小さな願い

■ショートシナリオ


担当:ゆうきつかさ

対応レベル:1〜5lv

難易度:やや易

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:12人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月15日〜08月20日

リプレイ公開日:2004年08月19日

●オープニング

 数日前からわたしのおじいちゃんが病気で寝込んでいるの。
 お医者さんの話では鯉の肝を食べさせれば治るって話だけど‥‥。
 鯉のいる湖に行くためにはコボルト達の住む深い森を越えていく必要があるんの‥‥。
 わたしひとりじゃ‥‥心細いし‥‥。
 みんなも一緒に来てくれるかな?
 コボルトの住む森はここからかなり離れたところ‥‥。
 とっても暗くてこわ〜い森を越えていくの‥‥。
 あの森に住むコボルトは女の子のお肉が大好きなんだって‥‥。
 きっと‥‥あたしひとりじゃ食べられちゃう。
 湖までは一緒に手をつないで行ってね。
 もちろん釣竿も忘れずに‥‥。
 せっかく湖まで行ったのに、釣り道具がなかったら鯉を釣る事は出来ないから‥‥。
 なるべく大きな鯉を釣らなきゃ駄目だよ。
 小さな鯉だとおじいちゃんが元気にならないから‥‥。
 こぉ〜んなに大きな鯉を釣ってくれたら、きっとおじいちゃんも喜ぶと思うの‥‥。
 みんな‥‥宜しくね♪

●今回の参加者

 ea0031 龍深城 我斬(31歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0248 郭 梅花(32歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea0264 田崎 蘭(44歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea0443 瀬戸 喪(26歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0629 天城 烈閃(32歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea1405 鳳明 美輝(25歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea1462 アオイ・ミコ(18歳・♀・レンジャー・シフール・モンゴル王国)
 ea1856 美芳野 ひなた(26歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea2445 鷲尾 天斗(36歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea2476 南天 流香(32歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea2823 茘 茗眉(32歳・♀・武道家・エルフ・華仙教大国)
 ea3167 鋼 蒼牙(30歳・♂・侍・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

「さて今回の依頼は‥‥コボルト退治と鯛釣りと子守りか。・・・・ま、子守りは他の皆に任せよう」
 コボルトの現れると噂の森を歩き、龍深城我斬(ea0031)が汗を拭う。
 そろそろ夏が終わるというのに未だに蒸し暑い日が続いており、身体からは吹き出るようにして汗が流れ落ちている。
「何とも平和な森だな‥‥依頼で来ているという事を忘れそうになる。これで犬鬼さえ出ないのであれば良い場所なのだろうがな‥‥」
 定期的にブレスセンサーを使用し、天城烈閃(ea0629)がゆっくりと辺りを見回した。
 コボルトが現れていない時の森はとても平和で、スズメ達の話し声が聞こえてくるほどである。
「さ〜って、戦いと教育とのんびりを目指して出発!」
 ぴょこぽんと右手を掲げ、アオイ・ミコ(ea1462)が森を進む。
 森の中にはおいしそうな木の実や、珍しい生き物がいたため、ミコはあちこちに興味が移っているようだ。
「はうっ! ‥‥あうう、これで転ぶの30回目ですぅ」
 不安げな表情を浮かべ、美芳野ひなた(ea1856)がコテンとコケた。
 超絶チキンハートであるひなたは、小さな物音にも驚き何度も悲鳴を上げている。
「囮としての適正はありますが‥‥大丈夫ですかね」
 心配そうにひなたを見つめ、南天流香(ea2476)が大粒の汗を流す。
 一応、ひなたが佳代の身代わりとなってコボルト達に襲われる予定になっているが、このままだと本当にひなたが襲われそうで怖い。
「多分、大丈夫だと思います‥‥」
 再び転んだひなたを見つめ、鳳明美輝(ea1405)が気まずく視線をそらす。
「‥‥ったく、幼女趣味のコボルトなんて気色悪いっつうの!」
 呆れた様子で腕を組み、我斬が大きな溜息をつく。
 コボルトは今まで小さな女の子しか襲っていないため、囮となる冒険者はかなり限定されている。
 コボルトが少女ばかりを襲っている理由は不明だが、単なる幼女趣味というわけではないようだ。
「あうっ‥‥、また転んじゃいましたぁ。ご、ごめんなさいですぅ‥‥」
 転んだ拍子に誰かに辺り、ひなたが頭を撫でて立ち上がる。
「‥‥‥‥‥‥あれ?」
 一瞬の沈黙。
 そして‥‥。
「わっわっわっ、で、で、で、出たぁ〜! こぼ、こぼ、コボルトぉ〜」
 魂が口から抜け出すほどの勢いで悲鳴を上げ、悲鳴がパニックに陥り涙を流す。
「コイツらを喜ばせてどうする‥‥? 泣くのは逆効果だぞ」
 コボルト達に囲まれたひなたを助け、我斬が疲れた様子で刀を払う。
「ひなた様、早くコボルトから離れてください」
 ひなたを守るようにして前に立ち、美輝がバーニングソードでコボルトを倒す。
「このロリコンコボルト‥‥わたくしもやはり対象外なんですね」
 まったくコボルト達が興味を持たなかったため、流香が短刀を引き抜きコボルトを睨む。
 コボルト達の戦闘力はそれほど高くはないため、流香のバーストアタックを喰らい血反吐を吐いて絶命する。
「今後の事もあるからな‥‥一匹たりとも逃がしはしない」
 逃げ出そうとしていたコボルトの頭を射抜き、烈閃が馬の上から飛び降りた。
「えうっ‥‥!! ごお、ちゃっぴい〜☆」
 雄たけびを上げて大ガマ(ちゃっぴい)を召喚し、ひなたが大声を出して泣き出した。
 ひなたに召喚された大ガマはその長い舌を使って、コボルト達を次々と倒していく。
「意外と呆気なかったな。まぁ、相手がコボルトだから仕方がないが‥‥」
 コボルト達の持っていた木の棒を拾い上げ、天斗が疲れた様子で溜息をつく。
「それじゃ、みんなに知らせてくるね〜☆」
 そしてミコは報告にむかうため、もと来た道を戻るのだった‥‥。

「もうコボルトは退治されたよ〜☆ だから安心して鯉釣りにれっつごぉだよ〜」
 佳代の周りを飛び回り、ミコが佳代のまわりを飛び回る。
「‥‥本当に大丈夫かなぁ?」
 心配そうに辺りを見つめ、佳代が森の中を歩いていく。
 佳代はまだ森の中にコボルトが潜んでいると思っているため、かなり不安な気持ちになっているようだ。
「大丈夫だ。俺達が君を守る。君には指一本触れさせない」
 佳代を安心させるため、鋼蒼牙(ea3167)が優しく声を掛けた。
「じいちゃん助けたいって気持ちがホンモノなら、ここで逃げるんじゃないぜ? 安心しな、アンタに怪我は絶対させねぇ。そのために私たちがいるんだろ?」
 佳代の頭をワシャワシャと撫でながら、蘭が力強く親指を立てる。
 すると佳代は満面の笑みを浮かべて力強く頷いた。
「佳代ちゃん、大丈夫だからね〜☆ お姉ちゃん達がちゃ〜んとあなたを守ってあげるからね〜☆」
 佳代の身体を後ろから抱きしめ、田崎蘭(ea0264)がニコリと微笑んだ。
「わわっ、お姉さんか。ビックリしたよ〜」
 突然の出来事に悲鳴を上げ、佳代が胸に手を当て溜息を漏らす。
「佳代ちゃんは‥‥あたしがよっと‥‥こうやって守って上げるわよ☆」
 佳代に肩車をしてあげ、郭梅花(ea0248)が森の中を進んでいく。
「ふたりともはしゃぎ過ぎだぞ。まったく‥‥先が思いやられるな」
 呆れた様子でふたりを見つめ、蘭が警戒しながら辺りを睨む。
 コボルト達が倒されたため、怪しい気配はないようだ。
「まぁ、いいじゃないか。きちんと始末してくれたんだろ。討ち漏らしがあったら困るがな」
 佳代達の持ち物を両手に抱え、鷲尾天斗(ea2445)が先頭を歩く。
 楽しそうに鼻歌を歌っているためか、佳代も続けて鼻歌を歌う。
「病気のお爺さんの為に‥‥か。優しいな‥‥」
 佳代の背中を優しく見つめ、蒼牙が地面に残った血の跡に気づく。
 仲間達の手によって後始末はされているようだが、あまり時間がなかったためか少しだけ痕跡が残ってしまったらしい。
 もちろん、普通に見ただけでは気づかないほどの痕跡なので、佳代がそのことに気づく可能性はかなり低いだろう。
「まぁ、湖までは一本道だし、何かあったら分かるでしょ?」
 佳代にむかって微笑みながら、茘茗眉(ea2823)が森をのんびりと歩く。
 湖が近くなってきたためか、仲間達のはしゃぐ声が聞こえてくる。
「なんだか腕が鳴るわね。佳代ちゃんのためにいっちばん大きな鯉を釣ってあげるからねぇ〜♪」
 そして梅花は佳代を肩車したまま、湖へとむかうのだった。

「しくしく‥‥。ようやく辿り着きましたぁ」
 大粒の涙を浮かべながら、ひなたがようやく湖に辿り着く。
「‥‥あれ? ひなたお姉ちゃんはみんなと一緒じゃなかったの?」
 不思議そうにひなたを見つめ、佳代が首を傾げて問いかける。
「いや‥‥、あのぉ‥‥、コボ‥‥あう〜、なんでもないですぅ〜」
 コボルトと戦った事を話そうとした瞬間、仲間達から一斉に睨まれてしまったため、ひなたが苦笑いを浮かべて答えを返す。
「よく分かんないの〜。それじゃ、鯉を釣っちゃおう♪」
 嬉しそうにひなたの手を引き、佳代が湖を元気よく指差した。
「それじゃ、私は餌を探してきますね」
 鯉の餌となるミミズを探すため、ひなたが森の中へと走っていく。
 その途中で彼女の悲鳴が聞こえたが、大ガマを召還したため大事には至らなかったらしい。
「ひなたちゃんも頑張っているようだし‥‥みんなで頑張って釣ろう!」
 森にむかって両手を合わせ、梅花がなむなむと祈る。
「これだけ湖が綺麗なら、きっと凄い大物がいるね♪」
 湖の上を飛び回り、ミコがニコリと微笑んだ。
 この辺りの場所は釣り人達には発見されていないため、どのポイントからでも釣り糸を垂らす事が出来る。
「‥‥これで良いのか?」
 専門的な知識がなかったため、我斬が天斗に釣りの仕方を質問した。
「それほど難しく考える必要はない。もっと肩の力を抜いて、釣りを楽しまなきゃ駄目だぞ」
 緊張気味の我斬をリラックスさせ、天斗がひなたの取ってきた釣り餌をつける。
「‥‥針をつけるのか。まぁ、これでも何とかなるか」
 釣り糸の先に矢を縛り、烈閃が弓を射る方法で湖に放つ。
 しかし鯉は湖面に浮かんでいるわけではないため、この方法での捕獲はかなり難しい。
「鯉釣りに必要なのはポイント・忍耐力・運の3つですって‥‥。長期戦覚悟って事ね」
 鯉の集まりそうな水草の多い斜面を見つけ、茗眉が素早く釣竿を振るって釣り糸を垂らす。
「安心しろ。実は俺は釣りが趣味だ!」
 釣竿を力強く握り締め、天斗が瞳をキラリと輝かせる。
「それは心強いわね。驚くぐらいの大物を釣ってよ。期待しているから‥‥」
 釣り糸の先に芋団子を取りつけ、流香が岩場に座って引きを待つ。
「ああ! 居るかどうか分からないが、取りあえず待っていろよ、湖のヌシ!」
 そして天斗は雄たけびを上げながら、湖めがけて釣り糸を垂らすのだった。

「鯉が引っかかるまで、意外と時間がかかるのねぇ」
 鯉が釣れるのを待ちながら、流香がツマミ片手に酒を呑む。
「一応、気配は感じられるのだが‥‥。かなり深いところにいるらしい」
 湖面に弓矢を放って獲物が取れたか確認し、烈閃が残念そうに首を振る。
「なかなか難しいものなんですね?」
 佳代と一緒に釣りを眺め、美輝が持参したお弁当を開く。
「わたくしはこっちの方に興味がありますね。ひとつ戴きますね?」
 美輝からおにぎりを貰い、茗眉が岩場に座って食事をする。
「それじゃ、わたしもひとつ貰うかな」
 佳代の横に座って湖面を眺め、蘭がおにぎりを頬張った。
「‥‥ん? 釣れたか」
 浮きが湖の中に沈んだため、蒼牙が慌てて釣竿を引く。
「ぬぉぉぉぉ! この引きは間違いなくこの湖のヌシ! 絶対釣り上げて『ヌシ釣り』の称号獲得してやるから覚悟しやがれ!」
 蒼牙から釣竿を受け取り、天斗が鯉を釣り上げる。
「こういう釣り方も悪くないな‥‥今後も修行の一つとして、時々やってみるか‥‥」
 天斗の釣り方を黙って見つめ、烈閃が網を使ってヌシの事を捕獲した。
「佳代さん、鯉は釣れましたよ。胸を張って帰りましょう。逃げずにやり遂げれた佳代さんは凄いですね」
 捕まえたヌシを高々と掲げ、流香が佳代の名前を呼ぶ。
「わぁぁぁぁ、凄い、凄い♪」
 嬉しそうにヌシを抱きかかえ、佳代がペコリと頭を下げた。
「‥‥まんま持ってった方が良いのかね? 肝だけ持ってくなら俺が捌いて見るが‥‥」
 ヌシの顔をマジマジと見つめ、我斬が短刀を引き抜いた。
「生き胆といわず、鯉の身も立派な食材。お吸い物やお刺身にしましょう!」
 自前の包丁を取り出し、ひなたがニコリと微笑んだ。
「鯉こくとか唐揚げにしてもいいよね」
 再び佳代の手を握り、梅花が次々とアイデアを出していく。
「さぁ、お爺さんにおいしいのを食わせてやろう!」
 そして蒼牙は佳代達と一緒におじいさんの待つ村へと戻るのだった。