●リプレイ本文
●影武者
「見た目はこんな感じでどうじゃろうか?」
玄武の影武者となるべく、磯城弥魁厳(eb5249)が三日月の仮面を被る。
魁厳は玄武の事をよく知らないため、玄武衆の河童忍者から話を聞く事にしたのだが、えろがっぱーず事件の影響で彼の印象は最悪だ。
「そして、身体から滲み出るスケベなオーラか。‥‥うーむ、なかなか難しい注文じゃのう」
河童忍軍の注文通りに演じてみるが、何度やってもうまく行かない。
その上、仮面を被っているため、うまく感情を表現する事が出来ないようだ。
「うーむ、困ったのぉ‥‥。まさか、ここまで難易度が高いとは‥‥」
困った様子で溜息をつきながら、魁厳が険しい表情を浮かべて腕を組む。
この様子では影武者になるためには、もう少し時間が掛かりそうである。
●救出
「大・反・省・じゃ! 玄武じゃから、食うものも無くへばっておる、と聞いても平気の平左でけろーっとしておるんじゃろうとばっかり思っておったのじゃが‥‥、あそこまで危険な状況とは思わんかった。なんとしても、今回助け出さねば!」
くわっと表情を険しくさせながら、錬金(ea4568)が舟を漕いで玄武が囚われている島にむかう。
早くしないと玄武が火炙りにされてしまうため、のんびりしている暇は無さそうだ。
「まさか首領が捕まるとは、本当に玄武さんは、えろがっぱーずの首領では無かったのですね」
内心『とても悪い事をしたな』と反省しながら、ルーラス・エルミナス(ea0282)が拳をギュッと握り締める。
色々と後ろめたい事があるため、このまま火炙りにされるのは胃に悪い。
「今回こそ、失敗は許されません。玄武様の無実を晴らし、必ず助け出しましょう」
船首に立って島を睨み、木下茜(eb5817)が自分自身に言い聞かせる。
一度、救出作戦に失敗しているためか、島の監視は厳重になっており、茜達に気づいて弓矢を飛ばしてきた。
「ぬおおっ! こりゃ、タマラン!? じゃが、わしらだって、このまま帰るつもりは無い!」
雄叫びを上げて舟を漕ぎ、金が船着場に突撃する。
それと同時にルーラス達が舟から飛び降り、看守達に当て身を食らわせて駆け抜けていく。
「逃がすな! 追え!」
すぐさま呼子笛を吹き鳴らし、河童達がルーラス達を追いかける。
「このまま玄武さんを火炙りにすれば、五輪祭が中止になってしまうのですよ? 貴方達の贔屓にしている衆は、何処で有れ、私的な裁きで、玄武さんを火炙りにすれば、衆の名誉は傷つきます。貴方達に少しでも五輪祭を思う気持ちが有るなら、それぞれの衆の為、玄武さんを火炙りにしては為りません」
河童達の攻撃を受け止め、ルーラスが大声で叫ぶ。
しかし、河童達は『フン』と鼻で笑い、次々と攻撃を仕掛けていく。
「だ、駄目です。この島の人達は、お仕事で五輪祭を見に行く事が出来ません。その方法じゃ、説得する事は不可能です!」
河童達の攻撃を軽々とかわし、茜が肝心な事を思い出す。
そのため、茜は着物を少しだけ脱ぎ、色仕掛けを使って河童達の気を引いた。
「‥‥さすがじゃな。このまま一気に駆け抜けるぞ!」
山の方から煙が上がってきたため、金が祈るような表情を浮かべてスピードを上げていく。
色々と河童達にいう事があったのだが、説得しても意味が無いと思ったため、彼らを無視して先に進む事にした。
「い、いました。玄武さんです!」
ハッとした表情を浮かべ、茜が山の頂上を指差した。
「おおっ! これは神の助けだな。待っていたぞ、お前達!」
感動した様子でボロボロと涙を流し、玄武が助けを求めて身体を揺らす。
既に火炙りの刑に処されているようだが、茜達が救出に来たのでホッとしているようだ。
「‥‥大丈夫ですか? いま助けます!」
玄武が縛られている柱を狙い、茜が何度も体当たりを浴びせていく。
次の瞬間、柱が音を立てて横に倒れ、玄武がゴツンと頭を打った。
「ら、乱暴だな、お前ら‥‥。は、早く縄を解いてくれ!」
頭に大きなタンコブを作り、玄武が大きく身体を揺らす。
しかし、縄がきつく縛られているため、このままでは逃げ出す事が難しい。
「いたぞ! 殺せえええええ!」
玄武達の逃げ道を塞ぐようにしてまわりを囲み、河童達が興奮した様子で雄たけびを上げる。
「待てええええええい! 玄武は10ヶ月のお勤めを果たせばお役ごめんのはずじゃ! それを痛めつけて挙句の果てに火あぶりとは、掟とちーと違うのではないかな?」
玄武を守るようにして両手を開き、金が険しい表情を浮かべて河童を睨む。
その勢いに押されて河童達が動揺し、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべている。
「黙れ! やましい事があるから、お前達が助けに来たんだ! そうに違いない!」
いまさら火炙りを注意するわけにも行かないため、河童達が金達に非がある事を強調した。
「そ、そんな馬鹿な‥‥。何か証拠があるんですか!? そっちこそ私達に非があると決め付けていませんか?」
納得のいかない様子で河童を睨み、茜が一気に不満をぶちまける。
それと同時にルーラスが茜を制止し、覚悟を決めた様子で前に立つ。
「‥‥玄武さんは、無実です。何故なら、玄武さんを、えろがっぱーずだと噂を流したのは、この私です。確かに玄武さんは、最近お嫁さんと色々していない事があるので、ストレスがたまっていたと思い、えろがっぱーずに誘おうと思っていたのは事実ですが、嫁さん一筋の為、えろがっぱーずに来る事はありませんでしたから‥‥」
そう言ってルーラスが河童達に真実を語っていくのであった‥‥。
●続・影武者
「これで完璧じゃろう!」
三日月の仮面を被ってポーズを決め、魁厳が河童忍者達から意見を聞く。
河童忍者達の話ではホンモノと比べて、『ヘッポコ』ぶりが再現し切れていないため、とても合格点を出すレベルには達していない。
「うむむ、ならば‥‥。三日月の仮面をしている自分は、玄武殿の影武者で、自分ではない。自分ではない。自分ではないのじゃあああ! ‥‥と、こんな感じで、どうじゃろうか?」
強く自己暗示をかけて玄武になりきり、魁厳が三日月の仮面をキラリと輝かせる。
しかし、河童忍者達は納得する事が出来ず、魁厳にあれこれと文句を言い始めた。
「な、何!? これでも駄目か。じゃが、これも五輪祭を乗り切るためじゃ‥‥」
そう言って魁厳が再び玄武の真似をし始めるのであった。
●真犯人
「‥‥まさかこんな事になっちまうとはな。完全に依頼を舐めてたぜ。待ってろ、玄武。必ず救い出してやるからな」
ニセ玄武を捕縛するため、龍深城我斬(ea0031)が温泉宿に向かう。
この温泉宿はニセ玄武が所属している、えろがっぱーず第3支部の近くにあり、罠を張るには格好の場所である。
「玄武殿も災難な事だ。早く無実を晴らし、とき和殿を安心させて差し上げねば‥‥」
温泉宿の暖簾を潜り、ルミリア・ザナックス(ea5298)が脱衣所に入っていく。
既にえろがっぱーずが隠れているようだが、ルミリアがわざと気づかないふりをして、もったいぶった様子で服を脱ぐ。
「彼女のためにも何とか無実を証明しなければなりませんね」
脱衣所に背を向けながら、三笠明信(ea1628)が恥ずかしそうに咳をした。
まさか混浴風呂だとは思っていなかったため、脱衣所に入っていいのか悩んでいる。
「やはり、えろがっぱーず、女の敵ですわね。ましてや、冤罪を行うとは、許せませんわ。捕まえて、切腹でもさせましょうか」
不機嫌な表情を浮かべながら、九紋竜桃化(ea8553)が服を脱いでいく。
幸いな事に河童達は桃化の裸を見るのに夢中で、会話の内容までは聞いていない。
「‥‥冤罪か。玄武衆と言う、河童達の忍軍を率いていながら、このような事が起きるとは‥‥。つくづく世は、分らぬ物だ。今宵は暗殺剣士に戻り、悪しき、第三支部首領を捕らえると致そう」
桃花達の裸を見ないようにして服を脱ぎ捨て、マグナ・アドミラル(ea4868)が温泉に浸かる。
しかし、河童達は男の裸には興味が無いため、誰もマグナのいる方向は見ていない。
「玄武には義理も無いけど、五輪祭が中断なんて面白く無いわね。最近、暇を持て余していたから協力してあげるわ」
河童達の隠れている場所を特定しながら、アイーダ・ノースフィールド(ea6264)がニセモノを探す。
ちなみにニセ玄武は満月の仮面を被って堂々と立っており、興奮した様子で瞳をギラギラとさせている。
「お二人とも、誠に綺麗な肌で‥‥。むぅ、桃化殿、いかにしてそれほどのバストを‥‥」
ウットリとした表情を浮かべ、ルミリアが桃化の胸を揉む。
そのため、桃化もクスリと笑い、河童達に見せつけるようにして肌を近づける。
「ふたりだけで楽しむなんて‥‥。ちょっと嫉妬しちゃうわね」
さりげなくルミリアの胸を揉み、アイーダが辺りの様子を窺った。
その光景に河童達は満足したのか、両手に木を持ってコソコソと近づいていく。
「は、ぁんっ‥‥ちょ、アイーダ殿?! ムネを揉まないで下され‥‥! ‥‥ぁ、んっ」
艶かしい声を出して河童達の気を引き、ルミリアがペット達に合図を送って逃げ道を塞ぐ。
しかし、河童達は覗く事に夢中になっているため、自分達が窮地に陥っている事に気づいていない。
「ようこそ、罠の中心へ。せっかくの艶姿だけど、これで見納めよ。冥土の土産になるかも知れないわね」
ペット達の名前を呼んで河童達に攻撃を仕掛け、アイーダがシューティングPAEXと組み合わせてダーツを投げる。
それと同時に河童達が蜘蛛の子を散らすようにして逃げようとしたが、既に逃げ道を塞がれているため悲鳴を上げた。
「いまさら逃げようとしたって手遅れですわ。‥‥あれだけ覗きを堪能したんですから、思い残す事は無いでしょう?」
オーラエリベイションを使って士気を高め、桃化がスマッシュを放って河童達を蹴散らしていく。
その間もニセ玄武は温泉のオブジェと化しており、カタカタと身体を震わせている。
「ほらよっと、これで終わりだ!」
戸板に擬態していたトロ石と連携を取り、我斬がラーンの投網を使って河童達を捕まえていく。
事前にゴルゴと連絡を取っていた事もあり、投網に入らなかった河童達も彼特製の罠に嵌って捕まった。
「ふぅ‥‥、これで全部の河童が捕まったようですね」
ホッとした表情を浮かべ、明信が河童達を縛り上げる。
それと同時にニセ玄武がゆっくりと動き出し、隙を見てダッシュで逃げようとした。
「おっと‥‥、何処に行くのかな? わしらはお前に用があるんだが‥‥」
すぐさまスマッシュを放ち、マグナがニセ玄武の胸倉を掴む。
マグナは隠身の勾玉と忍び足を使って気配を消していたため、ニセ玄武に気づかれる事なく近づく事が出来たらしい。
「‥‥コイツがニセ玄武か。間違いないのだろうな」
明信の視線に気づいて頬を染め、ルミリアがコホンと咳をする。
「間違いありません。‥‥ニセ玄武です」
ルミリアと視線を合わす事も出来ず、明信が小さくコクンと頷いた。
ふたりともニセ玄武を捕まえる事に夢中だったため、裸に近い状態でいた事を忘れていたらしい。
「わ、わしは無実じゃ」
いまにも泣きそうな表情を浮かべ、ニセ玄武が嫌々と首を横に振る。
「ボケ爺だろうがなんだろうが構わんよ。‥‥そう、玄武の形さえしてればそれで良い。お前が選べるのは此処で死ぬか真面目に牢でお勤めを果たすか二つに一つだ」
ニセ玄武をジロリと睨みつけ、我斬がキッパリと言い放つ。
どちらにしてもニセ玄武さえ捕まえる事が出来れば問題ない。
「まぁ、これから色々と聞く事もあるからな。素直に話してくれるといいんだが‥‥。拒否した場合は清十郎に頼んで、カマを‥‥。いや、なんでもない。気にしないでくれ」
ニセ玄武の恐怖心を煽るようにして、マグナが怪しくニヤリと笑う。
その一言でニセ玄武は観念したのか、ションボリとした表情を浮かべて肩を落とす。
「それじゃ、玄武を助けに行きましょうか」
そう言ってアイーダがニセ玄武を連れて、玄武を助けに向かうのだった。
●ゾクゾク影武者
「夕日に向かって泣いて走れ! 玄武衆のォォォ忍者力はァァァァジャパン一ィィィィ」
間違った方向に暴走しながら、魁厳が夕日に向かって走り出す。
どんなに頑張って真似をしても、河童忍者達が文句を言うため、半ばヤケになって山道を走っていく。
「し、師匠! 何故、山を走るのですか?」
いきなり魁厳が走り出したため、河童忍者達が不思議そうに首を傾げる。
特に理由はないのだが、少し心配になってきたようだ。
「‥‥走る理由か? それはな。そこに‥‥、山があるからさ!」
答えるのが面倒だったため、魁厳が適当な事を言う。
「げ、玄武様あああああああ!」
次の瞬間、河童忍者達が大粒の涙を浮かべて魁厳に抱きついていく。
「こ、こんな事で良かったのか。げ、玄武殿って‥‥いったい何者でござるのかのぉ‥‥」
そんな事を思いながら、魁厳が夕日を見つめるのであった。
その後、ホンモノの玄武が里に帰ってくる事になるのだが、河童忍者達には見分けがつかなくなるほど、ふたりは似ていたとか、いないとか‥‥。