小さい事はいい事だ

■ショートシナリオ


担当:ゆうきつかさ

対応レベル:1〜5lv

難易度:易しい

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月16日〜09月21日

リプレイ公開日:2004年09月18日

●オープニング

 こんな事を冒険者の方々に頼んでいいものかと思ったんですが、他に頼む人達がいないのでお願いしたい事があるんです。
 実は荷物を保管していた蔵に大量のスズメバチが住み着いてしまったのです。
 蔵の中にはたくさんの銅像や掛け軸などが保管されており、どれも大変に貴重なものでお客様から預かったものばかりです。
 そのため貴重な品をすべて外に出してから、蜂の巣を壊そうと思っていたんですが、うちの坊主がかんしゃくを起こしてしまい、蔵の中に逃げ込み出てこようとしないのです。
 怒った原因は良く分かりませんが、多分ごるびーを見るため見世物小屋に行く予定だったはずなのに、私がスズメバチの駆除をするため約束を破ってしまったからだと思います。
 入り口の扉には貴重な銅像が置かれているため、迂闊に扉を壊して中に入るわけには行きません。
 そこで冒険者の皆さんにはスズメバチの開けた穴から蔵の中に入ってもらいます。
 大きさ的にシフールさんなら通り抜ける事が出来ると思います。
 とにかく息子を説得しなくてはなりません。
 そのあと蔵の中に入ってスズメバチの巣を駆除する事になります。
 スズメバチは寒さに弱いため、何か冷たい魔法が使えるといいでしょう。
 それでは宜しくお願いします。

●今回の参加者

 ea0567 本所 銕三郎(35歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0946 ベル・ベル(25歳・♀・レンジャー・シフール・モンゴル王国)
 ea2352 ヴァルテル・スボウラス(16歳・♂・レンジャー・シフール・ビザンチン帝国)
 ea3535 由加 紀(33歳・♀・忍者・パラ・ジャパン)
 ea5879 紫 霄花(24歳・♀・僧侶・シフール・華仙教大国)
 ea6911 アンリ・フランドル(32歳・♀・ウィザード・シフール・ノルマン王国)

●リプレイ本文

「よっ、達者か?」
 爽快な笑みを浮かべながら、本所銕三郎(ea0567)が見世物小屋を訪れる。
 この見世物小屋にはごるびーと呼ばれる芸達者なカワウソが働いており、銕三郎とは魂の糸で何となく繋がっているらしい。
「んぁ? なんでお前がここにいる!? 今日は何の依頼もしてないぞ」
 険しい表情を浮かべながら、見世物小屋の主人が銕三郎を睨む。
 かなり胡散臭く思っている事もあり、慌ててごるびーを後ろに隠す。
「いや、少し困った事になってなぁ。ごるびーをしばらく貸して欲しい。もちろんタダとは言わないぞ」
 ごるびーの前にイカを山のように積んでいき、銕三郎が主人とごるびーを見比べる。
 既にごるびーは誘惑に負け、イカに手を伸ばしているようだ。
「だが、ごるびーは見世物小屋の看板スター。そう簡単には‥‥こら!」
 ごるびーがイカを食べてしまったため、主人が慌てて頭を叩く。
「交渉成立と言う事だな。それじゃ、ごるびーを借りていくぜ!」
 そして銕三郎はごるびーの事を小脇に抱え、見世物小屋を脱兎のごとく逃げ出した。

「スズメバチ‥‥ですかぁ? あの大きなハチさん‥‥ですよねえ? あんな大きなハチさんに刺されたら、私たちシフールは死んじゃいますよぉ。でも‥‥シフールじゃなきゃ‥‥この依頼は駄目なんですよね‥‥。わかりました! 何とかいたしますです☆」
 苦笑いを浮かべながら、ベル・ベル(ea0946)が自分の胸を叩いて咳をする。
「これも人助けの為だものね‥‥こ、恐くない‥‥恐くない‥‥恐く‥‥。うぅ‥‥何か身を包むもの貸してほしいな。少しでも蜂から刺されにくいようにしたいの」
 手ぬぐいに包まってカタカタと振るえ、紫霄花(ea5879)が辺りを警戒する。
 近くにスズメバチがいないとも限らないため、とても不安になっているらしい。
「シフール用の道具がない〜。手裏剣は重いし、投げたら拾わなきゃいけないし‥‥。こんなモン、投げても威力ないし‥‥」
 弓矢をじーっと眺めながら、ヴァルテル・スボウラス(ea2352)が溜息をつく。
 シフールサイズの武器がないため、ブツブツと愚痴をこぼしている。
「ところで、ごるびーって何だろ? ひょっとして、このカワウソ君? とても利口そうな顔をしているね〜♪」
 ごるびーにぺこりと頭を下げ、霄花が友好の証にイカをもらう。
「シフールでないのは俺と由加の二人か。ガマがシフールを喰わないようにな。蜂なら構わんが」
 仲間達の内訳を確認し、銕三郎が由加紀(ea3535)の肩をぽふりと叩く。
「多分‥‥大丈夫。食べても‥‥吐き出させるから‥‥」
 そして由加はシフール達をジーッと見つめ、怖い事をさらっと言った。

「そういえば‥‥坊ちゃんがまだ蔵の中にいる‥‥ようですねぇ? 外にごるびーちゃんもいますから‥‥何とか‥‥なりませんかねぇ‥‥」
 蔵の扉をジーッと見つめ、ベルが頭を悩ませる。
「とりあえずガキ‥‥もとい‥‥お子様を見つけて、話が出来る場所まで連れてかないとね。頭の上にスズメバチが一杯なんて嫌だけど‥‥」
 スズメバチを刺激しないように壁の隙間から蔵に入り、ヴァルテルが警戒した様子で子供を捜す。
 途中でスズメバチに見つかったら命を落とす可能性が高いため、ヴァルテルも命懸けで子供の姿を探している。
「‥‥あれか」
 ワンワンと泣いている子供を見つけ、ヴァルテルが仏像の上に座って話しかけた。
「お化け蝶々?」
 驚いた様子でヴァルテルを睨み、子供がジリジリと後ろに下がる。
「外にごるびーがいるんだけど会ってみない? それと外にデッカイ蛙と友達の人がいるらしいよ。面白そうじゃない?」
 親しげな様子で話しかけ、ヴァルテルが子供の緊張を解こうと試みた。
「えっ? ごるびーがいるの! 確か芸達者なネズミでしょ」
 ごるびーをネズミと勘違いしたまま、子供が瞳をキラキラさせる。
「‥‥惜しい。カワウソだよ」
 あえて深くは突っ込まず、ヴァルテルが子供を扉の近くまで連れて行く。
「あれ? ごるびーは?」
 鍵穴から外を覗き込み、子供がごるびーを探す。
「……出てきたら、ガマに乗せてあげてもいい‥‥」
 子供と目が合ったため、紀がカエルの人形を抱きしめる。
「食べられたりしない?」
 警戒した様子で紀を見つめ、子供が大粒の汗を流す。
「多分‥‥大丈夫‥‥。もし‥‥食べられたとしても‥‥」
「カ、カエルもいいが、ごるびーもいるぞ。ほ、ほらな!」
 慌てて紀を口を押さえながら、銕三郎が額に浮かんだ汗を拭う。
「わぁ、本当♪」
 嬉しそうに蔵から飛び出し、子供が銕三郎にしがみつく。
「カエルも‥‥可愛いのに‥‥」
 カエルの人形をギュッと抱きしめ、紀がごるびーをライバル視する。
「まあまあ、それじゃ、蔵のものを片付けるか。スズメバチがいるから慎重にな」
 そして銕三郎は愛馬サジマに餌をやり、蔵の中へと入っていった。

「スズメバチは煙を焚かれると失神するらしいから、煙で牽制してもらっている間に巣を捨てるしかないな」
 煙で駄目になってしまう可能性のある貴重品だけを運び、ヴァルテルがスズメバチを撃退するため作戦を練る。
「羅文(らもん)とも遊んでいるようだし、子供の方は安心だね」
 貴重品をすべて運び出したため、霄花が蔵の中を覗き込む。
 子供はごるびーと一緒に驢馬に乗っているため、蔵の中に戻ってくる事はないだろう。
「必要な道具は依頼主が用意してくれたから、まずはスズメバチの通り道になっている穴を塞がなくてはな」
 期待に満ちた表情を浮かべ、銕三郎がシフール達の顔を見る。
「えっと‥‥私が囮になりますぅ‥‥。とっても怖くて泣きそうですが‥‥、皆さんを信じていますから‥‥」
 勇気を振り絞りながら、ベルが囮に立候補した。
 本当は怖くて気絶しそうだが、仲間達を犠牲にするわけにはいかない。
「心配‥‥しないで‥‥。悪いスズメバチは‥‥ガマが食べるから‥‥」
 最悪の場合を考え、紀が大ガマを召喚する。
「私が食べられたりはしませんよね?」
 獲物として認識されたような気がしたため、ベルが心配そうに汗を流す。
「‥‥」
 何も言わずに視線をそらし、紀が大ガマの頭を撫でる。
「ふぇぇぇぇぇ、怖いですぅ」
 危険な映像が脳裏を過ぎり、ベルがカタカタと身体を震わせた。
「とりあえず‥‥がんばれ!」
 ベルの肩を優しく叩き、銕三郎がニコリと笑う。
 色々と危険な状況に陥るかも知れないが、他に立候補するシフールがいないため、ベルが頑張るしかないようだ。
「ひぃーん、何だか死神さんが見えますぅ〜」
 デンジャラスな光景が頭にこびりついてしまったため、ベルが魂が抜けたような表情を浮かべる。
「僕達だっているんだし、何とかなるさ」
「だから何も怖がらないで!」
 シフール達から応援され、ベルがコクンと頷いた。
「‥‥丸呑みされるかも」
 奈落の底に突き落とされるような言葉を吐き、紀がベルを見つめて両手を合わす。
「ま、丸呑みはご遠慮しますぅ〜」
 慌てて上空に飛び上がり、ベルが大きく首を振る。
「こらこら、シフール達が本気で怯えているだろ。それじゃ、ベル。よろしく頼むぜ!」
 苦笑いを浮かべながら、銕三郎が蔵をビシィッと指差した。
「それじゃ、行ってきますぅ〜」
 そしてベルは怯えた様子で蔵にむかう。
 色々な意味で不安な気持ちになりながら‥‥。

「きゃああああああ、やっぱり囮はキツイですぅ〜」
 しばらくしてスズメバチに追われたベルが、大粒の涙を浮かべて森の方に飛んでいく。
 予想以上にスズメバチが来たため、そのまま森に逃げたらしい。
「このままじゃ、ベル姉ちゃんが危険だな。おい、蜂野郎! 刺すなら僕を刺してみろ」
 足に黒い布を巻いてスズミバチを挑発し、ヴァルテルがガマのいる場所まで飛んでいく。
「行くぞ!」
 気合を入れて拳を握り、ヴァルテルがガマに食われる寸前で、上空へと飛び上がる。
「ちょっと‥‥痛いかも知れないけど‥‥我慢してね‥‥ガマ‥‥」
 美味しそうにスズメバチを食べるガマを見つめ、紀がホッとした様子で溜息をつく。
「何とか穴は塞いだよ」
 ベルが逃げている間に穴を塞ぎ、霄花が嬉しそうに手を振った。
「こっちも運び終わったぜ」
 蔵から貴重品を運び出し、銕三郎が親指を立てる。
「ひぃぃぃん、怖かったですよ〜」
 銕三郎にしがみつき、ベルが大粒の涙を流す。
「それじゃ‥‥巣を駆除‥‥しないと‥‥」
 そして紀は蔵の中で煙を炊くと、スズメバチの駆除に成功した。
 その後、依頼主の子供がごるびーを離さなかったため、銕三郎が困り果てる事となる。