主人の残した遺産

■ショートシナリオ


担当:ゆうきつかさ

対応レベル:1〜3lv

難易度:やや難

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:12人

サポート参加人数:-人

冒険期間:06月18日〜06月23日

リプレイ公開日:2004年06月24日

●オープニング

 江戸から数日ほど歩いた場所に『猫屋敷』と呼ばれる場所がある。
 この屋敷の主人は何処からか拾ってきた猫達を育てていたのだが、一月ほど前に病に倒れそのまま帰らぬ人となったらしい。
 主人にはこれといった身内もなく、残っているのはたくさんの猫達と屋敷だけ。
 噂じゃ、主人の残した隠し財産があると言われているが、屋敷からはそれらしきものは見つかっていない。
 しかも次の借り手が見つかったため、屋敷を空き家にしておくわけにはいかないようだ。
 それでも猫達は屋敷から離れず、ずっと主人の帰りを待っている。
 主人は既に墓の下にいるというのに、だ。
 さすがにコレには困ったものだと、村人達が屋敷から猫達を追い払おうとしたのだが、猫達はなかなか屋敷から離れようとしない。
 そうしているうちに村人達の間では奇妙な噂が囁かれ始めたのさ。
 なんでも村人達の話では屋敷の主人が蘇り、夜な夜な村人達を襲っているという事だ。
 実際に何人もの村人が非業の死を遂げている。
 これには村人達も腰を抜かしたが、誰も主人を退治しに行こうとは思わない。
 自分が次の犠牲者となるのが嫌だからな……。
 そこで今回の依頼というわけさ。
 条件はたったひとつ。
 死人憑きとなった屋敷の主人を倒す事……。
 ……それだけだ。

●今回の参加者

 ea0176 クロウ・ブラッキーノ(45歳・♂・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea0192 龍威 天(29歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0908 アイリス・フリーワークス(18歳・♀・バード・シフール・イギリス王国)
 ea1059 麻生 空弥(28歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea2046 結城 友矩(46歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea2988 氷川 玲(35歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea3094 夜十字 信人(29歳・♂・神聖騎士・人間・ジャパン)
 ea3108 ティーゲル・スロウ(38歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea3513 秋村 朱漸(37歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea3582 ゴルドワ・バルバリオン(41歳・♂・ウィザード・ジャイアント・イスパニア王国)
 ea3586 バルムンク・ゲッタートーア(35歳・♂・ウィザード・ドワーフ・ビザンチン帝国)

●リプレイ本文

「猫に愛された主人か‥‥とは言え、男は既に黄泉の住人。現世の者達を襲うと言うなら‥‥斬るだけだ」
 主人を失った屋敷を見つめ、龍威天(ea0192)が溜息をつく。
 主人が亡くなってからというもの、この辺りでは怪事件が頻発しており、村人達の不安は募る一方だ。
「これが我輩の記念すべき初依頼というわけだな。気合を入れなければ‥‥フン!」
 太陽のエネルギーを全身に浴びながら、ゴルドワ・バルバリオン(ea3582)が気合の入ったポージングを決める。
(「‥‥フッ。我輩の神々しさに言葉も出んか」)
 一瞬、村人達から刺すような視線と奇妙な隔たりを感じたが、ゴルドワにとってはそれもまた心地いい。
「まわりに人が集まってきたから、少し情報を集めてみようか?」
 苦笑いを浮かべながら、アイリス・フリーワークス(ea0908)が仲間達の周りを飛び回る。
 これ以上ゴルドワを放っておくと、顔に目張りが追加されそうだ。
「‥‥そうだな。これだけ人がいれば何か知っている奴もいるだろう‥‥」
 爪楊枝を口にくわえ、氷川玲(ea2988)が辺りを睨む。
 まわりに多くの村人が集まっているが、その大半は噂好きの野次馬だ。
「‥‥すまない。少し良いか?」
 村人達にむかって声をかけ、天が屋敷の主人についての話を聞く。
 村人達は天の顔を見て少し警戒していたが、主人について話を聞きたいと話すと疲れた様子で語り出す。
 元々この屋敷の主人は村人達から慕われていたのだが、屋敷に住む猫が原因で何度かトラブルがあったらしい。
 その事が原因で暗殺されたのではないかと言う噂もあるが、それが事実であるかは分からない。
「近頃、この辺りで起きている事件について、何か心当たりはないか? 主人の死と何か関係があると思うのだが‥‥」
 相手の警戒心を解くため、ティーゲル・スロウ(ea3108)が丁寧な口調で話しかける。
 すると村人達はしばらく考えた後、他に心当たりはないと答えを返す。
「ほとんど分からずじまいか。面倒な依頼だな‥‥」
 困った様子でキセルをふかし、ティーゲルが髪を掻きあげた。
「何か知っている人がいると思ったんですが‥‥」
 アイリスと一緒に屋敷を見つめ、夜十字信人(ea3094)が残念そうに溜息をつく。
「‥‥敵は死人憑きなのだろ。だったら何も悩む事はない。奴等は人間を見れば必ず襲い掛かってくるからな。恨みの線は消えるだろ。生前の記憶が残っている可能性も低いしな」
 知識の本棚から死人に関する情報を取り出し、ゴルドワが仲間達を啓蒙する。
「驚いて言葉も出ないか? ふん、こう見えても我輩は故郷では考える筋肉と呼ばれていたからな! この程度の知識ならポンポンでるぞ!」
 自慢げに胸を張りながら、ゴルドワが豪快に笑う。
「それじゃ、夜な夜なご飯を食べにきているだけなのかなぁ? 猫さん達のためじゃなくて‥‥?」
 信人の肩にちょこんと座り、アイリスが首を傾げて呟いた。
「その可能性は高いな。きっと昼間は何処かに隠れているんだろう」
 被害のあった場所を地面に記し、玲が死人憑きの行動範囲を限定する。
 本当なら地図に記すつもりでいたのだが、紙が貴重な事もあり村の地図は村人達の頭の中にしかないようだ。
「色々と不確定要素が多いな‥‥。だが、今は経験を積むしかない‥‥。事を成すにも、理想を掲げるにも‥‥『力』が無いと話にならんからな‥‥」
 どこか遠くを見つめながら、麻生空弥(ea1059)が馬から降りる。
 念のため他の村人達からも話を聞いてみたのだが、ほとんどの村人達が亡くなった主人の『呪い』であると思い込んでいるらしい。
「確か被害者が襲われた時間は真夜中でしたよね? しかも草木も寝る丑三つ時‥‥。そこに何か秘密が隠されているのかも知れませんね」
 嫌な予感に襲われながら、信人が屋敷を睨みつける。
 心にずっとモヤがかかっているのだが、その正体が何なのかは分からない。
「‥‥では死人を成仏させるとするか。元々我らの目的は死人憑きを倒す事‥‥。例えその裏に黒幕がいたとしても、わざわざ探る必要はないはずだ。倒したところで報酬がもらえる訳ではないからな」
 そしてバルムンク・ゲッタートーア(ea3586)はクスリと笑い、屋敷にむかって歩き出すのであった。

「死人憑き‥‥猫‥‥主人の残した財宝‥‥。ここに何かヒントがあると思うんや」
 村人達から聞いた情報を頼りに主人の墓を探し当て、鳳美鈴(ea3300)が線香に火をつけ両手を合わす。
 死人憑きになった主人の無念を晴らす事によって本当の意味で依頼を成功させる事が出来るのだが、色々と分かっていない事が多いためそこまで辿り着ける自信はない。
「残したニャンコが気懸かりで、ついつい帰って来ちゃいました‥‥ってか? でもよ、実際村の奴等まで襲ったって言うじゃねぇか? な〜んか恨みでもあったんじゃねぇの?」
 墓石を退かして穴を掘り、秋村朱漸(ea3513)がゲラゲラと笑う。
 美鈴がどんな事を言っているかはよく分からなかったが、言葉のニュアンスから何となく意味を理解したらしい。
「そんな事をしたら、バチが当たるで」
 警戒した様子で後ろに下がり、美鈴が黙って朱漸を睨む。
 共通の言語を取得していないため、身振り手振りで言葉の意味を補足する。
「罰当たりって言っているようだな。‥‥たぶん」
 美鈴の表情から言葉を読み取り、玲が朱漸にむかって話しかける。
「なにぃ? 罰当たりだぁ? ‥‥そんなんが怖くて人斬りが喰っていけるかよ? それに見てみろよ。墓の中身はカラじゃねえか。コイツは何か臭うぜ!」
 墓の中から丸い棺桶を引っ張り出し、朱漸が勝ち誇った様子でニヤリと笑う。
 お互い言葉の壁はあるものの、理解しようと努力する。
「やっぱり死人憑きになったのはご主人はんなんやな。でも、どうして‥‥」
 納得のいかない様子で墓穴を見つめ、美鈴がしばらく言葉を失った。
 今回の事件は何か裏で絡んでいるような気がするのだが、肝心なところの情報が不足している事もあり真相は未だに闇の中だ。
「もしかすると俺達に何か隠しているのかも知れないな」
 村人達の態度を思い出し、玲がボソリと呟いた。
 よくよく思い返してみれば、村人達の行動にも不審な点はいくつかある。
「それを調べるのが俺達の役目だろ。まぁ、やるだけの事はやってみようや」
 そして朱漸は棺桶のふたをしっかりと閉め、墓を元通りに戻すのであった。

「それにしても何故ジャパンの建屋はこんなに狭いのであろう?」
 動くたびに頭をぶつけ、ゴルドワが不満げに愚痴をこぼす。
 いっそのこと大黒柱に拳を放ち、屋敷ごと破壊したい気分である。
「ご主人はんの出没している場所は生前ゆかりのあった場所ばかり見たいやな。記憶が残っているかは別として、うちには何か引っかかるんや」
 擦り寄ってきた小猫の頭を撫でながら、美鈴が散らばったピースをひとつずつ当てはめていく。
 彼女の言葉を通訳するためティーゲルが傍にいるため、先程と比べて会話がスムーズに進む。
「大して価値のあるものは置かれてないな」
 屋敷の蔵に保管されているものを調べ、バルムンクの動きが止まる。
「しけた屋敷だなァ‥‥。金目のモンはほとんどねぇ。まさかこの猫達がお宝ってわけじゃねぇよな?」
 呆れた様子で猫を抱き上げ、朱漸が大きな溜息をつく。
(「いや‥‥、何者かによって持ち去られたようだな。‥‥という事は死人憑きが現れた原因は、やはり‥‥」)
 険しい表情を浮かべながら、バルムンクが辺りを睨む。
「猫好きに悪い人は居ませんョ? 私、猫好きですから、ウフ」
 妙に警戒している猫を抱き上げ、クロウ・ブラッキーノ(ea0176)がニヤリと笑う。
 それと同時に猫がクロウの胸を蹴りつけ、その反動で後ろに飛んで着地する。
「おっと、負けませんョ」
 猫の真似をして四つん這いになりながら、クロウが嫌がる猫を追い回す。
「あんまり猫をいじめるな‥‥。化けて出られるぞ‥‥」
 暴れる猫を抱き上げながら、空弥がクロウを注意する。
「まずは猫達の貰い手を見つける事から始める必要があるようでござるな」
 屋敷の中でくつろぐ猫達を見つめ、結城友矩(ea2046)がマタタビの粉をばら撒いた。
 主人を失った事で猫達は満足に餌を得られず、何処かで盗んだ魚を食べ続けているらしい。
 そのため近所の評判は悪く、誰も猫の貰い手にはならないようだ。
「少しだけこの中で大人しくしているでござる‥‥」
 そう言って友矩がマタタビに酔った猫達を籠の中へと放り込む。
 猫達はマタタビの影響があるためか、全く抵抗しようとせず籠の中でぐっすり眠る。
「‥‥三味線の皮は結構良い値でで売れそうですョ」
 凶悪な笑みを浮かべながら、クロウが瞳をギラリと輝かす。
「そんな事をしたら主人の怒りを買うだけでござる。頼むから妙な事は考えるなよ」
 そして友矩はクロウから猫を奪い取り、心配した様子で溜息をつくのであった。

「真っ暗だから、よく分からないよ‥‥」
 不安げに辺りを見回しながら、アイリスが死人憑きを探す。
 本当なら提灯で辺りを照らすのだが、うっかり忘れてしまったらしい。
「ひょっとしてアレかな?」
 暗がりに目を凝らし、アイリスが何かを睨む。
 暗がりの中に浮かび上がったソレは、身体のあちこちが腐り果て蛆虫が湧いている。
「わわっ! やっぱりアレだっ!」
 危うく腰を抜かしそうになりながら、アイリスがピィーッと横笛を鳴らす。
「伏せてっ!」
 アイリスにむかって声をかけ、信人が正面から死人憑きにむかって斬りかかる。
「それ以上、抵抗するつもりなら、あなたの可愛い小猫ちゃん達が怪我をしてしまうかもしれませんよ」
 寝袋に詰めた猫達を突き出し、クロウが死人憑きに警告した。
 死人憑きは一瞬だけ動きが止まったものの、本能には逆らえず再びクロウ達にむかって襲い掛かる。
「やはり‥‥現れたか!」
 素早く刀を抜きながら、天が死人憑きと対峙した。
 死人憑きは天の気配に気づき、だらしなくヨダレをたらす。
「坊さ〜ん。で、出たぞ!! 何とかしてくれ〜」
 腰の刀を抜き放ち死人憑きを袈裟斬りしてから、友矩が慌てて安全な場所まで避難する。
「おっと!! おいおい‥‥危ねえじゃねぇか?」
 紙一重で死人憑きの攻撃をかわし、朱漸が舌舐め擦りをしながらニヤリと笑う。
「貴様に恨みは無いが‥‥死者が現世を彷徨うのを見過ごす訳にはいかん」
 死人憑きの攻撃を何とかかわし、天が日本刀を振り下ろす。
「むぅ、直接戦闘は苦手だ。これで戦ってくれ」
 仲間達にバーニングソードを付与し、バルムンクが後ろに下がる。
 すると死人憑きは標的を変え、朱漸にむかって噛みついた。
「‥‥痛ってぇなぁ。‥‥痛ぇえじゃねぇかコラッ!!!!」
 死人憑きの攻撃をモロに喰らい、朱漸がフラつきながらもポイントアタックを放ち、死人憑きの腕を斬り落とす。
「戦わなければならないか‥‥ならばっ!」
 右手で十字架を取り出し、ティーゲルがホーリーライトを炸裂させた。
 その影響で死人憑きの動きが止まり、一瞬だけ隙が出来る。
「観念せい、我輩の手に掴まったからには最早逃れる道は無い! 振りほどけるならやってみよ!」
 ヒートハンドを掛けた手で死人憑きの身体を掴み、ゴルドワがそのままホールドに持ち込むと仲間達にむかって合図を送る。
「そこかっ!」
 パワーチャージを発動し、信人が死人憑きの両足を破壊する。
「喰らえっ!!」
 死人憑きの死角から日本刀で一撃を放ち、天が素早く背後に回りこみ、続けざまに刀を振り下ろす。
「Ash to Ash Dust to Dust(灰は灰に塵は塵に)。死者よ、この地で安らかに眠りたまえ。汝らの行く末に幸あらん」
 バーニングソードを付与したダガーを突き刺し、ティーゲルが死人憑きにトドメをさした。
「仏じゃよう、やっぱイマイチ手応えが、なぁ‥‥」
 バラバラになった死体を見つめ、朱漸が寂しそうに溜息をつく。
「ご主人はん…あんたさんがホンマにしたかった事は何やったん? そんなん姿になってまで‥‥」
 動かなくなった死体を見つめ、美鈴が悲しげな表情を浮かべる。
「結局、黒幕は分からずじまいか‥‥」
 そう言って空弥がゆっくりと刀をしまう。
「‥‥残るのは猫か。黒猫なら拾っていっても良いな。魔術師の使い魔と言えば黒猫と相場が決まっておる」
 豪快な笑い声を響かせながら、ゴルドワが一匹の猫を拾い上げる。
「我は砂鉄の取れる場所でも探すとするか。この辺りにはないようだが、噂話くらいは聞けるだろ」
 そしてバルムンクは擦り寄る猫達を杖で払いのけ、険しい表情を浮かべて村を立ち去るのであった。
 何か嫌な予感を感じながら‥‥。