悲しきケモノ耳

■ショートシナリオ


担当:ゆうきつかさ

対応レベル:3〜7lv

難易度:普通

成功報酬:2 G 70 C

参加人数:12人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月01日〜11月07日

リプレイ公開日:2004年11月08日

●オープニング

 冒険者達の間でつけ耳として動物の耳を装着する事が流行っている。
 この噂を耳にした悪徳商人が、大量に売れば一般人にも流行るだろうと踏んだため、つけ耳を使って大儲けを企んでいるらしい。
 まず手始めに悪徳商人が行ったのは、猫や犬達の耳を手当たり次第に狩る事であった。
 しかも、つけ耳を売るためにはなるべく綺麗な方がいいため、狙われているのは子猫や子犬の類らしい。
 無論、耳がなくなった動物達が無事で居るはずもなく、後には動物達の遺骸が残るのみ‥‥。
 この事に心を痛めた善良な町人達は冒険者達に依頼する。
 『悪徳商人から、動物を護ってください』と‥‥。
 もちろん悪徳商人も黙っていない。
 捨て猫、捨て犬は飼い主が居ないため、自分達が何をしてもいいはずだ、と文句をつけてきた。
 こんな非常識な考えを持つ悪徳商人をこのままのさばらせておくわけには行かないだろう。
 そこでお前達には悪徳商人にキツ〜イお仕置きをしてほしい。

●今回の参加者

 ea0023 風月 皇鬼(31歳・♂・武道家・ジャイアント・華仙教大国)
 ea0629 天城 烈閃(32歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea0861 緋邑 嵐天丸(25歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea2034 狼 蒼華(21歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea2160 夜神 十夜(29歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea2538 ヴァラス・ロフキシモ(31歳・♂・ファイター・エルフ・ロシア王国)
 ea2630 月代 憐慈(36歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea4759 零 亞璃紫阿(30歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea4868 マグナ・アドミラル(69歳・♂・ファイター・ジャイアント・ビザンチン帝国)
 ea5230 神威 空(31歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea5557 志乃守 乱雪(39歳・♀・僧侶・人間・ジャパン)
 ea6228 雪切 刀也(27歳・♂・浪人・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

「‥‥安心しろ。俺達はおまえの敵じゃない」
 ブレスセンサーを使って罠に掛かった動物を助け、天城烈閃(ea0629)が優しく頭を撫でる。
 罠に掛かっていたせいで動物達の中には烈閃の事を警戒し噛み付いてきたものもいたが、それでも烈閃は手を上げず動物達の傷を治療した。
「痛くないからじっとしててくれなっ♪」
 暴れる犬や猫に声をかけ、狼蒼華(ea2034)が包帯状に布を巻く。
「捨て犬、捨て猫の心配なんぞして金出すやつがいるとはね。まったく暇なやつらよのぉ〜。正直、犬猫どもがどーなろうが構わねーが仕事だからよ。きっちりやらせてもらいまっせェーッ」
 全く動物達には興味がないのか、ヴァラス・ロフキシモ(ea2538)がゲラゲラと笑う。
 彼にとっては動物達を助ける事より、ゴロツキ達をいたぶる方に興味があるらしい。
「よぉよぉ、テメェらナニ、余計な事してるんだぁ? そいつらを逃がされちまうと、困るんだけどなぁ‥‥」
 不機嫌な様子でヴァラス達を睨みつけ、ゴロツキ達がドスの聞いた声で刀をむける。
「飼い主がいない犬や猫をどうしようと自由‥‥というのがお前達の間の認識らしいな? なら、俺達がこいつらを助けてやるのも自由だろう?」
 ようやくすべての動物達を逃がし、烈閃がゴロツキ達を長弓で狙う。
「フザけた事を言いやがって! 俺達とお前達とじゃ、格が違うんだよ、格がっ!」
 ジリジリと烈閃に迫っていき、ゴロツキ達が地面に唾を吐き捨てた。
「私利私欲のためには、他人がどうなろうと構わないのか‥‥? どうやら、これは相応の報いを受けさせる必要がありそうだな‥‥」
 ゴロツキ達に罪の意識がなかったため、烈閃が怒りで身体を震わせる。
「‥‥仕方ありませんね。少し相手してあげましょう」
 ゴロツキ達が一斉に刀を抜いたため、志乃守乱雪(ea5557)が杖を構えて溜息をつく。
 乱雪達が本気を出せばゴロツキ達などあっと言う間に倒せるが、それだと情報を得る事ができないため、スタンアタックを使って気絶させる。
「このケモノふぇちがっ!」
 仲間があっと言う間に倒されたため、ゴロツキ達が警戒した様子で啖呵を切った。
「‥‥誰が、ケモふぇちだってっ! 誰がっ! もっぺん言ってみろ!!」
 ハリセンでゴロツキの顔面を思いっきり叩き、蒼華が不満げな表情を浮かべて胸倉を掴む。
「この俺は冒険者、てめーらはそこらのゴロツキ風情。実力の差は歴然という事は理解できるかね?」
 ダブルアタックとポイントアタックの合成技でゴロツキを倒し、ヴァラスが短刀をペロリと舐めて怪しく笑う。
「ああ、ヴァラスさんがやり過ぎないように‥‥。死体になっては、後片付けが面倒です」
 ゴロツキ達が血溜まりの中に倒れたため、乱雪が気まずい様子で視線を逸らす。
 ヴァラスはほとんど手加減しないため、ゴロツキ達が次々と血溜まりの中に沈んでいく。
「そりゃ、コイツら次第だな。お、理解できたようだね‥‥えらいぞぉ〜〜〜〜。それじゃ、殺すのだけは勘弁してやらぁ。弱い者いじめ‥‥大ィィィ好きッ! 俺ってえらいねェ――」
 縄ひょうをゴロツキの首に巻きつけ、ヴァラスが満足した様子でゲラゲラと笑う。
 ゴロツキ達はまるで犬のようにして地面を這い、ゲホゲホと苦しそうに咳をする。
「少しやり過ぎのような気もするが‥‥まぁ、いいか。‥‥自業自得だしな」
 右手で子犬の目を隠し、雪切刀也(ea6228)が疲れた様子で溜息をつく。
 まだまだゴロツキ達には利用価値があるため、ここで殺すわけには行かないのだが、今まで動物達に酷い目を遭わせていたため、ここで助ける気持ちにはならないようだ。
「ところで、お前達の仕掛けた罠で怪我をした子供が大勢いる。侘びの一つも入れに行くのが筋というものではないか?」
 ゴロツキ達の前で長弓を構え、烈閃が最後の警告をする。
「分かった! 俺達が悪かった!」
 するとゴロツキ達は烈閃の身体にしがみつき、助かりたい一心で涙ながらに許しを乞う。
「あなた達の行為に怒っている犬神と化け猫を鎮めるためには生贄を捧げるしかありませんね」
 ゴロツキ達の顔をジーッと見つめ、乱雪がボソリと呟いた。
「駄目だ、駄目! 許すわけねぇだろ! この‥‥ぎにゃああああああっ!! いっいっイテエエエエエエエ、イテーイテェ〜よお〜〜〜。このウスラボケどもが、いたるところに罠を仕掛けやがってよォ――ッ。もう許さねぇからな!」
 ゴロツキの頭を鷲掴みにしようとして罠にかかり、ヴァラスが大粒の涙を浮かべて悲鳴を上げる。
 まさか足元に罠が仕掛けられているとは予想もいていなかったため、思いっきり罠を踏んづけてしまったようだ。
「た、助けてくれ! 何か嫌な予感がするんだ。奴の目つきが危ないし!」
 ヴァラスにおびえて涙を流し、ゴロツキ達が土下座する。
「それが嫌なら改心して協力なさい。とりあえず罠の設置場所と解除方法を教える事ですね」
 ゴロツキ達を助ける条件として、乱雪が罠の在り処を詳しく聞く。
「ぜ、全部教えるから! だ、だから助けてくれ!」
 必死になって頭を下げ、ゴロツキ達が両手を合わす。
「本当に分かっているのか!? ケモノ耳なんてもん流行らせたせいで、コイツらにも迷惑かけているかだからな。‥‥まったく」
 そして蒼華は華国に残して狼の友達を思い出し、何処か寂しげな表情を浮かべるのであった。

「私欲の為に動物を狩る悪党め、貴様の仲間は懲らしめた。これ以上の被害を出したくなければ、潔く動物を狩るのを止めるが良い」
 屋敷の入り口を守っていた用心棒達を前にして、マグナ・アドミラル(ea4868)が夕日に背をむけ野太刀を握る。
「馬鹿な真似はしない事だ。こいつらのようになりたくなかったらな」
 グッタリとしているゴロツキを放り投げ、神威空(ea5230)が用心棒達に警告した。
「うるせぇ!」
 呼び笛を鳴らして仲間を呼び、用心棒達が一斉に刀を抜く。
「伊達に修羅場を潜った訳では無い、掛かってこい。唸れ我が剣、秘儀:針海!」
 目の前の用心棒に刀を振り下ろし、マグナが数人の用心棒を相手にする。
「このまま夜まで待てば、悪徳商人の仕置きが難しくなる。今のうちに始末をつけるしかないようだな」
 バーニングソードの掛かった風車を屋根の上から投げつけ、刀也が用心棒の頭を踏みつけ着地した。
 戦闘中にコッソリと逃げ出したゴロツキのせいで用心棒達が屋敷に集まりつつあるため、このまま夜まで待ち続ければ警備が厳重になるだけだ。
「何だ、お前は!」
 一瞬にして仲間が倒されたため、用心棒達が刀也を睨む。
「漆黒の天を灼く風音。【焔色(ほむらいろ)の風車】と御見知り願おうか!!」
 不敵な笑みを浮かべながら、刀也が怪しく口元を歪ませる。
「ここで仕置きに失敗すれば、悲しむのは動物だしな。このまま作戦を続行しよう」
 刀也にバーニングソードを付与してもらい、空が金属拳を使って用心棒を殴り飛ばす。
 用心棒は勢いあまって樽にぶつかり、血反吐を吐いて気絶した。
「この様子じゃ、大人しく俺達の言う事を聞いてくれそうにないな。‥‥やはり戦うしかないのか」
 用心棒にトドメを刺されたゴロツキを抱き起こし、空が疲れた様子で溜息をつく。
 ゴロツキは喉元を切られ、ピクリとも動かない。
「まあ、こうなった原因には、俺も関わってるからなぁ‥‥。何とかしないわけには行くまいよ」
 次第に用心棒達が集まってきたため、風月皇鬼(ea0023)が虎の面で顔を隠しなるべく屋敷から遠ざかる。
 用心棒達もまさか他に仲間がいるとは予想もしていなかったのか、まったく怪しむ事もなく刀也の後を追いかけていく。
「まぁ、手加減する必要もないだろ。情けをかけてやっても、無駄なような気がするしな」
 次から次へと用心棒達を斬り捨て、マグナが野太刀についた血を払う。
「それもそうだな。だったら俺も本気でやるか!」
 手加減する理由が全く浮かばなかったため、皇鬼が気合を入れて用心棒をブン殴る。
「だんだん囲まれてきたな」
 用心棒の数が増えてきたため、マグナが敵の死角からスタンアタックを放つ。
「俺達の役目は用心棒達を屋敷から遠ざける事だ。そういう意味ではこれで問題ないだろ?」
 オフシフトで用心棒達の攻撃をかわし、空がオーラショットを叩き込む。
「ああ、問題ないな」
 足元に何か目印を見つけたため、マグナが用心棒達を引き付け横に飛ぶ。
「ぐおっ! 罠か!?」
 頭上から網が落ちてきたため、用心棒達が次々と転倒する。
「どうした、もう終わりか!?」
 用心棒達に疲れの色が見えたため、空がわざと挑発気味に言葉を吐く。
「ウルセェ! いま考えているところだ」
 仲間達が次々と倒されていったため、用心棒達が拳を震わせる。
 近くには村人達もいるのだが、みんな用心棒達には不満があったため、誰も役人には通報しない。
「いくらでも待ってやるよ。時間はいくらでもあるんだしな」
 十分に用心棒達を引き付けたため、皇鬼が挑発気味にニヤリと笑う。
「そろそろ逃げる準備をしておくか。ここまで来れば大丈夫だろ?」
 逃走経路を確保したため、マグナが仲間達にむかって声をかける。
「頃合か‥‥。悪いが付き合いは此処までだ」
 そして刀也は用心棒達に背をむけ、その場から逃走を図るのであった。

「また乳は揉めないか。せめて商人が女なら揉めたものを‥‥」
 両手の指をワシャワシャとさせながら、夜神十夜(ea2160)が残念そうに溜息をつく。
 用心棒達の胸を揉んでもまったく面白みがないため、あまり乗り気ではない様子である。
「居合い斬り友の会、会員番号一番の嵐天丸が成敗してやるぜ。‥‥だけど何で俺も獣耳をつけなくちゃいけないんだ?」
 黒い布で顔を隠し、緋邑嵐天丸(ea0861)が頭の犬耳を指差した。
「動物の恨みに見せかけてやるのさ! 自分がどんなひどい事をしてきたか、思い知らせてやるためにな!」
 屋敷の中にいた用心棒達が騒ぎ始めたため、十夜が嵐天丸の腕を掴んで走る。
「‥‥仲間達が動き始めたようだな」
 ブレスセンサーを使って用心棒達が屋敷を出て行った事を確認し、月代憐慈(ea2630)が顔を黒い布で覆い隠し悪徳商人を探す。
 用心棒達が表に出て行ったため、警備は手薄になったのだが、悪徳商人の姿は見当たらない。
「冒険者の間で獣耳が流行ったせいで、こんな悲劇が起こってしまうなんて‥‥。二度とこんな事をしないよう、少々キツめにお仕置きしなければいけませんね‥‥」
 悲しげな表情を浮かべながら、零亞璃紫阿(ea4759)が廊下を走る。
 何処かで悪徳商人の悲鳴が聞こえているが、それが何処だか分からない。
「用心棒もほとんど屋敷に残ってないな」
 部屋から用心棒が出てきたため、十夜がすぐさまスタンアタックを炸裂させる。
「そこか! 夢想の太刀、藤神撃!」
 『紅』バーストアタック、『白』がソニックブーム、『蒼』がブラインドアタックの連続コンボを叩き込み、嵐天丸がニヤリと笑う。
「どうやらこの辺りにいるようですね」
 ファイヤーコントロールを使って屋敷の蝋燭に青い炎を灯していき、亞璃紫阿が耳を澄まして悲鳴のしている場所を特定する。
「そこに誰かいるのか!」
 怯えた様子で声を上げ、悪徳商人がパニックに陥り部屋を出た。
「のさばる馬鹿をなんとする」
 悪徳商人の背後を十夜が走る。
「天の裁きなんぞ期待は出来ない」
 続いて嵐天丸が障子越しに語りだす。
 月夜を浴びて、浮かぶシルエット。
 悪徳商人は恐怖で言葉を失った。
「下らぬ正義もあてにはならない」
 怯える悪徳商人の前に立ち、憐慈が妖しくニヤリと笑う。
「故に、鬼道の名において仕置する」
 悪徳商人を取り囲むようにして登場し、嵐天丸達が一斉に決め台詞を言い放つ。
「女‥‥なのか?」
 キョトンとした表情を浮かべ、十夜が悪徳商人の顔を見る。
「それがどうした! 珍しくもないだろ!」
 警戒した様子で十夜を睨み、悪徳商人が唇を噛む。
 切れ長の瞳が美しく、肌は白魚のようである。
「さて‥‥これまで殺した動物達の恨みだ。しっかりもらっていけ」
 扇子を素早く振り下ろし、憐慈が悪徳商人に警告した。
 自分が今までしてきた事を後悔させるため‥‥。
「いや、止めておこう。女をいたぶるのは趣味じゃない。だが‥‥償いはしてもらう」
 素早く小太刀を振り下ろし、十夜が悪徳商人の髪を斬る。
「女にとって髪は命と同じもの‥‥。ここでお前は死んだのだ。‥‥分かったらここから去るんだな。俺の気持ちが変わる前に‥‥」
 鋭い目つきで悪徳商人を睨みつけ、十夜が黙って小太刀をしまう。
「‥‥いいのか、これで?」
 脱兎の如く逃げ出した悪徳商人の背中を見つめ、嵐天丸が納得のいかない様子で問いかける。
「ああ、構わん。無一文の状態で、同じ間違いはしないだろ。少なくとも俺はそう思いたい」
 そして十夜は遠くを見つめ、悲しげに目を細めるのであった。
 昇り始めた太陽の光を全身に浴びて‥‥。