鬼殺寺

■ショートシナリオ


担当:ゆうきつかさ

対応レベル:11〜lv

難易度:難しい

成功報酬:10 G 85 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:06月11日〜06月16日

リプレイ公開日:2008年06月18日

●オープニング

●鬼殺寺
 京都の人里離れた山奥に『鬼殺寺』と呼ばれる寺がある。
 名前の由来は寺の住職が、若かりし頃に鬼を倒したためらしく、寺の本堂には鬼の首が飾られていた。
 そのため、鬼除けのお札を買いに遠くから旅人達が来るほどであったが、ある日を境にプッツリと噂を聞かなくなったらしい。
 その事から旅人達が行方不明になる事件が頻発し、鬼殺寺の鬼が生き返ったのではないかと噂されるようになった。
 もちろん、普通に考えれば何十年も前に倒された鬼が復活するわけがないし、その鬼を倒した住職の傍にあるのだから、旅人達を襲う事はないという結論に達していたのだが‥‥。
 ‥‥彼らの予想は見事なまでに裏切られる事になる。
 それは旅人が鬼除けのお札を買いに寺まで行った時の事。
 いくら呼んでも住職が現れようとしなかったため、心配になった本堂に足を踏み入れた途端、無残な死体となって転がる住職の姿を確認したというわけである。
 その彼らの傍らには生首を小脇に抱えた鬼の姿があり、住職の生首を肴にして酒を飲んでいたらしいのだ。
 しかも本堂に並んでいたのは、行方不明になった旅人達の生首。
 怖くなった旅人は荷物を放り捨てて、命辛々逃げていったというわけである。
 鬼について詳しい事は分かっていないが、状況的に考えて生首にされた鬼の仇討ちである可能性が高い。
 そして、今回の依頼は鬼殺寺に住み着いた鬼を退治する事である。

●今回の参加者

 ea2741 西中島 導仁(31歳・♂・ナイト・人間・ジャパン)
 ea3075 クリムゾン・コスタクルス(27歳・♀・ファイター・人間・イスパニア王国)
 ea7871 バーク・ダンロック(51歳・♂・パラディン・ジャイアント・ビザンチン帝国)
 eb1422 ベアータ・レジーネス(30歳・♂・ウィザード・人間・フランク王国)
 eb3225 ジークリンデ・ケリン(23歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・フランク王国)
 eb3834 和泉 みなも(40歳・♀・志士・パラ・ジャパン)

●リプレイ本文

●場面1 山道
「今回の依頼は鬼の逆恨みみたいなものかな? ま、お互いの領域を侵したら、必然的に問題は起きるんだが‥‥」
 険しい表情を浮かべながら、西中島導仁(ea2741)が鬼殺寺に棲みついた鬼の退治にむかう。
 鬼殺寺は数百段も続く石段の上にあり、檀家でさえ滅多に近づかない。
 その代わり、鬼殺寺の象徴として飾られた鬼の首を見るため、遠路遥々から旅人達が来ていたようである。
 そのため、導仁達は和泉みなも(eb3834)からグリフォン(みぞれ)を借り、交替で鬼殺寺の近くに降り立つ事になった。
 もちろん、上空から鬼殺寺に降り立つ事によって、監視をしている鬼達に気づかれる可能性もあったのだが、その事に関しても予想の範囲内であるようだ。
「鬼にも仇討ちをする心があるという事でしょうか? 住職が鬼を討ち、別の鬼が住職を討ち、更に私達がその鬼を討つ。因果と雖も世は寂れていくのでしょうね」
 しみじみとした表情を浮かべながら、ジークリンデ・ケリン(eb3225)が溜息を洩らす。
 いまのところ詳しい事が分かっていないものの、住職が鬼の首を自慢していた事は間違いないので、鬼達に目をつけられてもおかしくない。
「‥‥可能性はありますね。これを人間に例えても同じ事が言えるでしょう。自分にとって親しい人物が殺された揚句、見世物にされているのですから‥‥。屈辱以外の何物でもありません」
 マッパ・ムンディやオーガの生態を調べ、みなもが考えうる範囲で答えを返す。
 今回の事が特例であったとしても、鬼達が復讐にやってきた可能性が高かった。
「まぁ‥‥、何でもいいや。最近、延暦寺だの尾張だのややこしい話で、頭がごちゃごちゃになっていたから、遠慮なくガツガツいきたいからさ」
 警戒した様子で辺りを見回しながら、クリムゾン・コスタクルス(ea3075)が物陰に潜む。
 鬼の群れはグリフォンに乗ってきたクリムゾン達に気づき、大騒ぎをしてワラワラと石段を下りていく。
「うひょー、ぞろぞろと現れやがったなー! まさかこれだけの人数があんなオンハギロ」
 みなもからかり借りたフライングブルームに乗りながら、バーク・ダンロック(ea7871)が鬼の群れに視線を送る。
 鬼の群れは小鬼や茶鬼が大半で、バークめがけて弓矢を放つ。
 そのせいで仲間達のところに降り立つ事が出来ず、しばらく上空で留まる事になった。
「こいつらは単なる偵察隊だ。‥‥本隊はまだ寺にいる」
 ブレスセンサーを発動させ、ベアータ・レジーネス(eb1422)が口を開く。
 その間にバークがフライングブルームに乗ったまま、鬼の群れを引き連れ仲間達の所から離れていった。

●場面2 寺
「よぉし、いまのうちに親玉を叩いちまうかっ!」
 ベアータの唱えたヴェントリラキュイで状況を確認しながら、クリムゾンが茂みを掻き分けて鬼殺寺を目指す。
 鬼殺寺には何匹か鬼が残っており、本堂を守るようにして陣取っていた。
 ただし、本堂を守っているのは、先程と比べてレベルの高い鬼ばかり。
 普通の冒険者であれば突破する事さえ困難な強敵揃い。
 しかし、クリムゾン達は高レベルの冒険者なので、鬼がいくら束になって掛かって来ても、苦戦する事はないだろう。
「その前に露払いをしておく必要がありますね」
 事前にフレイムエリベイションで士気を高め、ジークリンデがインフラビジョンを使って鬼の数を確認する。
 思ったよりも寺の周辺には鬼がいないため、ざっと見積もっても7〜8匹程度。
 そのうち人食い鬼が半数にも満たないので、彼女達が本気を出せば一瞬で終わる。
「それでは行きましょうか」
 仲間達に合図を送ってみぞれに飛び乗り、みなもが上空から十人張を用いて攻撃を仕掛けていく。
 そのため、鬼の群れがギャーギャーと騒いで仲間を呼んだが、弓を持った鬼が出払っているせいで、ただ倒されていくしか選択肢が残されていなかった。
 それでも鬼の中には金棒を振り回し、みなもに襲いかかってきた者もいたが、脳天に弓矢を喰らって息絶えたようである。
「我こそは悪を断つ義の刃! 鬼どもよ! その身でとくと味わえ!!」
 自ら名乗りを上げて大見栄を切り、導仁が次々と鬼の群れを切り捨てた。
 鬼達の中には金棒を振り上げて反撃してくる者もいたが、あまりにも力の差があり過ぎるため導仁の敵ではない。
 そのため、鬼の中には戦意を喪失している者もいたが、完全に逃げ道を塞がれているため、捨て身の覚悟で体当たりを仕掛けて倒れていった。
「みんな、無事か。雑魚共は石段の下でへばっているぜ」
 フライングブルームに乗ったまま仲間達と合流し、バークが満足した様子でニヤリと笑う。
 バークを追って石段を下りていった鬼の群れは、途中で力尽きる者もいれば、仲間達を巻き込んで自滅した者など様々だった。
「‥‥寺の中には一匹のみ。つまり旅人達は既に人食い鬼の手で‥‥」
 エックスレイビジョンとインフラビジョンのスクロールを駆使し、ベアータが悔しそうに拳をぶるりと震わせる。
 そして冒険者達は人食い鬼の待つ本堂に、ゆっくりと足を踏み入れていった。

場面3 鬼
「どうやら、自分達が来るのを待っているようですね」
 十人張を矢筒と共にみぞれに預け、みなもが氷輪を生成し始める。
 本堂の中には人食い鬼が待ち構えているらしく、鳥肌が立つほど凄まじい殺気を辺りに放っていた。
 依頼主の情報が間違っていなければ、この鬼がすべての元凶。
 鬼殺寺の住職を殺め、新たな主となった存在である。
「‥‥敵も愚かではない、と言う事ですか。ならばこちら側から出向くだけです」
 ストリュームフィールドを展開しながら、ジークリンデが警戒した様子で本堂に入っていく。
 本堂の中には人悔い鬼が座っており、勲章の如く沢山の首が並べられている。
 その中には住職の首も置かれていたが、死ぬ間際まで拷問に遭っていたらしく、苦悶の表情を浮かべていた。
「仲間の仇を討ったつもりかも知れないが、お前はあまりにも人を殺め過ぎた。その報いは受けてもらうっ!」
 オーラエリベイションと、オーラパワーを発動させ、導仁が人食い鬼にカウンターアタックを放っていく。
 そのため、人食い鬼も金棒を掴んで反撃に移ろうとしたが、あまりにも攻撃が早すぎるので防御するだけで精一杯である。
 この時、初めて人食い鬼は導仁と戦った事を後悔し、早めに寺から去ろうとしなかった自分の愚かさを悔いた。
 ‥‥圧倒的な力の差。
 住職と戦った時は、感じる事さえ出来なかった焦り。
 次の瞬間、人食い鬼が導仁に体当たりを浴びせ、転がるようにして本堂から飛び出していく。
「鬼のクセに情けねえ野郎だな!」
 人食い鬼を叱りつけながら、クリムゾンがシューディングポイントアタックを放つ。
 その一撃を喰らって人食い鬼が血反吐を吐き、悔しそうにガックリと膝をつく。
 あまりの恐怖で体の震えが止まらない。
 
『こんなはずではなかった』

 そう人食い鬼は思ったかも知れない。
 それまではどんな相手が来ても、敵ではないと思っていたが、それは自分自身の驕りでしかなかった。
「くらいやがれっ! うぉぉぉぉぉぉぉっ!」
 一気に間合いを詰めながら、バークがオーラソードを叩き込む。
 次の瞬間、人食い鬼がブクブクと泡を吐き、白目を剥いて崩れ落ちた。
 その時、人食い鬼の脳裏に過去の記憶が蘇る。
 仲間達と語らった、あの日。
 夕日に誓った二人の想い。それがすべて泡となって消え失せた。
「‥‥終わったな。これで旅人達が襲われる事もないだろう」
 念のため討ち漏らした鬼がいないか確認し、ベアータがホッとした様子で溜息をつく。
 その後、ベアータ達の手によって犠牲になった人々と鬼達が埋葬され、簡易的なものではあったが弔いが行われるのであった。