●リプレイ本文
「子供達が生きていれば良いのだが‥‥。その方が鬼の巣穴に潜るというリスクを冒さなくて済むからな」
何処か寂しげな表情を浮かべながら、デュラン・ハイアット(ea0042)が森の中を進んでいく。
子供達が行方不明になってからもう何日も経っているため、奇跡でも起きない限り生存していている可能性はかなり低い。
「‥‥間に合ってくれるといいんだけど。最悪の場合は遺骨だけでも埋葬してあげたいし‥‥」
妙な胸騒ぎに襲われながら、エンジュ・ファレス(ea3913)が早足で歩く。
最後まで希望は捨てたくないのだが、どうしても嫌な事ばかり考えてしまう。
「‥‥遺骨を持ち帰る? ふざけんじゃないよ! 生きて連れ戻すに決まってんだろっ!」
納得の行かない様子でエンジュを睨み、馬籠瑰琿(ea4352)が不満そうに愚痴をこぼす。
子供の死を確認するまでは生きていると信じているため、少し不機嫌な様子でエンジュ達を睨みつける。
「そう怒るな。誰だって子供達が死んでいるなんて思いたくはないんだから‥‥」
何かを悟ったような表情を浮かべ、デュランが瑰琿の肩を叩いて溜息をつく。
「‥‥子供達に何かあったら、アタシは鬼を全滅させにゃならんねぇ。例え命乞いをしてもさぁ」
殺気に満ちた表情を浮かべ、瑰琿が瞳をギラリと輝かせる。
「出来るだけひとりにならないように、二人一組で行動しませんか?」
早く子供を見つけるため、琴宮茜(ea2722)がボソリと呟いた。
「いや、なるべく固まって行動した方がいいだろう。それほど鬼も弱くはないからな」
鬼の危険性を考えた上で、デュランが残念そうに首を振る。
「バラバラに行動した場合、鬼の群れに遭遇したら終わりだからな。待ち伏せしている場合もあるから、出来る限り離れないようにしておこう」
聞き耳を立てながら森の中を歩いていき、アーウィン・ラグレス(ea0780)が険しい表情を浮かべて辺りを睨む。
鬼達は集団で行動している可能性があるため、罠などが仕掛けられていないのかも注意する。
「確かに誰かに見られているような気がしますものね」
なるべく足音を立てないようにしながら、茜が警戒した様子で汗を流す。
茜達が森に入った事は知られている可能性が高いため、どこかで監視されている可能性が高い。
「‥‥この辺りで子供達が襲われたようだね」
草叢の中に剣玉が落ちていたため、エンジュが他の遺留品が落ちていないか辺りを探す。
辺りには大量の血痕も残っており、草木が赤く染まっている。
「これが遺品にならないといいけど‥‥」
悲しげな表情を浮かべ、外橋恒弥(ea5899)が剣玉を布でくるむ。
「‥‥ん? 何か妙な気配がしないか?」
ブレスセンサーに反応があったため、瑰琿が緊張した様子で唾を飲む。
「‥‥囲まれているな」
リトルフライで飛び上がり、デュランが鬼の姿を確認した。
鬼達は寺を襲撃に行く途中だったらしく、纏まった数で行動していたようである。
「だったら戦うしかないだろ! 寺を襲われたらシャレにならないからな」
勢いよく長巻を引き抜き、アーウェンが鬼達と向かい合う。
鬼の群れは戦いなれているためか、素早く陣形を組むと唸り声を上げる。
「鬼さんこちら♪ ‥‥とジャパンでは言うのだったかな」
なるべく寺から鬼を遠ざけるため、デュランが挑発した様子でマントを揺らす。
鬼達も簡単に挑発に乗ったのか、不機嫌な表情を浮かべてデュランを追う。
「鬼のヤロー。シャレにならねぇほどの馬鹿力だな。両手が痺れて長巻が握れねぇ‥‥」
鬼の攻撃を喰らって長巻を落とし、アーウェンが険しい表情を浮かべて横に飛ぶ。
「すべての鬼を足止めする事は難しいようだね。‥‥相手は思っていた以上に強いよ」
高速詠唱でコアギュレイトを唱え、エンジュが鬼の身体を高速する。
「よほど寺に行きたいようだね。俺達の相手にする気はないようだよ」
日本刀を振り下ろし、恒弥が疲れた様子で溜息をつく。
鬼達の大半は寺を目指しているため、すべて退治する事は難しい。
「残りは寺の奴らに任せるしかないだろ。そっちまで相手にしていたら、身体がもたねぇからな」
ようやく長巻を拾い上げ、アーウェンが痺れる右手でスマッシュを放つ。
「とりあえず巣穴を目指した方がいいかもね」
俺達の大半が巣穴から離れているため、エンジュが覚悟を決めて巣穴にむかう。
「今回の目的は子供達の救出だしな。手遅れになる前に急ぐとするか!」
最後まで子供が生きていると希望を捨てず、アーウェンが巣穴を目指して走り出す。
鬼達の巣穴はそれほど今の場所から離れておらず、まるで巨大な化け物が大きく口を開けたような形になっている。
「ここにも子供の持ち物が‥‥。やはりここにいると考えて間違いないな」
腕のもがれた人形を拾い、デュランが怒りに身体を震わせた。
「‥‥皆は先に行け、俺も後から追いつく!」
巣穴の奥から鬼達が現れたため、アーウェンが長巻を構えて大声で叫ぶ。
「鬼どものお出ましかっ! ‥‥お前達に生きる価値は無いねぇ! ‥‥とっとと逝っちまいなっ!」
鬼が現れたのと同時に抜刀し、瑰琿が全身に返り血を浴びる。
「残っているのは下っ端の鬼だけだね。このままみんなで倒しちゃおう」
フェイントアタックをメインにして鬼と戦い、恒弥が死角からバックアタックを叩き込む。
「その間に俺は子供達を探してみる!」
ブレスセンサーを使用し、デュランが巣穴の奥にむかう。
鬼の巣穴はそれほど深くないらしく、何区画かに分かれている。
「任せておけ! おっと! ヒュゥ、怖い怖い! でも‥‥負ける気はしねぇな?」
鬼の一撃によって服が破れ、アーウェンが苦笑いを浮かべて攻撃を放つ。
巣穴に残った鬼達はあまり強くは無いため、攻撃を避けきれずに退治される。
「あ、デュラン君が帰ってきたよ」
奥の部屋からデュランがションボリとした様子で帰ってきたため、恒弥が嫌な予感に襲われ気まずい様子で汗を流す。
「コレがお前らの正体かい? 鬼畜外道とはよく言ったモンだねっ!」
変わり果てた姿なった子供に気づき、瑰琿が雄叫びを上げて鬼を睨む。
「‥‥痛いかい。でもね‥‥貴様らに食われた子供はねぇ‥‥もっと痛かったんだよ!」
何度も鬼にむかって斬りかかり、瑰琿がトドメとばかりに首を刎ねる。
「寺が心配だな。急いで戻ろう」
巣穴の鬼をすべて倒し、デュランが子供の亡骸をマントで包む。
「助けられなくてごめんね。ゆっくり眠ってね」
そしてエンジュは涙を浮かべ、子供の亡骸を抱きしめた。
「‥‥やれやれ、久し振りに金になる依頼だと思ったら、ヤケにキツそうだねぇ? ‥‥ま、そうだと分かって請けたんだから文句は無ェがね」
面倒臭そうな表情を浮かべ、風羽真(ea0270)が気まずい様子で頬をかく。
寺には子供達が残っているため、避難を終えるまで時間を稼がなくてはならない。
「孤児を襲うなど、ひどい話ですわね」
不機嫌な様子で森を見つめ、大宗院鳴(ea1569)がプンスカと怒る。
仲間達が森に入ってから、かなり時間が経ったため、何か嫌な予感がするようだ。
「‥‥どうやら鬼達が集団で現れたようね。私達だけで倒す事が出来るかしら?」
あまりに鬼の数が多かったため、佐上瑞紀(ea2001)が気まずい様子で汗を流す。
「とにかく時間を稼ぎましょう。子供達が寺から全員逃げるまで‥‥」
子供のフリをして鬼の群れを挑発し、鳴が寺から遠ざかる。
鬼達は鳴の姿に気づくと、涎を流して彼女を追う。
「鬼が二手に分かれたわ。‥‥気をつけて!」
草叢の中から飛び出し不意打ちし、瑞紀が鬼にむかってソードボンバーとスマッシュを放つ。
「‥‥マズイ事になりましたね。鬼達が寺にむかっています」
寺にむかった鬼達にライトニングサンダーボルトを撃ち込み、鳴が近づいてきた鬼達を睨むとライトニングアーマーで対抗した。
「鬼も馬鹿って訳じゃないようだな。こっちも作戦を変えないとマズイぞ!」
木の枝の低い場所を選んで潜って行き、真が鬼を挑発しながら走り出す。
鬼達は棍棒をブンブンと振り回し、木の枝をへし折りながら雄叫びを上げる。
「このまま寺に向かった方がよさそうね」
予想以上に鬼達の連携が取れていたため、瑞紀が険しい表情を浮かべて寺にむかう。
鬼達は最初から寺だけを襲撃するつもりだったのか、瑞紀達に攻撃されても反撃する事はほとんどない。
「わたくし達が待ち伏せしていた事で、寺に子供達がいると確信したのかも知れませんね」
出来るだけ鬼の数を減らすため、鳴がフェイントアタックとダブルアタックで攻撃する。
鬼の中には山鬼や熊鬼が含まれているため、強い鬼を優先して倒す。
「たくっ‥‥、面倒臭ぇな!」
そして真は寺の方向にむかって笛を鳴らし、鬼の襲撃を仲間達に知らせるのであった。
「鬼の群れがこちらにむかっているようだな」
森の中から笛の音が聞こえたため、天羽朽葉(ea7514)が子供達を呼び寄せる。
子供達に怪しまれないようにするため、今まで一緒に遊んでいたのだが、そろそろ寺から逃げ出した方がよさそうだ。
「よしっ! んじゃ武神祭でも観に行くか?」
朽葉から合図をされたため、阿武隈森(ea2657)が子供達にむかって声をかける。
子供達も今までずっと森達と遊んでいたため、まったく怪しむ様子はないようだ。
「ここの寺って子供達の数が日に日に増えているんだな。この前、聞いた時より5人も多い」
寺に残った子供達がいないようにするため、日向大輝(ea3597)がひとりずつ点呼を取っていく。
この寺には両親のいない孤児がたくさんいるためか、子供を育てられない者達がわざわざ捨てに来るらしい。
「まぁ、そう愚痴るな。‥‥時間がないぞ。急ぐとしよう」
裏門の扉が激しく叩かれたため、朽葉が子供達を連れて階段を下りる。
子供達が不安そうな表情を浮かべたが、風の音だといって誤魔化し連れて行く。
「子供達と仲良くなるのに時間が掛かってしまったからな。今度は逆に懐かれて困るが‥‥」
苦笑いを浮かべながら、森が身体にしがみついている子供達の頭を撫でる。
子供達はよほど森の事が気に入ったのか、決して彼のそばから離れようとしない。
「これも仕事だ、我慢我慢‥‥」
たくさんの子供に手を引っ張られ、大輝が疲れた様子で溜息をつく。
子供達のほとんどは落ち着きがないため、一緒にいるだけでも疲れているようだ。
「‥‥早く山を降りねばな。寺の者達が頑張っている間に‥‥」
何処か寂しげな表情を浮かべ、朽葉の後ろを振り向いた。
既に寺の中には何匹かの鬼が入り込んでいるためか、あちこちから煙が上がっている。
「俺達に依頼をしてきた連中も命懸けのようだな」
寺の異変を気づかれないようにするため、森が軽い冗談を子供達に言いながら、階段をゆっくりと下りていく。
「仕方ねえな。ちょっと様子を見てくるぜ。まだ報酬も貰っていないしな」
子供達が森と遊んでいる間に朽葉と会話をかわし、大輝が険しい表情を浮かべて寺に戻る。
寺の中には仲間達も戦っているはずだが、気になって仕方がないらしい。
「子供達の事は任せておけ。依頼主が命懸けで守ろうとした者達だ。‥‥必ず守り抜いてみせる」
そして朽葉は何も知らない子供達を見つめ、森と一緒に山を降りていくのであった。
依頼主達の願いを背中に背負い‥‥。