●リプレイ本文
「ふん、蟹退治ねぇ。‥‥ま、蟹が美味すぎるのが諸悪の根源か? とりあえず迷惑な蟹どもは、ぶちのめす! 鍋の具決定だな!」
豪快な笑みを浮かべながら、嵐山虎彦(ea3269)が腕を組む。
大蟹はとても美味のため、よく食されていたらしい。
「‥‥蟹か! ここ何年も食べてないかな‥‥。よし、蟹を食べる為にも頑張るぜ!」
蟹の味をボンヤリとて思い出し、鷹波穂狼(ea4141)がじゅるりと涎を拭う。
「食い物の恨みは恐ろしいと言うが、まさか人を食う蟹が出るとはな‥‥」
険しい表情を浮かべながら、天城烈閃(ea0629)が大きな溜息をつく。
復讐に燃える大蟹は村人達を襲っており、塩水につけてバリボリと食べている。
「冬の鍋と言えば、やはり蟹は欠かせまい。蟹にしてみればそれこそ迷惑な話かも知れないが、冬の楽しみを守る為にも最善を尽くすとしよう」
大蟹の現れる海岸を睨みつけ、天螺月律吏(ea0085)が気合を入れた。
「どっちもどっちだろ。弱い奴が食べられる。それだけのこった」
復讐の話題には興味がないのか、穂狼が苦笑いを浮かべて答えを返す。
「ふむ、仲間を喰われた腹いせと言うのは分からんでもないが、だからと言って素直に喰われてやるわけにも行かんのでな! ここは一つ、ジャパンの冬の味覚、『カニスキ』と行こうではないか!」
大蟹を料理するための巨大な鍋を用意し、ゴルドワ・バルバリオン(ea3582)がニヤリと笑う。
既にダシはとってあるため、あとは蟹を鍋に入れるだけである。
「蟹と言えば寒い時期に食べる蟹鍋は格別なものであるが、これから嫌って言うほど戦う大蟹って奴は人を喰らってたりしてるんだろ。‥‥そういうのを倒した後で喰いたいとは俺は思わない。もし蟹鍋にするんだったら、丁重に断らせてもらう」
険しい表情を浮かべながら、孫陸(ea2391)が視線を逸らす。
大蟹を食べる事によって間接的に人間を食べる事になるため、陸はあまり蟹鍋に関していい顔をしていない。
「生きるために、俺達は何かを犠牲にしていかなければならない。蟹を食べる事をやめたところで、今度は別の何かを喰らうだけだ。ならば生きる事を続ける限り、両手を合わせていただきます、それが礼儀‥‥」
何処か寂しげな表情を浮かべ、菊川響(ea0639)が大蟹退治を決意する。
「そのためにも村人達を避難させておかねばならないな」
そしてファラ・ルシェイメア(ea4112)は大蟹の襲撃に遭っている村に辿り着き、村人達から詳しく話を聞くのであった。
「これまで多数の被害も出て、しかもこの場所を戦場にするとあっては不安も募るだろう。しかし、私達も村自体に被害が出ぬよう尽力するゆえ、一時的に安全な場所へ避難していて頂けないだろうか?」
大蟹と戦う前に村人達を広場に集め、律吏がペコリと頭を下げる。
普段から村人達は大蟹の脅威に曝されているため、律吏の頼みを聞くと素直に後をついていく。
「な〜に、またいくらでも蟹が食えるようになりますともぉ〜。このヴァラス様が蟹どもを皆殺しにしますのでご安心くださいよぉ〜!」
村人達にむかって声をかけ、ヴァラス・ロフキシモ(ea2538)が元気よく手を振った。
「それじゃ、罠を仕掛けるか。村人達のためにも中途半端な形で終わらせる事は出来ないからな」
大蟹の通り道を予想しながら、響が足止め用の落とし穴を掘っていく。
「大蟹の襲撃が続いているせいで、みんな疲れ果てているようだな。村にある道具は自由に使ってくれていいそうだ」
村人達を安全な場所に避難し終え、時雨桜華(ea2366)が納屋から人数分の道具を取り出した。
「二度と襲撃する事ができないように一匹残らず蟹鍋にしてやるか」
桜華から受け取った道具を受け取り、神山明人(ea5209)が出来るだけ多くの罠を作成する。
「とりあえず村の建物をアイスコフィンで凍らせておくよ。戦っている最中はまわりの事まで構っていられないからね」
戦っている最中に建物を壊さないようにするため、ファラが建物をアイスコフィンで凍らせた。
「氷の棺なら、少しの事じゃ壊れんな」
豪快な笑みを浮かべながら、ゴルドワが氷の棺をコツコツと叩く。
「囮は俺に任せてくれ。これだけ殻をぶら下げておけば、嫌でも追いかけてくるだろ?」
蟹の殻を大量に集め、穂狼がロープに括りつける。
「あまり無茶はするなよ。奴らは人間の味を知ってしまったからな」
大蟹の危険性を考えた上で、明人が穂狼にむかって警告した。
「大丈夫だって! 仲間を‥‥信じているからな」
苦笑いを浮かべながら、穂狼が明人にむかって答えを返す。
「だったら期待に応えねばな。‥‥死ぬなよ」
そして律吏はクスリと笑い、穂狼の背中を見送った。
「蟹共‥‥丸焼きにされたくなければ出て来い。お前達の足や味噌は旨いかねぇ‥‥」
海にむかって大声を上げ、壬生天矢(ea0841)がケラケラと笑う。
大蟹は天矢の姿に気づくと群れを成し、ゾロゾロと陸に上がっていく。
「‥‥さすがにここじゃ戦いづらい。何処かに誘き寄せねぇと駄目だな」
物凄く岩場が滑るため、虎彦が大蟹を村まで誘い込む。
『己が何を糧にして生きているのか、自覚するに越した事はない』
大蟹の群れと間合いを取りながら、響がコッソリとオーラテレパスを使用した。
しかし、大蟹の群れは涎をたらし、響にむかって襲い掛かる。
「あんたの相手はこの俺だっ!」
大蟹の群れに蟹の殻をぶつけ、穂狼がニヤリと笑って挑発した。
「さっそく誘いに乗ってついて来たな。あとは罠に嵌めるだけか」
大蟹の群れとある程度の距離を置き、響が村に辿り着いた時点で投網を放つ。
それと同時に大蟹の群れは左右に避け、そのまま落とし穴に落下する。
「仕返しにしても、調子に乗りすぎたな。後悔させてやろう。情けは無用だ。やるかやられるかどちらかなのだから‥‥」
すぐさま他の罠を発動させ、明人が大蟹達の逃げ道を塞ぐ。
「ほう‥‥。あれだけ身が大きければ、食べ応えもあるだろうな。鍋が先か、焼くのが先か‥‥さっと湯にくぐらせるだけでも良さそうだな。一匹たりとも逃がしはしない。おとなしく、鍋の具になるがいい!」
そして烈閃は長弓を構えると、大蟹めがけて放つのだった。
「ムフ、来たね来たねぇ〜」
大蟹の死角に回り込み、ヴァラスが素早く斬撃を放つ。
「くっ! 何て甲羅だ。料理人泣かせとは、正にこいつらの事だな」
カスリ傷ひとつつける事が出来なかったため、烈閃が険しい表情を浮かべて溜息をつく。
「鬼道衆が1人 ‥‥隻眼の若獅子。参る!」
大蟹の群れにまわりを囲んできたため、天矢がソードボンバーを使って敵の足を削ぎ落とす。
「鬼道衆が陸番『破壊僧』の嵐山虎彦たぁ俺のこと! 毀されてぇやつからかかってきやがれ!」
天矢と背中合わせになりながら、虎彦がカウンターとスマッシュを合成し六角棒を振り下ろす。
「食い物の恨みは恐ろしいって、意味が違うかねぇ?」
蟹の甲羅があまりにも固かったため、桜華がバーストアタックを放つ。
「大蟹の殻に少しヒビがはいったようだね」
一番高い建物の屋根から大蟹の群れを見下ろし、ファラがライトニングサンダーボルトを叩き込む。
「フハハハ! 210kgの筋肉の塊が炎に包まれて体当たりしてくれば、さぞかし堪えるだろう!!」
ファイヤーバードを使って炎を纏い、ゴルドワが上空から落下し大蟹に体当たりを喰らわせる。
「なんとも食欲をそそるニオイねぇ。気が散ってしょうがないよ」
大蟹の身体から香ばしい匂いが漂ってきたため、馬籠瑰琿(ea4352)が攻撃の手を止め困った様子で汗を流す。
「やっぱ蟹ミソは酒のツマミに最高だよな!」
さっそく蟹味噌を喰らい、穂狼が上機嫌に酒を飲む。
「本当に余裕だな。大蟹の実力が分かっているのなら構わないが‥‥ほどほどに頼むぞ」
仲間の死によって怒り狂った大蟹を倒し、桜華が敵の攻撃をかわして飛び上がる。
「分かっているさ。でも、この蟹は最高だぜ!」
ムシャムシャと蟹の足に喰らいつき、穂狼が幸せそうに答えを返す。
「早く鍋にして喰いたいな」
大きな鍋の傍まで大蟹を誘い込み、響が関節を狙ってショートボウを撃ち込んだ。
「少しマズイ事になったな。‥‥気をつけろ」
大蟹の動きがだんだん良くなっている事に気づき、律吏が巨大なハサミをかわして素早くしゃがむ。
「大蟹も学習しているというわけか。俺達の行動を‥‥」
大蟹のハサミが当たらない位置まで避難し、明人が春花の術を使って眠りを誘う。
「鍋の用意は出来ているんだ! 逆に喰われて堪るかよっ!」
鍋の中から香ばしい葱のニオイがしたため、響が退治した大蟹を鍋の中へと放り込む。
「仲間達を殺された怒りがコイツらを強くしているのか。‥‥面白い。受けてたとう!」
一匹ずつ大蟹を仕留め、陸が金属拳についた血を払う。
「ムヤアアアアッ! もらったァ――――――ッ! 一匹残らず皆殺しだよぉ〜〜〜〜っ!」
背後からダブルアタックで大蟹の甲羅を叩き割り、ヴァラスが全身に返り血を浴びて刀を握る。
「着物が汚れるのは嫌だねぇ‥‥」
蟹のニオイが着物についてしまったため、天矢が疲れた様子で溜息をつく。
「そんな事を言っている場合じゃないぞ。最後の奴は大物だっ!」
大蟹のハサミを金属拳で殴りつけ、陸が汗を拭って後ろに下がる。
「てめーいい気になってんじゃあねーぞ、このカニごときがぁ〜〜〜〜!」
ポイントアタックを放ち、ヴァラスが大蟹の腕を刎ね落とす。
「いまだ、虎彦!」
自ら囮となって大蟹をひきつけ、天矢がもう片方のハサミをソードボンバーで破壊する。
「砕けろ! 虎震戟!!」
そして虎彦はスマッシュを放ち、最後の大蟹にトドメをさした。
「恨みの華は儚く‥‥脆い。やっぱり、事後処理ってやつは大事だな」
大蟹の骸を一ヶ所に集め、桜華が簡単な弔いをする。
「‥‥やっぱり食べるのか‥‥?」
複雑な心境に陥りながら、ファラがボソリと呟いた。
「蟹はやっぱり鍋だよなぁ‥‥。ま、同じ事が起こらないように丁重に葬ってやらねえとな」
鍋の中に次々と蟹を放り込み、虎彦が苦笑いを浮かべる。
「ならば討ち取った蟹は『鍋将軍』たる我輩が立派な蟹鍋に‥‥ぐがっ」
蟹鍋を作っている最中に後ろから殴られ、ゴルドワがブクブクと泡を吐いて気絶した。
「せめて慰霊碑くらいは建てたらどうかねぇ。化けて出られても困るから‥‥」
冗談まじりに微笑みながら、瑰琿が大蟹鍋の味見をする。
「それは名案かも知れないな」
虎彦からどぶろくを分けてもらい、天矢が上機嫌な様子で呟いた。
「心の底から蟹の美味さに感謝すれば、きっと蟹も報われることだろう――と、コレは人のエゴかな?」
苦笑いを浮かべながら、律吏も蟹鍋を食べ始める。
蟹鍋はとても美味いため、鍋の中身がどんどん空になっていく。
「これだけ食べても残っているな。せっかくだからギルドの連中にでも持っていくか」
持ち運びやすいように大蟹を捌き、烈閃が風呂敷に包んで背中に背負う。
「それじゃ、宴会といくか。村人達も囲んでな!」
そしてヴァラスは村人達に報告するため、大蟹の脚を抱えて歩き出した。