金の玉と銀の玉

■ショートシナリオ


担当:ゆうきつかさ

対応レベル:2〜6lv

難易度:普通

成功報酬:2 G 3 C

参加人数:11人

サポート参加人数:-人

冒険期間:10月19日〜10月24日

リプレイ公開日:2004年10月24日

●オープニング

 江戸から少し離れた場所に少し変わった遺跡がある。
 この遺跡に安置されている埴輪は狸の形をしており、三度笠と酒の入った瓢箪を持っているんだが、何かの拍子にコイツらが遺跡の外に出てしまったため、村人達がとても困っているようだ。
 被害の遭った村では埴輪と同じ姿をしているタヌキの置物作りが盛んなため、埴輪達とが動かなければ置物と区別できないほどらしい。
 そのため区別する方法はただひとつ。
 動いた埴輪を破壊するという事だ。
 ただし、村にとって狸の置物は大切なものなので、出来る事なら埴輪だけでも破壊してほしいという事だ。
 遺跡に安置されていた埴輪は身体の中に銀の玉と金の玉が入っており、銀の玉を5個集めると1G、金の玉なら1個で1Gの追加報酬が出るらしい。
 その玉が何処に隠されているかは想像に任せるため、各自ガンガン玉を回収してほしい。
 ちなみにタヌキの置物を間違って破壊した場合は報酬が激減するため、間違っても壊すんじゃないぞ。

●今回の参加者

 ea0023 風月 皇鬼(31歳・♂・武道家・ジャイアント・華仙教大国)
 ea0031 龍深城 我斬(31歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0247 結城 利彦(26歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea0250 玖珂 麗奈(27歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea0639 菊川 響(30歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea0685 林 麗鈴(31歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea0957 リュカ・リィズ(27歳・♀・レンジャー・シフール・イギリス王国)
 ea1856 美芳野 ひなた(26歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea3269 嵐山 虎彦(45歳・♂・僧兵・ジャイアント・ジャパン)
 ea3914 音羽 でり子(30歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea7237 安堂 嶺(29歳・♀・僧兵・ジャイアント・華仙教大国)

●リプレイ本文

「‥‥最近は碌な事がねえ‥‥河童忍者では散々な成績だし、全裸の泥棒娘にも逃げられてしまった‥‥また会えないかなあ。‥‥っとそれは置いといて、今回は埴輪をぶっ壊せばいいんだな。せいぜい憂さを晴らさせてもらおう‥‥くっくっくっく‥‥俺はこの依頼で埴輪ハンターと化すぜ」
 含みのある笑みを浮かべ、龍深城我斬(ea0031)が木槌を担ぐ。
 最近あまりいい事がないため、埴輪を壊してストレス解消するらしい。
「ハオ♪ 私、リン・リィリンね。皆さん、よろしくですね。私、ジャパン語やジャパンの知識まだまだですけど、頑張りますですね♪」
 元気よく仲間達に挨拶し、林麗鈴(ea0685)がペコリと頭を下げる。
 まだまだ学ぶべき事が多いため、色々な事に興味を持っているようだ。
「こちらこそ宜しくな」
 木槌の振り心地を試しながら、我斬が麗鈴に挨拶した。
 既に頭の中には埴輪破壊の事しかないため、視線だけは埴輪の方をむいている。
「今回の依頼は埴輪退治ね。うーん、身体の中に金の玉か銀の玉があるのねー‥‥金た(以下自粛)となると場所はあそこね」
 狸の置物にある妙なふくらみに視線を移し、玖珂麗奈(ea0250)がニコリと微笑んだ。
 狙ってくださいとばかりに膨らんでいるため、間違いなくあの場所に玉が入っているのは確かだろう。
「たーんたーんたぬきの‥‥えへへ、ちょっとお下品です、テヘ☆」
 少しエッチな事を想像してしまい、美芳野ひなた(ea1856)がペロッと舌を出す。
 昔から馴染みのある歌を歌おうとしたのだが、セクシャルな映像が脳裏を過ぎるため歌う事を止めたらしい。
「早い話が金玉やろ。みんな何を恥かしがっているんや」
 妙に仲間達が恥かしがっていたため、音羽でり子(ea3914)が面白がって『金玉』という言葉を連発した。
「止めろ! それ以上口走るな!」
 でり子が危険な言葉を連発するため、皇鬼が即座にハリセンを取り出しツッコミを入れる。
「なんや、子供やのう。ふうげっちゃんにもついてるやないか。こんな立派なモンが!」
 皇鬼の大事な部分をバンバンと叩き、でり子が下品な笑い声を響かせた。
「いま‥‥キュンって音がしたぞ。潰れた‥‥かも‥‥」
 でり子の一撃がクリティカルしたため、皇鬼が円らな瞳で涙を流す。
 かなりデンジャラスな部分を直撃したため、しばらく身動きが取れないようだ。
「これで金ゲットやな。ほら、1Gよこしや」
 面白がって股間を叩き、でり子が勝ち誇った様子で胸を張る。
「ううっ‥‥、この恨みは‥‥必ず‥‥どこかで‥‥」
 朦朧とする意識の中、皇鬼が恨みの言葉を吐いて気絶した。
「同じ漢として同情するぜ。‥‥まさか乙女にはなってないよな?」
 心配そうに皇鬼を見つめ、嵐山虎彦(ea3269)が無事を確認する。
「それにしても‥‥また埴輪か。まあ、いいけどな。確か‥‥村に埴輪が紛れ込んでいて、どれが埴輪か置物か分からない状況にある‥‥だったか? 見分ける方法は、何かを振り上げる仕草をすると動き出すからそれが本物。一つ一つ回って刀を振り上げてみるか‥‥はたから見ると相当アホくさいな。まあ、リュカさんが札を貼り付けた物は本物だから心置きなく壊せるが‥‥」
 引き受けた依頼の大半が埴輪に関する依頼だった事もあり、結城利彦(ea0247)が疲れた様子で置物を睨む。
 どれも同じように思えてしまうため、手当たり次第に破壊したい衝動に駆られてしまう。
「形は狸でも呼び方は埴輪なんだな‥‥。まあ、迷惑だと言うなら壊す意外選択肢は無いんだが」
 ギュッと槌を握り締め、風月皇鬼(ea0023)が大きな溜息をつく。
 村には狸の置物がたくさん置かれており、どれも動きそうな雰囲気だ。
「埴輪を壊すですか? 分かりました、猫さん助けるため私も頑張るです」
 埴輪の中に金や銀の毛並みの『タマ』という名前の猫が入り込んでしまったのと勘違いしたまま、麗鈴がぴょこぽんと飛び上がる。
「釜元の並んだ置物にまぎれた場合は数体一度に襲ってくる事もあり得るよな。苦戦した時に落とし穴は反撃の一打となる‥‥か?」
 あちこちに置かれた狸の置物を眺め、菊川響(ea0639)が険しい表情を浮かべて腕を組む。
「うーん、何かを振り上げるしぐさをすると動き出すのかー。これって近くにいる人が油断してると襲ってくるって事は無いのかな? ‥‥という事は」
 満面の笑みを浮かべながら、麗奈が瞳をキラリと輝かせる。
「‥‥ん? 何だ麗奈。お前何か作戦があるのか? ‥‥まあ、それも相当アホくさいが有効ならやってもいいぞ」
 野太刀と麗奈の刀を交換し、利彦が首を傾げて呟いた。
 念のため刀にはバーニングソードを付与しておき、非常事態にも対応できるように備えておく。
「それだったらとし君に『だるまさんが転んだ作戦』をやって欲しいんだけど」
 期待に満ちた表情を浮かべ、麗奈が利彦を指名する。
「まぁ、やるだけやってみるか。刀を貸してもらったお礼にな」
 そして利彦は苦笑いを浮かべながら、小さくコクリと頷いた。

「作戦内容は、まず埴輪と置物が一緒たくさん置かれている所にとし君に近づいてもらって、後ろを向いてもらう。そして、ちょっとしたら振り向く。こちらに向かって動き出しているようなら、少し離れてまた後ろを向く。そしてまた少ししたら振り向く。これを繰り返して私のいる所まで埴輪を引っ張ってきてもらって後はアイスブリザードで一網打尽♪ ね、完璧でしょ」
 作戦の内容を簡単に説明し、麗奈がニコリと微笑んだ。
「本当に大丈夫かな?」
 心配そうに狸の置物を見つめ、利彦が麗奈の言われた通りにする。
「もしもの場合はフォローするから大丈夫だ。骨くらいは拾ってやる」
 最悪の場合を考えて埴輪用のトラップを仕掛け、響が嬉しそうに手を振った。
「墓穴もひとつ掘っておくべきでしたかね?」
 小さな穴しか掘らなかったため、麗鈴がハッとなって利彦の顔を見る。
「縁起の悪い事を言うな!」
 一抹の不安を感じながら、利彦がゴクリと唾を飲み込んだ。
 埴輪が一体だけならいいのだが、置物全部が実は埴輪だったと言うオチもあるため、ジリジリと近づくたびに心臓がバクバクと鳴っている。

「俺は後ろを向いているからな」
 狸の置物の前に立ち止まり、利彦が黙って背を向けた。
 いまだに緊張しているが、ここで逃げるわけにはいかない。
「それじゃ、安全な置物にはお札を貼っておきますね〜。空からだったらすぐに逃げる事が出来ますし♪」
 上空から急降下して狸の置物にお札をペタペタと貼っていき、リュカ・リィズ(ea0957)がひとつずつ安全を確かめた。
 こうする事によって例え狸の置物が動き出したとしても飛んで逃げる事が出来るため、他の冒険者達と比べても危険度はかなり低い。
「えっと‥‥こうですかね? ていっ!」
 狸の置物めがけて仕込み下駄を放り投げ、ひなたが慌ててその場にしゃがむ。
「とりあえず大丈夫みたいだね」
 置物のそばに落ちた下駄を拾い、安堂嶺(ea7237)がホッとした様子で汗を拭う。
「本当は凄く怖いけど‥‥頑張りますっ」
 嶺の仕込み下駄を手渡されたため、他の置物にむかって下駄を投げる。
「たんたん狸の金○は〜‥‥かーぜも無いのに‥‥(ぱきゅーん」
 なかなか埴輪に当たらないため、虎彦がでり子と一緒に歌を歌う。
「タヌキのハニワ〜出ておいで、出ないと金た(ズガ〜ン)もぎとるぞ〜」
 禁断の言葉を口走り、でり子が村人達の視線を集めた。
「きんた(ぴー)とか、でかい声で言うな!」
 村人達に冷たい視線で見られたため、虎彦が大声を出してでり子を叱る。
「おまえらフザけているのか! 本当に怒るぞ!」
 恥かしそうに頬を染め、皇鬼がハリセンを使って二人を叩く。
「許してちゃぶだい!」
 皇鬼の激しいツッコミに対抗するため、虎彦がちゃぶ台の後ろに避難した。
「借り物だろう、それは」
 さすがにちゃぶ台を壊すわけには行かないため、皇鬼が虎彦への攻撃を躊躇する。
「あ、そこの狸さん動いた〜」
 狸の置物がピクリと動いたため、リュカが素早く指差した。
 埴輪は怪しい玉袋を輝かせ、飛び跳ねるようにして動き出す。
「うわっ、やっぱり駄目か」
 麗奈の作戦を実行しようとしたが、一度動き出した埴輪は止まる事がないため、利彦が愚痴をこぼして慌てて逃げる。
「福を呼ぶ狸さんといえども、みんなに迷惑をかけるのは良くないです」
 埴輪達を睨んでプンスカ怒り、リュカが大きく頬を膨らませた。
「コイツらみんな『はに丸君(仮)』か。だったらぶち壊しても問題ないよね?」
 
「8畳敷て言うくらいだから、簡単に狙えると思ってたけど、どうしてどうして」
 
 その一撃によって埴輪の玉袋が砕け散り、金色の輝く玉が宙を舞う。
「‥‥振りかぶる動作をしたら襲いかかってくるんだろ。‥‥だったら動作を見せずに破壊すれば良い‥‥砕け散れ!!」
 マントで大槌を隠して狸の置物に近づき、我斬がブライドアタックを放って叩き割る。
 この作戦はまだ動いていない埴輪には有効的なため、我斬がひなた達と一緒に埴輪を探す。
「おおっと! こっちに来やがった!」
 何体かの埴輪が方向を変えてこちらに来たため、響が慌てた様子でスコップを投げる。
 埴輪達の中にはスコップに反応したものもいたが、大半の埴輪は響の事を屋ものとして認識したらしく、地面を踏むようにして跳ねていく。
「引っかかったな。これは罠だ!」
 落とし穴に埴輪を落とし、響がモグラ叩きの要領で、頭の出した埴輪を叩く。
「残念だったな。狙いが外れて!」
 手当たり次第に埴輪を壊し、響がニカッと笑う。
「私もお手伝いしますです♪」
 真鉄の煙管と金属拳を駆使し、麗鈴が響の事を援護する。
 埴輪達は次々と動き始めているようだが、響達の仕掛けたトラップにハマッて壊れていく。
「なるべく罠のある場所まで誘導していった方がいいわね。ここまで数が多いと面倒だわ」
 埴輪が次々と動き出したため、麗奈がジリジリと後ろに下がる。
「こっちの準備は出来ているぞ!」
 ロープと投網を低く張り、響が埴輪達の逃げ道を塞ぐ。
「今度はこっちか。面白いほど引っかかるな」
 埴輪が次々と落とし穴に落ちるため、響が楽しそうに埴輪を破壊した。
「こっちの罠はもっと凄いですよ。埴輪が倒れる辺りに杭があるので、自分から壊れてくれるですよ♪」
 軽快な音が響き中、麗鈴が嬉しそうに飛び上がる。
「捕まえたで! お代官様とお呼び!」
 背後から埴輪に忍び寄り、でり子がロープで縛ってニヤリと笑う。
「わわっ、凄く暴れていますね〜。ちょっと危ないかも知れませんよ」
 ゴロゴロと激しく転がったため、ひなたが悲鳴を上げて後ろに下がる。
 既に埴輪は横に倒されているため、大した事は出来ないのだが、それでも嫌な予感がするようだ。
「なんちゅ硬い金た(ズガ〜ン)や! ウチの足粉砕骨折したやないか! こうなったらお前の金た(ズガ〜ン)で償ってもらうで!」
 埴輪の股間を蹴り上げた時に足を痛めてしまったため、でり子が雄たけびを上げて大槌を力任せに振り下ろす。
「秘技! ちゃぶ台くらっしゅ! 奥義! ちゃぶ台ぼんばー!」
 思いつきで浮かんだ技を繰り出し、虎彦が近づいてきた埴輪を砕く。
 バーストアタックとスマッシュEXの合成技で攻撃したため、硬い埴輪が大きな音を立てて粉々になる。
「と、虎おじちゃん‥‥ちゃぶ台は武器じゃないよォ?」
 心配した様子で虎彦を見つめ、ひなたが大粒の汗をダラリと流す。
「そんな事はない。ちゃぶ台だって立派な武器さ」
 豪快な笑みを浮かべ、虎彦が埴輪を破壊した。
「どらぁ! ‥‥次はどいつだ!!」
 鬼神の如く勢いで大槌を振り下ろし、我斬が埴輪を破壊し銀の玉を回収する。
「タマの救出は麗鈴殿に任せた」
 麗鈴を守るようにして埴輪を倒し、響が親指をビシィッと立てた。
「らじゃーですよ。さっそくタマちゃん救出作戦です♪」
 壊れた埴輪を覗き込み、麗鈴が銀の玉を掴み取る。
「‥‥あれ? タマちゃんがいませんね。変な玉だけ見付かるです。猫さんどこに居るですか?」
 埴輪の中から銀の玉が出てきたため、麗鈴が首を傾げて呟いた。
「まさか‥‥タマちゃんは埴輪達の手にっ!?」
 如何わしい映像が脳裏を過ぎり、麗鈴がハッとなって埴輪を睨む。
 埴輪はカラカラと音を鳴らし、麗鈴にジリジリと迫っていく。
「動く狸さん達の中に本当の狸さん達が入っていたらとても恐いと思うのですが、そんな事はないですよね?」
 頭を叩いて壊したら中から大きなこぶを作った狸が出てくるところを想像し、リュカが恐る恐る壊れた埴輪の中を覗き込む。
「んにゃあ!?」
 突然、埴輪の中から何かが飛び出してきたため、リュカが腰を抜かすほど驚いた。
「やっぱりタマちゃんは存在したですよ」
 埴輪の中から飛び出してきた猫を抱きしめ、麗鈴が嬉しそうに鼻歌を歌う。
 どうやら落とし穴に落ちてミイミイと鳴いていた所に壊れた埴輪が落ちたため、ふたりとも大きな勘違いをしてしまったらしい。
「唯なるさだめなるなれば咲かせてみたもうヨゴレ道」
 両手に金色に輝く玉を握り締め、でり子が最後の埴輪を破壊した。
「この玉‥‥妙に生暖かい!? まあアレだ、ずっと日向に有ったからね。そうだ、そうに決まってるよ。あはは」
 金の玉を握って冷や汗を浮かべ、嶺が乾いた笑い声を響かせる。
 妙にしっとりしているが、あまり気にしない方が身のためだ。
「‥‥玉は依頼人にでも渡せば良いんかいな? ‥‥まあ、何の使い道があるか知らんが‥‥銀の玉を溶かして銀製の武器でも作るのかな?」
 手の中で銀の玉を弄び、我斬がボソリと呟いた。
 金と銀の玉を合わせてひとり1Gずつ分配できそうだ。
「え〜もう帰るん〜? まだまだ金た(ズガ〜ン)もぎ足らんのに〜!」
 まわりの目も気にせず、でり子が破廉恥な言葉を大声で叫ぶ。
「ば、馬鹿! こんな所で妙な言葉を口走るんじゃねえ!」
 村人達の視線が一斉に集まったため、皇鬼が頭を抱えてでり子を叱る。
「おかしなやっちゃなぁ。いやらしいと思うから恥かしいんや」
 ふたつの玉を弄び、でり子がゲラゲラと笑う。
「あ、これが金た‥‥あわわ。えっと、ご飯にしませんか。皆さん疲れていると思いますし‥‥。ちょっと準備をしてきますね」
 そしてひなたは苦笑いを浮かべると、仲間達のためにお汁粉を作るのだった。