●リプレイ本文
「『えろがっぱーず』か。何やら凄い集団のようだが、今回はそれに憧れる若い河童が相手らしいから少々楽になんのかな?」
円らな瞳の可愛らしい河童達を思い浮かべ、久留間兵庫(ea8257)が温泉の周囲を這って移動し覗きやすい場所を特定する。
いくら河童達が若いからといっても、猿並に性欲の溢れた者達で結成されているのだから、本家よりも力が劣っているとは考えにくい。
「女湯を覗いて何が楽しいのかな?」
えろがっぱーずのやっている事が理解出来なかったため、アーク・ウイング(ea3055)が首を傾げて呟いた。
この場にえろがっぱーずのメンバーがいたら、女体の神秘について必要のない事まで語ってくれるのかも知れないが、河童達が不在のため誰も答える者はいない。
「‥‥河童ってこんな奴しかいないのか?」
えろえろな笑みを浮かべる河童達を思い浮かべ、飛鳥祐之心(ea4492)が呆れた様子で溜息をつく。
すべての河童がスケベな訳ではないのだが、最近悪事を働く河童が増えたため、あまり良いイメージはないらしい。
「‥‥あ、でも温泉教団でも覗きって流行ってるし‥‥男の人なら普通なの‥‥かな?」
えろがっぱーずのしている事が普通に思えてきたため、野村小鳥(ea0547)がだんだん男性に対してのイメージが変わっていく。
「エロ河童共の捕獲か。捕獲されたら苦痛の日々が続くのであろうな。このまま楽にしてやった方が良い気もするが‥‥。まぁ私は頼まれた通りにこなすだけだ」
河童干しにされているえろがっぱーずのメンバーを浮かべ、インシグニア・ゾーンブルグ(ea0280)が何処か遠くを見つめて呟いた。
噂では恥かしい格好のまま地中に埋められてしまうという噂もあるため、えろがっぱーずが悲惨な末路を辿る事だけは間違いない。
「すにーきんぐみっしょん‥‥だか何だか知らぬが、不届きな輩には仕置きをくれてやらねばな。‥‥ココで失点を挽回しておかねば、次回の五輪祭で朱雀殿に合わせる顔が無い訳だし‥‥」
朱雀から言われた言葉を思い出し、ルミリア・ザナックス(ea5298)が苦笑いを浮かべて汗を流す。
何か嫌な予感がするのだが、一度考えてしまったら、暗い気持ちになりそうだ。
「いかにもえろがっぱーずの好みそうな温泉ね。あちこちから覗き放題じゃない」
苦笑いを浮かべながら、設楽葵(ea3823)が覗きやすい場所に目星をつけ、いつでも反撃出来るように明王彫の剣を隠して湯船に浸かる。
今のところ『えろがっぱーず』の気配はないが、隠れる場所が思ったよりも多いため、ここで油断は出来ないだろう。
「何だか恥かしくなりますね。本当に河童さんはいませんか?」
温泉に浸かって恥かしそうに胸を隠し、大曽根浅葱(ea5164)がそっと辺りを見回した。
鳥の囀りさえも河童達の囁きに聞こえるため、浅葱は激しく心臓を高鳴らせ葵の身体にしがみつく。
「いまのところおらんと思うけど‥‥。全く河童にも困ったものだよね」
初代えろがっぱーずの顔を思い浮かべ、コユキ・クロサワ(ea0196)が青ざめた表情を浮かべて汗を流す。
目を閉じるとあの時の光景が蘇ってくるため、考えるだけでも何だか頭が痛くなってくる。
「まぁ、それほど心配する必要はない。温泉のまわりで動きがあれば、私達が黙っていないからな」
あからさまに分かる罠を仕掛けておき、インシグニアが河童の移動ルートを狭めていく。
こうする事によって例え河童が罠を解除したとしても移動ルートが判明するし、罠を避けて通ればそれだけ移動出来る場所が限られてくる。
そのため河童達にとっては脅威の罠となるだろう。
「うに‥‥。でも河童さんは自分達の身体より小さな女の人が好みだから、私は気をつけないと駄目かな‥‥。その方が囮としての役目は果たせるけど‥‥何故か涙が止まらない」
オヨオヨと大粒の涙を流しながら、小鳥が複雑な心境に陥りしばらく凹む。
この状況を悲しむべきか、喜ぶべきか、よく分からない。
「‥‥どうやら河童達が現れたようだな」
ブレスセンサーを使って河童の位置を特定し、ルミリアがジリジリと間合いを詰めていく。
河童達は這うようにして草叢を移動し、トラップの前で動きを止めた。
『何やら相談しているようですね』
すぐさま物影に隠れ、風御凪(ea3546)がヴェントリラキュイを使ってアークに話しかける。
『ひょっとして悩んでいるんじゃないのかな? ここで罠を解除すべきか、どうか』
苦笑いを浮かべながら、アークがヴェントリラキュイで答えを返す。
河童達は罠をジィーッと睨みつけたまま、全く動こうとしない。
「どうやら現れたようやな。うちらはこのままでええんやろか?」
河童達に怪しまれないようにするため、コユキがなるべく自然な態度で湯船に浸かる。
「にゃ‥‥皆大きくていいな〜‥‥。こ、コユキさんも小さいって言っても私より大きいですね〜‥‥」
コユキの胸を見つめながら、小鳥が羨ましそうに溜息を漏らす。
「そんな事ないと思うんだけど‥‥。なぁ、どう思う?」
自分の胸をマジマジと見つめ、コユキが浅葱に助けを求める。
「胸に拘る必要はないと思いますよ。女の魅力は中身です」
大きな胸を湯船に浮かべ、浅葱がニコリと微笑んだ。
「やっぱり大きな方がいいですよ〜。コユキさんも温泉教団仕込みのマッサージ‥‥受けて見ませんか? ‥‥まだ、見習ですけど」
ウットリとした表情を浮かべてコユキに近づき、小鳥がこちょこちょとマッサージをし始めた。
「こ、こら! そんな事をしたらっ!」
恥かしそうに声を漏らし、コユキが自分の口を慌てて塞ぐ。
それと同時に河童達が反応し、妙な姿勢で罠を避ける。
「なんだか物凄く妙な動きをしているんだけどー?」
オーラエリベイションで士気を高め、風月明日菜(ea8212)がジリジリと河童に近づいていく。
河童は明日菜の存在に気づいたためか、蛙の鳴き声を出して誤魔化した。
「‥‥あからさまに怪しいわね」
草叢からヒョッコリと河童の尻が見えたため、佐上瑞紀(ea2001)が呆れた様子で溜息をつく。
罠を避けようとしている途中で瑞紀達に見つかったため、おかしな体勢のまま必死で我慢しているらしい。
「鳴子が鳴ったら動くとするか」
いつでも動ける準備をしておき、兵庫が物影に隠れて草叢を睨む。
鳴子は脛の高さにあるため、例え河童が這っていても、通れば必ず音が鳴るはずだ。
「どちらにしてもあのまま進めば、落とし穴に真っ逆さまだ」
ゴクリと唾を飲み込みながら、祐之心が河童達の出方を窺った。
「落とし穴の上にキュウリが置いてありますからね。さすがに無視は出来ないでしょう」
キュウリに手を伸ばした河童を見つめ、凪が捕獲用の網を構えて息を殺す。
「何かあったらこれを使うんだよ♪」
樫木のちゃぶ台を瑞紀に渡し、明日菜が人差し指をピンと立てた。
それと同時に河童がキュウリを掴んで落とし穴に落下し、驚いた他の河童が鳴子を流して散り散りになる。
「誰ひとりとして逃がすんじゃないぞ。げっちゅ!」
落とし穴に落ちた河童に十手を突きつけ、兵庫が迷う事なく『げっちゅ』と叫ぶ。
「やいやいやいっ、河童どもっ! コソコソ隠れて覗きとは良い度胸じゃねぇか! てめぇら纏めて神妙にお縄頂戴しやがれっ!」
草叢を這って逃げようとする河童を見つけ、祐之心が『げっちゅ』と叫んでスマッシュを放つ。
それでも河童達は必死で逃げようとするが、冒険者達に逃げ道を塞がれ身動きが取れない。
「不埒なエロ河童を成敗するため、雷撃の魔術師かっこ自称のお子様ウィザード、アーク・ウイング、あだ名はアーくん、ただ今参上」
河童達が逃げ道を探している隙に、アークが落ち葉を跳ねのけ颯爽と登場し、名乗りを上げてライトニングサンダーボルトを叩き込む。
「きゅー」
妙な鳴き声をあげながら、河童が華麗に宙を舞う。
それでも河童達は諦めず、何とか逃げようと試みた。
「ま、それ相応の対価は覚悟しておいてもらおうかしらね」
明日菜から借りた樫木のちゃぶ台を構えて河童達をふっ飛ばし、瑞紀が霞刀に武器を持ち替えソードボンバーを叩き込む。
「‥‥愚かな。我がおぬしらに今まで味わった事の無い真の恐怖を教えてやろう!」
瞳をキラリと輝かせ、ルミリアが刺叉で河童を捕獲する。
「逃げても無駄だ。‥‥死にたいのか」
『げっちゅ』と書いた矢文を放ち、インシグニア(ea0280)が屋根の上から飛び降り、必死で逃げようとしていた河童の上に落下した。
「あれ〜? もう帰っちゃうの? これからもっと凄い事が起こるのに〜」
残念そうな表情を浮かべて唐突に立ち上がり、葵が浅葱の手を引っ張りあげていきなり抱き締め、そのまま辺りの目も気にせず濃厚な口付けをかわす。
そのため河童達が悲鳴をあげて飛び上がり、そのまま葵めがけて突進し落とし穴へと落下する。
「ゲッチュ! ‥‥お前、馬鹿だろ」
頭の皿にキュウリを突きつけ、凪が呆れた様子で溜息をつく。
河童達も冷静さを失っていたため、青ざめた表情を浮かべて肩を落とす。
「‥‥こんな寒い中、覗きにご苦労様やね。‥‥ところで胸は隠さなくていいんやろか?」
苦笑いを浮かべて河童を縛り、コユキが浅葱の胸を指差した。
「み、見ないでください。‥‥恥かしい」
仲間達の視線が自分達に集中したため、浅葱が胸元を隠してブクブクと沈む。
「す、すまない‥‥」
浅葱の裸を間近で見てしまった事もあり、祐之心が鼻血を押さえて膝をつく。
絶対に見ないように気をつけていたのだが、河童達を追いかけている途中で彼女と目が合い見たらしい。
「きゃ! 見ちゃ駄目です。‥‥わたくし、そんな安い女じゃありません‥‥」
恥かしそうに片手で胸を隠しながら、浅葱がバシャバシャと水をかける。
「はわわわ‥‥皆大胆。わ、私も真似した方がいいのかな」
目の前でたくさんの乳が揺れるため、小鳥が困った様子で汗を流す。
大きく揺らす事は出来ないが、気持ちだけでも巨乳である。
「こ、こうですかねー?」
小鳥の横に並んで頬を染め、明日菜が一緒に真似をした。
「明日菜ちゃんは真似しなくていいのよ」
男性陣が物凄く動揺していたため、瑞紀が明日菜にツッコミを入れる。
このままでは仲間達まで温泉の暗黒面に囚われてしまうため、これ以上の刺激は与えない方が無難だろう。
「‥‥もう大丈夫か? 迂闊に覗いて攻撃されても困るしな」
物陰からヒョッコリと顔を出し、兵庫がホッと胸を撫で下ろす。
「ああ、問題ない。えろがっぱーずのリーダーもこうして捕獲したからな。それにしてもまだまだゴルゴ殿の域には及ばぬな、スネーク殿」
えろがっぱーずの首領を見つめ、ルミリアが冗談交じりに呟いた。
スネークと呼ばれた河童は右目に眼帯をしており、身体にも無数の傷がある強面の男。
まさか覗きが趣味だとはゴルゴさえも気づかなかった事だろう。
「ところでなんで『げっちゅ』なんだ?」
未だに意味が分からなかったため、兵庫がスネークに対して問いかける。
スネークは不敵な笑みを浮かべると、何も言わずに視線を逸らす。
「あっちの世界に旅立ちたくなかったら、仲間やアジトとか素直に全部、話した方がいいよ」
何とかスネークの口を割らせるため、アークがライトニングサンダーボルトを木に当て最後の警告をする。
それでもスネークは決して口を割ろうとせず、鋭い目つきでアークを睨む。
「とりあえず薬が無くなる前に反省してくださいね」
だんだん険悪のムードになったため、凪が大量の薬を置いて地面に座る。
後は依頼主に任せよう。我らの目的は河童の捕獲。アジトを聞き出す事ではない」
アークの肩を叩いて首を振り、ルミリアが河童達の前に蹴鞠を置く。
「隠れて覗く技ばかり磨かず、それだけ団結力があるのだから、これで最新の欧州球技『擦靴亜(サッカー)』でも始めてみよ。堂々と日のもとに出るのも悪くはないぞ」
スネークの頭をぽふりと叩き、ルミリアが黙って背をむけ手を振った。
まるで何かを悟ったように‥‥。
「‥‥はい。全ての河童は捕獲した。はい、誰も依頼の真実に気づいてないから。はい、今後も‥‥はい、ありがとうございます‥‥ゴル‥‥ん」
そして真実は闇の中に‥‥。