●リプレイ本文
「スリット、ふともも、カタコトのジャパン語っ! よーこそジャパン、異文化交流万歳っ!」
ヒャッホイとばかりに両手を広げ、朝宮連十郎(ea0789)がミンメイにむかって飛びついた。
『おイタが過ぎますわよぉ〜』
すぐさま劉迦(ea0868)がミンメイの前に立ち、連十郎の喉元にナイフをペタペタと当てる。
「なんだかよく分からねぇけど‥‥踊り子さんには触れるなよって事か? 分かったよ! 大人しくしていればいいんだろ」
しょんぼりとした様子で迦を見つめ、連十郎が小さくミンメイに手を振った。
ミンメイも連十郎に気づいて小さく手を振り答えを返す。
「‥‥ミンメイか。なんだかいいな気に入った。俺は浪人、南天輝だ。アキラでいいぞ、ミンメイお前が呼ぶのならな。これからよろしくな」
爽やかな笑みを浮かべながら、南天輝(ea2557)がミンメイと握手する。
「ヨロシクある♪」
輝の両手をぎゅっと握り、ミンメイがニコリと微笑んだ。
あまり他人に対して警戒心がないのか、ミンメイの表情には全く曇りがない。
「いやぁ、ギルド公認でいじめていいなんて‥‥、胸が躍るねぇ♪」
張り切った様子で笑みを浮かべ、荒神紗之(ea4660)が指の関節を鳴らす。
手加減は無用という事なので、暴僧達を血祭りに上げるつもりでいるらしい。
(「ミンメイさんと仲良くなって、ジャパンの誤った知識を吹き込むですよー」)
妙な野望を胸に秘め、七瀬水穂(ea3744)がミンメイと握手をかわす。
既にミンメイは間違った知識を頭に叩き込まれているのだが、それでも水穂は満足していないためか色々と胡散臭い知識を教え込むつもりらしい。
「何かリクエストがあったら遠慮なく言ってね」
なるべくミンメイの希望に答えるため、レオーネ・アズリアエル(ea3741)が希望のシチュエーションを彼女に聞く。
ミンメイは派手な戦闘を希望しているようで、リアリティよりも面白さを求めているようだ。
「久しぶりに同朋に会えたんで、ちょっと嬉しいわ☆」
興味津々と言った様子で、郭梅花(ea0248)がミンメイにむかってニコリと笑う。
梅花もミンメイと同じ華国の出身のため、故郷の会話に花を咲かせている。
「ジャパンは凄いアル。お金持ちはみんな『ニョタイモリ』を食べるアル。どんなモノかよく分からないアルが、とっても贅沢な食べ物らしいアルね」
ボロボロになった紙切れを見つめ、ミンメイが自分の取材した金持ちの話をし始めた。
随分といやらしいオッサンではあったが、色々と面白い話を聞けたらしい。
「ニョタイモリ‥‥? 随分と変わった名前の料理ね。‥‥初耳だわ」
どんな料理か想像する事も出来ず、梅花が大きなハテナマークを点滅させる。
ミンメイの話が本当なら、物凄く贅沢な料理なのだろう。
「おーし、カワイイミンメイちゃんの執筆活動の為にいっちょ暴れてやろうか!」
そして連十郎は拳を力強く握り締め、ミンメイを見つめてニカッと微笑むのであった。
「ふむ、要は僧侶修行を途中でドロップアウトした根性無しどもが相手と言う事か? 根性がないからそのような事になるのだ。鍛え直す必要があるな。なぁに、我輩に任せるがいい。曲がった根性力ずくで真っ直ぐに矯正してくれるわ!」
豪快な笑い声を響かせながら、ゴルドワ・バルバリオン(ea3582)が瞳をギラリと輝かせる。
暴僧達の処遇は冒険者達に委ねられているため、ミンメイが帰った後は何をしても構わない。
「ミンメイ殿の話を聞く限り一部誤った見解もあるようじゃが‥‥、此度はさて置きとりあえず仕置きじゃな」
不敵な笑みを浮かべながら、秀真傳(ea4128)が手荷物を持って暗がりに消える。
どうやら傳には暴僧族を懲らしめる秘策があるらしい。
「ミンメイさんが暴僧族をお仕置きする事を望んでるから、頑張って『派手に』、『面白く』連中を懲らしめる事にしましょう」
大きな胸を可愛く揺らし、レオーネが優しくニコリと微笑んだ。
「‥‥とはいえ、我輩は酒が苦手なので、酒場の外の適当な所で待機しておく必要があるな」
酒を呑むと説教が始まり暴れ出してしまうため、ゴルドワが少し離れた場所に移動し仲間達の連絡を待つ。
「それじゃ、お留守番よろしくね。あたしはミンメイさんを守っていないと駄目だから♪ ミンメイさんの暴僧‥‥もとい、暴走を押さえつつ‥‥ね☆」
ゴルドワの耳元で囁きながら、梅花が小さく彼にウインクする。
「破戒僧がどの酒場にいるのか分かるのだろう? まあ群れた目立つ集団、存在自体も迷惑であろうが他にどんなことしてるんだ。まあ遠慮なく殴れる存在だと分かれば問題ない」
指の関節をポキポキとならしながら、輝がミンメイにむかって声をかけた。
するとミンメイは一軒の酒場を指差し、筆を片手に瞳をランランと輝かせる。
「暴僧族‥‥僧にあるまじき行為、じっくり灸を据えねばのう」
そして傳は妖艶な女性に化け終え、暴僧族のいる酒場へと歩き出すのであった。
腰を妖しく左右に揺らし‥‥。
「へぇ、なかなかかっこいいじゃないかい、兄さんたちもよ」
酒場で呑んだくれている暴僧達にむかって声をかけ、田崎蘭(ea0264)が露出度の高い着物姿で席に座る。
暴僧達は総立ちになって蘭の傍まで駆け寄ると、いやらしい目つきで蘭の身体を舐めまわす。
「げへへっ、姉ちゃん達も綺麗だぜ」
蘭と一緒にやって来た冒険者達の顔を見つめ、暴僧族が卑下た笑みを浮かべて身体を触る。
「まさかここでどうこうしようってぇ訳じゃないんだろう‥‥? それとも兄さんたちに、私をいい気分にさせられるって言うのかい?」
暴僧達の耳元で甘い言葉を囁きながら、蘭が男の胸元で優しく指を這わす。
「あそこの奴等は何時もあんな感じなのか。‥‥大変だな」
店主に酒と簡単なつまみを頼み、輝が暴僧達の様子を窺った。
暴僧族は蘭の色気にメロメロなのか、既にまわりが見えていない。
「みんな大胆アルな。ちょっとドキドキある」
恥ずかしそうに頬を染め、ミンメイが俯き加減にメモを取る。
蘭があまりに大胆なため今にも気絶しそうになっているが、ミンメイもこれが仕事であると割り切り、目の前で繰り広げられている状況を事細かに記す。
「大人の世界ですよね〜」
指の隙間からちょっぴり覗き、水穂が心臓を高鳴らせる。
見てはいけないと分かっていても、会話の内容が気になり見てしまう。
「私にはとても真似できません」
気まずい様子で視線を逸らし、琴宮茜(ea2722)がちょこんと椅子に座る。
「傳さんまでなんて格好をしているの」
目の前の美女が傳であると分かったため、レオーネが小声で傳に囁いた。
「いや、下手に酒場で暴れられても迷惑じゃ。娘御ならば油断するやもしれぬし色仕掛けで外へ連れ出そうという策での。わしは背こそ高いが線は細めじゃし髪は自前で長い。顔立ちも幸い? 中性的らしく‥‥あー『僧侶には衆道も♪』という声も小耳に挟んだが、あえて無視して良いじゃろうか?」
暴僧達の視線を気にしつつ、傳が苦笑いを浮かべて答えを返す。
「どんな事をされても我慢してね。そっちの趣味の方もいるようだし‥‥」
一番奥の席に座った暴僧を指差し、レオーネがクスリと笑って他の席へと移動する。
「そっちの‥‥趣味?」
一瞬、背中がゾクッとした。
確かにあの男だけ青紫色の気配がする。
もう少しうまく例えるなら危険な香りがするという事だ。
「破戒僧には、天にも昇るよーな気分で、地獄に落ちてもらいましょう」
天使のような笑みを浮かべ、レオーネが傳に小さく手を振った。
「他人事だと思って‥‥」
女装した事を後悔しつつ、傳が大きく深呼吸をする。
ハイエナの群れに飛び込む羊並に危険な任務のため、なるべく相手に背中を見せないようにして移動しなければならない。
「なんだか面白い事になってるね。どれどれ、しばらく見守るか」
暴僧の横に座って酒を呑み、紗之がゲラゲラと笑い出す。
傳の表情は真剣そのものだが、動きが滑稽なため笑いが止まらない。
「ほらほら、酒を呑む手が止まっているよ。私の酒が呑めないって言うのかい? これからあっちはお楽しみなんだから、そんな目で見ていたら野暮になるよ!」
険しい表情を浮かべる暴僧に気づき、紗之が誤魔化すようにして酒を並々と注ぐ。
それがミンメイには面白く映ったのか、目の前の紙に素早く筆を走らせた。
「そういやあんたら博打も得意なんだろ? 私と勝負しないかい?」
なかなか傳から視線を逸らそうとしないため、紗之が着物の帯を外して色仕掛けで攻める。
傳を警戒していた暴僧は苦笑いを浮かべながら、紗之の腰を抱き寄せ博打をするため席を移動した。
(「‥‥かなり酒が回ってきたようだな。そろそろ行動を起こすか」)
暴僧の杯に酒を注ぎ、桐沢相馬(ea5171)が辺りの様子を窺った。
ミンメイも新たな刺激が欲しいのか、少し暇そうにしているようだ。
「イテッ‥‥何をするじゃ」
暴僧の逞しい右手が下腹部まで伸びたため、傳が全身に鳥肌を立たせてぺチンと叩く。
「何か‥‥妙な物が‥‥」
不思議そうに自分の手を見つめ、暴僧が驚いた様子で首を傾げる。
「おっほっほっ、気のせいなのじゃ」
乱れた着物を慌てて直し、傳が苦笑いを浮かべて視線を逸らす。
「テメー、男だな〜」
妙な物の正体が判明し、暴僧が烈火の如く怒るとテーブルをひっくり返し、傳の胸倉を掴んで啖呵を切る。
「おい、無闇に店の中で暴れるんじゃねえ。半端者が! 店主、勘定ここに置いておく」
そして輝は暴僧の右手を乱暴に掴み上げ、他の仲間達と一緒に外に出て行くのであった。
「おう、そこの腐れ坊主ども。女ァ侍らせて随分お楽しみのよーだが、そっちの女達は俺らントコのモンでな。そろそろ奉仕料金延長料金込みで精算してもらうぜ?」
酒場から出てきた暴僧族を睨みつけ、連十郎が胸倉を掴んで睨みを利かす。
暴僧達は何が起こったのか分からぬまま、きょとんとした表情を浮かべて蘭を睨む。
「私を満足させるにゃ、ちょいとばかり若すぎたネェ?」
勝ち誇った様子で胸を張り、蘭は妖しく口元を歪ませる。
「テ、テメー!」
いまにも爆発しそうな勢いで近くにあった棒切れを拾い、暴僧達が大声を上げて蘭の事を取り囲む。
「聞いてンのかコラ。楽しんだ後なら、しっかり代償は払え」
バーストアタックで暴僧の持っていた棒切れを壊し、連十郎が荒々しい口調で暴僧達を威嚇する。
「う、うるせぇ!」
自分が嵌められた事を悟り、暴僧達が不機嫌な様子で壁を叩く。
「おっと‥‥、貴様らの相手はこの俺だ。相手を間違っているんじゃないのか?」
蘭を守るようにして前に立ち、輝が刀を使わず峰打ちした。
暴僧達は警戒した様子で輝を睨み、木の棒や農具を構えて威嚇し始める。
「挑戦状なのです。夜露死苦なのですー」
戦いに巻き込まれないようにしながら、水穂が暴僧達にむかって六尺褌を投げつけ、パタパタと逃げていく。
「なんで褌を相手に投げるアルか?」
不思議そうに水穂を見つめ、ミンメイが首を傾げて呟いた。
「純白の褌を相手に投げつけるのが、ジャパンの伝統的な戦いの合図なのです。うん、間違いないですー」
まわりの反応も気にせず、水穂が力強く断言する。
本当はそんな伝統などないのだが、ミンメイは何も知らないため、納得した様子で紙に記す。
「生意気な奴め! ぶっ殺してやる!」
棒切れをブンスカと振り回し、暴僧達が次々と攻撃を仕掛ける。
「貴様らの血で俺の剣は汚させんよ」
オフシフトとカウンターアタックを駆使し、輝が襲い掛かってくる暴僧達を倒していく。
「はっ、弱いねぇ、そんなんじゃ女一人も自由に出来ないよ。それとも呑み過ぎたから調子が出ないってかい? だったら私だって同じだよ!」
暴僧の攻撃を難なくかわし、紗之が素早く蹴りを放つ。
あの程度の酒では全く酔う事がないため、紗之の技には充分なほどのキレがある。
『ミンメイさんはこちらに避難しておくとよいですわ〜』
ミンメイが前に出過ぎたため、迦が袖を引いてニコリと笑う。
もう少し戦いを間近で見たかったのか、ミンメイは残念そうに後ろに下がる。
「私達を人質にする可能性もありますからね」
暴僧達からミンメイを守るため、茜がフェイントアタックを放つ。
「貴様ら、健全なる精神は健全なる肉体に宿ると言う言葉を知っているか? そう、貴様らの様な根性無しの更正には体を鍛える必要があるという意味だ!」
暴僧達が答える間すら与えず、ゴルドワが自慢の豪腕で暴僧を殴る。
「それにしても数が多いな。弱いぶん数で勝負ってわけか」
何処からか集まってきた暴僧達に嫌気が差し、相馬が疲れた様子で愚痴をこぼす。
「ひょっとしてピンチあるか」
心配した様子で筆を止め、ミンメイが相馬達を指差した。
「ジャパンではこういう時に応援歌を歌うのです! さぁ、ご一緒に! きゅーんきゅーん、きゅーんきゅーん、わたーしの彼は傘貼り浪人♪」
戸惑うミンメイの手を握り、水穂が歌にあわせて踊りを踊る。
ミンメイもよく分かっていないようだが、水穂の動きに合わせてぎこちなく身体を揺らす。
「あたしも一緒に歌った方がいいのかな?」
ふたりのテンションについていけず、梅花が困った様子で頬を掻く。
「まずはあいつらから狙え!」
無防備なミンメイ達を狙い、暴僧達が雄たけびを上げる。
『女性に手を上げるのは感心いたしませんわね〜〜』
にこやかな笑みを浮かべながら、迦が暴僧達に鳥爪撃を叩き込む。
「歌うのは構わないが怪我のないようにな」
暴僧の顔面めがけてパンチを放ち、輝が苦笑いを浮かべてミンメイを守る。
「そろそろ本気を出しますか」
暴僧達が戦意を失い始めたため、茜がナイフを構えてニコリと笑う。
「坊主頭に武器とその服は似合わないわ」
勝ち目がないと悟った暴僧が襲い掛かってきたため、レオーネが華麗なナイフさばきを披露し派手な帯を切断する。
「身包み剥いで晒し者の刑じゃな」
倒れた暴僧達の服を剥ぎ、傳が縄を使って縛っていく。
「‥‥なんだか妙な光景だな」
女装したまま陽気に騒ぐ傳を見つめ、相馬が困った様子で汗を流す。
村人達が怪訝そうな表情を浮かべているため、相馬も怪しげな一団の仲間であると認識されているらしい。
「まぁ、気にするな。この金でパァーッとやろうぜ!」
暴僧達の所持金を奪ってミンメイに渡し、連十郎が残った小銭で相馬達を呑みに誘う。
「我輩はこヤツらを鍛え直さねばならん! 立派な坊主にするためにな!」
そしてゴルドワは豪快な笑みを浮かべながら、暴僧族を連れて何処かの山寺へと姿を消した。