●リプレイ本文
「村をまるごとひとつ占拠とは、大それた山賊もいたものだな」
砦と化した山賊達のアジトを見つめ、不動金剛斎(ea5999)が韋駄天の草鞋に履き替える。
この砦は以前まで山鬼から身を守るために使用されていたのだが、用心棒として雇った者達の中に山賊がいたため、そのまま乗っ取られてしまったらしい。
「このままでは戦いは避けられないな。‥‥それでは俺も絵を描くばかりが能じゃないと教えてやるか」
本格的に戦闘をするのが久しぶりな事もあり、鷹見仁(ea0204)が自分自身に気合を入れる。
山賊達の砦は以前の依頼でボスが倒された影響もあってか、たくさんの見張りが配置されておりよほどの事がない限り無傷で突破する事は難しい。
「中には人質がいるやも知れません。みんな無事だといいんですが‥‥」
見張り台の様子を窺いながら、丙荊姫(ea2497)が忍び歩きで暗闇の中を歩いていく。
なるべく暗がりを選んで‥‥慎重に‥‥。
「‥‥今回は苦労しそうだな」
山賊達から村を取り戻すため、孫陸(ea2391)が身軽な格好で荊姫の後を追いかける。
少しでも油断すれば山賊達に気づかれる恐れがあるため、全神経を集中して暗闇の中を進んでいく。
「見張りを無効化するまで草葉の影で見守ってますね〜」
草叢の中に身を隠し、槙原愛(ea6158)が手を振った。
思ったよりも見張りの数が多いため、体力を温存しておくつもりらしい。
「このままだと砦の中には入れないな。誰かが囮になって入り口を開けさせるしかないか」
頑丈な扉によって砦の入り口が塞がれているため、ゲレイ・メージ(ea6177)がヴィヴィアン・アークエット(ea7742)にむかって合図を送る。
砦の中にはたくさんの山賊達がいるため、なるべく数を分散させておかないと後で面倒な事になりそうだ。
「さぁ〜村人さん達から村を取り上げた悪い山賊さんを成敗しにいきますよぉ〜!」
ゲレイからの合図を受け、ヴィヴィアンが少し離れた場所から声をあげる。
それと同時に見張り役の山賊達が大声を上げ、ヴィヴィアンめがけて弓矢を放つ。
「神皇様に代わってお仕置きよ!」
見張り台めがけてグラビティーキャノンをぶっ放し、楠木麻(ea8087)が入り口の扉ごと吹き飛ばす。
突然の攻撃に山賊達は驚いたようだが、すぐさま弓を構えると一斉に空めがけて放っていく。
「おのおの方 討ち入りで御座る、なんちて。んじゃ、突撃ぃー!!」
軍配を高くかざしながら、平島仁風(ea0984)が砦にむかって突撃する。
それと同時に弓矢の雨が降り注ぎ、見張りの山賊が鉄の板に身を隠す。
「さーて、迷惑な山賊さまを退治しますか」
焔の牙(バーニングソード)と焔の覚(フレイムエリベイション)を発動させ、夜枝月奏(ea4319)が感情の高ぶりから好戦的な態度になる。
「なるほど。‥‥そういう事か」
見張りの放った弓矢がかすり、九十九嵐童(ea3220)が悔しそうに舌打ちした。
山賊達は次々と矢を放っているため、仲間達の多くは傷を負っている。
「‥‥仲間達の犠牲も関係なしか。今度の首領は随分と嫌なヤツだな」
太ももに突き刺さった毒矢を引き抜き、陸が解毒剤を一気に飲み干した。
陸の傍には山賊の死体が転がっており、その背中には漆黒の矢が突き刺さっている。
「だったら元から断てばいいんじゃねえか!」
提灯の油の封を開けて器の口に古布の切れ端を挿し込み、仁風が布に火を点ければ中身の油が燃え上がる武器を作り、見張り台めがけて一気に放り投げた。
「うぎゃあ!」
ボンと嫌な音と共に炎を纏い、山賊が悲鳴を上げて見張り台から飛び落ちる。
それと同時に麻がグラビティーキャノンをぶっ放し、見張り台にいた山賊達を沈黙させた。
「第一の関門突破と言った所か」
見張り台が破壊された事を確認し、巽弥生(ea0028)が警戒した様子で顔を出す。
辺りは妙に静まり返っており、砦の中から山賊達が出てくる気配はまったくない。
「‥‥何か嫌な予感がするな」
物陰に身を隠しながら、嵐童が物陰に隠れてポーションを口に含む。
「気のせいだと思いますよ〜」
砦を睨んで太刀を握り、愛がニコリと微笑んだ。
「いや、念のため警戒しておいた方がいいだろう。これだけしか山賊がいないとは思えない」
右腕に突き刺さった漆黒の矢を引き抜き、仁が険しい表情を浮かべて盾を捨てる。
‥‥この弓矢は見張り台とは別の方向から飛んできた。
突き刺さった角度から考えても、それは間違いないだろう。
「なるほど私達を砦の中に誘き寄せて、一気に袋叩きにするつもりか」
入り口の前で立ち止まり、ゲレイがゆっくりと辺りを見回した。
山賊達は気配を消しているようだが、言われてみれば何やら妙な感じがする。
「やるしかないだろ。幸い薬は残っている。何かあったら各自で傷を治せばいい」
日本刀と小太刀を構え、仁がゆっくりと歩き出す。
どんな危険が待ち構えているか分からないが、このままここにいたとしても事態がよい方向に転ぶ事はないだろう。
「怪我をしている奴はここでポーションを飲んでおけ。戦っている最中は余裕がないかもしれないからな」
いつでも反撃出来る準備をしておき、ゲレイが仁の後に続いて砦の中を見回した。
いまのところ‥‥異常はない。
「私は上から様子を見てみますね」
上空まで飛んでいき、ヴィヴィアンが仲間達の合図を待つ。
「‥‥来たか」
次の瞬間、奏が殺気を感じて横に飛ぶ。
山賊達は砦の中に入った奏達を一気に叩き潰すため、合図と共に様々な種類の弓矢を一斉に射っていく。
「チッ‥‥、そう言う事か」
闇夜に紛れて飛んできた矢を軍配で弾き、仁風が堂々とした態度で砦の中を突き進む。
「姑息な真似を‥‥」
弓矢を放っていた山賊の背後にまわり、嵐童がスタンアタックを放ち、反撃に出ようとした山賊めがけてポイントアタックをお見舞いする。
山賊達は岩陰や小屋の中に隠れており、場所を移動しながら弓矢を放っているようだ。
「さーて、迷惑な山賊さまを退治しますか」
服の袖で鼻と口を塞ぎ、奏が砦の中を駆け抜ける。
その間も山賊達の攻撃が止む事はないため、なるべく敵の弓矢に当たらないようにしながら、小太刀を構えて首領を探す。
「地を這い汝が主の敵を討て、我が名は金剛斎!」
弓矢の飛んできた方向を睨みつけ、金剛斎がグラビティーキャノンを放ち、小屋ごと山賊達をふっ飛ばし、野太刀を抜いて突っ走る。
山賊達の中には刀を抜いて斬りかかって来る者もいたが、誰ひとりとして金剛斎の歩みを止める者はいない。
「‥‥あの辺りが良さそうですね」
風読みを使って方向を確かめ、荊姫が見張り台まで続く崩れた梯子を上っていく。
梯子は壊れかけているため、何度か下に落ちそうになったが、それでも必死でしがみつき、見張り台の上まで移動した。
「それじゃ、行きますよ」
呼子笛を鳴らして黒頭巾に被り、荊姫が春花の術を使って山賊達を眠らせる。
そのうちの何人かは荊姫を狙って弓矢を放ってきたが、それでも彼女は動揺する事なく手裏剣を投げて見張り台から降りていく。
「残りの山賊は任せてください〜」
心配した様子で地上まで降下し、ヴィヴィアンが荊姫を狙う山賊をスリープで眠らせる。
「‥‥邪魔です」
襲い掛かってきた山賊にスタンアタックを放ち、荊姫が人質の囚われている小屋を探す。
どの小屋も同じようなつくりをしているため、人質を探すのは根気のいる作業になる。
「‥‥焔に焼かれて散れ」
山賊が弓矢を飛ばした瞬間に敵の懐に潜り込み、奏が弓を素早く薙ぎ払い返す刀で斬りつける。
あちこちから弓矢が飛んでくる事もあり、薬なしでは命を落とす事だろう。
「まとめてふっ飛べ!」
奏と背中合わせになりながら、麻がグラビティーキャノンを使って山賊達をふっ飛ばす。
それと同時に弥生が土埃の中を進んでいき、スマッシュを放って山賊達を倒していく。
「これじゃ、キリがないな」
山賊の数があまりに多いため、嵐童がヒット&アウェイを繰り返し、囲まれた所で火遁の術を使って回避する。
「さすがに多いな‥‥」
ポーションをゴクリと飲み干し、弥生が物影に隠れて溜息をついた。
山賊達の大半は仲間達の攻撃によって倒れたが、それでも弓矢の攻撃が止まないため、汗を拭いて霞刀を握りなおす。
「悪い子には二度と悪い事が出来ないようにお仕置きです〜」
ポーションを飲んで気合を入れ、愛がスマッシュEXで山賊を斬りつける。
たくさんの山賊を相手にした事で服は返り血で汚れ、愛自身もかなり疲れているようだ。
「だったらお仕置きしてもらうか!」
血まみれの刀を振りまわし、山賊達が愛の事を追い詰める。
「あら〜、逃がしてはくれませんか〜。悪人さんにそんなに好かれても私はあまり嬉しくないのですけどね〜」
山賊の攻撃を素早くかわし、愛がクスリと笑って太刀を握る。
「げへへっ‥‥。逃がしはしないぜ」
山賊達は卑下た笑みを浮かべると、ジリジリと逃げ道を塞いでいく。
「石になって反省してなさい」
背後から山賊をストーンで石化し、麻が呆れた様子で溜息をついた。
「て、てめぇ!」
動揺した様子で汗を流し、残った山賊が声を震わせる。
「山賊風情にかける情け‥‥持ち合わせてはおらぬぞ!」
背後に殺気を感じたため、金剛斎がニヤリって野太刀を振るう。
山賊は攻撃を避ける暇もなく、脳天から血飛沫を撒き散らして絶命する。
「あはは〜、人間無理は禁物なのですよ〜。」
それと同時に愛が太刀を振り下ろし、逃げようとしていた山賊にトドメをさす。
「‥‥あまり無理をするなよ」
不動の如く前に立ち、金剛斎が汗を拭う。
「だ、大丈夫です〜」
ヨロヨロと立ち上がり、愛がニコリと微笑んだ。
「‥‥来るぞ!」
弓矢を射尽くした山賊達が一斉に襲いかかってきたため、ゲレイが愛にむかって声をかけスマッシュEXを敵に放つ。
「いまだ、ヴィヴィ! アレを使え!」
ストーンアーマーを使って守りを固め、金剛斎が山賊めがけてグラビティーキャノンを撃ち込んだ。
「任せて!」
山賊達を出来るだけ誘き寄せ、ヴィヴィアンがイリュージョンを使って混乱させる。
イリュージョンの影響によって山賊達が全員オークに見えるため、わけも分からず攻撃する事を躊躇した。
「いまのうちに山賊達を倒すぞ!」
山賊達が混乱している間に斬りかかり、陸が着実に敵の数を減らしていく。
「そろそろ首領が出てきてもいい頃だが‥‥」
首領の姿が見えなかったため、仁が険しい表情を浮かべて辺りを睨む。
「片っ端から片付けてりゃ、その内 敵の親玉に行き着くだろ。それよりも今は人質の救出が先だっ!」
手当たり次第に小屋の扉を蹴り飛ばし、仁風が人質となっている村人達を探していく。
「‥‥後はここだけだね」
移動している途中でわき腹に受けた弓矢を引き抜き、荊姫がポーションを一気に飲み干し汗を拭う。
既にほとんどの小屋は調べたため、残っているのはこの小屋だけだ。
「覚悟はいいか。‥‥いくぞ!」
勢いよく小屋の扉を蹴り開け、弥生が山賊の首領と対峙する。
「それ以上、近づいたら分かっているな」
山賊の首領は村娘を人質にしながら、何とか逃げようとしているようだ。
「少しは出来ると思ったが‥‥この程度か」
小屋の屋根を突き破り、仁がダブルアタック+スマッシュで首領を倒す。
「ふう‥‥何とかなりましたか〜。皆さんとりあえず無事ですか〜?」
気絶した村娘を抱き締め、愛がホッとした様子で溜息をつく。
「あぁ〜あ、自慢の髪がグチャグチャよぉ〜」
不満げな表情を浮かべ、ヴィヴィアンが辺りを飛び回る。
「‥‥武士道とは実に悲しいものですね」
そして麻は悲しげな表情を浮かべ、山賊達の砦から出て行くのであった。