●リプレイ本文
「ハゲを狙う鴉ね。‥‥どんな趣味をしてんだか。まぁいいや‥‥お仕事お仕事」
カラスの群れから僧侶達を護るため、秋月雨雀(ea2517)が彼らを呼び集めた。
僧侶達は毎日のようにカラスの群れから攻撃を受けたため、頭にはいくつもの傷が残っている。
「鴉とはいえ、被害を出している以上は放っておけないな」
カラスの鳴き声が聞こえてきたため、カイ・ローン(ea3054)が険しい表情を浮かべて呟いた。
カラスの群れは大鴉の後に続き、迷わず本堂へとむかっている。
「空を飛ぶ厄介な敵だが、本堂と言う地の利と、カイ殿の策と、秋月殿の魔法で、此方の有利に戦える筈だ、鴉と鴉の巣にむかった彼らが戻って来るまで、僧侶殿達には鴉など一匹も近づけさせん、カイ殿、秋月殿共に頑張ろうぞ」
仲間達にむかって声をかけ、マグナ・アドミラル(ea4868)が拳を握り締めた。
とても僧侶達が怯えているため、早めに避難させた方がいいだろう。
「護衛し易いように本堂に集まってくれませんか? 1班が鴉を引き付けてくれている為、安心してください」
僧侶達を安心させるため、カイが本堂まで彼らを誘導する。
本堂の窓は全て塞がれており、本堂の中には入り口からしか入れない。
「気をつけてください。触ると血管が爆ぜますよ〜?」
僧侶達に警告しながら、雨雀がバキュームフィールドで入り口を封鎖した。
「うわわわ! カラス達がこっちに来たぁ!」
カラスの群れを指さしながら、僧侶達が這うようにして逃げる。
「‥‥大丈夫。安心して!」
カラスの群れを睨みつけ、雨雀がゴクリと唾を飲む。
何も知らないカラスの群れは真空の空間に激突し、風船のように膨らみ破裂した。
「ガアアアア!」
それと同時に大鴉が鳴き声を上げ、他のカラス達を呼び集める。
「一体、何をするつもりだ!?」
カラス達が奇妙な行動を取ったため、カイが辺りを警戒した。
カラスの群れは一斉に屋根を突き破り、マグナの仕掛けた網にハマる。
「‥‥愚かな。その程度の策など、既に予測済みだ」
網の中でもがき苦しむカラスを見つめ、マグナが僧侶達の頭に頭巾を投げた。
本堂には僧侶を模した人形が置かれているため、それでカラスの群れを騙すつもりでいるらしい。
「お前達鴉が室内戦を選択した時点で負けなんだよ」
僧侶達が別の部屋に逃れた事を確認し、カイがカラスの群れを迎え撃つ。
カラス達は重みで網の固定を外し、人形の頭を何度もつつく。
「‥‥抜けてくるとは思わないけどなぁ。‥‥念には念を、か」
ライトニングアーマーを発動させ、雨雀がカラスの群れを撃退する。
「言っても判らないと思うが、そっちから手を出してきたんだから俺達を恨むなよ。青き守護者カイ・ローン、参る」
すぐさまコアギュレイトを放ち、カイが短槍でカラスを貫き血を払う。
「何が楽しいのかは知らぬが、神聖な寺を我が物顔で歩く主らには、鉄槌の一撃をくれてやるとしよう」
素早くスマッシュを放ってカラスを倒し、マグナが野太刀をぎゅっと握り締める。
カラス達は他の獲物を見つけたのか、屋根の隙間から次々と逃げていく。
「サービスだ! 殺して解して並べて揃えて晒してやんよ!」
逃げていくカラスの背後から、雨雀が日本刀を振り下ろす。
「お二人が味方だと千人力と言った所だな」
本堂からカラス達がいなくなったため、マグナがホッとした様子で溜息をつく。
僧侶達も安全が確保されたため、マグナ達に駆け寄り涙を流す。
「今度鴉として生まれてきたら、普通の光り物を迷惑をかけない様に集めなよ」
そしてカイは床の転がったカラス達の骸を見つめ、黙って両手を合わすのだった。
『暮空銅鑼衛門は怪人である。彼を改造したのは秘密結社グランドクロスである。彼は信仰による世界制服のため、日夜戦っているのだ!』
何処からともなくナレーションが語られ、暮空銅鑼衛門(ea1467)が頭の輝きを増す為に越後屋手拭で頭を磨く。
太陽の光を浴びて眩い光を放つため、仲間達が慌てて銅鑼衛門の頭から視線を逸らす。
「ふっ、禿頭ばかり狙う鴉どもか‥‥。確かに面白いが、美しくない。この虎杖薔薇雄が美しく退治してあげようではないか。銅羅衛門君、安心したまえ、美しく護ってあげるよ」
サラサラな髪を掻き上げ、虎杖薔薇雄(ea3865)が真っ白な歯を輝かせる。
相変わらず香の匂いが漂っており、何故か妙に甘ったるい。
「‥‥理由は分からないけど変わっているねー」
しみじみと呟きながら、アーク・ウイング(ea3055)が銅羅衛門の頭を見る。
銅羅衛門の頭はテカテカと輝いており、思わずパチンと叩きたい衝動に駆られてしまう。
「些か妙な依頼だが、まあ、そんな事はどうでもいい‥‥。俺は大鴉を相手に、それを仕留める‥‥。仲間とともに、討ち取って見せるさ‥‥」
念入りに長弓の手入れをしながら、雪切刀也(ea6228)が辺りを睨む。
何処からともなくカラスの鳴き声が聞こえてきたため、刀也の警戒心も次第に強くなり始める。
「まずは本堂にむかったか。今のうちに用意をしておかないとな」
カラスを追い払うため、ゲレイ・メージ(ea6177)が銀紙を矢に巻いた。
「それじゃ、銅羅衛門君を中心にして円陣を組むか」
爽やかな笑みを浮かべ、薔薇雄が仲間達と一緒に銅羅衛門を囲む。
「テーカーテーカーひーかーるー♪ 坊ー主ーのあーたーまー♪ ‥‥ってかぁ?」
銅鑼衛門を中心にして円陣を組み、平島仁風(ea0984)が楽しそうに歌を歌う。
大鴉が銅鑼衛門の頭に気づいたため、そろそろ襲ってきそうな雰囲気だ。
「ハゲ頭を狙うとは不届き千万な鳥どもでござる。ハゲ頭こそジャパン中年男児の象徴でござり、神聖にして犯すべからずでござる」
円陣の真ん中で仁王立ちとなり、銅鑼衛門が腹の底から大声で叫ぶ。
その声にカラス達が驚き、ガアガアと鳴き始める。
「おらおらカラスども、テメェらの大好きなハゲ頭だぞー!」
銅鑼衛門の頭をペチペチと叩き、仁風がカラスの群れを挑発した。
カラスの群れは大鴉の鳴き声を合図に、銅鑼衛門の頭を狙って降下する。
「飛んで火にいる何とやらだね」
鴉の群れが一斉に降下してきたため、アークがサンダーボルトを放つ。
カラス達はアークの一撃を喰らい、ボトボトと地面に落ちていく。
「あったまてかて〜か、冴えてぴかぴ〜か‥‥それがどうしたあぁあぁぁぁ!! 暮空銅鑼衛門!! 推参!! ミーは逃げも隠れもせずにココにおる!! ナニをためらう事があろうか!! いや、ない!! 鳥どもよ、ユーたちの記憶力薄弱な鳥頭に、ミーのハゲ頭、しかと焼き付けるが良い!!」
六尺棒を両手で持ち、銅鑼衛門が頭上で風車のように振り回す。
「うなれ相棒よ竜巻のごとく!! 秘技! 真・武鼓舞打(しん・たけこぶだ)!!」
迫りくるカラスの群れを次々と倒し、銅鑼衛門がニヤリと笑う。
「黒々としやがって、このカラス野郎! その羽毛、世間のハゲにちったぁ分けてやりやがれ!!」
日本刀と十手を振り回し、仁風がカラスの群れを撃退する。
「心静かに、この一撃を持って命を絶つ‥‥ッ!」
倒し損ねたカラスを狙い、刀也が素早く弓矢を放つ。
カラスは脳天を貫かれ、悲鳴を上げて転がった。
「美しくないね。このカラス達‥‥」
優雅に投網を放り投げ、薔薇雄がカラス達を捕まえる。
それでもカラスは抵抗したが、網の中から逃れる事は出来ないようだ。
「確かに美しくはねえな」
苦笑いを浮かべながら、仁風が薔薇雄と一緒に華麗なる一撃を放つ。
「ふっ、鴉どもに負けるような私ではないよ」
カラスの群れを撃退し、薔薇雄がニコリと微笑んだ。
「それよりもおたくは大丈夫か」
銅鑼衛門にむかって声をかけ、ゲレイが大粒の汗を流す。
「もとより巻き添えは覚悟の上! ミーの事は気にしないで、さあ、攻撃するでござる! ‥‥あ、後は頼んだでござる。我らハゲの輝ける(頭の)明日の為に!! 今日死ぬは本望でござる!」
銅鑼衛門は無数のカラス達から攻撃を喰らい、血反吐を吐いてフラついている。
「行け‥‥ガトーよ。じ‥‥ジーク、ハゲ‥‥」
仁王立ちのまま大量の血を吐き、銅鑼衛門が空にむかって雄たけびを上げた。
「ガ、ガトーなんて‥‥いたか!?」
大鴉めがけてウォーターボムを放ち、ゲレイが慌ててツッコミを入れる。
「気にしちゃ駄目だよ。気が散るから」
銅鑼衛門がピクリとも動かないため、アークが大鴉めがけてサンダーボルトをぶっ放す。
「‥‥銅鑼衛門君の死を無駄にしないためにも大鴉を倒さなくてはならないしね」
銅鑼衛門が気絶している事に気づかぬまま、薔薇雄が仁風と連携を取りながら、落下した着た大鴉を斬りつける。
「いくら空を飛んでいても、僕のライトニングサンダーボルトから逃れられないよ。空こそが雷の領域なんだから」
大鴉の翼をサンダーボルトで傷つけ、アークが素早くトドメをさす。
「自身の咎を悔いるんだな‥‥」
冷たい表情を浮かべ、刀也が大鴉の羽を拾う。
「骸はきちんと処分しておくね。最近は色々と騒ぎが起こっているから、放っておいたり土葬にしたりして、万が一にもアンデッド化されたら困るしね」
カラスの骸を一ヶ所に集め、アークが火打ち石を使って火を放つ。
「しかし、何故ハゲ頭を目の敵にしていたのだろうか。宝石と同じで光物だからか?」
何か引っかかるものを残したまま、ゲレイが大鴉の骸を火の中に投げ込む。
「ま、今回も美しく勝利だ」
そして薔薇雄は瞳をキラリと輝かせ、大鴉の頭に薔薇を突き刺した。
「まったく、ハゲ頭ばかりを狙う鴉が出没するとは‥‥世も末だな‥‥」
カラスの群れが本堂を襲っている隙に、不動金剛斎(ea5999)が迷う事なく巣にむかう。
カラスの巣に行くためには墓地を通り抜けなければならないため、死人憑きの不意打ちを警戒しながら進んでいく。
「う‥‥こう言う時でもなければ来たくは無いな‥‥」
険しい表情を浮かべながら、巽弥生(ea0028)が身体を震わせる。
墓地の方から不気味なうなり声が聞こえるため、あまり乗り気ではないらしい。
「禿げ頭を狙う鴉とは‥‥変な鴉がいたもんだねぇ。一体何が楽しいんだか‥‥」
常に辺りに気を配り、三宝重桐伏(ea1891)がクスリと笑う。
弥生は不安そうな表情を浮かべているが、ここで引き返す事は出来ないため、彼女の前を歩いていく。
「そろそろ墓地か。何も出なきゃいいが‥‥」
再び唸り声の聞こえたため、風月皇鬼(ea0023)が辺りを睨む。
死人憑きはユラユラと頭を揺らし、次々の墓の中から顔を出す。
「おいでなさったみたいだぜ! 腐臭がぷんぷん臭ってきやがる!!」
魔法でクリスタルソードをつくり、金剛斎が死人憑きの首を刎ねた。
死人憑きは金剛斎達に気づくと、大きな口を開けて飛びかかる。
「死人憑きか‥‥。何か最近こんなんばっか相手にしてる気がすんなぁ‥‥まぁいいか」
野太刀を握り締めながら、桐伏が死人憑きを攻撃した。
「地を這い汝らが主の敵を討て! 我が名は金剛斎!!」
すぐさまグラビティーキャノンを放ち、金剛斎が死人憑きを粉砕する。
「さぁて、今晩の酒代の為だ。きりきり働きますか」
問答無用でスマッシュEXを放ち、桐伏が次々と死人憑きを倒していく。
「うう〜‥‥気持ち悪い‥‥とっとと倒れろ‥‥」
青ざめた表情を浮かべ、弥生が死人憑きにスマッシュを放つ。
あたりにはむせ返るような臭いが漂っており、深く息を吸い込めば眩暈で倒れそうになる。
「ここはおまえ達に任せたぜ! 俺はカラスの巣を破壊する!}
死人達の合間を縫って走りぬけ、皇鬼が大木の上まで登る。
巣の中には僧侶の死体は転がっていたが、宝石などの類は一切ない。
「地の盟約によりこの手に宿りて敵を切り裂け!」
再びクリスタルソードを作り出し、金剛斎が死人憑きを斬りつける。
死人達の注意が皇鬼にむかないようにするため、わざとカラスの巣から遠ざかっていく。
「‥‥まだか。早くしてくれよ」
予想以上に死人の数が多かったため、桐伏がチィッと舌打ちする。
「巣を破壊したら、すぐにここから逃げるぞ」
死人達に囲まれてしまったため、金剛斎が退路を確保した。
「よし! カラスの巣を壊したぞ!」
ようやくカラスの巣を壊し、皇鬼が勢いよく飛び降りる。
「‥‥これで終わりだな」
そして弥生は死人達に追われながら、仲間達の待つ寺へとむかうのだった。
その後、駆けつけた仲間達によって死人達は倒され、寺には再び平和な日々が訪れたようだ。