●リプレイ本文
●村
「かなり厳しい状況の様だな。だが、捨て置く訳には行かぬ」
韋駄天の草履を履き、李飛(ea4331)が被害の遭った村にむかう。
しかし、村に向かったのが李ひとりだったため、何か遭った場合は避難するしかない。
「‥‥ここか」
険しい表情を浮かべながら、李が村の中に入っていく。
それと同時に村人のひとりがクワを振り下ろし、雄叫びをあげて襲い掛かってくる。
「言葉を尽くした所で、お前達の味わった苦しみを理解する事は適わぬ。それで気が済むのなら、幾らでも打つが良い」
デッドorライブを使って攻撃を受け止め、李が村人達を見つめて大声で叫ぶ。
しかし、村人達は李の言葉に耳を貸さず、容赦なくクワを振り下ろす。
「虫の良い言い分なのは分っている。だが、もう一度だけ、我等を信じてはくれまいか。今度こそ賊を倒し、人質を解放してお前達をこの苦しみから解き放って見せる」
深々と頭を下げながら、李が村人達に訴えかける。
「早くこの村から去れ! 去らねば命はないぞ!」
李の胸倉を掴み上げ、村人が拳を振り上げた。
しかし、途中で殴る事を止め、李を村の外に放り出す。
「帰れ! お前ひとりがここに来たくらいで何になる! お前が村から出て行かないのなら、わしらが村から出て行くだけだ!」
そう言って村人達が李めがけて塩を撒いた。
●人質
「どうやら過去に起こった出来事が尾を引いてしまったようですね」
何処か寂しそうな表情を浮かべながら、神有鳥春歌(ea1257)が茂みに身を隠す。
天牙に潜入していたスパイが無残な死体となって発見されたため、本拠地は移動してしまっているようだが、人質になっている村人達が旧アジト(洞窟)に閉じ込められている。
「‥‥なんだ。人質解放かよ。まぁ、いいけどな。まずは見張りを黙らすか。おい、あのふたり以外に見張りが隠れていないか調べてくれ」
険しい表情を浮かべながら、拍手阿邪流(eb1798)が腕を組む。
旧アジトに立っている見張りはふたり。
ふたりとも蛮刀を構えて辺りを睨んでいる。
「にゅ? 多分、ふたりだけじゃないのかな? 他は人質だけだと思うよ?」
ブレスセンサーを使って辺りの気配を探り、凪風風小生(ea6358)がボソリと呟いた。
旧アジトの中にも人の気配はあるのだが、それほど違いがないため区別は出来ない。
「もともと天牙は人質を取られて脅されている村人達の連鎖によって出来た組織だと言われています。すなわち天牙に所属している大半の者が元は村人達だったと言う事になります」
冒険者ギルドで入手した資料を読みながら、海上飛沫(ea6356)が溜息をつく。
そのため、天牙に所属している者達がすべて『悪』だとは断言できない。
「どっちにしたって、このまま人質を見捨てるわけには行かないだろ? 例え天牙の連中が元は村人だったとしても、こんな事をしていたら御終いさ」
読唇術を使って見張りの会話を読み取りながら、クリスティーナ・ロドリゲス(ea8755)が答えを返す。
一瞬の迷いが命取りになるため、いまさら手加減は出来ない。
「‥‥やるしかないって事だね」
覚悟を決めた様子で旧アジトの入り口を見つめ、風小生がゴクリと唾を飲み込んだ。
それと同時にクリスティーナが弓矢を放ち、見張りをしていた男達を倒していく。
「ああ‥‥、このまま尻尾を巻いて逃げるわけにはいかないだろ?」
警戒した様子で辺りを見回しながら、クリスティーナがアジトにむかって走り出す。
一発で見張り達を仕留めたせいか、騒ぎを聞きつけてやって来る者はいない。
「お、おい! そんなに突っ走って大丈夫か!? 狙い撃ちされても知らねえぞ!」
慌てた様子でクリスティーナの後を追い、拍手が旧アジトの中に転がり込んだ。
しかし、旧アジトにも天牙の姿はなく、人質となった村人達のいる部屋にむかう。
「ど、どういう事ですか? みんな縛られていない」
信じられない様子で村人達を見つめ、飛沫がダラリと汗を流す。
「やっぱり、あの人が言った事は本当だったんだ‥‥。私達の夫はこの人達に殺された‥‥」
虚ろな表情を浮かべて、人質だった女が立ち上がる。
ボロボロと涙を流し‥‥。
右手には錆びたナタを握り締め‥‥。
それに合わせるようにして、次々と他の村人達も立ち上がっていく。
「ご、誤解です! 私達はあなた達を助けに来たんですよ? それなのに、どうして!」
納得のいかない様子で村人達を見つめ、春歌がジリジリと後ろに下がる。
春歌達が本気を出せば村人達を大人しくさせる事は簡単だが、それではここまでして助けに来た意味が無い。
「ま、まさか‥‥、敵はここまで予想していたって事!? それじゃ、村にいる人達も‥‥」
最悪の事態が脳裏を過ぎり、風小生が大きく目を開ける。
脳裏に過ぎるのは、先程の言葉‥‥。
‥‥天牙の者達も元は被害者だった。
「畜生! こんな事なら村に行ってりゃ良かったな。汚ねえ真似をしやがって!」
女の振り下ろしたナタを受け止め、クリスティーナが大声で叫ぶ。
‥‥見張りが二人しかいなかった理由が何となく分かってきた。
そして、ここに閉じ込められていた村人達は、村に残った者達と逆の事を言われていたのであろう。
「‥‥仕方ねえな。そんなに俺達の事を信用する事が出来ないのなら自分達の目で確かめろ。村まで帰る事ぐらい出来るだろ?」
このままでは村人達まで手に掛けなくてはならないため、拍手が捨て台詞を残して逃げていく。
ここに村の残った人達がいれば、説得する事も可能であったが、この状況では仕方が無い。
「これだけは信じてください。自分達はあなた達を助けたいだけです」
適当な木切れを使ってアイスコフィンを掛けてバリケードを作り、飛沫が村人達にペコリと頭を下げる。
彼女の作ったバリケードは簡単に飛び越える事が出来るものだが、村人達を足止めするには充分だ。
「‥‥すみません。動かないで欲しいだけです」
そう言って春歌が踵を返して旧アジトから逃げ出した。
●天牙
「天牙の被害が拡大したのは、我々冒険者の責任です。ならば今度こそ天牙を壊滅させ、ギルドの力を見せて不安に苦しむ人々を助けましょう」
険しい表情を浮かべながら、アルフレッド・ラグナーソン(eb3526)が天牙のアジトにむかう。
天牙の拠点はいくつかあるのだが、そのひとつが調査の末に判明した。
「それにしても、天牙のやり方には腹が立ちますね。弱者を虐げるとは許せません!」
明かりの代わりに『妖しい輝き』を連れて行き、拍手阿義流(eb1795)が茂みに身を隠す。
天牙のアジトには見張りが立っており、武器を構えて辺りを見回している。
「‥‥見張りの数はふたり。近くの茂みに4人。砦の中に10人。合計16人か。この人数でも何とかなりそうだね」
十手を構えて砦を睨み、紫電光(eb2690)がブレスセンサーを使う。
砦に待機している男達は敵の襲撃を警戒し、交代で見張りを続けている。
「だったら一気に叩いちまうっべ。途中で仲間が帰ってくるかも知れないっべからな」
興奮した様子で鼻息を荒くしながら、郷地馬子(ea6357)が金属拳を装着した。
それと同時に見張りの声が響き渡り、砦の中からゾロゾロと男達が飛び出していく。
「‥‥ちょっと人数が多過ぎたようですね」
砦のまわりに隠れる場所が少なかったため、小坂部小源太(ea8445)が日本刀を構えて男達の相手をする。
男達の力量はゴロツキ以下で、隙だらけである。
「これじゃ、隠密行動も無意味じゃな」
襲い掛かってきた男に当て身を食らわせ、尾庭番忠太(ea8446)が溜息をつく。
しかし、男達は唸り声を上げて立ち上がり、フラフラとしながら襲い掛かってくる。
「ガツンとブチかましてやれば問題ないべ!」
ストーンアーマーを使って守りを固め、馬子が砦めがけてグラビティーキャノンを放つ。
次の瞬間、砦の見張り台が吹っ飛び、男が悲鳴をあげて落ちてくる。
「とにかく砦だけでも破壊しておきましょう」
すぐさまトールの十字架に持ち替え、小源太が砦の壁を狙ってバーストアタックを叩き込む。
それと同時に男達が小源太に殴りかかり、命懸けで砦を守ろうとした。
「‥‥すまないが、このまま砦を残しておくわけにはいかんのでな」
大ガマの術を使って巨大な蝦蟇を召喚し、番忠太が小源太の攻撃した壁に体当たりを食らわせた。
「それにしても天牙は素人の集まりのような集団ですね。何人かゴロツキ風情が混ざっているようですが‥‥」
スクロールを広げてアグラベイションを発動させ、阿義流が男達の動きを遅くさせて当て身を放つ。
このまま殺してしまう事も出来たが、相手がやけに弱過ぎるため手加減した。
「‥‥何だか妙だね。ちょっと弱過ぎない?」
ソードボンバーを使って男を倒し、光が不思議そうに首を傾げる。
それと同時に砦が音を立てて崩れ、中から真っ赤な鎧を纏った男が現れた。
「あ、あれは‥‥黄泉人!? なんでこんな場所に!?」
信じられない様子で黄泉人を見つめ、阿義流がスクロールを広げようとする。
しかし、黄泉人の素早く刀を振り下ろしてきたため、念じる暇もなく敵の攻撃を喰らって気絶した。
「どうやらコイツが黒幕のようじゃな。一体、何の目的があって、こんな事をしているのじゃ」
自らの身を挺して阿義流を守り、番忠太がデッドorアライブを使ってダメージを軽減する。
それでも黄泉人は攻撃の手を休めず、番忠太達に襲い掛かってきた。
「うちの仲間はやらせねえ!」
すぐさまグラビティーキャノンを放ち、馬子が番忠太達を連れて逃げていく。
その間にアルフレッドがコアギュレイトを放ち、黄泉人の動きを封じ込める。
「は、早く! いまのうちにトドメを!」
仲間達にむかって声を掛け、アルフレッドが黄泉人を睨む。
黄泉人はコアギュレイトの戒めから逃れて動こうとしたが、アルフレッドが再びコアギュレイトを使って動きを封じ込めた。
「行きますよ、光さん!」
光と平行に並んで必殺技『雷火扇陣』を放ち、小源太達が黄泉人にトドメをさす。
必殺技『雷火扇陣』は小源太の武器に付与したバーニングソードと、光の武器に付与したライトニングソードに加え、ソードボンバーを同時に放つ事によって為せる技である。
「‥‥天牙か。何か裏がありそうだね」
そう言って光が十手を握り締めるのであった。