一郎の復讐

■ショートシナリオ


担当:ゆうきつかさ

対応レベル:6〜10lv

難易度:普通

成功報酬:3 G 71 C

参加人数:12人

サポート参加人数:-人

冒険期間:01月20日〜01月25日

リプレイ公開日:2005年01月24日

●オープニング

 江戸から少し離れた森に石造りの砦があるのだが、そこに一郎と呼ばれる豚鬼戦士が棲みついているらしい。
 一郎は弟達を冒険者達に殺されたらしく、両親と一緒に復讐する機会を窺っている。
 まず手始めに一郎は冒険者達を砦におびき寄せるため、森を行き交う旅人達を捕まえ砦に連れ帰っているようだ。
 旅人達は部屋の奥に閉じ込められており、部屋の中にいる豚鬼戦士を倒さなければ助け出す事はできない。
 一郎は背中に火傷のある豚鬼戦士で、真ん中の部屋で冒険者達を待っている。
 この部屋は物凄い異臭が漂っており、とても足場が悪いため転倒しないように注意しろ。
 通称『掃き溜めの間』と呼ばれている部屋だしな。
 次に父豚の部屋だが、コイツは両方イケる変態だ。
 ‥‥掘られんように注意しろ。
 今までにも何人もの旅人がヤツの毒牙にかかっているらしい。
 最後に母豚の部屋だが、コイツはとても乳がデカイ。
 乳の谷間で何でも潰そうとするから、色々と覚悟しておけよ。
 そんなに攻撃で重傷をおったら、一生のトラウマになるからな。
 それじゃ、頑張れよ。

●今回の参加者

 ea0042 デュラン・ハイアット(33歳・♂・ナイト・人間・ビザンチン帝国)
 ea0282 ルーラス・エルミナス(31歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea0443 瀬戸 喪(26歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0629 天城 烈閃(32歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea1628 三笠 明信(28歳・♂・パラディン・ジャイアント・ジャパン)
 ea1774 山王 牙(37歳・♂・侍・ジャイアント・ジャパン)
 ea3055 アーク・ウイング(22歳・♂・ウィザード・人間・ロシア王国)
 ea3269 嵐山 虎彦(45歳・♂・僧兵・ジャイアント・ジャパン)
 ea3891 山本 建一(38歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea3914 音羽 でり子(30歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea6228 雪切 刀也(27歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea6264 アイーダ・ノースフィールド(40歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)

●リプレイ本文

「冒険者を誘き寄せる程だ。何かしら罠があるかも知れん。‥‥注意せねばな。まあ、あれだ、私だって真面目に冒険する事があるというのを見せ付けねばな」
 リトルフライを使って少し高い場所を偉そうに移動し、デュラン・ハイアット(ea0042)がランタンを掲げる。
 豚鬼戦士が立て篭もっている砦はかなり古く、あちこちに蜘蛛の巣まで張っているほどだ。
「豚鬼戦士か‥‥。正直、あまり近寄りたくない相手だな‥‥」
 ブレスセンサーを使って豚鬼と人質達の反応を確認し、天城烈閃(ea0629)が険しい表情を浮かべて鼻をつまむ。
 砦の中は豚鬼戦士特有のニオイに包まれており、だんだん気分が悪くなってくる。
「いくら、一郎に巻き込まれただけとは言え、関係の無い人まで襲った以上、それを繰り返させる訳にはいきませんからね。完膚なきまで叩き潰さねば‥‥」
 なるべく空気を吸わないようにしながら、三笠明信(ea1628)が扉の前に立って聞き耳を立てた。
 部屋の中では豚鬼戦士がぶひぶひと鳴いており、冒険者達が来るのをずっと待っているようだ。
「前回、あの豚にさんざん追いかけ回されたからね。今度こそ焼き豚にしてやる」
 嫌な記憶を思い出し、アーク・ウイング(ea3055)が扉を睨む。
 豚鬼戦士が不意打ちを狙っている可能性もあるため、奇襲に備えて魔法を唱える準備をする。
「‥‥ぶ、豚の癖に巨乳とは‥‥許さへんで」
 母豚が巨乳であると噂を聞き、音羽でり子(ea3914)が拳を震わせた。
 自分が貧乳であるせいもあってか、母豚に対する怒りは凄まじい。
「巨乳ねぇ‥‥でり子、ちったぁ分けて欲しいってか?」
 でり子の胸を見つめながら、嵐山虎彦(ea3269)がゲラゲラと笑う。
「う、うるさいわ! ルーらん、トラッキー、アイーン! ‥‥いくで!」
 そして、でり子は虎彦の頭をハリセンで叩き、行動を共にする3人に渾名をつけ巨乳豚の待つ部屋を蹴破った。

「‥‥気をつけてください。母豚の胸は‥‥危険です」
 仲間達全員にオーラパワーを付与し終え、ルーラス・エルミナス(ea0282)がダラリと汗を流す。
 母豚は胸の谷間で旅人の頭を挟み込んでおり、警戒した様子でルーラスを睨む。
「まだ‥‥生きているわよね」
 心配そうに旅人を見つめ、アイーダ・ノースフィールド(ea6264)がゴクリと唾を飲み込んだ。
 旅人はグッタリしており、口から泡を吐いている。
「おーいでり子! 幾ら巨乳が憎いからって苛めんなよー」
 苦笑いを浮かべながら、虎彦がでり子の事をからかった。
「に、憎くないわ! 憎くなんか、ないでぇ!」
 ぷるんぷるんと大げさに揺れる胸を見つめ、でり子が涙目混じりに首を振る。
「わ、私だって‥‥別に母豚の巨乳に嫉妬してるとか、そう言う事はないからね」
 自分自身に言い聞かせるようにしながら、アイーダが気まずい様子で視線を逸らす。
「とにかく豚鬼戦士を倒しましょう。このままだとあまりにふたりが不憫ですし‥‥」
 うまい言葉が見つからず、ルーラスが母豚の事を引きつける。
 母豚は自慢げに胸を揺らすと、ルーラスにむかってウインクした。
「‥‥随分と気に入られているやな」
 悔しそうに母豚を睨み、でり子がボソリと呟いた。
「無駄話は後です。‥‥来ますよ」
 突進してきた母豚の攻撃を避けるため、ルーラスがでり子に合図し左右に分かれる。
「悔しくなんてないんだからっ!」
 転がるようにして旅人の傍まで近づき、アイーダが背後から母豚めがけて弓を射った。
「喰らえっ!」
 悲鳴を上げて飛び上がった母豚を狙い、虎彦がすぐさまく攻撃を放つ。
「マ、マジか!?」
 胸の谷間で六角棒を受け止められたため、虎彦が怯えた様子で汗を流す。
 母豚は虎彦の身体を見つめて涎を流し、何やらよからぬ事を考える。
「‥‥随分と気に入られているようですね」
 慌てて母豚から遠ざかり、ルーラスが虎彦を前に出す。
「こ、こら! 変な気を使うんじゃねえ!」
 母豚の分厚い唇が迫ってきたため、虎彦が涙を浮かべて首を振る。
「母豚さん、その人から離れてくれますか? 少しでも‥‥命が惜しいと思うのなら」
 そう言ってルーラスが懐から桃を取り出し、母豚に見せ付けるようにして真っ二つに斬り捨てた。
 豚鬼は下品な笑いを響かせながら、大きな胸をばゆんばゆんと揺らして虎彦に迫る。
「まず乳を破壊しないと無理じゃないかしら」
 虎彦が壁まで追い詰められてしまったため、アイーダがシューティングPAで母豚の胸を狙う。
「巨乳がなんや! 乳はデカさやない! 形や!! 二度と乳を使えやん様にしたるわ」
 母豚の父を重点的に攻撃し、でり子が虎彦を助け出す。
 虎彦は母豚の巨乳に挟まれそうになっていたが、仲間達の手助けもあり間一髪で命拾いしたらしい。
「母豚の全身を覆う脂肪。それが鉄壁の鎧になっているようね。でも、ただ二箇所だけ脂肪に覆われていない場所があるわ。それは‥‥あの大きく開かれたブタ鼻の穴よっ!」
 ダブルシューティング+シューティングPAEXで母豚の鼻を狙い、アイーダがルーラスにむかって合図を送る。
「残念ですね。勢いが良すぎるのが敗因です。‥‥落ちなさい」
 母豚の胸が吹き飛んだため、ルーラスが素早く霞刀を振り下ろす。
 それと同時に母豚が血反吐を吐き、白目を剥いて前のめりに倒れこむ。
「‥‥終わったか。危うく妙なトラウマを背負うところだったぜ」
 額に浮かんだ汗を拭い、虎彦がホッとした様子で溜息をつく。
「あーウチも巨乳になりたいわ〜。乳って揉んだらデカなる言うけど、どうなんやろか‥‥」
 興味深そうな表情を浮かべ、でり子が自分の胸に手を伸ばす。
「アホか! 乳の話はするんじゃねえ!」
 でり子の頭をポカンと殴り、虎彦が呆れた様子で彼女を睨む。
「それにしても、この母豚。煮ても焼いても食えないヤツだったわね」
 苦笑いを浮かべながら、アイーダが母豚の骸を片付ける。
 旅人達はようやく落ち着いたのか、恐る恐る扉の方へと歩いていく。
『旅人の方々、悪夢はいずれ去ります、夕日を共に見ましょう」
 そしてルーラスは旅人達の肩を抱き、優しくニコリと微笑んだ。

「それじゃ、わたくし達も始めましょうか」
 でり子達が母豚の部屋に突入した瞬間、明信達は父豚の部屋へと躍りこむ。
 父豚はいやらしい笑みを浮かべながら、グッタリとしている旅人を投げる。
「何故か服を脱がされてますね。一体、何があったんでしょうか」
 地面に転がる旅人を見つめ、山本建一(ea3891)が汗を流す。
 旅人はよほどショックな事があったのか、どんよりとした表情を浮かべている。
「‥‥おや? 気絶しましたね」
 この部屋で何があったか直感で気づき、瀬戸喪(ea0443)がニコリと微笑んだ。
「こんな肝心な時に気絶とは、まったく面倒な‥‥!」
 弓矢を放って父豚の事を牽制し、烈閃が呆れた様子で旅人を外にむかって蹴り飛ばす。
 旅人は驚いた様子で悲鳴を上げ、お尻を押さえて部屋を出る。
「どうやら女性の方は無事ですね」
 あえて部屋の外にいる旅人の無事には触れず、明信が部屋の奥に転がる女性に目をむけた。
 女性は何やら怯えているものの、全く怪我はしていない。
「さぁ、早くこっちへ。敵は僕が引きつけます」
 父豚の攻撃をひらりとかわし、喪が旅人にむかって声をかける。
「それじゃ、バーストアタックでも受けてもらいますか」
 旅人を守るようにして前に立ち、健一がバーストアタックを放って日本刀についた血を払う。
 父豚は胸から溢れる血を押さえ、険しい表情を浮かべて膝をつく。
「さて、俺にとっては久しぶりの魔物狩りだ。遠慮なくやらせてもらうとしよう」
 梓弓を構えて父豚を狙い、烈閃がボソリと呟いた。
 父豚はムックリと立ち上がり、鬼のような形相で烈閃を睨む。
「気をつけてください。父豚の戦闘力はケタ外れです」
 父豚が戦斧を拾い上げて突撃してきたため、明信がダブルブロックを使って攻撃を防ぐ。
「‥‥危なかったようですね」
 明信の頭に当たる寸前で止まった戦斧を見つめ、喪が苦笑いを浮かべて呟いた。
「かなりギリギリなんですが‥‥。早く‥‥援護を‥‥」
 大粒の汗を浮かべながら、明信が戦斧を弾いて後ろに下がる。
「ウォーターボムで水はいかがですか、顔面にぶつかると痛いですよ‥‥」
 明信が逃げる時間を稼ぐため、健一がウォーターボムを叩き込む。
 父豚がぶひっと悲鳴を上げながら、慌てた様子で顔を隠す。
「やれやれ、所詮は豚鬼‥‥。隙だらけだな‥‥」
 それと同時に烈閃が父豚の背後に回り、ダブルシューティングで尻を狙う。
「また‥‥つまらぬモノを射ってしまった‥‥」
 物凄い形相を浮かべて気絶した父豚を見つめ、烈閃がクスリと笑って弓矢を抜く。
「それじゃ、後は僕に任せてください。新しく仕入れた鉄鞭の具合も試してみたいですし」
 そして喪は父豚とふたりっきりになり、扉の鍵を閉めると鉄鞭の音を響かせた。

「‥‥皆さん、行動を開始したようですね」
 左右の扉が開いた事を確認し、山王牙(ea1774)が扉を開けて太刀を握る。
 ほかの部屋で騒ぎがあった事もあり、一郎は牙達の姿に気づくと下品な笑みを浮かべながら、棍棒をブンブンと振り回す。
「やれやれ、無為に咆えずば討たれまいに‥‥。まあ、咆えた以上は覚悟してもらわないとな」
 哀れみの表情を浮かべ、雪切刀也(ea6228)が疲れた様子で溜息をつく。
 事前にフレイムエリベイションとバーニングソードを風車に付与していたため、一郎の攻撃をかわすとすぐさま攻撃を放つ。
「我々冒険者を誘き出す為に旅人を攫うとは、中々考えたじゃないかイチロー君。まったく、豚鬼にしておくのは惜しいくらいだな。いやいや、素晴らしい」
 ジャパンの言葉に『豚もおだてりゃ木に登る』という言葉があった事を思い出し、デュランが一郎の作戦を手放しで褒める。
 しかし、一郎はデュラン達の言葉が分からないため、訳も分からず首を傾げているようだ。
「駄目みたいだね。どうしようか?」
 異臭を放つ一郎を見つめ、アークが大粒の汗を流す。
 
「仕方ありませんね。これを使いましょう」
 街の人形師に頼んで作らせた3種類の模型を地面に置き、牙が藁、木、土壁の順で家を次々と壊していく。
 一郎は過去のトラウマが蘇り、凄まじい勢いで牙の身体を弾き飛ばす。
「凄まじいタックルですね。ライトシールドでも防げませんでした‥‥」
 砦の壁に叩きつけられ、牙がげふりと血反吐を吐く。
「しかも物凄いニオイだな。あのまま部屋で戦った方がマシだったかも知れん」
 一郎の汗に混じって異臭が漂い始めたため、刀也が険しい表情を浮かべて刀を握る。
「ニオイ消しには丁度コレがいいだろう」
 一郎の頭上めがけてどぶろくの瓶を叩き落し、デュランが部屋の中に入っていく。
「助けに来てぞ。これで臭い部屋とはおさらばだな。代わりに臭い飯を食う事になるが‥‥」
 追い剥ぎの襟首を掴んで外に出し、デュランが一郎の攻撃を喰らって壁に当たる。
「だ、大丈夫!」
 すぐさまライトニングサンダーボルトを撃ち込み、アークが何とか傷ついたデュラン達を助け出す。
「‥‥悪いな。正面からむかうだけが戦闘ではないんでね」
 一郎の真横からスマッシュを放ち、刀也が風車をズブリと突き刺した。
「これで終わりだ、豚!」
 再びライトニングサンダーボルトを叩き込み、アークが荒く息を吐き捨てる。
 しかし、一郎はムックリと立ち上がり、フラフラとしながらアークを睨む。
「これで終わりだ、スマッシュボンバー!」
 そして牙は一郎めがけてスマッシュボンバー『スマッシュ+ソードボンバー』を放ち、全身に返り血を浴びて最後のトドメをさすのであった。
 その後、一郎達の死体は冒険者達によって火葬され、追い剥ぎを除いた者達は近くの村まで送り届けていかれたらしい。