微笑みの村

■ショートシナリオ


担当:ゆうきつかさ

対応レベル:フリーlv

難易度:やや難

成功報酬:0 G 46 C

参加人数:12人

サポート参加人数:-人

冒険期間:02月26日〜03月01日

リプレイ公開日:2005年03月05日

●オープニング

 江戸からしばらく歩いた場所にとても小さな村があるのだが、そこで奇妙な事件が立て続けに起こっている。
 この村では旅人達に対してとても友好的な人達が多く、いつ来ても笑顔で迎え入れてくれるのだが、若い娘の行方不明事件が多発しているため極秘で調査して欲しい。
 いまのところ、この村で妖怪が現れたという噂がない事から、事件は人為的な物である可能性が高いのだが、彼らが山賊というわけではないからな。
 いまいち目的が分かっていない。
 それにこの村では訪れた旅人に対して無料で宿を提供したり、食事や風呂まで用意してくれているからな。
 決して悪い人達ではないと思うんだ。
 気になる事と言えば‥‥そうだな。
 もうすぐ祭りが近いという事か。
 この村では鬼神と呼ばれる神様を奉っており、50年に一度だけ村の者達だけが集まって祭りが開かれている。
 詳しい事は分からんが、とても神聖なお祭りらしい。
 まぁ、鬼神自体がいないものだと言われているから、まったく関係ないと思うがな。
 ‥‥ん?
 そう言えば50年前も似たような事件があったな。
 詳しい記録が残っていないんで何とも言えんが、神隠しにあったと噂されていた。
 ‥‥あれは何だったんだろうな。

●今回の参加者

 ea0031 龍深城 我斬(31歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0167 巴 渓(31歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea0908 アイリス・フリーワークス(18歳・♀・バード・シフール・イギリス王国)
 ea0984 平島 仁風(34歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea2319 貴藤 緋狩(29歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea3546 風御 凪(31歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea3891 山本 建一(38歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea3899 馬場 奈津(70歳・♀・志士・パラ・ジャパン)
 ea6177 ゲレイ・メージ(31歳・♂・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea8087 楠木 麻(23歳・♀・僧兵・人間・ジャパン)
 eb0028 鬼刃 響(41歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 eb0160 黒畑 丈治(29歳・♂・僧兵・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

「道を通せば角が立つ。倫理(みち)を外せば深みに嵌まる。邪心、野心は闇に散り―残るは巷の怪しい噂‥‥」
 神隠しの多発する村を調査するため、鬼刃響(eb0028)が仲間達に別れを告げて空を睨む。
 朝から何か嫌な予感がしているため、街道ではない道を通って村に急ぐ。
「親切な村人に神隠し、オマケに50年に一度の鬼神祭‥‥符号が揃ってるように思えるのは気のせいか? まあ良い、俺は仕事をするだけだ‥‥強くなる為にな」
 ギルドで聞いた話を思い出し、龍深城我斬(ea0031)が街道を突き進む。
 江戸から村まではそれほど遠くは無いため、このまま行けば昼頃にはつくだろう。
「やれやれ、神隠したァ古典的な怪事件だな」
 大きな溜息をつきながら、巴渓(ea0167)があからさまに嫌な表情を浮かべる。
 最悪な結果を容易に想像する事が出来るため、あまり気分は良くないようだ。
「うにゅ、なんだか怖いですよ〜」
 身体をプルプルと震わせながら、アイリスが黒畑丈治(eb0160)の荷物に身を隠す。
 荷物の中には保存食が入っており、このまま夜になるまで隠れておくつもりらしい。
「そういや50年前の事件にもギルドが関わっていたようですね。その時は犯人を見つける事が出来ないまま、鬼神祭の終わりと共に神隠し事件は収まったという話ですが‥‥。村人達全員がグルと言う可能性もありえます。‥‥あくまで俺達は旅人という事にしておきましょう」
 険しい表情を浮かべながら、風御凪(ea3546)がようやく見えてきた村を睨む。
 村人達は凪の姿に気がつくと満面の笑みを浮かべて駆け寄り、妙に嬉しそうにしながら盛大な拍手と共に出迎えた。
「村の神事と発生時期が合うならば、それと関係があるのやも知れぬのぅ……。なにはともあれ、村人達から話を聞いてみる必要があるようじゃな」
 駆け寄ってきた村人に荷物を渡し、馬場奈津(ea3899)が小声で仲間達に話しかける。
「いよぅ笑顔が素敵な大将、景気はどうだい?」
 村人達に怪しまれないように自然な態度で話しかけ、平島仁風(ea0984)が親しげにぽふりと肩を叩く。
 村には泊まる場所が一軒しかないため、旅人達はみんな同じ場所に案内される。
「ええ、おかげさまで‥‥」
 満面の笑みを浮かべながら、村人がのほほんとした様子で答えを返す。
「今日は旅人が多いようだな。何か祭りでもあるのか?」
 あくまで仁風達とは無関係な旅人を装い、貴藤緋狩(ea2319)が村人達の後を歩いていく。
 部屋の数が限られているため、仁風達と同じ部屋になってしまったが、他人のフリをしているため、村人達はまったく気づいていない。
「あ、はい。鬼神祭と呼ばれる祭りが、もうそろそろ。ただし、参加できるのは残念ながら、村人達だけなのでございます」
 ソワソワとし始めた村人達を宥め、村長らしき男がニンマリと笑う。
「‥‥何かマズイ事でもあるのか?」
 険しい表情を浮かべながら、ゲレイ・メージ(ea6177)が村長らしき男を睨む。
「鬼神様は大変短気な御方です。もしも、途中で機嫌を損ねるような事があれば、私達の村は滅びてしまいます‥‥。そのため祭りの期間中は私達の指示に従っていただきます。もし約束を守る事が出来ないようなら、連帯責任という事で‥‥」
 決して笑顔を絶やさず、村長らしき男が申し訳なさそうに答えを返す。
「だ、大丈夫かな」
 村人達が一瞬だけ見せた表情に驚き、楠木麻(ea8087)が苦笑いを浮かべて呟いた。
「お気になさらないでください。私達もそれだけ神経質になっているだけですから‥‥。そんな事より、早く屋敷に参りましょう」
 決して笑顔を崩す事なく、村長らしき男がニンマリとした表情を浮かべる。
「‥‥何だか嫌な予感がしますね」
 わずかに漂う血の匂いを感じ取り、丈治が険しい表情を浮かべて汗を流す。
 ‥‥この村は何処かおかしい。
 その事だけは覆しようのない事実であった‥‥。

「さぁさぁ、こちらにどうぞ」
 大きな屋敷に着くと丈治達はすぐに部屋に案内され、笑みを浮かべた男達が部屋の出入り口に座っていく。
「‥‥勝手な外出は禁止ですか。随分と厳しいですね」
 警戒した様子で辺りを睨み、山本建一(ea3891)が気まずく愚痴をこぼす。
 あまりにも監視が徹底されているため、だんだん嫌になってきたらしい。
「‥‥まるで監視されているようだな」
 あからさまに嫌そうな表情を浮かべ、ゲレイが村人達に皮肉を言う。
「皆様の安全を考えての事でございます。お約束を守れぬようなら、私共も貴方様の安全を保障する事は出来ません。最近はこのあたりも物騒になってきましたから‥‥」
 笑顔を浮かべたまま物凄いキツイ口調で、村長らしき男が警告めいた言葉を吐く。
「それは残念じゃのう。せっかく鬼神の奉られている祠を見学しようと思ったのじゃが‥‥」
 ションボリとした表情を浮かべ、奈津が心底残念そうに呟いた。
「鬼神祭があると聞いて、せっかくこの村まで来たんだが‥‥。どうにかならないのか?」
 村人達の顔色を窺いながら、緋狩がゆっくりと口を開く。
 本当なら村を案内してもらおうと思っていたため、彼の中で予定が大幅に狂ってしまったようである。
「申し訳ありません。あの場所は気軽に立ち寄れる場所ではないのです‥‥。例え我々と言えども同じ事。ご理解くださいませ。そんな事より食事の用意が出来ました。我々が一生懸命作ったものです。遠慮せずに召し上がってください‥‥」
 緋狩達の食事を用意させるため、村長らしき男が嬉しそうに両手をポンポンと叩く。
き、村長らしき男が村人を呼んで達の食事を用意させる。
「こうも始終ニコニコされると逆に気持ち悪いな・・・・」
 食事を運ばれてくる間も村人達が笑顔を浮かべているため、凪が何ともいえない妙な感覚に襲われ仲間達に愚痴をこぼす。
「‥‥うぉっと、茸ぉ!? すまない。‥‥その昔、俺の従兄弟の嫁の兄貴の姑の幼馴染が変なキノコ食って笑い死にしてからってぇもの、茸だけは食うなって固く禁じられてんだわ。済まねぇな村の衆」
 運ばれてきた料理を見つめ、仁風がすまなそうに頭を下げる。
「はははっ、それは失礼しましたな。でしたら変わりのモノを用意します。持参した保存食など食べないように‥‥。荷物も持って行きますね」
 そう言って村長らしき男が仁風から保存食を奪い取り、部屋に置いてあった荷物を別の部屋に運んでいく。
「‥‥随分と強引だな? タダで泊まれると思ったら、こんなオチがあったのか?」
 不機嫌そうな表情を浮かべ、緋狩が村長らしき男の腕をムンズと掴む。
「その分、いい思いが出来ますので‥‥。天にも昇るような素晴らしい思いが‥‥」
 いやらしい笑みを浮かべながら、村長らしき男が緋狩の耳元で囁く。
 その口ぶりからして何か如何わしい事らしい。
「‥‥いや、酒も要らんし、食事は自前の物で結構。ゆえに風呂も要らん。‥‥何、一種の願掛けというか、戒めというか‥‥そんな感じの事だ、気にしないでくれ」
 村人達から荷物を奪い、我斬が部屋の隅で保存食を食べ始める。
「わりぃけど俺も遠慮しておくわ。格好を見てもらえば分かると思うが、宗教上の理由ってヤツだ。俺と奈津ばあさんは修行の旅をしているからさ。色々と厳しいんだよ」
 慌てた様子で言い訳をしながら、巴がアイリスの入った荷物を取り返す。
「そうは行きません。我々もこれが仕事なので‥‥。さぁ、荷物を我々に‥‥」
 巴を怪しむような表情を浮かべ、村長らしき男が強引に荷物を奪う。
「ひゃあ!」
「‥‥おや? 何か妙な声がしましたね」
 胡散臭そうに荷物を見つめ、村長らしき男がジト目で睨む。
「ひゃあん。こ、声が裏返っちまったぜ。はははっ‥‥。と、とにかく荷物を返してくれ」
 村人達に囲まれてしまったため、巴が乾いた笑いを響かせた。
「まぁ‥‥、いいでしょう。あなた達は部屋から出ないようにしてください。本当なら女性の方だけ、特別な儀式に参加してもらうつもりでしたが‥‥止めておきましょう」
 思いっきりわざとらしく微笑みながら、村長らしき男が村人達に合図を送って部屋を出る。
 この者達の監視を怠るな、という言葉を残し‥‥。

 ‥‥真夜中。
 丈治は村人達の騒ぐ声に気づいて目を覚ました。
 本当は仮眠しているつもりでいたが、まったく身動きが取れなかったため、いつの間にか寝ていたようだ。
「外が妙に騒がしいな。‥‥何かあったのか?」
 険しい表情を浮かべて立ち上がり、丈治が壁に障子の傍まで聞き耳を立てる。
 何が起こっているかまでは分からないが、村の中で何か大きな騒ぎがあったらしい。
「まさか儀式が始まったのか!?」
 部屋の外に村人達の気配がなかったため、ゲレイが障子を開けて廊下を睨む。
「ふわぁぁぁ‥‥、いったい何があったんですかぁ?」
 大きなあくびをしながら目を擦り、アイリスが荷物の中からヒョッコリと顔を出す。
 まだ少し寝ぼけているのか、フラフラとしながら飛んでいる。
「村人達はみんな出払っているようじゃの」
 キョロキョロと辺りを見回しながら、奈津が不思議そうな表情を浮かべて首を傾げる。
 今まで監視についていた村人達もいないため、奈津も何処かシックリと来ていないらしい。
「それだけ大きな事件が起こったという事ですね。でも、誰が‥‥」
 仲間達はみんな部屋にいるため、健一が納得の行かない様子で口を開く。
「いや、ひとりだけいます。俺達と別行動をとっていた響さんが‥‥」
 そう言って凪が荷物から木刀を取り出し、真相を確かめるため走り出す。
 響の無事を祈りながら‥‥。

「俺を‥‥どうするつもりだ?」
 祠の中に閉じ込められていた娘達を解放し、響が自ら囮となって村人達に取り囲まれる。
 娘達を逃がすためわざと目立った行動を取ったため、後は仲間達が来るのを待って逃げるしか方法はない。
「まったく馬鹿な真似をしてくれましたね。まさかこんな大きなネズミが忍び込んでいたとはな!」
 響によって生贄となる娘達が解放されてしまったため、村長らしき男が苦虫を潰したような表情を浮かべて胸倉を掴む。
「随分と屋敷の方が厳重に警備されていたからな」
 まったく動揺した様子もなく、響が村長らしき男に答えを返す。
「おいおい、まさか俺達を囮にしたって事か」
 響を囲んでいた村人をブン殴り、仁風が呆れた様子で溜息をつく。
 村人達はみんな松明を持っていたため、響達のいる場所がすぐに分かったようだ。
「結果的にはそうなるな。まぁ、計算してやったわけではないが‥‥」
 襲い掛かってきた村人達に当て身を食らわせ、響が忍者刀を引き抜き辺りを睨む。
「そんな事よりどうするつもりだ? もう娘達は村の外まで逃がしているんだろ?」
 村長らしき男に棒を突きつけ、我斬が響にむかって声をかける。
「それもそうだな。‥‥帰るか」
 納得した様子で忍者刀をしまい、響が村人達に堂々と背をむけた。
「お待ちなさい! これだけの事をしておいて逃げるおつもりですか?」
 今まで笑顔でいたのが嘘のような表情を浮かべ、村長らしき男が鬼のような形相を浮かべて肩を掴む。
「鬼神とやらの罰が下るか‥‥? ならば今すぐ俺に罰を下せばいい」
 懐の中から鬼を模った石像の首を取り出し、響が村長らしき男にむかって放り投げる。
「ひ、ひいい」
 村長らしき男はそれを見た瞬間、青ざめた表情を浮かべ、慌てて石像の首を受け止めた。
「まさかこれが鬼神の正体か? 楽しみにして損したぜ」
 石像の頭をぽふぽふと叩き、緋狩が呆れた様子でクスリと笑う。
「お、愚か者め! 祟りが下るぞ」
 何度も石像に頭を下げ、村長らしき男が涙を流す。
「‥‥僕にも単なる石像にしか見えないけど」
 石像の顔をマジマジと見つめ、麻が自信のない様子で呟いた。
「な、なんと恐れ多い事を‥‥」
 信じられないといった様子で麻を睨み、村長らしき男が大事そうに石像の頭を抱く。
 その表情から笑顔は消え、恐怖に慄いている様が分かる。
「そんな事よりいいのか。祭りの最中は笑顔を絶やしちゃいけないんだろ?」
 苦笑いを浮かべながら、丈治が村人達の顔を見てクスリと笑う。
「‥‥ハッ! 貴様らわしらをハメおったな! き、鬼神様、お、お許しを!」
 それと同時に村人達が一斉に驚き、誰かに謝るようにして祈りだす。
「言いがかりもいい所だぜ。勝手にそっちが怒ったんだろ」
 村人達に八つ当たりされた事が腹立たしかったため、巴が不機嫌そうな表情を浮かべて相手の胸倉を掴む。
「止めておきましょう。この人達はもう終わっています」
 絶望に打ちひしがれる村人達の顔を見つめ、健一が巴の肩を叩いて寂しそうに首を振る。
「さぁて、帰るとするかの」
 健一の言葉ですべてを察し、奈津が笑みを浮かべて踵を返す。
「ま、待て! 貴様らだけは‥‥生きて帰さんぞ。皆の者! さぁ、立ち上がれ!」
 怒りに満ちた表情を浮かべ、村長らしき男が村人達に合図を送る。
 他の村人達はガックリと肩を落としているが、それでも村長らしき男は何度も嗾け、奈津達を血祭りにあげろと喚き散らす。
「結果が分かっている戦いはしません。武士道とはそう言うものですから‥‥」
 何処か悲しげな表情を浮かべ、朝が村人達の攻撃を弾く。
「ご、ごめんなさいです」
 そしてアイリスは悲しげな表情を浮かべると、スリープを使って村人達を眠りにつかせるのであった。
 悪夢しか見る事の出来なくなった村人達を哀れみながら‥‥。