●リプレイ本文
「あんたがいてくれて助かったよ。まさかここまで大蟻の被害がひどいとはな」
村人達の治療を行っていたカイ・ローン(ea3054)と合流し、山崎剱紅狼(ea0585)がホッとした様子で溜息をつく。
大蟻の襲撃によって何度も村が襲われていたため、怪我人の数も半端ではなかったようだ。
「巡回医師として、ちょうどそっちの方に行く予定だったからね」
苦笑いを浮かべながら、カイが医療道具を整理する。
剱紅狼と一緒に村人達を丈夫な建物のある場所に避難させ、ようやく一息ついたところらしい。
「可愛い狸さんがたくさんいたね♪」
狸の人形を嬉しそうに抱き締め、狩多菫(ea0608)がニコリと微笑んだ。
村では狸の置物が名物になっているため、根付や人形などのグッズも作られている。
「みんなのためにも大蟻は必ず退治しないとね」
ボロボロの布に書かれた地図を見つめ、外橋恒弥(ea5899)がクスリと笑う。
地図には蟻塚の場所が書かれているが、大雑把な書き方をしているため、あまりよく分からない。
「そんなに酷い状況なのか?」
いまいち事態が飲み込めなかったため、玖珂刃(ea0238)が首を傾げて呟いた。
「このまま蟻塚を放置しておいたら、付近の村は全滅です。何としても此処で壊滅させないといけませんね」
村人達から大蟻の被害を聞き終え、山王牙(ea1774)が険しい表情を浮かべて答えを返す。
「でも毒は‥‥ないだね?」
苦笑いを浮かべながら、玖珂麗奈(ea0250)がクスリと笑う。
「当たり前だろ。固い上に毒なんて持っていたらシャレにならないぜ」
大蟻の恐ろしさについて村人達から聞いていたため、結城利彦(ea0247)が呆れた様子で溜息をつく。
「‥‥大蟻は警戒心が強いのか。面倒な事にならないといいが‥‥」
深刻な表情を浮かべ、結城紗耶香(ea0243)が地図を頼りに蟻塚を探す。
「蟻塚の近くで人間の匂いを漂わせれば嫌でも寄ってくるんじゃないのかな?」
肉屋で血の滴る肉をわけてもらい、恒弥が蟻塚の近くで物陰に潜む。
「あれだけデカイ蟻だったら腹を空かしている頃だろ」
蟻塚の入り口を守るようにして大蟻がいたため、刃が遠くから肉を放り投げた。
「‥‥しばらくは様子見か」
大蟻に警戒されないように物陰に潜み、紗耶香がゴクリと唾を飲み込んだ。
「やっぱり警戒しているな」
なかなか大蟻が肉に喰らいつかなかったため、利彦がイライラした様子で唇を噛む。
大蟻は辺りをキョロキョロと見回し、目の前の肉が安全なものかを確かめているようだ。
「肉に仕掛けはないんだけどね」
いつでも動けるように準備をしておき、麗奈が大蟻の行動を監視し続ける。
「まさかここまで警戒心が強いとはな」
あちこちに肉は仕掛けたものの、あまりいい反応がなかったため、剱紅狼が諦めた様子で溜息をつく。
「作戦変更しないとね。とりあえず手薄なところから叩こうか?」
ブレスセンサーを使って守りの手薄な場所を特定し、恒弥が這うようにして草叢の中を突き進む。
「‥‥なるべく物音を立てないようにな」
仲間達にグッドラックをかけておき、カイが恒弥の後に続いて移動する。
「蟻さんは甘いものが欲しかったのかな?」
残念そうな表情を浮かべ、菫がバーニングソードを仲間達に付与していく。
「とにかく蟻塚を壊してしまいましょう。蟻塚が壊れれば大蟻達も混乱するかも知れませんし‥‥」
そして牙は大蟻の背後から襲い掛かり、スマッシュボンバー(スマッシュ+ソードボンバー)を放つのだった。
「これ以上村人をお前達の餌にはさせない。青き守護者カイ・ローン、参る」
すぐさまコアギュレイトを発動させ、カイが大蟻の身体を呪縛する。
「蟻ン子の分際で、人間様を喰うたぁ良い度胸だっ! その首刎ねて、巣の替わりに首塚を建ててやらぁ!!」
他の大蟻が騒ぎに気づいて集まってきたため、剱紅狼が啖呵をきって勝負に挑む。
大蟻の群れは次々と蟻塚の中から姿を現し、鋭い牙をカチカチ鳴らし剱紅狼達を威嚇した。
「ゾロゾロと現れやがったな。紗耶香! 麗奈! 援護よろしくな」
大蟻を誘き寄せるための囮となり、刃が仲間達にむかって声をかける。
そんな事など露知らず、大蟻の群れは隊列を組み、刃の逃げ道を塞いでいく。
「任せておいてよ♪」
それと同時に麗奈と紗耶香がアイスブリザードとストームの順に繰り返し、刃を追いかけてきた大蟻の群れを吹き飛ばす。
「‥‥やったか」
警戒した様子で大蟻に近づき、紗耶香が念入りに調べる。
大蟻は気絶しているようだが、倒すまでのダメージには達していない。
「くたばれ!」
気絶した大蟻の関節部分を狙い、利彦が太刀を振り下ろしてトドメをさした。
「なるべく煙を吸わないようにしてね」
毒草の入った袋に燃やして蟻塚の中に放り込み、恒弥が手拭を使って口元を覆うと転がるようにして物陰に潜む。
蟻塚は煙と炎に包まれながら、ボロボロと形が崩れていく。
「これが、硬殻兵蟻隊なの‥‥?!」
木の枝に座って蟻塚から出てきた大蟻を狙って弓矢を放っていたのだが、固い外皮に阻まれまくたくダメージを与える事ができないため菫が慌てた様子で汗を流す。
「数が多いですが、負けるわけには行きません。スマッシュボンバーを力の限り打たせて貰います」
手当たり次第に大蟻に攻撃を仕掛け、牙が血まみれになりながら雄叫びを上げる。
「あまり無茶はするなよ」
牙に対してリカバーを使い、カイが疲れた様子で溜息をつく。
「どうやら蟻塚の中にいた大蟻の群れがすべて外に出たようですね」
ブレスセンサーを使って蟻塚を調べ、刃がブラインドアタックを駆使して敵を倒す。
蟻塚は大量の煙と炎で見えなくなっており、大蟻の群れも動揺した様子で辺りを走り回っている。
「‥‥かなり動揺しているな」
次第に大蟻が倒されていったため、紗耶香がウインドスラッシュに切り替え関節を狙う。
「大蟻達にとっては家であり、自分達の存在を示す証みたいなものだからな。あまりのショックで混乱しているようだな」
大蟻にトドメをさすため、利彦が素早くスマッシュを放つ。
「うわっ‥‥、ものすごく怒っているね。何か警告しているみたい」
大蟻が口をカチカチと鳴らして何かを訴えているため、麗奈が攻撃の手を止め耳を済ませて話を聞く。
「さすがに蟻の言葉は分からないだろ」
ポーションを一気に飲み干し、剱紅狼が霞刀を握り締める。
「‥‥確かにね。でも、きっとこう言っているんじゃないのかな? ‥‥覚えていろってさ。ぐあっ!」
炎に包まれた大蟻の攻撃を喰らい、恒弥が後ろに転がった。
「わ、わ、えっち! 木の上に来ちゃ駄目!」
大蟻に脚を噛まれそうに鳴ったため、菫が悲鳴を上げて頬を染める。
「あなた達の好きにはさせませんよ!」
すぐさまソードボンバーを放ち、牙が大蟻を木から引き摺り下ろす。
「これで終わりだっ!」
ブラインドアタックを使い、刃が最後の一匹にトドメをさした。
大蟻は恨めしそうに刃を見つめ、ブツブツと呪いの言葉を吐き捨てる。
「なんだか後味の悪い依頼だったね。本当に‥‥復讐してくるのかな?」
嫌な予感に襲われながら、恒弥が煙の昇る蟻塚から視線を逸らす。
「そんなわけないだろ。‥‥そんなわけ」
そして刃は何処か寂しげな表情を浮かべ、蟻塚からのぼる黒い煙を見つめるのであった。