●リプレイ本文
「これで河童に関わるのは3度目か。色々な奴がいるものだな。今回はこいつらが悪人だから、遠慮なく退治する事が出来る。河童の力士ほどではないが油断は出来ん」
河童の被害に遭った村を訪れ、南天輝(ea2557)が拳を握る。
最近、悪い河童が増えているため、きついお仕置きする必要があるだろう。
「兄上は河童に会った事があるのですね。腑抜けの方達に団子もとい尻子玉を与えていきましょう」
河童についての詳しい話を輝から聞きだし、南天流香(ea2476)が尻子玉に模した団子を用意した。
本物の尻子玉とは異なるが、村人達に区別がつくとは思えないため、何とか誤魔化す事が出来るだろう。
「河童達には『腑抜けになって働けない』という思い込みや激痛による寝込みが続けば、村人が畑仕事をしなくなり、新たなキュウリが育たなくなる事を予想していないと思うから、そこを指摘すれば油断するはずだ。今後、一切尻子玉採りをしないようにするためにも河童達を徹底的に懲らしめるか」
河童達に対して怒りを感じ、凪里麟太朗(ea2406)が拳を握る。
これ以上被害者となる人間を増やさないためにも、ここで河童達の悪さを食い止めねばならない。
「どこの河童もなんでこうキュウリばっかり盗むかな。今回は思いっきりやっていいみたいだし、今度こそサンレーザーで河童の皿にひびを入れてやる」
河童の皿を割る気満々で、リフィーティア・レリス(ea4927)がニヤリと笑う。
ちなみに河童の皿は骨の一部であるため、皿が割れるという事は河童の死を意味している。
「華国にも河童がいるらしいけど、僕はあった事がないな。多分、こっちみたいに悪さはしていないと思うんだけど‥‥。僕としては尻子玉の方が気になるかな?」
どんなものか想像がつかないため、羽雪嶺(ea2478)が尻子玉に興味を持つ。
「とりあえずお尻は守ります。河童の好きにはさせませんよ」
最悪な事態を避けるため、御蔵忠司(ea0901)が気合を入れる。
河童達の噂を耳にしている事もあり、忠司も警戒しているようだ。
「お尻って‥‥お尻って‥‥痴漢じゃない! そんなの放置して置けないもん。ガツンとお仕置きしてやらなきゃね!」
恥ずかしそうに頬を染め、霧生壱加(ea4063)が河童退治に闘志を燃やす。
「河童達が畑にやってくる時間は決まっているわ。その時間に待ち伏せすれば、きっと河童達を見つける事が出来るはずよ」
村長から河童の現れる時間を聞き出し、流香が被害者となった村人宅に訪問した。
村人は河童に手を突っ込まれた事があまりにショックだったのか、いまも枕を濡らしている。
「ねえお兄さん、尻子玉が抜かれた尻と言うのはどんなだい?」
布団を剥ぎ取り寝巻きを捲くり、山浦とき和(ea3809)が村人の尻を確認した。
「どのくらい入れられたのか‥‥怖いな」
とき和の後ろから覗き込み、雪嶺が気まずく口をつぐむ。
どうやらかなりズブリと行ったらしい。
「なんだいアンタ‥‥立派にしっかりついてるじゃないか。‥‥病は気からというよ?」
別のモノを確認し、とき和が安心した様子で微笑んだ。
「あ、そうそう。さっきこんなものが水辺に落ちてたんだけどさ‥‥。アンタが盗まれた尻子玉は金の尻子玉? それとも銀の尻子玉? それともこれ‥‥かい?」
声色を変えて低い声を出し、とき和が村人にむかって質問した。
「うわあああああ!」
襲われた時の記憶が蘇り村人が悲鳴を上げて暴れだす。
「落ち着いて! 貴方の尻子玉です。直に何時もの調子が戻りますよ」
優しく声をかけながら、流香が村人を安心させる。
襲われた事がトラウマになっている事もあり、村人はなかなか落ち着いてはくれない。
「収まるところに収まらないと気持ち悪いもんね〜。い・ろ・い・ろ・と♪ お兄さんのお尻に戻してあげようかね♪」
村人の頭をヨシヨシと撫でながら、とき和がニコリと微笑んだ。
村人も安心したのか、ホッとした様子で目を閉じた。
「お尻には鉄板は外せませんね。河童に触らせるほど安くは無いですよ、私のお尻は」
万が一の事を考え、流香がお尻に鉄板を入れる。
いくら河童と言えども、鉄板を貫く事は出来ないだろう。
「ちょっと動きづらいけど、さすがに貞操がかかっているもんね。仕方ないかな〜〜」
鉄板の冷たい感触をお尻に感じ、御藤美衣(ea1151)が顔を赤らめた。
かなり恥ずかしい格好だが、お尻を貫かれるよりはマシである。
「逃走用にキュウリも用意しておくか。準備だけはちゃんとしないとな。尻に手突っ込まれたら痛いだろうし。‥‥手じゃなくても痛いんだから」
青ざめた表情を浮かべ、レリスが大きな溜息をつく。
頭の中にグルグルと危険な光景が過ぎるため、戦う前からテンションが下がり気味だ。
「これから俺達が懲らしめる。畑には知らせがくるまで来るのではないぞ」
村人を安心させるため、輝が敵討ちを約束した。
だいぶ落ち着いたのか、村人もコクンと頷き頭を下げる。
「なんとな〜く嫌な予感がチリチリするんだよな。不穏な空気つーか何つうか」
そしてレリスは嫌な予感に襲われながら、河童の出没する畑へと急ぐのだった。
「河童が今後村人に悪さをしない事と、畑の胡瓜を荒らさない事を誓わせる誓約書を書いておいた。これに名前を書かせて二度と悪さが出来ないようにしないとな」
あらかじめ契約書を書いておき、平白龍(ea1171)が見晴らしのいい所まで移動する。
戦闘には参加するつもりがないため、なるべく離れた場所から見物するつもりでいるらしい。
「河童は初めてなのでドキドキです」
河童の利用しそうな逃走経路を想定し、壱加がトラップを仕掛ける。
作戦中のトラブルを避けるため、仲間達にも念のためトラップを仕掛けた場所を伝えておく。
「くれぐれも油断しないようにな」
畑にあるキュウリの添え木を巡らせ、麟太朗が2〜3寸の高さで縄を張らせる。
「新しいキュウリを犠牲にするには忍びないねえ。お盆飾りのキュウリの残りがあるといいんだけど‥‥。やっぱりないか」
盆の時に使用したキュウリがなかったため、とき和が残念そうに新鮮なキュウリを用意した。
「盆からしばらく経っていますからね。‥‥仕方ありませんよ」
苦笑いを浮かべながら、瀬戸喪(ea0443)が予備のキュウリを懐の中にしまう。
もしもの場合を考えて、囮用のキュウリを持つ事にしたらしい。
「そろそろ河童が現れる頃ですね」
太陽の位置を確認し、忠司がブレスセンサーを使って辺りを探る。
時間的にはそろそろなので、河童が現れてもおかしくない。
「あの河原から来るんだよね」
河童の住処と思われる河原を見つめ、壱加が目を細める。
河原まではそれなりに距離があるため、ここからだと確認するのは難しい。
「‥‥来たわ。河童よ」
河原から河童達が続々と顔を出したため、流香がリトルフライを使って仲間達のいる場所まで戻ってくる。
すぐに河童達と戦う事が出来るようにするため、ライトニングアーマーを纏っておく。
「わー本当に甲羅を背負って、皿がある」
感動した様子で河童を見つめ、雪嶺がお尻の鉄板を直す。
「それじゃ、頑張れよ」
思ったよりも河童の数が多いため、白龍が再び遠くに移動する。
「まぁ、死なない程度に頑張るさ」
素早くナイフを握り締め、レリスが息を潜めて河童を待つ。
河童は畑のキュウリに反応すると、罠にハマッて悲鳴を上げた。
「喰らえ!」
河童の皿めがけて日本刀を振り下ろし、麟太朗が河童をすぐさま捕獲する。
そのため河童は全く抵抗する事が出来ずに気絶した。
「やはり皿が弱点のようだな。間違っても殺すなよ」
河童の身体を縛り上げ、輝が仲間達にむかって引っかかる。
「既に手遅れという気もしますが‥‥」
グッタリとしていている河童を抱き上げ、喪が苦笑いを浮かべて汗を流す。
皿を集中的に攻撃されたため、河童の頭からはドクドクと血が流れている。
「この程度じゃ、死にやしないよ。‥‥多分ね」
河童の皿にソニックブームをぶち当て、とき和が河童を縛り上げた。
魂らしきものが口から抜け出ているが、何とか生きているようだ。
「本当にいまさらって感じだよね。まさかこんなに弱いとは‥‥」
呆気なく倒れた河童を見つめ、美衣が困った様子で河童をつつく。
「もう許さないぞ!」
弱点の皿を攻撃されたため、河童達があまりの仕打ちに怒り狂う。
「雷使い流香参ります。雷は効くでしょう」
ライトニングソードを振り下ろし、流香が河童の皿をポカンと叩く。
「手加減しろって言われても、やっぱり皿を狙うよね」
苦笑いを浮かべながら、壱加が皿を狙って手裏剣を放つ。
皿の形が的になるため、どうしてもそこを狙ってしまう。
「こうなりゃ、奴らの尻を狙うんだ!」
勝ち目がないと悟ったため、河童達が作戦を変える。
「‥‥河童達も本気みたいだね」
喪と背中合わせになりながら、美衣がお尻をガードする。
「お互いトラウマが残らないように頑張りましょう。さすがに笑い話にもなりませんから‥‥」
河童達にまわりを囲まれたため、喪がニコリと微笑んだ。
「‥‥随分と余裕だな。貞操を失うかもしれないんだぞ」
キュウリを挟んでお尻をガードし、麟太朗が大粒の汗を流す。
「そんな事をしたら倍返しです」
転がっていた丸太を指差し、喪が河童達にむかって警告する。
さすがに河童も丸太を突っ込まれるのは遠慮したいのか、なるべく喪を狙わないようにして陣形を組む。
「きゃあ! わたくしには触っていい手といけない手があるんですよ」
お尻を触られてしまったため、流香が悲鳴を上げて河童を睨む。
河童は鉄板が入っていたのに驚き、流香にむかって文句を言う。
「キサマか、お前か妹に触れた奴は! どちらだ。どっちでも構わん命は貰うぞ」
烈火の如く怒りだし、輝がソニックブームを撃ちまくる。
河童も輝の気迫に圧倒され、河原にむかって逃げていく。
「兄上、落ち着いてください。わたくしは大丈夫ですから、このままだと河童が死んでしまいます」
ライトニングアーマーを纏っている事を忘れたまま、流香が輝を落ち着かせるため抱きしめる。
突然の事に驚き流香を見つめ、輝がそのまま意識を失った。
「おいおい、大丈夫か?」
流香達を河童から守るため、レリスがサンレーザーを撃って河童を狙う。
「仲間達の仇だっ!」
次々と仲間達が倒されていったため、残った河童達が幻の右を繰り出した。
「効かぬ! 我輩にそのような二番煎じティックな猪口才な手を食うと思ったか! 今度は我輩の番である!」
河童の一撃を鉄板で防ぎ、ユウキ・タカムラ(ea4763)が河童を睨む。
河童はユウキのただならぬ気配に驚き、慌てて背をむけ逃げ出した。
「こら逃げるんじゃないよ。お前達が村人にしたことはこの程度ではないんだ」
オーラーパワーを与えた長巻を振り回し、雪嶺が逃げた河童を追いかける。
「全くもぉ〜★ 困った河童さんね♪」
逃げる河童の行く手を阻み、とき和がサンレーザーを放つ。
「河童達も一度お尻に手を突っ込まれたらどれだけ痛いか分かると思うんですよ」
含みのある笑みを浮かべながら、喪が丸太を拾い上げる。
「ひ、ひぃ!」
生命の危機を感じたため、河童が慌てて逃げ出した。
「村人達の痛みを知れ!」
河童の尻に腕を突っ込み、ユウキが雄たけびを上げる。
河童もよほどショックだったのか、口を開けたまま真っ白に燃え尽きているようだ。
「痛みを知ることで、人は同じ痛みを持つ者に優しくなれるのである‥‥。我輩の言いたい事はそれだけである‥‥」
グッタリとした河童に背をむけ、ユウキが静かに手を拭う。
河童も先ほどの一撃がよほど効いたのか、全く口答えをしようとしない。
「河童さん、もう止めませんか? あなた達がキュウリを狙って村人を襲えば、いずれあなた達は滅ぼされます。わたくし達でさえあなた達を傷付ける事が可能なのですよ。もっと強い冒険者もいますしね。もし欲しいなら力に頼らず、魚と交換してもらいなさいな」
リーダーらしき河童に声をかけ、流香が村人達との和解を促した。
「確かに冒険者は怖いが‥‥。いまさら和解と言われてもなぁ」
河童は不満げに流香を睨むとブツブツと愚痴をこぼす。
「働かざる物食うべからずなんだから! 盗むなんて手段じゃなくて村の人のお仕事とか手伝って報酬としてもらうようにしないと駄目でしょ!」
なかなか首を縦に振らないため、壱加が河童達を叱りだす。
「謝る気がないなら、気が済むまで戦うけど‥‥」
満面の笑みを浮かべながら、美衣が河童に迫っていく。
「わ、分かった! 分かったから、止めてくれ」
慌てた様子で首を振り、河童が涙目まじりに両手を合わす。
「さすがに懲りたようだな」
河童達が退治された事を確認し、白龍が仲間達と合流する。
「これに懲りたら、もう悪さなんてするんじゃないぞ」
河童の皿をペチペチと叩き、麟太朗が河童に警告した。
「それじゃ、この証文に名前を書いてもらえますか? 二度と悪さをしないと誓うため‥‥」
村人達を安心させるため、忠司が証文に名前を書かせる。
「今度、このような事をしたら我輩のゴッドハンドが炸裂するであるぞ?」
河童の記憶に刻むため、ユウキが右手を突き出しニヤリと笑う。
そのため河童もイソイソと証文に名前を書いていく。
「いつでもお前達を斬りにこれるからな。覚えておくんだな」
警告まじりに呟きながら、輝が河童に睨みを利かす。
「もう許してあげよう。反省しているようだしさ」
河童達が必要以上に怯えたため、美衣が証文を受け取り仲間達を落ち着かせる。
「どうしてもキュウリが食べたいなら、自分で育ててみるんだね」
種の入った袋を渡し、雪嶺がコクンと頷いた。
「それじゃ、村人達に謝りに行きましょう。不安なら俺達も一緒に行きますので」
優しく河童に手を差し伸べ、忠司がニコリと微笑んだ。
村人達と河童の間に生まれた溝が消える日はいつになるか分からないが、冒険者達の活躍によってそのキッカケが出来た事は確かだろう。
あとは両者の気持ち次第‥‥。