●リプレイ本文
「母上‥‥今回も漢の操を絶対に守れますように‥‥」
背中に狼家の紋章が入った火消しの半纏を身に纏い、狼蒼華(ea2034)が夜空に輝く星を眺めて必死で祈る。
用心棒達に捕まったら他の少年少女と同じように如何わしい事をされてしまうため、いつもより念入りに祈っておく。
「今回は手加減の必要ないね仕事だね。思いっきり暴れるよ!」
裏門からコッソリと屋敷の中に潜入し、御藤美衣(ea1151)が門番の背後から近づき、手刀を放って気絶させる。
「悪い人達に、正義の鉄槌を下すですよ」
提灯を持って駆け寄ってきた門番をスリープで眠らせ、アイリス・フリーワークス(ea0908) が忍び歩きで屋敷の中に入っていく。
「て、てめーらはっ!」
屋敷の中では何十人もの用心棒が待ち構えており、冒険者達に気づくと冒険者達にむかって斬りかかる。
「あんた、ピンゾロだよ、運がないねぇ」
用心棒の両目にサイコロをブチ当て、美衣がニヤリと微笑んだ。
このサイコロはイカサマ用のため、ピンゾロしか出なくなっている。
「えっ‥‥えっと、頑張ります」
屋敷の庭を駆け抜けるようにして、レティエル・レティーシャ(ea2452)がシューティングPAとダブルシューティングの複合技で用心棒を打ち倒す。
「少しの間、眠っていてくださいね〜」
物陰から物陰へと飛び移り、アイリスがスリープを使う。
用心棒達はトロンとした表情を浮かべ、パタパタとその場に倒れていく。
「疾風扇の蒼狼、ただいま参上! 覚悟しろよっ!」
格好よく名乗りを上げ、蒼華がハリセンを振り下ろす。
「れぇす褌の蒼狼‥‥だと」
「いや、しょたこんきらぁの蒼狼だ」
蒼華の強さに驚きながら、用心棒達が倒れていく。
「馬鹿っ! 俺はそんな名前じゃねぇ! ちゃんと覚えてから逝けっ! 待て! まだ逝くなぁー!!」
グッタリとしている用心棒の胸倉を掴み、蒼華が不満そうにハリセンを振り回す。
「きゃあ!」
用心棒に胸をむんずと掴まれ、レティエルが悲鳴を上げて頬を染める。
「げへへ‥‥、このねーちゃんがどうなってもいいのか?」
レティエルを人質にとり、用心棒がニヤリと笑う。
「そんな事をしている暇があったら、笛を鳴らせばよかったのに‥‥。何かいやらしい事でも考えていたの?」
用心棒の背後から股間を思いっきり蹴り飛ばし、美衣がレティエルの事を助け出す。
「あぐ‥‥ぐぅ‥‥」
きゅんと妙な音が響き渡り、用心棒が前かがみになって倒れこむ。
「‥‥何だか少し可愛そう」
ピクピクと痙攣している用心棒に同情し、アイリスが両手を合わせてから屋根裏にむかう。
「よくも貴様らっ! やっちまえ!」
想いっきり笛を鳴らして仲間を呼び、用心棒達が雄たけびを上げて刀を握る。
「上等だっ! みんな纏めて相手にしてやろぁ!」
助走をつけて飛び上がり、蒼華がハリセンを力任せに振り下ろす。
「おわっと‥‥わああ!」
飛び上がった拍子に半股引がはらりと脱げてしまい、蒼華がバランスを崩して用心棒達に激突すると、股で用心棒を圧迫させて倒してしまう。
「うわっ‥‥、いや、わざとじゃないぞ! そんなに警戒するなよ! ぬわあああ! そこのてめぇ! 俺の名前を言ってみろ!」
恥ずかしさを誤魔化すため、蒼華が手当たり次第に用心棒を倒していく。
「‥‥凄い。たったひとりであれだけの数を相手にするなんて‥‥」
蒼華がブチ切れて我を忘れているとは露知らず、レティエルが感動した様子で彼の事を援護した。
「あんた、やるね。自分の身体を武器にするなんて♪」
用心棒をトリッピングで転ばせ、美衣が蒼華にむかって親指を立てる。
「母上‥‥じゃぱんは怖い国だ‥‥」
そして蒼華はお星様に涙しながら、用心棒達を倒すのだった。
「用心棒のほとんどは裏口にむかったようだな」
物陰に隠れて用心棒達がいなくなるのを待ってから、九十九嵐童(ea3220)が天井裏から座敷牢にむかう。
座敷牢は屋敷の奥まったところにあり、子供達の泣き声が聞こえている。
「何者だ、てめえらはっ!」
何者かの気配に気づき、牢屋番の男達が誰かを睨む。
その声に驚き、息を潜める嵐童。
「あ、あの‥‥こちらの主人に皆様の接待にと呼ばれてきた舞妓です‥‥」
手にした煙管で胸元をそっと寛げ、設楽葵(ea3823)が牢屋番達を誘惑する。
「ここには子供しかいない。主人に呼ばれたのなら、場所が違うんじゃないのか?」
険しい表情を浮かべながら、牢屋番が胡散臭そうに葵を睨む。
「ですからご主人の命令で‥‥あなた様のお疲れを‥‥」
恥ずかしそうに視線を逸らし、大曽根浅葱(ea5164)が身体をモジモジとさせる。
「‥‥この子、今日が初めてだから‥‥分かるでしょ?」
期待を持たせるような言葉を囁き、葵が牢屋番の胸元にそっと手を差し入れた。
「ぐへへっ、そういう事か」
卑下た笑みを浮かべながら、牢屋番が浅葱の肩を抱いて控え室にむかう。
「何とかうまくいったようですね」
物陰に隠れてブレスセンサーを発動させ、天薙綾女(ea4364)が子供達の数を確認する。
子供達は一ヶ所に固まっているらしく、ずっと泣いているようだ。
「十年ぶりに帰国してみれば、かような不埒な輩がいようとは‥‥」
怒りに身を任せて壁を叩き、矛転喪之起(ea3197)が座敷牢にむかう。
座敷牢の鍵は厳重に掛けられており、鍵を開けるためには牢屋番を倒す必要がある。
「壁ごとバーストアタックでなぎ払ってくれるわ!!」
怒りに身を任せて座敷牢の壁を壊し、喪之起が子供達を外へ逃がす。
「な、何の騒ぎだっ!」
上半身裸で顔を出し、牢屋番が喪之起を睨む。
「‥‥少し眠ってもらおうか」
天井裏から飛び降り背後からバックアタック&スタンアタックを放ち、嵐堂が残った牢屋番めがけて小柄を投げる。
「ごめんなさいね。せっかくイイトコロだったのに‥‥」
牢屋番から鍵の束を奪い取り、葵がニコリと微笑んだ。
「子供達に不埒な真似をさせる訳には参りません、覚悟をなさいませ!」
かんざし状の暗器を構え、浅葱が鋭い視線で牢屋番を睨みつける。
「大丈夫だ。‥‥もう死んでいる」
ピクリとも動かなくなった牢屋番を見つめ、嵐童が疲れた様子で溜息をつく。
「‥‥む、こういうものはもっと隠れてやる方がよろしいのか? いや、だがすでにやってしまったしのう‥‥」
怒りに身を任せて牢屋番の首をポキリとやってしまったため、喪之起が大粒の汗を流して嵐童達の顔を見る。
「命までは奪うつもりはなかったが‥‥天誅だな」
残った牢屋番を縛り上げ、嵐童が死体を控え室に運ぶ。
「それでは子供達を連れて逃げましょう」
怯える子供達に微笑みながら、綾女が裏口をめざして歩き出す。
「誰か‥‥きます!」
何者かの気配を察知し、浅葱が警戒した様子で後ろに下がる。
「何か騒がしいと思ったら貴様等か! ひとり残らずぶっ殺してやらあ!」
座敷牢のある方向から物音がしたため、用心棒がふたり現れ刀を抜く。
「面白いっ! 閻魔に成り代わり仏罰を叩き込んでくれるわ!!」
雄たけびを上げて突進し、喪之起が用心棒の首を掴んで、そのまま壁に叩きつける。
「‥‥壁に埋まっていますわね」
大粒の汗を浮かべながら、浅葱が用心棒に両手を合わす。
「皆さんも悪い事をしたら、喪之起様にお仕置きされますよ〜。注意してくださいね」
怯える子供達に声をかけ、綾女がニコリと微笑んだ。
「それじゃ、私達は裏口から子供達を連れてろうか。じゃ、お祝いに‥‥」
そして葵はふたりの初仕事が成功した事を祝い、浅葱に口付けをするのであった。
「この辺りでピエールはかなり評判のようですね。とても子供好きで面倒見がよく、いつもお菓子をくれるそうです」
近所の呉服問屋からピエールについての評判を聞き、南天桃(ea6195)が入り口から堂々と屋敷の中に入っていく。
用心棒達はみんな裏口に行っているため、正面入り口の警備はかなり手薄になっている。
「なるほどこれがピエールの顔か。随分とネットリした顔じゃのう」
桃の記憶を元に完成させた人相書きを睨みつけ、枡楓(ea0696)がピエールの顔を頭の中に叩き込む。
「昼間の調査でピエールの居場所は分かっている。随分と馬鹿丁寧な奴だったが、あれは偽りの姿なのだろう。そう考えると吐き気がするな」
小虎マークの飛脚便に扮して昼間のうちにピエールに接触し、羽雪嶺(ea2478)が自分の記憶を頼りに仲間達を誘導する。
「な、何奴っ!」
雪嶺達が部屋の中に入ってきたため、ピエールが驚いた様子で腰を抜かす。
「罪の無い幼気な少女ばかりを狙う不当な輩‥‥。これは絶対に許す事の出来ない行為です‥‥。この私の信念の硬さと、愛と美と神への飽くなきまでの忠誠心に誓って、必ずや仕留めてみせる!!」
少年達の事はきっぱり忘れ、クリス・ウェルロッド(ea5708)がクールにポーズを決める。
「闇に生まれた小さな華、必殺、壊傑人(仮)! ただいま参上!」
桜吹雪に包まれながら、桃が氷戦輪を構えて歌を歌う。
「お、おのれ〜! であえ! であえ! 曲者じゃあ!」
ジリジリと後ろに下がり、ピエールが用心棒達を呼び寄せる。
「‥‥おや? 誰も来ないようじゃな。みんな帰ってしまったか?」
動揺するピエールを見つめ、楓がクスクスと笑う。
「な、なんじゃ、何を知っているのぉん!」
ガタガタと震えながら、ピエールが屏風の裏に逃げ込んだ。
「何もかもお見通しですっ! あなた自身の悪事まで!」
逃げ道を塞ぐようにして氷戦輪を放ち、桃がピエールをビシィッと指差した。
「貴方の命運は、何時尽きたのでしょう? ‥‥金に眼が眩んだ時‥‥カマに目覚めた時? ‥‥違う。女性を、的にかけた時です。‥‥私は、どんな理由があろうとも女性を傷付ける者を許す訳には参りません‥‥」
シューティングPAを使ってピエールの股間を狙い、クリスがクールに髪を掻き上げる。
「地獄の閻魔にお前の悪事を飛脚便で届けてきたぜ。速く行ってやるんだね」
オーラソードで首を刎ね、雪嶺が拳についた血を払う。
「何だか惨めな死に様じゃのう。後で揉め事にならないように証拠の品を置いておくか。うちらが下手人にされたらシャレにならないからな」
子供達を売った証文を箪笥の中から取り出し、楓が畳の上に並べていく。
「随分と数がありますね〜。この証文さえあれば子供達を助け出す事が出来ますかね?」
畳に並べられた証文を見つめ、桃がボソリと呟いた。
「これだけの証拠があれば他の奴等も摘発できるだろうね。役人が動くかどうかは別として‥‥」
何か嫌な予感が脳裏を過ぎり、クリスが険しい表情を浮かべて答えを返す。
「‥‥その時は僕達の出番だな」
そして雪嶺は夜空を見つめ、拳をぎゅっと握り締めた。