●リプレイ本文
●ごるびー
「はやや‥‥またゴルビーちゃんが捕まっちゃったですか〜。仕方ないですね〜。取り敢えず、ゴルビーちゃんを救出するために動くですよ〜」
苦笑いを浮かべながら、ベル・ベル(ea0946)が井戸のまわりを飛び回る。
既にごるびーが行方不明になってから1週間以上経っているため、このまま見つからなければ一座に所属しているペット達にまで影響が出てしまう。
「まさか、この井戸に落ちたって事は無いよね? ううっ、どざえもんになったごるびーちゃんなんて見たくはないなぁ‥‥」
青ざめた表情を浮かべながら、白井鈴(ea4026)が恐る恐る井戸の中を覗き込む。
井戸の底にはボンヤリと河童の頭らしきものが見えており、鈴達の存在に気づいて必死になって頭を隠す。
「あっ、いた! ごるびーちゃんだ! きっと井戸に落ちたまま、出られなくなったのかも知れないね」
満面の笑みを浮かべながら、鈴が釣瓶を降ろしてごるびー(?)を助けようとする。
しかし、ごるびー(?)は釣瓶を掴まず、何故か鈴達と視線を合わせようとしない。
「ひょっとして恥ずかしがっているんですかね〜? ちょっと見に行って来るですよ〜」
不思議そうに首を傾げ、ベルが井戸の底へとむかう。
次の瞬間、ベルが悲鳴を上げて井戸から飛び出し、そのまま鈴に飛びついた。
「一体、何があったの!?」
驚いた様子でベルを見つめ、鈴が詳しい状況を聞こうとする。
そのため、ベルは身体をカタカタと震わせ、黙って井戸のある方向を指差した。
「まさか、ごるびーちゃんが腐っていたって事は無いよね? さっきまで動いていたような気もするし‥‥。それじゃ、他にも理由があるって事?」
信じられない様子で井戸を見つめ、鈴がダラダラと汗を流す。
それと同時に井戸から河童が現れ、鈴達を睨んでぺろりと舌を出した。
「ご、ごるびーちゃんがホンモノの河童になっちゃったみたいですよ〜」
ごるびーがホンモノの河童になってしまったのだと勘違いしたため、ベルが大粒の涙を浮かべて悲鳴を上げる。
「ひょっとして、あれがトノサマかな? でも、どうしてここに‥‥」
警戒した様子で後ろに下がり、鈴が相手の出方を待つ事にした。
しかし、トノサマは何も答えず、鈴達を睨んで森の中へと逃げていく。
「と、とにかく後を追うですよ」
そう言ってベルがトノサマの後を追いかける。
しかし、人数不足が祟ったため、トノサマを捕まえる事が出来なかった‥‥。
●獲露河童藩
「‥‥獲露河童藩ですか。多少なりとも河童の方々に関わって来た私でも知らない藩ですが、幾つかのキーワードを聞く内に、何となく知っている気がしますけど‥‥」
険しい表情を浮かべながら、ルーラス・エルミナス(ea0282)が腕を組む。
念のため玄武に協力してもらっているのだが、名前のニュアンスから何となくイメージする事が出来る。
「どうやら存在していない藩のようですし、これをどう読んでも『えろがっぱはん』としか読めません。‥‥つまり事件の裏に、えろがっぱーずが関係している事は間違いないという事です‥‥。多分、殿様と呼ばれているのは、えろがっぱーずの地方司令官トノサマの事でしょう」
河童達から集めた情報を元にして、琴宮茜(ea2722)が自分なりに推理をした。
えろがっぱーずの地方司令官トノサマは冒険者達によって退治され、しばらくの間どこかに投獄されていたようなのだが、えろがっぱーずが脱獄に協力したため、今は自由の身であるらしい。
「‥‥なるほど。えろがっぱーずにとって、トノサマはそれだけ重要な存在という事ですね。だからと言ってごるびーさんを連れ去るのはどうかと思いますが‥‥。それに自分達の殿様くらいしっかりと判別できないんですかね。‥‥全くいい加減なものです」
茜の纏めた資料を見つめ、瀬戸喪(ea0443)が疲れた様子で溜息をつく。
本来ならここでトノサマを捜しに行かなくてはならないのだが、そこまで動く事が出来るほど参加者達が集まっていない。
「随分と苦戦しているようだな。‥‥頑張っているか?」
高笑いを響かせながら、玄武が三日月の仮面を輝かせる。
何かいい事があったのか、無駄にテンションが高い。
「お久しぶりです、玄武様。えろがっぱーずの首領と誤解しており申し訳有りません。此処に深くお詫び致します」
真剣な表情を浮かべながら、ルーラスが深々と頭を下げた。
「はっはっはっ、気にするな! 誰だって間違いはあるさ。そんな事より、獲露河童藩を見つける方が先だろ。一緒に頑張ろうぜ!」
三日月の仮面をキラリと輝かせ、玄武がルーラスの肩を抱く。
仮面を被っているためよく分からないが、無駄に爽やかな笑みを浮かべている。
「そ、そうですね。残念ながら獲露河童藩が何処にあるのか分かりません。しかし、これがえろがっぱーずの隠し名だとしたら、茜さんの言う通り地方司令官トノサマが関わっている可能性が高いと思うのですが‥‥」
ホッとした様子で溜息をつきながら、ルーラスが玄武に調査の結果を報告した。
「‥‥なるほどな。トノサマかぁ‥‥。でも、確かあいつらの支部は壊滅したんじゃないのか? まぁ、残党が残っているとしたら、あり得ない話でもないか」
しみじみとした表情を浮かべ、玄武が納得した様子で腕を組む。
河童忍軍から色々と噂は聞いているのだが、えろがっぱーずの支部が復活していたとは驚きである。
「とりあえず、壊滅したはずの支部に行ってみましょうか。何か証拠が掴めるかも知れませんし、ここにいても埒が明きませんので‥‥」
他に獲露河童藩に関する情報が無かったため、茜がえろがっぱーずの支部にむかう。
既にえろがっぱーずの支部は冒険者達によって壊滅させられているため、二度と使用する事が出来ないように瓦礫の山と化している。
「こんな場所にえろがっぱーずが潜伏しているなんて信じられませんね。やはり、ここには‥‥」
何者かに気配を感じ、喪がジロリと瓦礫を睨む。
それと同時にえろがっぱーずが悲鳴をあげ、いきなり攻撃を仕掛けてきた。
「お、落ち着いてください! 私達は戦いに来たのではありません。ごるびーさんを取り戻しに来ただけです」
えろがっぱーずの攻撃を受け止め、ルーラスが大声で叫ぶ。
そのため、えろがっぱーずの動きが止まり、みんなで集まってコソコソと話をし始めた。
「‥‥本当に戦いに来たのではないのか?」
険しい表情を浮かべながら、えろがっぱーずのひとりがルーラスに話しかける。
男の名前は田吾作五平。
由緒正しい田吾作家の五男。
えろがっぱーずになるべく生まれ育った、エロ河童界のサラブレッドである。
「いまさら嘘を言ってもややこしくなるだけでしょう。先程も言ったように、ごるびーさんを返してくれれば、この支部を壊滅させるような事はしませんので御安心ください」
河童達に警戒されないようにするため、ルーラスが本当の事だけを話していく。
しかし、田吾作五平は表情を強張らせたまま、ルーラスの話に耳を傾けている。
「何か不満でもあるんですか? あなた達にとっても悪い話ではないと思うのですが‥‥」
田吾作五平の顔色を窺いながら、茜が言葉を選んで返事を待つ。
これ以上、彼らを刺激しても意味が無いため、茜も随分と慎重になっている。
「‥‥断る。我々には象徴となる人物が必要だ。カリスマ性のある偉大なる存在が‥‥。本当にごるびーを返して欲しいのなら、ここにトノサマを連れてくるのだな」
クールな表情を浮かべながら、田吾作五平がキッパリと答えを返す。
トノサマ以外のものは興味がないのか、ルーラスが色々な条件を出しても、決して首を縦に振ろうとしない。
「何だか面倒な事になりましたね。何とかしてトノサマを見つけねば‥‥」
そう言って喪が困った様子で溜息をつくのであった。