行方不明のごるびー

■ショートシナリオ


担当:ゆうきつかさ

対応レベル:フリーlv

難易度:易しい

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:7人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月21日〜07月26日

リプレイ公開日:2007年07月29日

●オープニング

●行方不明のごるびー
「ごるびーが行方不明アルゥ〜」
 大粒の涙を浮かべながら、ミンメイが冒険者達に助けを求める。
 ミンメイは連日のように押しかけてくる借金取りから逃げるため、しばらく自分探しの旅に出ていたのだが、ようやく纏まった金を手に入れ江戸に戻った時には、ごるびーが行方不明になっていた。
 いつからごるびーがいなくなったのか分からないが、棲み処として使われていた屋敷はしばらく使われた形跡がない。
 その上、ごるびーの友達もバラバラになっているため、連絡をつける事が出来なかった。
 そこでミンメイが頼ったのが、冒険者ギルドである。
 冒険者達に頼めば行方不明になったごるびーを、見つけ出す事が出来ると思ったのだ。

●今回の参加者

 ea0946 ベル・ベル(25歳・♀・レンジャー・シフール・モンゴル王国)
 ea4026 白井 鈴(32歳・♂・忍者・パラ・ジャパン)
 ea5927 沖鷹 又三郎(36歳・♂・僧兵・人間・ジャパン)
 ea5979 大宗院 真莉(41歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea8484 大宗院 亞莉子(24歳・♀・神聖騎士・人間・ジャパン)
 eb7311 剣 真(34歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ec3395 りら っち(28歳・♀・侍・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●一幕 ごるびー座
「‥‥ごるびーちゃんが行方不明かあ。最近、姿を見ないと思ったけど、それじゃ仕方ないよね。何か事件とか事故とかに巻き込まれてないといいんだけど‥‥。誰か良い人に保護されているといいんだけど‥‥、今までの事を考えると、確率が低いかも‥‥。変に野生化してないといいなぁ‥‥」
 しみじみとした表情を浮かべながら、白井鈴(ea4026)がイカを持ってごるびー座に訪れた。
 ごるびー座はごるびーが座長を務めたペット限定の劇団。
 試行錯誤の末、昔話を題材にした見世物などをやっていたようだが、閑古鳥が鳴いていたので借金がかさんでしまったらしい。
 ある意味、ごるびーもミンメイと同じ末路を辿っていたのである。
 そのため、ごるびーも誰かに借金をしていた可能性が高い。
 ミンメイがよく知っている悪徳商人ならば、例え相手が動物であっても金を貸す。
「ごるび〜ちゃ〜ん、どこですか〜。おいしそうに焼けたイカを持ってきたですよ〜」
 何処かにごるびーが隠れている可能性も残されていたため、ベル・ベル(ea0946)が上空からイカの匂いを漂わせる。
 ‥‥ごるびーはイカが大好物。
 何らかの理由でごるびーが隠れていたとしても、イカのニオイを嗅げば必ず姿を現すはずだ。
「やはり何処にもいないようでござるな。一体、ごるびー殿に何があったのでござろうか?」
 蜘蛛の巣だらけになった屋敷に入り、沖鷹又三郎(ea5927)が深い溜息をつく。
 屋敷はしばらく使われた形跡がなく、ちゃぶ台が埃を被っている。
「う〜む、困ったアルね。ちょっと反省アル」
 ごるびーがどこにもいなかったため、ミンメイがションボリとした様子で肩を落とす。
 さすがに今回はやり過ぎてしまったと思ったのか、彼女の顔から笑顔が消えている。
「お久しぶりですね、ミンメイさん。しばらく会わないうちに色々と遭ったようですが‥‥。賽銭泥棒なんてしなくても、仕事をして書き物を売れば細々と暮らせるはずですよね?」
 生暖かい視線を送り、剣真(eb7311)が溜息を漏らす。
 真は見世物小屋に言って情報を集めていたのだが、大した情報を得る事が出来なかったのでミンメイ達と合流した。
 ちなみにミンメイは借金取りに狙われる毎日が続いていたため、ストレスで文章が書けなくなっていた時期があったらしい。
「まぁ‥‥、江戸もゴタゴタしていたでござるからの。臆病なごるびー殿が逃げ出すのも無理ないでござる。しかし、ごるびー殿がどうしているのか心配でござるな」
 ごるびーの書き置きすら見つからなかったため、又三郎が残念そうに首を横に振る。
 身の回りのものが無くなっているため、ひょっとすると夜逃げをしたのかも知れない。
 一瞬、又三郎達の脳裏に最悪の結果が過ぎる。
「‥‥困りましたね。しかし、このままでは埒が明きません。きっと苦労なさっているでしょうから、是非とも救って差し上げたいですね」
 少しでもごるびーに繋がる情報を見つけるため、大宗院真莉(ea5979)がパタパタと掃除をし始めた。
 借金取りが来たわりには部屋が荒らされていないので、別の理由があって屋敷を出て行った可能性が高い。
「あっ、真莉さん。お久しぶりってカンジィ。ダーリンとはラブラブってカンジィ」
 能天気な笑みを浮かべながら、大宗院亞莉子(ea8484)がパタパタと手を振った。
 ‥‥亞莉子の夫は真莉の息子。
 先程まで大凧に乗って上空からごるびーを捜していたが、まったく手掛かりが見つからなかった。
「そうですか。お幸せそうでなりよりです。わたくしも見習いたいです」
そのため、真莉もにこやかな笑みを浮かべて答えを返す。
 辺りに漂うほんわかムード。
 しばらくの間、ほのぼのとした空気が漂った。
「それにしてもごるびーって、ロシア風の名前ってカンジィ。キエフに行っていたせいかなぁ?」
 真莉からごるびーの特徴を改めて聞き、亞莉子がニコリと微笑んだ。
 ごるびーはストレスに弱くてハゲやすかったため、その事も踏まえて捜す事になった。
「と、とりあえず手拭いが落ちていたですよー」
 立っていられないほどフラフラとしながら、ベルがごるびーの愛用していた手拭いを渡す。
 手拭いは裏口に落ちていたらしく、使い古されてボロ雑巾のようになっていた。
「これでごるびーちゃんの居場所が分かるかも‥‥。龍丸、獅子丸っ! ごるびーちゃんの匂いを辿って! ただし、ごるびーちゃんを見つけても、噛みついたら駄目だからね。すぐに吠えて知らせるんだよっ!」
 ごるびーの匂いをペット達に覚えさせ、鈴が仲間達を連れて追跡をする。
 そして、ペット達が向かった先は、江戸の外れにある見世物小屋であった。

●二幕 見世物小屋
「‥‥また来たのか。さっきも言っただろ。俺は何も知らないと言っただろ! 仕事の邪魔だから帰ってくれ!」
 不機嫌な表情を浮かべながら、見世物小屋の主が冒険者達を手で払う。
 あまり興行が上手くいっていないため、ごるびーの事で無駄な時間を費やしたくないようだ。
「こちらにごるびーさんがいらしたようですが、いなくなる前に何か気になる事はありませんでしたか?」
 なるべく見世物小屋の主を刺激しないように気をつけながら、真莉が言葉を選んでごるびーの居場所を聞き出そうとした。
 しかし、見世物小屋の主人は視線を逸らし、鬱陶しそうにフンと鼻を鳴らす。
「ほ、本当に何も知らないんですか〜? 例えば、ごるびーさんによく似た細長いナマモノとか〜?」
 最悪の事態を想定した上で、ベルがごるびーの特徴を説明する。
 場合によってはしばらく何も食べていなかった可能性もあるため、骨と皮だけになっている可能性も高い。
「だから知らないと言っているだろ! ここにごるびーは来ていないっ!」
 殺気に満ちた表情を浮かべ、見世物小屋の主が扉を閉める。
 しかし、鈴が右足を突っ込んできたため、出入り口の扉を閉める事が出来なかった。
「嘘をついたって分かるんだからね。これが何よりの証拠だよ」
 泥だらけになった手拭いをつきつけ、鈴が見世物小屋の主を睨む。
 手拭いには見世物小屋の名前が書かれており、ペット達も『嘘をつくな』と言わんばかりに吠えている。
「うぐ‥‥、ごるびーのヤツ。面倒ばかりかけおって!」
 悔しそうな表情を浮かべ、見世物小屋の主がギチギチと歯軋りした。
 本当は誤魔化し通すつもりでいたが、ここまで証拠が集まっているのでは仕方が無い。
 ‥‥見世物小屋の主人がようやく折れた。
「どんな些細な事でも構いません。ごるびーさんについて何か知っている事があったら教えてください。ごるびーさんがここに来た事は間違いないんです」
 祈るような表情を浮かべ、真が見世物小屋の主に迫っていく。
 ミンメイに金を貸していた取立て屋の話では、彼らが来た時には既にごるびーがいなかったらしい。
 ‥‥と言う事は、見世物小屋で何かトラブルが遭った事は間違いない。
「ごるびーが参加した最後の興行が終わってから、ひどく落ち込んでいたようだな。ハッキリとした理由は分からないが、それからごるびーの姿は見ていない。確かあっちの方角にむかってトボトボと歩いていったなぁ」
 当時の事を思い出し、見世物小屋の主が外を指差した。
「あ、あれはごるびー殿が棲んでいた湖でござる!」
 ハッとした表情を浮かべ、又三郎が湖にむかって走り出す。
 どうやらごるびーは何らかの理由で湖に帰ってしまったらしい。

●三幕 湖の近くにある小屋
「えーっと、確か‥‥こっちだと思うんですが‥‥」
 ‥‥真達は迷っていた。
 何処で道を間違えたのか分からない。
 きちんと地図を見て森を通って来たはずだが、気がついた時には見知らぬ場所に迷い込んでいた。
「でもぉ、こっちにごるびーがいる感じぃ〜」
 地図の上でダウジングペンデュラムを揺らし、亞莉子がごるびーの居場所を特定する。
 しかし、自分達のいる場所が分からないため、特定した場所に行く事が出来ない。
「とりあえず腹ごしらえをしておくでござる。今日の献立はごるびー殿の大好きなイカ料理でござる。イカ焼きに、イカノ天ぷら、イカ飯に、イカの酢の物‥‥。今の時期ならイカ素麺も美味しいでござる」
 七輪を使ってイカを焼きながら、又三郎がうちわをパタパタと叩く。
 ‥‥辺りに漂う香ばしい匂い。
 ごるびーが近くにいたら、間違いなく飛びついていた事だろう。
「絶対にごるびーちゃんを見つけるですよ〜〜〜〜〜!!!!」
 拳をギュッと握り締め、ベルがイカを頬張った。
 焼きたてのイカはとても美味しく、ベルの落ち込んだ心を癒していく。
「‥‥あれ? どうしたんですか?」
 エレメンタルフェアリーの漫珠沙華が袖を引っ張ったため、真が不思議そうに首を傾げて森を眺める。
 次の瞬間、茂みがガサコソと動き、何か黒いものが横切った。
「あれは、まさか‥‥ごるびー殿っ!」
 黒いものの正体がごるびーであると確信し、又三郎がイカの串焼きを茂みに投げ込んだ。
 それと同時に黒いものがイカの串焼きに飛びつき、茂みの中でモシャモシャとかじって串を放り投げた。
「逃がさないわよってカンジィ」
 疾走の術を使って逃げ道を塞ぎ、亞莉子がごるびーに飛びつく。
 ごるびーはしばらくジタバタとしていたが、見知った顔が幾つもあったのでようやく大人しくなった。
「ごめんアル〜。ワタシがヒドイ事をしたから、家出しちゃったアルね」
 大粒の涙を浮かべながら、ミンメイがごるびーを抱き締める。
 しかし、ごるびーは家出をしたわけではなく、屋敷の食料が尽きたので湖に棲んでいただけらしい。
 そのため、見世物小屋の主には空腹でフラつくごるびーが、落ち込んでいるように見えてしまったようだ。
「‥‥なるほど。ごるびー殿だけでは買い物が出来なかったという事でござるな」
 納得した様子でニコリと笑い、又三郎がごるびーの頭をヨシヨシと撫でた。
 ごるびーは野生生活が長かったためか、毛むくじゃらになって『プチ野人』状態である。
「でも、無事で何よりです。折角ですので、ごるびーさんの芸を見せていただきませんか」
 ホッとした表情を浮かべ、真莉がごるびーにイカを渡す。
 そして、ごるびーが始めた芸はイカの早食いであった‥‥。
 どうやらマトモなものをしばらく食べていなかったらしく、草葉の陰でそれんが生暖かい視線を送っていた。