巻かれてたまるか!

■ショートシナリオ


担当:ゆうきつかさ

対応レベル:3〜7lv

難易度:易しい

成功報酬:2 G 4 C

参加人数:5人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月01日〜11月06日

リプレイ公開日:2004年11月05日

●オープニング

 とある地方に伝わる、嗜好(誤字)のメニューに、『河童巻き』なるものが存在する‥‥。
 この河童巻きを作るためには大きな海苔と、可愛らしい河童一匹(ココ重要‥‥試験に出ます)が必要らしく、村人達は血眼になって河童を求め探しているようだ。
 だが、伝説はやはり伝説でしかないため、そんなものが本当に喰えるわけがないのだが、村人達も単なる冗談だったとは思っていない。
 それどころか河童の住む湖が襲撃され、河童達が住処を追われているようだ。
 冒険者達に与えられた試練(何)は、標的となっている河童を守り、村人の誤解を解く事、もしくは、ナマ河童巻き(おぃ)の代替となる何かを村人達に提示する事だ。
 人間と河童の間に妙な溝が出来る前にこの事件を解決したいので、両者が納得するような形で誤解を解いてほしい。
 このままだと河童達による『尻子玉作戦』が実行されるかもしれないからな。
 そんな事になれば腑抜けになった村人達が続出し、あっという間に村がなくなってしまう。
 なかなか面倒な依頼だと思うが、宜しく頼む。

●今回の参加者

 ea0282 ルーラス・エルミナス(31歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea0901 御蔵 忠司(30歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea1151 御藤 美衣(27歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea3220 九十九 嵐童(33歳・♂・忍者・パラ・ジャパン)
 ea5298 ルミリア・ザナックス(27歳・♀・パラディン・ジャイアント・フランク王国)

●リプレイ本文

「‥‥信心深いのも時には仇となるものだな。河童が美味しいなどと‥‥全く、そんなデマカセをよく信じ抜けるものだ。さしずめ、西洋ならゴブリンやオーガやエイプを美味しく食えると主張するような馬鹿げた事だと言うのに‥‥」
 村人達の考えている事をまったく理解する事が出来なかったため、ルミリア・ザナックス(ea5298)が呆れた様子で溜息をつく。
 村人達のやっている事は明らかに間違っているため、すぐにでも捕まえて説教をしてやりたい気分のようだ。
「一応、河童達には村人達が奇行に走っているんだと説明しておきました。確かに村人達を許す事はできませんが、このまま争う事になっても、何のメリットもありませんし‥‥」
 村人達を正気に戻す事を河童達に約束し、ルーラス・エルミナス(ea0282)が拳をギュッと握り締める。
 今回の事件に至っては全面的に村人達が悪いのだが、それを河童達に伝えれば憎しみの連鎖が広まるだけで、根本的な解決にはならないだろう。
「このまま人間と河童の抗争が勃発するのは見過ごせぬ、なんとかせねば‥‥」
 険しい表情を浮かべて腕を組み、ルミリアがハナの姿に気づいて口篭る。
 この辺りの河童はみんな五輪祭の見学に来ていたため、ここで邪険に扱うわけにも行かないようだ。
 少なくともハナはルミリア達の応援に来ていた河童のため、余計に期待を裏切るわけには行かないだろう。
「未だ満足に鉄も斬れぬ未熟な身だが、ハナ殿を護るコトをお許し願いたい」
 ハナの前で膝をつき、ルミリアが誓いの言葉を呟いた。
 もちろん、ルミリアが本気を出せば村人相手に苦戦する事はないのだが、その事によって河童達と村人達の間に深い溝が出来る事だけは避けないため、色々と考えておく必要があるだろう。
「ハナちゃんの事は必ず護ってあげますからね。だからもう少しだけ我慢してください。私達の事を信じて‥‥」
 心配そうに自分を見つめるハナの事を励ましながら、ルーラスが河童達を村の奥まで誘導する。
 襲撃にやってくる村人達を迎え撃つため‥‥。

「あんたらは何で河童巻きにこだわっているんだ? 村全体で必死になるほど重要な事でもないだろ?」
 村人達の考えが全く理解できなかったため、九十九嵐童(ea3220)が呆れた様子でツッコミを入れた。
 どこか納得の行く理由があるならまだしも、現時点では100パーセント村人達が間違っている。
「河童巻きは村の名物だ。村の復興のためには欠かせぬもの! ヨソ者は引っ込んでおれ!」
 不機嫌そうに嵐童を睨み、村人達がブツブツと愚痴を言う。
 よほど嵐童の事が気に喰わないのか、そのまま簀巻きに川に流すつもりらしい。
「あんたらいい加減にしなよ! そんな事をしたら、これは迷わず捨てるからね!」
 嵐童が大きな海苔で巻かれてしまったため、御藤美衣(ea1151)が意味ありげに巻物を掲げて村人を睨む。
「あ、あれは!? 河童巻き秘伝の書!! ま、待て! そいつを川に流してはならん!」
 村人達も最初は訳が分からず嵐童を川に流そうとしていたが、村に代々伝わる伝説の巻物がある事を思い出す。
「ふぅ‥‥、間一髪のところだな。危うく惨めな死に様を晒すところだったよ」
 もう少しで川に流される所であったため、嵐童がホッとした様子で汗を拭う。
 手足をきつく縛られていたため、危うくパラ巻きにされるところだったらしい。
「残念だけど村に残っている文献は偽物だよ。誰かが適当に書いた奴だから‥‥。その点、これは本物だから安心してね。これはあたいの先祖がこの村から盗んだものだから」
 河童達を救うため、美衣が適当な嘘をつく。
「‥‥そうだったのか」
 普通なら簡単にバレてしまうところだが、村人達はとても素直な性格のため、彼女の嘘を信じたらしい。
「‥‥この書物によると『河童巻きとは、河童が舌を巻くぐらい美味しい巻物である』って書いてあるのよ!! 河童が必要だって言うのは、味見をするための河童が必要って事で、河童そのものを巻くって事じゃないのっ!!」
 巻物を素早く紐解き、美衣が河童巻きの正体を語る。
 この巻物は美衣の作った偽物であるが、村人達は彼女の話術に騙されてしまい、彼女の持っている巻物が本物であると信じ込む。
「ちなみに本当の河童巻きは具にきゅうりを使っているから、あんたらの考えているものとは全く違うものなんだ。‥‥そろそろ考えを改めてみてはどうかな。そもそも河童巻きとは河童が舌を巻くほど美味しいからカッパ巻と言うんだぞ」
 美衣から受け取った巻物にも同じ事が書かれていたため、村人達がすっかり嵐童の言っていた言葉を信じ、みんなで集まって何やらボソボソと話し合う。
「分かったでしょ? 『河童巻き』には味見をしてくれる河童が必要なんだから、河童とは仲良くしないとダメなんだよ?? 今までどおり襲っていたら、完璧な河童巻きは出来ないんだからね」
 村人達に最後のトドメをさすため、美衣が河童の重要性について語りだす。
 その言葉に村人達も納得したのか、村で取れたきゅうりをかき集め、河童達に詫びを入れに行こうとする。
「‥‥しかし、どこで勘違いが起きたんだろうな?」
 そして嵐童は荷車を引く村人達の後に続き、河童の住む湖へとむかうのだった。

「どうやら話がうまく纏まったようですね」
 思っていたよりも両者の溝が深くはなかったため、御蔵忠司(ea0901)が村人と河童の間に入り両者の和解を提案する。
「河童さん達がオラ達を許してくれるのなら‥‥何も文句は言わねえだ」
 今まで自分達のしていた事が間違っていたと分かったため、村人達が山積みのきゅうりを差し出し河童達の前で土下座した。
「‥‥もういい。俺達だって別にお前達と争うつもりはないからな。しばらく溝は残ると思うが、これからも仲良くしたいと思っている」
 説得に来たのが河童忍軍に協力していた冒険者達だった事もあり、代表の河童が苦笑いを浮かべながら溜息をつく。
 本当なら村人達にはそれ相応の罰を与えるつもりでいたのだが、ふたりの前でそんな事をすれば五輪祭で応援する相手がいなくなってしまうため、『これも運命なのかもな』と呟いた。
「それではこの誓約書に署名をしてもらえますか。二度とこんな過ちが起こらないように、教訓の意味を込めて‥‥」
 村人と河童に誓約書を手渡し、忠司が筆を渡していく。
 誓約書の中には忠司からの提案が書かれており、河童巻きを村の名産にしたらどうかという言葉とともに、村人と河童達の協力があってこそ真の河童巻きが完成するという一文が添えられていた。
「‥‥悪くない話でしょ。いや、あたいらにとって、いい話だよ」
 村人が躊躇し始めたため、美衣が背中を叩いて後押しする。
「‥‥なんだか妙な気分だな‥‥」
 妙な気分に襲われたため、嵐童が我に返って頬をかく。
 別に村人達を脅して誓約書を書かせているつもりはないのだが、追い詰め方など何処か別のものに通じるため、かなり複雑な心境に陥っているようだ。
「まさかお前達‥‥。最初から騙すつもりで‥‥」
 嵐童達の話を聞いて筆を止め、河童の代表がハッとなる。
「‥‥誤解だ。本気で騙すつもりがあるなら、わざわざおぬし達に本名を語る必要はないだろ」
 河童達の勘違いを正すため、ルミリアが慌てて否定した。
 ただでさえ朱雀衆のお仕置きは怖いのに、こんな事をして追加にお仕置きを受けるわけには行かないようだ。
「誓約書をよく読んで何か気になるところがあったら、サインしなくて構いません。先程も言いましたが強制ではありませんし‥‥」
 ルミリアにフォローを入れるため、ルーラスがさりげなく彼女をフォローした。
「‥‥いや、構わん。一緒にいてお前達がそんな奴じゃないと分かっている」
 苦笑いを浮かべながら、河童の代表がサラサラとサインする。
「それじゃ、これは俺が預かっておきますね。何かあった時の証拠にもなりますし‥‥」
 そして忠司は両者の書いた誓約書を懐の中に入れ、優しくニコリと微笑んだ。