夫婦蜘蛛

■ショートシナリオ


担当:ゆうきつかさ

対応レベル:2〜6lv

難易度:やや難

成功報酬:2 G 3 C

参加人数:12人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月26日〜08月31日

リプレイ公開日:2004年08月31日

●オープニング

 タイへんだぁ〜!
 わしの経営する銭湯に土蜘蛛が現れたんじゃ!
 土蜘蛛はうちに銭湯を利用していたお客をを捕獲して食料にしたり、娘達に卵を産みつけようとしているのじゃ!
 何とかお客だけは助けようと思って、うちの若い者達に土蜘蛛退治を命じたが、返り討ちに遭って、頭からバリバリと食われてしまったのじゃ……。
 しかも土蜘蛛は銭湯ごと燃やされないようにするため、うちの客を繭状の糸に包んで人質にしているんじゃ!
 だから炎による攻撃はなるべく控えてくれ。
 土蜘蛛を退治できたとしても、お客がみんな死んでしまっては何の意味もないからな。
 いまのところ土蜘蛛は必要最低限の人間しか喰らっていない。
 他のお客は保存食のようにして天井からぶらりと吊るしている。
 それとほとんどの娘達の身体には土蜘蛛が卵を産みつけている可能性が高い。
 助けた瞬間、娘の腹を突き破って大量の蜘蛛がお前達に襲い掛かってくるかも知れん。
 まぁ、どちらにしてもお客の安全を第一に考えてくれ。

●今回の参加者

 ea0548 闇目 幻十郎(44歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea1257 神有鳥 春歌(30歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea1289 緋室 叡璽(30歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea1405 鳳明 美輝(25歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea1891 三宝重 桐伏(39歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea1956 ニキ・ラージャンヌ(28歳・♂・僧侶・人間・インドゥーラ国)
 ea2391 孫 陸(31歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea2495 丙 鞘継(26歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea2630 月代 憐慈(36歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea3118 ララ・ルー(20歳・♀・クレリック・エルフ・イギリス王国)
 ea4419 桐澤 流(36歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea5899 外橋 恒弥(37歳・♂・浪人・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

「人質を保存食にするなんて、蜘蛛くんは賢いんだねえ‥‥って感心してる場合じゃないか。とりあえずさ。事前に色々用意しておくべきだよね」
 仲間達を集めて酒場にむかい、外橋恒弥(ea5899)が必要な道具を集めておく。
 戦闘中に何が起こるか分からないため、道具の手入れも念入りである。
「まぁた気持ちワリィ奴が出てきたもんだなぁ。ま、問題なく狩るがね」
 のんきに酒を呑みながら、三宝重桐伏(ea1891)がニヤリと笑う。
 それほど警戒していないため、他の冒険者と比べて気楽である。
「‥‥無益な殺生は好まないが‥‥人様に迷惑を掛けるのであれば仕方無い‥‥。土蜘蛛の強さや素早さは我々を優に上回ると予想する‥‥更に2匹となれば油断は禁物だ‥‥」
 土蜘蛛の強さを警戒し、丙鞘継(ea2495)が辺りを睨む。
 銭湯では思うように身動きが取れないため、仲間達との連携が重要になってくる。
「何故、銭湯に土蜘蛛が‥‥?」
 不思議そうに首を傾げ、ララ・ルー(ea3118)がボソリと呟いた。
「ま、酒代が稼げりゃいいんじゃねぇか」
 酒を一気に飲み干し、桐伏がお代わりを頼む。
 土蜘蛛と戦っている間は酒を呑む事が出来ないため、ここで多めに飲んでおくらしい。
「ギルドの情報だと娘さん達には卵が産み付けられています。最悪、彼女達は助けられないかも‥‥」
 銭湯の主人から現場の間取りを教えてもらい、闇目幻十郎(ea0548)が潜入経路を吟味する。
 場所が銭湯と言う事もあり、潜入経路は限られているが、何とかするしかないだろう。
「‥‥目的はあくまで敵の殲滅。それが最上の使命‥‥。そのためなら手段を問う暇は無い‥‥」
 人質となった者達の救出が不可能であると判断し、緋室叡璽(ea1289)が覚悟を決める。
 土蜘蛛の強さが半端ではない事を知っているため、少しの油断が命取りである事を理解しているらしい。
「卵の摘出を寺に依頼してみてはどうでしょうか。出来る限り魔法で凍らせて娘さん達を持ち込みますので。さすがに殺してしまうのは、酷過ぎますから‥‥」
 人質が生きている可能性に賭け、神有鳥春歌(ea1257)が静かに祈る。
 銭湯の主人も娘の安否を気遣っているため、どんな形であれ娘達が生きていればきっと喜ぶ事だろう。
「やってみる価値はあるな。あとで銭湯に主人に言っておくか。さてと‥‥、それじゃ、こっちが餌にされないように頑張りますか‥‥」
 そう言って孫陸(ea2391)が仲間達を連れ、銭湯にむかって歩き出した。

「人質になっているのは娘さんだけやないな。何人かの客も捕まっているようや」
 デティクトライフフォースを使って人質の位置を確認し、ニキ・ラージャンヌ(ea1956)が銭湯の中へと入っていく。
 室内は蜘蛛の糸で覆われているため、膜を破るようにして先に進む。
「‥‥生きているかは別だがな。あまり期待するんじゃないぞ」
 ブレスセンサーを使って辺りを探り、月代憐慈(ea2630)が残念そうに首をする。
 何人かの人間は生きているようだが、大半はすでに手遅れらしい。
「だからと言って見捨てるわけには行かないだろ。何人かは助かるはずだから‥‥」
 何処か寂しそうな表情を浮かべ、桐澤流(ea4419)が拳を握る。
 人質となっている客達が弱り始めていることを知ったため、少しずつだが焦り始めているようだ。
「何かあったら荷車に乗せて寺までいかないとね。もしかすると助かるかも知れないから‥‥」
 犠牲者となった客をすぐに運べるようにするため、恒弥が荷車を銭湯の前に止めておく。
 運がよければ助かる可能性も高いため、わずかな望みに賭けるつもりでいるようだ。
「自分は屋根裏から行きますね」
 湖心の術を使って足音を消し、幻十郎が屋根裏を進んでいく。
「古来蜘蛛は火を苦手とすると言う‥‥。怯ませるのにも使えるかも知れないしな」
 仲間達に対してバーニングソードを付与し、鞘継が日本刀を握り締める。
「さぁて、始めるとすっか! 後ろ、援護頼むぜ!」
 気合を入れて刀を握り、桐伏が浴場に突入した。
 土蜘蛛達は奇声を上げて威嚇しながら、桐伏達にむかって糸を吐く。
「いまのうちに逃げてください!」
 土蜘蛛の眉間を狙って矢を放ち、春歌が桐伏の逃げる時間を稼ぐ。
 春歌の放った矢は土蜘蛛の顔面をかすり、雄蜘蛛が奇声を上げて糸を吐く。
「‥‥意外に強敵ですね」
 右足に蜘蛛の糸を喰らってバランスを崩し、叡璽が表情を強張らせる。
 二匹の蜘蛛は卵を守るようにして連携を取るため、その行動を予想する事は難しい。
「やはりグランドスパイダーですか。まぁ、同じ蜘蛛には変わりませんが‥‥」
 仲間達にグッドラックをかけておき、ララが土蜘蛛を警戒する。
「‥‥予想を上回る強さですね」
 蜘蛛の糸によって膜が出来ているため、鳳明美輝(ea1405)が汗を流す。
 死角から蜘蛛達を攻撃するつもりでいたため、なかなか身動きが取れずに困っているらしい。
「まさか膜の近くで日本刀を振るったら、それこそシャレにならないからな。たくっ‥‥、最悪だな」
 日本刀を構えて舌打ちし、桐伏がジリジリと後ろに下がる。
 蜘蛛の糸が邪魔しているため、どうしても動ける場所が限られてしまう。
「だが、それは蜘蛛も同じだろ。俺が奴らをひきつけておくから、その間にトドメをさしてくれ。それと手の空いている奴は蜘蛛の巣を壊してくれ」
 オーラパワーを発動させ、陸が囮になって土蜘蛛の頭を踏みつけ飛び上がる。
 土蜘蛛は陸を視線で追いかけ糸を吐き、鋭いキバをガチガチさせた。
「あちこちから小賢しい‥‥」
 土蜘蛛達から糸を放たれ、憐慈が悔しそうに舌打ちする。
 動けば動くほどドツボにはまってしまうため、仲間達に頼んで糸を切断してもらう。
「この緊迫感がたまらないな」
 右足を噛み千切られる寸前で土蜘蛛の頭に着地し、陸が蜘蛛の巣まみれの浴槽に飛び込んだ。
「随分と無茶をしたな‥‥」
 土蜘蛛達の注意が陸に移ったため、鞘継が溜息をつきながら雄蜘蛛の尻を斬りつける。
 雄蜘蛛は汚らしい体液を撒き散らし、後ろを振り向き奇声を上げた。
「早く戻ってきてください。そんな場所にいたら土蜘蛛の餌食になりますよ!」
 陸にむかって警告し、ララが雌蜘蛛にホーリーを放つ。
「雌蜘蛛は俺がひきつける‥‥」
 フェイントアタックを駆使しながら、鞘継が雌蜘蛛をひきつける。
「ここは俺達に任せて後ろに下がれ!」
 土蜘蛛の牙と放たれる糸に注意しながら、桐伏が仲間達の壁になりスマッシュを叩き込む。
「‥‥分かっているさ。だが、人質になっている奴らをひとりでも救わないとな」
 人間が包まっている糸の塊を引きちぎり、陸が蜘蛛の巣の中から弱った娘を救い出す。
 すると娘は陸にむかって右手を伸ばし、口から無数の子蜘蛛を吐き出した。
「やはり手遅れか。グッ‥‥」
 無数の子蜘蛛が皮膚を食い破って潜り込んできたため、陸が激痛のあまり膝をつく。
「‥‥すまないな。‥‥来世で幸せになってくれ‥‥」
 娘の皮膚を突き破って現れた子蜘蛛を見つめ、叡璽が侘びの言葉を呟きながら、娘の命をその場で絶つ。
「こっちも駄目だ。‥‥畜生」
 肉塊と化した客の亡骸を見つめ、桐伏が残念そうに首を振る。
「その横にいる娘は生きているはずだ。頼む! 助けてやってくれ」
 ブレスセンサーを使って生存者の位置を探り当て、憐慈が土蜘蛛達をひきつける。
「一人でも多くの人を助けたい。御願いですから、孵化しないで!」
 繭の中から娘を助け、春歌がアイスコフィンを使う。
「これでもう大丈夫や。土蜘蛛達には指一本触れさせへんで!」
 ホーリーフィールドを展開し、ニキが土蜘蛛達を激しく睨みつける。
 雄蜘蛛はかなり弱っているが、雌蜘蛛はまだまだ元気なようだ。
「せめて雄蜘蛛だけでも仕留めておくか」
 オーラパワーを発動させ、流が雄蜘蛛の傷口に日本刀を突き刺した。
 雄蜘蛛は必死になって暴れたが、流は容赦のない一撃を喰らって息絶える。
「子蜘蛛達にも気をつけて! ぞろぞろ孵化してきたよ」
 床を覆いつくすほどの子蜘蛛が孵化したため、恒弥が雄蜘蛛の首を切り落とし刀についた血を払う。
「貴方達も生きている‥‥けど、譲れないんです、ここは」
 襲い掛かってくる子蜘蛛達を悲しげに見つめ、ララがホーリーを放つ。
「蜘蛛の子を散らすとは‥‥よく言ったもんだ」
 苦笑いを浮かべながら、憐慈が子蜘蛛を倒す。
 浴槽を破壊するわけには行かないため、ここでは注意しなければならない。
「雌蜘蛛もいまのうちに!」
 一瞬の隙をついて天井から落下し、幻十郎が雌蜘蛛の首を絞めて大声上げる。
 雌蜘蛛は滅茶苦茶に糸を吐き、狂ったように暴れだす。
「‥‥随分と難しい注文ですね」
 蜘蛛の糸が短刀に絡まり奪われてしまったため、叡璽がカウンターアタックを浴びせて後ろに下がる。
「これで終わりです」
 バーニングソードを付与した日本刀を握り締め、美輝が顔面めがけて突き刺した。
「‥‥やったか!?」
 無数の子蜘蛛に噛まれて血を流し、桐伏が雌蜘蛛の生死を確認する。
「まだしんどらん!」
 起き上がろうとしていた雌蜘蛛に気づき、ニキがブラックホーリーでトドメをさす。
「彼女だけでも助けましょう。まだ助かるかも知れません!」
 気絶した娘を抱きしめ、美輝が瞳を潤ませる。
 助かる見込みはほとんどないが、わずかな望みに賭けてみたい。
「だったら俺が連れて行く。その娘を馬に乗せろ!」
 愛馬『緋陰』に飛び乗り、憐慈がそのまま寺にむかう。
「‥‥お願い。間に合ってください」
 そして春歌は祈るようにしてふたりを見つめ、涙をほろりと零すのだった。
 その後、娘は土蜘蛛達に卵を植えつけられる前だった事が判明し、奇跡的に一命を取り留める事が出来たのだが、他の人達を助ける事が出来なかったため、冒険者達の心には悔しい気持ちが溢れていた‥‥。