倒していき、ルカが自慢の相棒を曝して紅と退治する。
「ふっ‥‥、悪いが長老様のハネモノはもっと凄いぞ。‥‥イボイボだからなっ!」
ルカの股間を見つめてクスリと笑い、紅が先日逝った長老の自慢話をし始めた。
「つーか、それってただの病気じゃねぇか」
キョトンとした表情を浮かべ、ルカが鋭いツッコミを入れる。
その言葉に驚き、真っ白になる紅とえろがっぱーず。
アレが普通だと思っていたためショックがデカイ。
「何だか良くわからねえが、チャンスのようだな。喰ら‥‥がはっ!」
いきなり股間に激痛が走ったため、ルカが険しい表情を浮かべて辺りを睨む。
「どうやらインビジブルの巻物を使っているヤツがいるようだね。‥‥気をつけてっ!」
信人達の攻撃を軽やかにかわし、刹那が警告まじりに呟いた。
「クックック‥‥、あたしのこの手が光って唸るっ!!! (ピィーッ)を掴めと轟き叫ぶぅ〜〜〜〜!」
拳を高々と掲げて気合を入れ、綺羅がソニックブームを叩き込む。
「届かなければ如何と言う事は無い。我、武の理を持て撃を放つ‥‥飛打!」
綺羅を盾にして攻撃をかわし、悠一郎がソニックブームを撃ち込んだ。
「ふっ‥‥、甘いな。私の狙いは貴様じゃない。魂の叫びを聞けぇい!」
ギーヴの股間をムンズと掴み、紅が雄叫びを上げる。
「恋人一人に絞ったとて、女性に手を挙げるわけにゆかぬ‥‥元は名を轟かせていた(?)ナンパ師の哀しい性を知るがよい!」
クールな笑みを浮かべながら、ギーヴが悲しげに竪琴をポロンと鳴らす。
どうやら紅がギーヴだと思っていたものは、彼がイリュージョンを使って作った幻影らしい。
「お、おのれっ! 小癪な真似をっ!」
悔しそうな表情を浮かべながら、紅が拳をワナワナと震わせる。
「待ってくれっ! 自分は以前、この温泉で冒険者に倒された時に呪いを掛けられ、人間に姿を変えられてしまった河童なんだっ!」
えろがっぱーずを前にして、アルバートが衝撃的な言葉を吐く。
「そ、それじゃ、兄さんなのね。兄さぁん!」
大粒の涙を浮かべながら、紅がアルバートに抱きつきワンワンと泣いた。
「会いたかったぞ、紅。‥‥さぁ、共に冒険者達を退治しよう」
いまさら後戻りする事も出来ないため、アルバートがクライフ達と対峙する。
えろがっぱーずに囲まれて身動きが取れなかったという理由に加え、紅に大嘘をついてしまったため、ここで彼女達を裏切るわけには行かないようだ。
「う、裏切ったんですね‥‥」
唖然とした表情を浮かべ、クライフがダラリと汗を流す。
戦いの途中でまさか仲間が裏切るとは予想もしていなかったため、かなりショックを受けているようだ。
「ふふっ‥‥、問題ないわ。ラーンの投網で一網打尽よ!」
含みのある笑みを浮かべながら、流がラーンの投網を投げて紅達の動きを封じ込める。
「クッ‥‥、しまった!?」
悔しそうに舌打ちし、信人がジロリと流を睨む。
それと同時にインビジブルの巻物を使って姿を消していたクリスが、流に攻撃を仕掛けて信人達を助け出そうとする。
「見つけましたよっ!」
しかし、クライフがアイスコフィンを放ったため、クリスが悲鳴を上げて尻餅をつく。
「こ、このインビジブルの巻物さえあれば‥‥のわぁ! ロトくん、こっちに来ちゃ駄目ですっ!」
幼いダッケルのロトにじゃれつかれ、クリスが巻物を落としてハッとする。
「大丈夫か、クリス。いま助けるッ!」
このままではクリスが袋叩きに遭ってしまうため、信人がクレイモアを構えて助けにむかう。
次の瞬間、信人の脳裏に愛する妹の初恋を奪ったクリスの笑顔がもわんと浮かび、今まで育んできた友情があっという間に殺意へと変わっていく。
「の、信人さん!? 私の姿が見えていますよね? うわぁ!?」
信人の一撃を喰らって宙を舞い、クリスの記憶が遠く彼方に吹っ飛んだ。
彼から攻撃を喰らった事すら忘れるほどに‥‥。
「あっ、悪ぃ。見えなかったわ」
妙にスッキリとした表情を浮かべ、信人がニコリと微笑んだ。
「それで満足したかしら? そろそろ、こんな事をした理由を聞かせてもらわないとねぇ」
御仕置き部屋と書かれた小屋を指差し、流がニヤリと笑って信人の肩をぽふりと叩く。
小屋の中ではギーヴの歌声が響いており、ときおり乙女達の悲鳴が聞こえている。
「ちょっ、ちょっと待ってくれ。俺は無実だ。信じてくれ。のわああああああああ! クリス、目を覚ませえええええええ! お前だけお咎めなしなんてズルイぞおおおおおお!」
そして信人の悲鳴が温泉宿に響くのだった。